彼女の戦いは素晴らしかった。
学園の中で学園長を除いて、一番強い高畑先生を無傷で倒した。
しかも、彼女はあれで本気を出している感じではなかった。
彼女が味方になると考えると、とても心強い。
しかし、私たちはまだ彼女がなぜその強大な力を使うのか、その目的を知らない。
だから、さらに警戒するのは当然のことだと思う。
そして、ガンドルフィーニ先生が代表で質問してくれた。
その力は何のために使うのか。
その質問に彼女は、友達を守るため、恩人のために使うと言った。
友達というのは、恐らく2-Aのことだろう。
つまり、お嬢様を守ると言っているようなことだ。
素晴らしいことだと思う。
けど、本当にそう思っているのか。
心の底からそう思っているのだろうか?
その場凌ぎに言っているのではないのか?
彼女について何も知らない私は、彼女の言ったことを信じることができなかった。
だから、私は真名に頼んで彼女を呼んでもらうことにした。
自分で呼べばいいのだけど、歓迎会前のやりとりの後だから行けなかった。
言葉を聞いても信じることができない。
なら、手段は一つ。
剣を使って思いを聞くだけだ…
けど、この時私は気付いてなかった。
本当に戦いたい理由を…
龍宮について行くと、桜通りについた。
原作でエヴァが吸血行動をしていた所だ。
今の時期は紅葉で風が吹くと、紅く色づいた葉っぱが舞って風流があった。
そして、その風流ある桜通りの真ん中に俺を呼んだ奴がいた。
「どうも、桜咲さん。
私になにか御用ですか?」
「…」
俺の質問に答えず、ただ平然と立っている。
恐らく、俺の力の使い方に対してのことだと思うが…
「あなたは…」
「?」
「あなたは、高畑先生を倒す力を友人や恩人を守るために使う。
そうおっしゃった」
「ええ。それがなにか?」
「だけど、私はまだそのことを信じれるほどの信頼、情報を得ていません」
なるほど。
つまり、
「高畑先生を倒すことと、信頼を得ることは関係ないと」
「そういう事です」
まぁ、確かにそう思うだろうなぁ。
俺がもし逆の立場だったら、突然現れて味方の中で一番強い人を倒して、その後綺麗事を並べて信用してくれって言われても困るだろうなぁ。
「じゃあ、どうすればいいのかしら?」
「…私は、あまり賢い人ではありません」
認めたよ。自分で認めたよ、この人。
と言っていると、刹那の雰囲気が変わった。
「だから、私はこの剣を使って確かめたいと思います」
と言うのと同時に剣を抜き戦闘態勢に入った。
「けど、私は高畑先生を無傷で倒せるあなたに勝てる気がしません…」
そう言いつつ気を溜め、そして
「ですので、不意打ちでいかせてもらいます!!!」
瞬動で距離を詰めて、気を溜めた夕凪で斬りかかってきた。
棚町さんは、あの高畑先生を倒すほどだ。
だから、バレないように剣に気を少し溜めて斬りかかった。
しかし、
棚町さんはどこから出したのかわからないが、刀が入っている状態の日本刀の鞘で、平然と刹那の攻撃を受け止めていた。
「な!!」
「まぁ、あの模擬戦を見たら、真正面から斬りかかってくるようなことはしないわね。
なかなかいい判断だけど、気が刀から漏れていたから助かったわ」
あの気を感じたのか。
確かに気を溜めていたけど、それは数で表すなら一から五とわずかに増えたレベルだ。
これは魔法生徒は勿論、先生でも気付くのは難しいほどの量だ。
それを当たり前のように感じるとは…
「あと…」
棚町さんが何か言うのと同時に
「行動が遅いわ」
私の刀を右手に持ってた剣で受け流し、態勢を崩された瞬間、棚町さんがいつの間にか、気を溜めていた左手で私の腹を殴ろうとした。
が、しかしまるわかりです。
「その攻撃はよんでました」
私は両手で持っていたのだが、右手だけにし空いた左手で、棚町さんの左腕に叩きつけて攻撃を逸らそうとした。
そうすることで、棚町さんは態勢を崩し、その隙に体を時計回りに回転しながら斬りつけようと私は考えた。
しかし、それが成功することはなかった。
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
棚町さんは、殴ろうとしていた左手を使って私の右腕を掴み、そのまま体を時計回りに回りながら遠心力を利用して投げた。
「な!!くっ!!」
私は投げられながらも、必死に態勢を整えようとした。
しかし、棚町さんの攻撃を逸らそうと左手で力いっぱい叩きつけようとしたため、その分の力+棚町さんの投げる力が合わさって体が時計周りに回転していた。
私は、態勢が整えることができず、そのまま地面に激突した。
「ぐはっ!!」
棚町さんは、そのまま追撃できたのだが、やらずに先程投げるときに使っていた左手の感覚を確かめていた。
そう、あたかもおまえはいつでも倒せるぞと、言っているような感じだった。
「はぁ、神鳴流ってこの程度ですか?
