タカミチが『咸卦法』をし、京が『戦いの歌』を使って静かに睨み合った状況が続いた。
最初に動いたのは京だった。
縮地でタカミチの真正面に移動した。
はっきり言って、なぜそのような行動をしたのか私にもわからんが、タカミチは手加減なく豪殺居合い拳を放った。
だが、それが京にあたることはなかった。
京はそれにあたる瞬間、右斜め前に飛び込んで避けた。
「はっ!!」
右腕が地面に着いた時、それを軸に体を反時計周りに回りながら、魔力を込めた左足をタカミチに叩き込んだ。
タカミチは驚きながらも、冷静に左腕をポケットからだし攻撃を防いだ。
「くぅっ!?」
その蹴りは思った以上に強く、防いだはずのタカミチは吹っ飛んだ。
タカミチは吹っ飛ばされながらも、ポケットにしまっている右手で居合い拳を放った。
京は当たらないようその場を飛んだが、無理して飛んだため態勢が崩れてしまった。
タカミチはそれを予想していたのか、豪殺居合い拳を京に向かって放っていた。
その攻撃はほぼ直撃コース。
今の棚町の状態で、その攻撃を避けるのは厳しいだろう。
だが、棚町は
「ふふ」
不敵な笑みを浮かべなから、真横に避けた。
「ほう」
恐く、瞬動を空中で行う『虚空瞬動』を行ったのだろう。
ふざけた能力を持ってはいるが、少なくとも数日で使える技ではない。
避けた京は、タカミチが吹っ飛ばされた場所に向かって電撃を放った。
それに気づいたタカミチは、すぐに態勢を整え豪殺居合い拳を放ってなんとか相殺した。
京は、相殺したときにでた煙の中に突っ込んだ。
煙から出ることなくその中から電撃を放っているが、タカミチは危険を察知し煙の前から瞬動で逃げたため、当たることはなかった。
が、その行動は全く意味がなかった。
「ここに移動するのはわかっていましたよ。高畑先生」
タカミチが瞬動で移動した先には、煙の中に突っ込んでいたはずの京がすでにいたのだ。
恐らく瞬動で移動したのだろうが、気配がなさすぎる。
ここまでくれば、縮地の最高レベルである。
これほどの縮地ができるのは、学園内だけでは私ぐらいだろう。
別荘を使ったとはいえ、まさか数日でここまでとは…
「解放。魔法の射手・収束・雷の二十矢」
移動した直後で動くことができないタカミチを狙って、京は右手で殴りながら魔法の射手を放った。
タカミチは殴られる前に、『咸卦法』の密度を上げてなんとか防御した。
「ぐはっ!!」
しかし、それで完全に防御できるはずもなく、腹に直撃したタカミチは苦悶の表情になり、血を吐いた。
そして、京はここから逃がさないと言っているかの如く、タカミチの周りを囲むかのように電撃を放った。
さながら爆弾が爆発したのような爆音をだし、地面に雷撃が当たったためさっきの京が放ったのと同じように土煙がでた。
タカミチの周りに放ったため、たとえ魔法の射手付きの拳に耐えることができても、その場から動くことはできないだろう。
現に、煙の中からタカミチが出てこない。
ダメージが大きくて動けないのか、雷撃によって動くことができなかったのか…
どちらにせよ煙がはれない限り、二人がどうなっているのか分からない。
そして、煙が徐々にはれて二人の様子が見えるようになった。
『!!』
その様子を見た魔法使い共が驚いた。
なぜなら…
タカミチは仰向けに倒され、京は馬乗りになりながらその上に乗っている。
京は右手に真っ黒の剣を持っていて、その切っ先を首に向けていた。
これで勝敗は決した。
そのことを高らかに宣言するかの如く、京は言った。
「私の勝ちですね。高畑先生」
電撃を放ったことででた地面の砂を、電磁石で集めて作った剣を高畑先生に向けながら、俺は勝利宣言した。
ふぅ~~~。
