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どうやら召喚に成功したらしいのだが、ここがどこなのか、どういう世界なのかわからないので状況を説明してもらうよう促した。
とりあえず中で話そうということになり、今代表者の部屋に向かっている。
ただ一つ、疑問に思うのが
「ここ、どこ?
建物がどう見ても日本の建築物には見えないんだけど…」
とつぶやくほどここがどこなのか気になる。
日本らしい建物が全く見当たらないから、つい独り言を言ったのだが、マスターはその独り言が聞こえたらしく答えてくれた。
「ふふ、まぁそう思うのは仕方ないわね。
ちなみに、ここは日本の学園都市、麻帆良学園よ」
「え?!ここ、日本なのか!」
おれはここが日本だっていうのに驚いた。
俺の反応は予想通りだったのか、皆笑っていた。
そういうやりとりをしていると、ここの学園の長の部屋に着いた。
「ふぉっふぉ、さてまずは互い自己紹介をしようかの?
儂はこの学園長で関東魔法協会の理事長である近衛近衛門じゃ」
「僕はここの学園の教師と、広域指導教員をやっているタカミチ・k・高畑だよ。
よろしく」
まず、学園長とメガネを掛けている男性が自己紹介してくれた。
学園長は見た目が人間には見えないけど、さすがにそれを言うのは失礼なので言わないようにした。
高畑という人は、雰囲気からかなり強いと思えた。
「私の名はエヴァンジェリン・AK・マクダウェルだ。
真祖の吸血鬼だ」
「茶々丸です。
先ほど紹介されたマスターの従者で、ガイドノイドです」
次に、金髪の小さい女の子と見た目がロボットっぽく見える二人が紹介された。
ていうか真祖の吸血鬼って!!
「真祖の吸血鬼!?」
「そうだが?
ああ、心配するな。別に人間を吸血しても魔法で治療できるから大丈夫だ
それに、忌々しいが私は封印されている。
仮にしようと思ってもそこにいるタカミチにやられるだけだ。
ていうかそれ以前にできない」
「そうか…」
俺がいた世界の真祖は吸血すると、無条件で死徒化するから警戒したがその心配は必要なかった。
封印か…
なら、別に気にする必要はないな。
従者の茶々丸は、気配が人間ではなくけどマクダウェルみたいな人外の気配もないから疑問に思っていたがまさかロボットだとは…
こっちの世界は技術力が進んでるなぁ…
そして、
「どうも、私はあなたのマスターにしてエヴァの従者である棚町京です。
これからよろしくお願いします」
俺に挨拶した女の子がおれのマスターらしい。
歩き方や仕草を見ると一般人レベルにしか見えないのだが、底知れぬ雰囲気から恐らく何かしらの能力に目覚めたばかりなのだろう。
「俺の名前は衛宮士郎です。
この世界とは違う、別の世界から来ました」
「さて、お互い自己紹介も終わったから、まずはこちらの世界について説明しようかの。
質問とかはひと通り説明し終わってからでの」
「わかりました」
とりあえず、学園長からこの世界の魔法について説明してくれた。
この世界には2つの世界があり、今いる世界が『旧世界』、そしてもう一つが『魔法世界』。
詳しくは教えてもらえなかったが、魔法世界はその名の通り魔法が大っぴら使われている世界らしく、また住んでいる住人も獣人は勿論竜種などまさにファンタジーな世界らしい。
そして、次に教えてもらえたのがこの世界に存在する魔法についてだった。
教えてくれたことを纏めると、俺がいた世界でいう魔術がこっちの世界でいう魔法だった。
ただ、こちらの世界の魔法は俺の世界の魔術より大規模で威力が大きいのが主流らしい。
俺の世界の魔術でもあるにはあるが、その前に準備をしなければならないため詠唱するだけで発動することができるわけではない。
その後も、この世界に存在する大きな魔法組織や、関東と関西それぞれにある協会、関西で発達している陰陽術や剣術の名門神鳴流など様々なことを教えてくれた。
「まぁ、こんなところかのう。
何か質問はあるかい?」
「もし、一般人に魔法などがばれてしまうとどうなるのですか?」
「もし魔法などがバレてしまった場合、その場を治めるようなことを言ったり、最悪記憶消去の魔法を使うよ。
あと、ばらしてしまった魔法使いなどはオコジョになるんだ」
「はぁ、オコジョですか…」
俺はそれを聞いて、あまりの軽い処置に驚きを通り越して呆れてしまった。
まぁ、死ぬよりかはましか。
「さて、この世界についての説明はこれでいいとして。
次はお主がいた世界について説明してもらえるかのう?」
「あ、はいわかりました。
簡単にですけど俺がいた世界について説明します」
俺も、この世界と自分がいた世界の違いを説明した。