あ、そうね。神鳴流が弱いのではなく、あなたがよわいのですね?
ああ、納得しました」
「くっ…」
棚町さんの言葉に少しイラつきを覚えながらも、私はなんとかたって見せたが、あまりの衝撃の強さに苦悶の表情を隠せないでいた。
また、気を溜めていた左手で私の右腕を掴んで投げられたため、右腕の調子がおかしい。
なんとか動かすことはできるが、百%の力を出すのは難しいだろう。
けど、それでも戦うことはできる。
なら、全力を出しきるまでだ。
「へぇ、立てるのね」
「当然です。
まだ、確かめ終わっていません」
「真面目ね」
と言いながら、棚町さんは魔力を溜めていた。
「なんで、そんなに確かめたいのかしら?」
「それは、あなたの言っていることが信じられないかr」
「違うわね」
「何が違うのですか?」
「もっと素直になりなさい。
あなたのように、遠まわしに守るのではなく、自分の思いで守ることができる私に嫉妬しているのでしょう?」
「…なに?」
「あなたの任務は、近衛木乃香の護衛。
けど、あなたは理由があって木乃香の近くで守ることができない」
「けど、高畑先生より強い私が、近くで守ることになったら遠くで守ってるあなたの意味が無い。
だからあなたは嫉妬してるのではないかと」
「そんなことはない!!」
「それなら、なぜこんな勝者がわかっている無意味な戦いをしているのかしら?」
反論しようとしたが、私は図星に近い感じになった。
…ああ、そうか。
だから、私はこんな無意味なことをしているのか…
「…あなたに」
「?」
「あなたに、私の何がわかるのですか!!」
そう、私の過去も知らずに嫉妬をしていると、勝手に言われる筋合いはない。
「あら?私、先程言わなかったかしら?」
「え?」
「あなたは、とある理由で近づくことができないって」
…まさか、この人は私の正体を知っている?
そんなはずはない!!
「あなたの背中には、白い何かが付いている」
「な!!」
そんな…なんで知っている?
「なんで知っているのですか?」
「企業秘密。それより
隙だらけよ」
!?
しまっ!!
私は話に気を取られすぎて、棚町さんの魔力が篭った拳を避けることができなかった。
その拳は、見事に私の渠に当たった。
「がっ!!」
気を高めて防御したが、そんなのは棚町さんの拳では雀の涙程度の防御ぐらいにしかならない。
私は、そのまま吹っ飛ばされた。
「あなたの護衛は間違っている。
遠くから見守って守ることが護衛なわけがない。
それは監視と言ってもいいわ」
「ぐっ…」
ダメージが大きすぎて、立ち上がるのという行動が苦しい。
けど、なぜか棚町さんの言葉が心に響く。
「護衛というのは、護衛対象の近くで守ることを言うのよ?
けど、あなたは何をしているのかしら?