なんとか勝つことができた。
はっきりいって少しやばかった。
さすがチート能力。
戦闘初心者が、『虚空瞬動』使える時点で意味がわかんないし、ポンポンと次の行動予測ができるとか、半端ない。
ただ、まだ完全に使いこなせてないし、行動予測と俺自身の動きが微妙に追いついていないから、その部分がタカミチに気づかれると勝てなくなるから、速攻で勝負に勝つしかなかった。
「そこまでじゃ。勝者は棚町君じゃな」
学園長がそう言うと俺は能力を解除し、タカミチを起き上がらせた。
「ふう、強いね。棚町君。
本気出して手も足もでないとはね」
「いえいえ、高畑先生が最初っから本気で戦っていたらやられていましたよ。
あと、高畑先生が見たことがない技を使いましたので、逆に勝てないほうがおかしいですよ」
「ははは、まぁそうだね」
あと、付け加えるなら場所が俺にとって有利に働いた。
タカミチの攻撃は、豪殺居合拳からわかるように、広範囲攻撃を主体としている。
もし、場所がエヴァの別荘だった場合、周りを気にする必要がないため、遠慮なく豪殺居合拳を使えるため、恐く手も足も出なかっただろう。
と、互いが互いを褒め合っていると、先程秒殺されたガンドルがきた。
「一つ質問したいのだけどいいかな?」
「なんでしょう?」
「君はその力を何の目的に使うのかね?」
ああ、やっぱりそういう質問しますか。
まぁ、当然といえば当然だろうな。
麻帆良のなかで一番強いと言われるタカミチを倒すほどだ。
その力を、どのような目的に使うのか聞きたいのだろう。
「私は…」
目的はもう決まっている。
歓迎会の時に心に決めたのだ。
「私を友達と思ってくれている人達、私を助けてくれた恩人を守るために使いたい。
そう思っています」
違う世界から来た俺を助けてくれたエヴァ、タカミチ、学園長。
俺を友達として歓迎してくれた2-A(一人を除いて)。
恩を返す感じだけど、俺は前の世界ではここまでよくしてくれたことはなかった。
だから、感謝という意味でチートであるこの能力を使って守りたい。
そう思ったのだ。
「その人達を守るために使う…か」
やはり立派な魔法使い(マギステル・マギ)として、そこは世のため人のために使って欲しいのだろう。
ほとんどの魔法先生、生徒が微妙な顔になった。
「ほほ、素晴らしい目的じゃ。
儂はいいと思うぞい」
「僕も同じ意見ですね」
と学園長とタカミチは、応援するという意志を示してくれた。
「棚町君に質問したい人もおるじゃろうがもう夜も遅い。
また後日、個別に質問することにしようかの」
確かにもう夜も遅い。
明日も学校はあるのでもう解散するべきだろう。
「今日の会合はこれにて終了じゃ。
解散!!」
そういうと皆言いたいことがあると思うけど、学園長の言うとおり素直に帰った。
さすがに上の命令に逆らってまで質問する奴はいないか。
そう思って、エヴァの家に帰ろうとしたら
「ちょっといいかな?」
と龍宮が尋ねて来た。
「どうしたの?
学園長の言う通り、もう夜遅いから明日にしたほうがいいと思うけど…」
「いや、用があるのは私ではなく刹那のほうでね。
私はその伝言としてね」
ああ、なるほど。
つまり
「刹那本人は、歓迎会前のことを気にして直接呼びにくいから龍宮に頼んだと」
「そういうことだよ」
やはり…
めんどくさいけど、この後の事を考えるとここで良い関係を築けたらと考えたらいいかな?
「わかったわ。
とりあえず、ついていけばいいのかしら?」
「ああ、すまないね」
俺は龍宮についていくことにした。
刹那の考えは、あの時と変わっているのだろうか?
戦闘を少し短めにしました。
模擬戦だし、周り市街地だしと考えたからです。