俺の世界にも『魔法』使いはいるが存在する『魔法』は五つしかなく、そのうち存命する『魔法』使いは四人しかいない。
後は魔術と魔法の違いについて、魔術協会についてなど説明した。
「ちなみに、もし魔術の秘匿を破ってしまったら問答無用に殺されます」
「…なんとも血生臭い世界だな」
「それぞれの魔術師は秘匿を最優先にするので、他の魔術師について調べない限り全くわからないのです」
「ちなみに、そちらの世界の『魔法』とはどんなのがあるのかのう?」
「第一から第五魔法あるなかで、自分がわかるのは第二と第三魔法しかわかりません。
まず、第二魔法ですがこれは並行世界の観察、移動です。
次に第三魔法ですがこれは魂の物質化、つまり完全なる不老不死を実現する魔法です」
「完全に魔法の内容が違うな。
実現できる自信がないな」
「大まかな説明は以上です」
「うむ、ちなみにお主は何の魔術ができるのかの?」
「自分は解析と強化、投影ができます」
最大の切り札である無限の剣製は伏せておく。
さすがに、まだ出会ってすぐの人達に教えるのはありえないことだから。
ただ、マスターである棚町さんにはあとで教えるけど。
言いながら考えていると、マクダウェルさんが質問してきた。
「それらはどういう魔術なんだ?」
「解析は物質の構造把握、強化は存在意義を強化させるという魔術で例えばナイフなら切れ味、食材なら栄養度が上がるということ。
投影は簡単に言うと魔力を練って物質を再現するという魔術なんだ。
ただ、投影したものは本物のワンランク下になるのは確実で、魔力で作ったものだから普通なら数分で消えてしまうんだ」
「そうなるとお前が持ってる魔術はそんなに強くないのか?」
「普通はね。
ただ、俺の場合他の魔術師とは違って、投影した物は俺の意志で存在させるか消滅するか決めることができるんだ」
「…それはすごいのう」
俺の属性はまだ教えない。
あまりにも特徴的すぎるからさすがに言えない。
学園長が感嘆と言うと棚町さんが質問してきた。
「その投影って、例えば今見本となる物を渡せばそれを複製できるのよね?」
「ああ、見本となる物を見せてくれたらできるよ」
「じゃあ、これを複製してみて」
と言って棚町さんが俺に渡してきたのは、殺人貴が使っていたナイフによく似ている物だった。
少し驚いたが、ナイフというだけで中身が何もないからよく似ているだけだろう。
「わかった」
橙子さんの人形と、神からのプレゼントによる魔術の影響を確認するには少し物足りないけど、一応確認にはなるから本気でやってみよう。
渡された直後に無意識に解析したが、本気でやるからには細部まで解析する。
解析できたらいよいよ開始だ。
ーーー投影、開始
「「「おおお…」」」
「ほう…」
高畑さんと学園長と棚町さんは感嘆の声をあげ、マクダウェルさんは感心するように声を上げた。
そして俺は、
「…なんだこれ」
あまりの自分の性能の良さに驚いて、思考が鈍くなっている。
いや、確かに細部まで解析して本気で投影した上に、自分の体の性能が上がっている状態だから前の俺より精度は上なのはわかる。
けど、だからといって限りなく本物に近いのができるのはおかしいだろ。
仮にAランクを70以上、Bランクを69~50にしよう。
前までの俺がAクラス70を複製しようとしたら、ワンランク下のBクラス50ができていた。
しかし、今の俺はAクラス70を複製しようとしたら、恐らくBクラス69.99…とワンランク下だけど限りなく本物に近い物ができる。
現に、今できているナイフがまさにその状態だからだ。
しかも、魔力消費量が通常の約1/5と訳がわからない。
ていうかここまで性能よくしないと倒せない世界の抑止力って…
ああ、考えたくない。
「すごいのう。
見た感じ、限りなく本物に近いと思うんじゃが」
「先刻おまえが言ったことを踏まえると、本物と比べるとわかるぐら
い劣化している物ができるという話のはずなんだが。
おまえが今複製した物は、見比べてもどちらが本物でどちらが偽物なのかわからんぞ」
「まぁ、そのかわり先刻言った魔術以外は三流どころか全然できないんだけどね…」
俺の特化型の属性のせいなのは解っているんだけどね。
まぁ、そこまで教えないけど。
「ふむ、よくわかった。
さて、衛宮殿のここでの扱いについてなんじゃが…」
いよいよ本題である俺のここでの扱い。
普通ならいきなり現れてきた侵入者を軟禁状態にして監視するとか、とりあえず自由な状態にはしないと思うけど…
「お主は、中学校の副担任と広域指導教員になってもらいたい」
「…なんでさ?」
俺は学園長の提案に驚いてしまって、敬語を抜かして返事してしまった。
ていうか本当になんで?