遠くでただ見ているだけで歩み寄ろうとせず、本当にただ見ているだけ。
そんな奴が、護衛しているとか言わないで欲しいわ」
いや、違う。
心に響くというより…
私の心を燃え上がらせるような感じだ。
「…だまれ」
「ましてや、誰かを護衛できるほど強くもないのにね。
自惚れるのもいい加減にしなさい」
聞いているうちに、先程まで立つこともできなかった体が動き始めた。
「だまれ!!」
「図星を突かれたからと言って、逆ギレするのは良くないわ。
だって本当のことでしょ?」
そして、私はもう我慢することができなかった。
「だまれ!!!!
お前に何がわかる!!」
気を無意識に放出し、そのまま瞬動で棚町さんの懐に移動した。
そして居合い抜きする感じで棚町さんに斬りつけた。
が、しかし、
「見え見えよ」
棚町さんは刀を抜くこと無く、鞘で私の攻撃を受け流された。
私は居合い抜きで刀を抜きながら、体を時計回りに回転しながら斬りつけた。
「私のこの剣はお嬢様を守る剣だ!!
だからこそ、護衛の任務に就いた!!」
しかし、この攻撃も鞘で受け流された。
棚町さんは、私の攻撃を受け流すだけで、反撃をする素振りすら見せようともしない。
私はそれにイラつきを覚えながらも攻撃を続けた。
「遠くで見守りながら守ることは、そんなにいけないことなのか!!」
「あなたは木乃香に知られたくないのでしょう?
本当の姿を」
私はこの言葉で止まってしまった。
「本当の姿を知られたくない。
けど、木乃香を護衛したい。
だから遠くで見守って護衛するしかない。
そうでしょう?」
それは、まさに私の心を完全に突かれた言葉であった。
「…なら」
「?」
「私はどうしたらいい!?」
私の心の中は、完全に混乱していた。
先程まで激情していた心に、さらに悲しみの感情が入れ混じって混乱していた。
「私は、一族の掟で知られていはいけない。
けど、私はお嬢様を守ると心に誓った。
なら、私の取るべき行動は遠くで見守って護衛するしかないではないか!!」
私の泣き言の言葉を、棚町さんは真剣な顔で聞いている。
棚町さんの顔を見ながら、私は言葉を言い続けた。
「お嬢様は私の、昔からの幼馴染みであり最初の友達だ。
ずっと迫害されてきた私を、友達として見てくれた。
そのお嬢様を守ろうとする気持ちがそんなにいけないことか!!」
「それじゃ、あなた」
「そういう行動をされている木乃香の気持ちを、考えたことはあるのかしら?」
「!!!」
「剣の修業で忙しいあなたに会うことができずそのまま麻帆良に転入し、あなたが麻帆良に転入しても、あなたは木乃香と距離を置く。
幼馴染みのあなただからこそ会って話がしたかった。
けど、あなたはそれを拒否した。
それがどれだけつらいことか、あなたにはわかる?」
「…」
「結局あなたは、自分のことしか考えていないじゃない」
私は、私は…
「なら、わ、私はどうしたら、ええの?」
「簡単よ。距離を縮めなさい」
「せ、せやけど」
「別に過去を話しなさいと言っているわけではないわ。
ただ、幼馴染みとしての距離に戻しなさいって言ってるのよ」
けど、私は今までひどい行動をしてきた。
それをお嬢様は許してくれるのだろうか?
「はぁ、仕方ないわね。
桜咲刹那」
「?」
「この後、私は技をだしてこの勝負を決めるつもりだけど、そのときその技を耐えることができたら、あなたは今まで通りの態度で構わないわ。
けど、耐えることができなかったら、私の言った通り元の関係に戻りなさい」
「なっ!!」
「あなたに決定権はないわ。
こんな無意味な争い、すぐに終わらせるべきだし、なによりあなたの考えを待っていたら朝になりそうだからね」
言い返せない…
まさにその通りだから反論することができない。
「本気でいくわよ。
あなたが受け止めればいいのだから、そんなに難しく考える必要はないわ」
簡単に言う。
今の私の体では、あまりにも万全とは言い難い。
その状態で、あの高畑先生に勝つ人だ。
とてもではないが、受け止めるのは難しいだろう。
けど、それでも諦めることはできない。
私は全力で受け止める!!