「ちょっと待ってください。
見ず知らずの自分がなぜ教師を?」
「まぁ、落ち着きなさい。
理由はきちんと説明するわい。
確かに違う世界から来た人間を、おいそれと自由にさしてたら部下が君のことを警戒してしまう恐れがある。
だから、この麻帆良で一番強いタカミチ君の下に置いとけば監視ということにはなるじゃろ。
あとは棚町君のクラスの副担任じゃったら、従者として近くにいれるからよいと思うんじゃ。
それに、お主自身儂らが警戒しないといけないことをするとは思わないと判断したのじゃ」
「はぁ…なるほど」
さすが組織のトップに立っている人はよく考えている。
今ここにいる人以外から見たら、俺はマスターの従者ということしかわからない。
そんな人間を普通に監視するぐらいなら、一番強い高畑さんの下に置くことで解決できるということか。
けど…
「俺、教員免許なんて持ってないのですが…」
「そこは儂がなんとかするわい」
トップだからできることで無理やりにするということか…
「教員としてやる以上お主に担当教科を決めないといけないんじゃが、何かやりたい教科はあるかのう?」
もうきまっていること前提で話を進めるんだ。
まぁ、他に選択肢が無い以上それしかないんだけど…
「そうですね…英語か社会がいいですね」
「なるほど。
英語はそこにいるタカミチ君がやっているから、社会をやってもらおうかのう」
「わかりました。
あと、質問なんですけど広域指導教員ってなんですか?」
「この学園は、いい意味と悪い意味で元気な学生がたくさんおる。
だがらその分、トラブルがたくさんでてしまうんじゃ。
そのトラブルを指導という意味で沈静化するのが仕事じゃ。
まぁ、要はパトロールをするということじゃ」
「なるほど…」
学園都市であるため、見た感じこの学園はかなり広いと思う。
さらにここは魔法使いもいる学園だ。
公共機関が介入されたら困るトラブルもあるのだろう。
それを教員であり魔法使いである人達がパトロールをして、公共機関が介入する前に解決をするということか。
「ただ、魔法使いであり教員である先生の数が足りんくてのう、広域指導教員の数が少ないんじゃ。
だからお主がやって欲しいのじゃ。
勿論、副担任としての給料とは別に広域指導教員としての給料も支払うわい。
やってはもらえないかのう?」
「やってもいいのですが、その代わりとしてお願いしたいことがあるのですが…」
まぁ、やってもいいんだけど今の俺の状況を考えたら、ちょっと条件を出さないとできないよなぁ…
「なんじゃい?」
「まず、自分の戸籍を用意して欲しいのと、あと衣食住をお願いしたいのですが…」
「なんじゃ、そういうことは勿論かまわんぞい。
それ以前に戸籍がなければ教員にはなれないんじゃから、お主が頼まなくてもやるつもりだったわい」
「ありがとうございます。
それで、あと衣食住は…」
「うむ。
先ほど言ったとおり教員をやるなら両方の給料が入る。
それがあれば困ることはなかろう。
そして、肝心の住む場所なんじゃが…」
「それについては私の家で充分だろう。
こいつの力がどんなものなのか気になるしな」
「だそうじゃ。
住む場所はエヴァの家でいいじゃろう」
「わかりました。
喜んでやらしてもらいます」
「ありがとう。
助かるわい」
これでここで生きて行くことができる。
みんな優しい人達で助かった。
「それで早速なんじゃが明日からやってもらいたい。
というわけで、朝またこの部屋まで来るように。
あと、麻帆良におる魔法使い達に紹介をしたいので、明日の夜先ほどいた世界樹前の広場にきて欲しい。
詳しい時間はまた明日説明するわい」
「わかりました」
早速明日からか。
先生なんてやったことないから緊張するなぁ…
「今日話すことはこれでお終いかのう。
何か質問はあるかい?」
「いえ、大丈夫です」
「それじゃあ、エヴァの家に行ってゆっくり休みなさい。
忘れずに明日の朝またここに来るんじゃ」
「はい、わかりました」
「話が終わったところで私の家に行くぞ」
話が終わると、すぐに連れていきたいのかマクダウェルがそう言いながら動き始めた。
家の主である以上、とりあえず付いていくしか無いと思い俺も動き始めた。
そうして付いて行くとある家の前で止まった。
「ここが私の家だ」
その家は木で出来ていているログハウスだった。
なかなか風情があっていいなぁと思っていると
「私の家を見て感慨深く思うのは嬉しいのだが、今は時間があまりない。
すまないが、私に付いてきて欲しい」
「ああ、すまない」
なにやらやりたいことがあるらしく、すぐについてきてくれと言われた。
何をするのか分からないが、とりあえず言う事を聞くしか無いから大人しく付いて行った。
付いて行くと地下に着いた。
そこには、両手で抱えないと持てないくらい大きいボトルが置いてあった。
その中にはなにやらリゾートっぽいのがあるのだが…
と考えていると、
「ナンダ?マタアタラシイジュウシャカ?
ホントウニマルクナッタナ、ゴシュジンハ」
どこからか声が聞こえた。
けど辺りを見回しても人らしい面影がなく、どこから発しているのかわからない。
「うるさいぞチャチャゼロ。
何を連れてこようが私の勝手だろ」
「ベツニ、ワルイイミデイッタワケジャネェンダケドナ。
キリキザムアイテガフエテウレシイカラ、ベツニイインダケドナ」
マクダウェルがどこかに顔を向けながら話しているので、そこ顔を向けると。
人形が話をしていた。
「人形?」
「あまり驚かないようだな。
紹介しよう。私の最初の従者であるチャチャゼロだ」
「ヨロシク。
コンドオマエノチヲミセテクレヨ」
「ははは…。
衛宮士郎だ。よろしく…」
挨拶の内容から、この人形は相手と斬り合うことが好きらしい。
ていうか、チャチャゼロの手に持っているのが包丁というのでもう確定した。
「エヴァ、先に行ってるよ」
「ああ、先に行って準備でもしていてくれ」
「わかったわ」
そう言うと、棚町さんはボトルの前に立って、消えた。
「なんでさ?」
「さて、とりあえずそのボトルの前に立ってくれ。
話はそれからだ」
「いやいや、少しは説明してくれても」
「さっさと立ってくれ。
時間がもったいない」
無理やりボトルの前に立たされると、
薄暗い部屋から変わって雲一つない青空の下にいた。
「…どこ?」
「ここは私が作った別荘だ。
京もここにいる」
あとからマクダウェルさんがチャチャゼロを連れて来た。
「別荘?」
「魔法で作った物だ。
ちなみに、ここで一日を過ごさないとここから出れないからな」
「え?じゃあ、明日どうするの?」
「最後まで聞け。
ただ、ここの一日は外では一時間しか経ってない。
簡単に言うと逆浦島現象だな」
「なるほど…」
体を休めるにはもってこいの別荘だな。
なんて便利な魔法なんだ。
「さて、今からお前の実力を見せてもらおう。
ただ、本気は出さなくていい。
雰囲気からして、お前が本気を出すと別荘が壊されそうなのでな」
「なるほどね…」
「あとは京の実践訓練を兼ねている。
恐らくというか、確実に今の京ではお前の本気には勝てないからな」
「まぁ、うん、勝てないだろうね」
見た感じまだ素人っぽいし。
けど、先刻も感じたけど素人のはずなのに雰囲気に違和感を感じさせる。
この違和感が何なのかわかるかもしれない。
「今の?なんで今の状態ではってわかるの?」
「なに、貴様も戦ってみればわかる」
なにやら意味深な返答をしてきた。
「とりあえず、私に着いて来い。
訓練する場所に案内してやる」
と言うと何の柵もない橋の上を渡り始めた。
意外に高いなと思いつつ着いて行った。
橋に繋がっていたもう一つの塔に着いた。