「覚悟はできたようね。
それじゃ、
本気でいくわ」
その瞬間、
とてつもない闘気が私に襲いかかった。
それは、まさに虎に睨まれているうさぎの如く。
私は体の震えを止めることができない。
けど、私は構えを崩すという愚かなことはしない。
私の行動は、誰にも縛られること無く自分で考えていく。
そのためにも、私は負けるわけにはいかない!
棚町さんの構えは居合い抜きの感じに腰を低くし、剣を抜けるようにして構えている。
恐らくその姿勢からして居合い抜きをするのだと思うが…
「我流…」
「十文字斬り!!」
それは、まさに全ての行動が神速といっても間違えではなかった。
一瞬にして私の懐にくる速さ、刀を横、縦と振るう速度、全てが異常なまでの速さだった。
私は、懐に来たときに反応することができて、刀を少し抜くことができたため、生身で受けるということにはならなかった。
しかし、そのあと、横払いと縦払いの刀の振るう速度が異常だった。
完全に同時攻撃とはいかないが、ほぼ遅れなく攻撃が来た。
これこそ、まさに十字斬りといってもいいぐらい、惚れ惚れする技だった。
この技を、私はなんとか受け止めることができた、のだが…
「なっ!!」
なんと、棚町さんは気を圧縮して技を出していたため、斬空閃のように斬撃をとばすような感じになったのだ。
斬撃の重さ、気の圧力に負け、私は受け止めながら吹っ飛ばされた。
このまま吹っ飛ばされるのかと思ったのだがそれはなかった。
障害物に当たったわけでもないのに、背中に衝撃が走った
「ぐはっ!!」
まるで壁に激突したかの如く、後ろには何もない場所で私の体が止まっていた。
そして衝撃が走った瞬間
今まで受け止めていた斬撃が爆発した。
「ああああああああ!!」
先程の衝撃とほぼ同時に爆発したため、二つからくる痛みに耐えきれず私は絶叫した。
そして、視界が暗くなっていくのを感じながら倒れた。
私は、私は…
ああ、体の節々がものすごく痛い…
無理にカッコつけようとして十文字斬りを試してみたけど、今の俺の体では一回が限度だな。
現に、無理して振った右腕が戦闘ができるほど動かすことができない。
けど、なんとか刹那を倒すことができた。
あんなこと言ってたけど、ぶっちゃけると早く元の関係に戻って欲しいと思っていたから、ちょうどいいやって思って、あんなことを言っていたんだけどね。
まぁ、別に困ることもないしいいんじゃね?
と自分で自己完結していたら、倒れた刹那を抱えて龍宮がこっちに来た。
「お疲れ」
「ええ、もう本当にいろいろな意味で疲れたわ」
「まぁ、刹那にはいい薬になっただろう。
私は刹那を連れて、このまま寮に戻る」
「私も家に帰るわ。夜も遅いし」
「ふふ、ではまた明日学校で会おう」
「ええ、おやすみ龍宮。
そっちの娘が起きたら伝えてくれるかしら?」
「なにをだい?」
「あなたの行動、楽しみにしているわと」
「わかった。そう伝えておこう」
「ありがとう。では、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
ああ、やっと今日の日程が終わった。
さて、家に帰って茶々丸特製の飯でも食いますかな?
ふぉっふぉっふぉ。
棚町君が龍宮君に付いて行かれるのを見て、少しその様子を見させてもらったのじゃが。
まさか刹那くんの問題を、少しとはいえ解決してくれるとはのう。
助かるわい。
これで、あの正直な刹那君は行動を起こさねばなるまい。
「しかしのう…まさか高畑君に勝つとはのう…」
正真正銘神様から授かったとはいえ、無傷で勝つとは…恐れ入るわい。
「まぁ、人手不足の状況では願ったり叶ったりじゃ」
独り言を呟いていたら
机の上にいきなり黄金色の手紙が現れた。
「これは、もしやあの神様の手紙かのう?」
とりあえず、儂はその手紙を見てみた。
「ふむふむ、これは…」
そして、この手紙こそ本当の始まり、そしてあの男の始まりの手紙であることを、儂は知る由も無かった…