その場所に、
準備体操をしている棚町さんがいた。
ただ、
「ん?」
明らかに先刻と色々変わっている。
先刻の棚町さんは雰囲気に違和感があっただけで、それ以外は素人にしか見えなかった。
しかし、今の棚町さんはレベルが上がっている。
何かに似ている。
この感じは…
「私は準備完了よ。
衛宮さんはどうかしら?」
「え?ああ、大丈夫だよ。
いつでもいけるよ」
この世界に転送された状態のままの格好だからいつでもいける。
「そう。じゃあ、
戦いましょうか」
「!?」
棚町さんがそういうと一気に空気が変わった。
肌で感じるだけでわかる。
明らかに素人のレベルではない。
おかしい。
全くもっておかしい。
ただ、この感じは…
「構えなくてもいいのかしら?」
「あ、ああごめん」
とりあえず武器を構える。
様子見を兼ねて、黒鍵を両手で持てるだけ持って準備する。
この武器なら遠距離からも攻撃ができ、近距離でも攻撃ができる。
相手の実力を図るにはもってこいだろう。
「…なるほどね」
「どうしたの?」
「いえ、別になんでもないわ」
そう言うと棚町さんはどこから出したのか、鞘に納まっている日本刀を出した。
ただ、普通の刀ではないのがわかる。
解析してみても出来なかった。
まるで調べられないように守っているようにしているのか、とりあえず何かで防がれている。
「それじゃあ、
先手は貰うわ」
「!?」
俺は咄嗟に左手に持っていた三本の黒鍵で、左脇腹を守るようにした。
すると、黒鍵に棚町さんの居合が当たった。
「ぐっ!!」
棚町さんは居合で攻撃した後、そのまま俺の背後に移動した。
思っていた以上に攻撃が重くて驚いた。
しかも、投影した後更に強化したはずの黒鍵が、今の攻撃で罅が入っている。
「ふっ!」
背後にいた棚町さんは、一息いれてなにかしようとした。
後ろにいるから何をするのかわからないが予測はできる。
恐らく、振り向きながら刀で攻撃するだろう。
俺はその場ですぐにしゃがんだ。
すると頭の上から風切音が聞こえた。
避けるのに成功したと思いながら反撃をする。
体を思いっきり反時計回りに振り向きながら、左手の指に挟んである三本の黒鍵で攻撃した。
「くっ!!」
棚町さんは、地面が割れるほど力を出して後方に避けた。
俺は次の行動にでた。
そのまま振り向く力を利用して、右手に持っている三本の黒鍵を後方に下がった棚町さんに投擲した。
投げた瞬間の棚町さんの態勢は片足が地面に着いていた。
思いっきり後方に下がったため、投擲した黒鍵が当たる頃でもまだ態勢を完全に戻すのは厳しいだろう。
恐らく地面を滑っているか止まるかのどっちかだろう。
しかし、棚町さんがとった行動はどちらでもなかった。
棚町さんは片足が地面に着いた瞬間、右に側転した。
黒鍵が手元から離れた瞬間にしたため、投げるのをやめることができずそのまま棚町さんに当たること無く飛んでいった。
かわりに左手にある黒鍵を、俺の予測した側転した先に投擲した。
棚町さんはそのまま側転すると思ったが、左手が地面に着いた瞬間、そのまま上に飛んだ。
確かにそのまま側転してしまうと、両足が地面に着いたときに黒鍵があたってしまうので、そこから更に防御や回避行動をとる暇がない。
だから上に飛ぶしかないのだが…
それは予測の範囲内だ。
そう、俺は投げながら俺は行動していた。
棚町さんが飛ぶだろうと予測していたところに直線に走っていた。
そして、棚町さんが飛ぶ瞬間に俺も飛んでいた。
棚町さんは、俺の行動を見て驚いていた。
そりゃあ驚くだろう。
気付いた時には自分の腹に俺の右手が当たっていたのだから。
「ぐぅっ!!」
体がくの字になり、呻き声を挙げながら地面に吹っ飛んでいった。
ちょっと本気で殴っただけなのだが、地面にぶつかると少し陥没した。
…あれ?
いや、確かに身体強化の魔術をかけた状態で、殴った時の強さを確かめるために右手に黒鍵を投影して投擲せず、わざわざ殴りにいったのだが。
まさか地面が陥没するとは思わなかった。
ていうか無事なのだろうか。
と心配していたら、
「いたたた…」
と棚町さんが少し痛がりながら、左手でお腹を押さえながら立ち上がった。
ただ、痛がっているだけで戦闘に支障はきたさないようだ。
「ああ、やっぱり厳しいわね。
さすがに刀を抜いただけでは、全く勝てる気がしないわ」
「抜いただけ?」
「この刀には名前があり同時に意思もある。
刀から名前を教えてくれるということは、持ち主を主として認められたということになるわ。
そして主がその名前を言うことによって形が変化し、それぞれ特別な能力が追加されるようになる。
それを『始解』と言うのよ」
「つまり、その始解とやらをやるとその刀の形が変化して、更に能力がプラスされるというわけだね?」
「そう。
まぁ、まだ使いこなせてないから仮に使っても衛宮さんには勝てないと思うわ」
使う本人がそう言うからにはそれが事実なんだろう。
使った瞬間に相手を即死にするという、反則能力でもなさそうだし。
なら大丈夫だろう。
「さて、それじゃあ
使わせてもらうわ」
瞬間、更に空気が重くなった。
正確には棚町さんからではなく、持っている刀からプラスで重くなったようだ。
「起きろ、ーーー”紅蓮”」
そう言うと、持っていた刀『紅蓮』は光り始め、徐々に普通の日本刀から形を変えた。
鍔がなくなり主の手を守るように、柄の前まで刀が伸びた。
そして光が消えると『紅蓮』という名の通り、刀全体が赤々と燃え盛るような色になっている。
色と刀の名前から判断すると、恐らく火を主力とした能力かもしれない。
けどそう判断するのは速過ぎると思う。
現に俺が知っている宝具で、名前と形から能力を判断できない物もある。
少し様子見をしたほうが得策か。
「ん~これでもまだなのね…」
「何が?」
「いいえ、こちらの話。
それじゃあ、続きを始めましょうか」
「はぁ、はぁ、はぁ」
始解をしてから約十分くらい経って、俺は霊力が切れたため地面に転がっていた。
結局始解をしても、士郎に勝つことは出来なかった。
ただ、黒鍵以外の武器を投影させることができたので良としよう。
一番見たかったあの双剣が見れなかったのが、とても残念だけど…
「なぁ、マクダウェルさん」
「エヴァでいい。
京は私の従者である以上、お前も私の従者であることに変わりはない」
「じゃあ、エヴァ。
棚町さんって、最近になって戦い始めた?」
「そうだ。
厳密に言うなら約一週間くらいか」
「一週間でこれほど動けるのか…
すごいなぁ」
まぁ、たった一週間でここまで動けるのは、俺から見てもおかしいと言える。
さすがセイバーさんが持っていたスキル『直感』。
まじチートだろ。
考えていると、士郎が俺に近づいてきた。
「お疲れ。
よく頑張ったよ」
「せめて服に傷をつけるくらいはしたかったわ」
「…まだ余裕ありそうだね」
苦笑いしながら俺に手を差し伸べてくれた。
「ただ強がっているだけよ」
俺は士郎の手を掴み、その勢いで立った。
「棚町さんはすごいね。
すぐに抜けられそうだ」
「京でいいわ。
それはこれからの鍛錬次第でしょ」
現時点では、どんなに頑張っても勝つことが出来ない。
でも、この世界で生きていくためには、せめて同じくらいには成長しないと。
「追い付いてみせるわ。
だって、あなたのマスターなのだからね」
「はは、そうか。
なら、頑張らないとね」
「そのためにも、衛宮さん。
もう一回やりましょう」
「士郎でいいよ。
いいよ。何回でもやろう」
目標の壁は遠く、高い。
けど、必ず超えなければならない。
力の使い方の為ではなく、別の何かのために…
俺は、そんな気がした。