猟犬烏の青春   作:面無し

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「でさ、私ここにいていいわけ?」

 

「いや~レイヴンちゃんの脅し付きとはいえ手助けしてもらっちゃったからねぇ」

 

「いや……まあ、あのまま帰っても敵を運んできたやつってことになるだろうし、ありがたいけど」

 

ヘルメット団員が対策委員会の教室で居心地悪そうに言ったのをホシノが納得させる。

変わらずもじもじしつつもヘルメット団員は頷いて、つい先ほど一緒に帰って来たセリカに目を向ける。

 

「そこのツインテールさ」

 

「なによ」

 

「怪我大丈夫か? 私が言えたことじゃないけど、対空砲食らっただろ?」

 

「言われるまでもないわ! この通りピンピンして……」

 

そう言った団員の言葉に強気に答えようとしたセリカが倒れかけるのを私が受け止める。

対空砲を食らった分のダメージは大きいらしい。

 

「対空砲もらって歩けてる方がおかしいはず。ゆっくり休んでもらおう」

 

「ん、私が保健室につれていく」

 

そう言って私からセリカを受け取ったシロコ…先輩が教室から出て行く。

少しみんなでセリカの出て行った扉を見つめて、しばらくしてアヤネが口を開いた。

 

「大変なことになるところでしたね。先生からお話を聞いたときはどうなるかと……」

 

「いやあ、たまたま変な音を聞いただけだし、確認に行ってくれたのはレイヴンだよ」

 

そう言って先生は私から確証のない話をしたという不自然な部分をごまかしてくれた。

ありがたいことだと思っていると、今度はノノミが私を見て言った

 

「そうですね、現場の確認に追跡と、レイヴンちゃんすごいです☆」

 

「そうかな。ありがとう」

 

そう言って答えた私にホシノが「今回のMVPは反応が冷静だねえ」なんて言い出す。

 

「おじさん聞いてたよ、シロコちゃんが『ん、あの敵集団を狙える?』って言ったら、

『外しはしない』って言って打ち抜いちゃうし、いやあしびれちゃったねぇ」

 

ホシノが微妙な声真似をしながら子芝居をして私をほめてくれる。

たまたま、彼の台詞に合う振りが来たから返しただけだったが、みんなの反応は良かったらしい。

 

「そうです。一発目の後みんなで戦ってる中への二発目の時も『巻き込まれるなよ』なんて」

 

「最後は敵の戦車に『これで決める』ですもんね。かっこよかったです☆」

 

若干の黄色い誉め言葉をもらって私は珍しく恥ずかしくなる。

戦友、ワームの時も思ったけれど、やっぱり君は格好いい。

 

「む、昔仲良くしてた人の物まねでちょうどいい振りがあったから」

 

「物まねでも恰好よかったって言われてんだから素直に受け取っときな」

 

そう言ってくれるヘルメット団員の言葉に頷いて私は照れ隠しに頭を掻くと、

またみんなが私の顔を見てニコニコしている。

 

「照れてるレイヴンもかわいいね」

 

そんな声が先生から聞こえて、顔に出ていたことを悟って私は俯いた。

その後、あまりから揶揄わないでと皆に言って、みんなの笑いが収まると、アヤネは報告がありますと切り出した。

 

「あの場で破壊した戦車ですが、キヴォトスでは使用禁止になっている違法機種と判明しました」

 

そう言ってアヤネは机に資料と回収した部品を出してくれる。

それを眺めて、ホシノがヘルメット団員に目を向けた。

 

「違法機種か~メットちゃんヘルメット団がなんでこんなもの持ってるの?」

 

「あん? 私は下っ端だから詳しく流れは知らないけど、バックにカイザーが付いたとかっていうので装備が充実したのはあったぞ」

 

ホシノだけでなく対策委員会のメンバーが全員が一瞬固まり、次には難しい顔をしていた。

 

「そっか、ありがとね。メットちゃん」

 

そうお礼をいうホシノは声は普段通りに聞こえたが、その顔は笑っていない。

 

「いや、私で応えられることならなんでも教えてやるけどよ、大丈夫か?」

 

「うん。もちろん。大丈夫だよ~」

 

ホシノは問いかけるヘルメット団員に軽く返事をするが顔は相変わらずで、

こうなるということはおそらくアビドスの借金関連なのだろうとは察しがついた。

どうしようかと私が悩んでいると先生から声がかかる。

 

「皆心当たりが何かあるのかもしれないけど、とりあえず夜から動いてるし、また一休みして考えよう」

 

その言葉に対策委員会のメンバーがいったん頷いて、今日はお開きにしようかという話になる。

 

「私は家に帰るよ。ヘルメット団には戻らないから攻撃してくんなよ」

 

そう言ってヘルメット団員は立ち上がる。

そして、私の方に顔を向けてお礼の話またするからと言って、モモトークだけ交換して教室を出て行った。

お礼……何を要求されるのかなと思いつつ先生を見る。

 

「先生、今回私は以前に先生に言われたことを守れたでしょうか」

 

そう聞くと、先生は私の頭をそっと撫でた。

 

「もちろん、頼ってくれてありがとう。レイヴン」

 

その言葉を聞いて、私は良かったと胸をなでおろす。

ウォルター、以前のルビコンでできなかった誰かを頼ったりということを、私はしっかりできているようです。

 

 

 

「レイヴンちゃんおまたせ~」

 

対策委員会の話の後、先生はセリカの見舞いに保健室に行き、他の皆も一旦自由行動ということになっていた。

私はその間にホシノを呼び出して、私の車椅子がある部屋で落ち合っていた。

 

「待ってないよ。さっきぶり」

 

椅子に座ったまま手をあげて、ホシノに隣の席を指し示すと素直に座って私の方を見てくる。

 

「それで、おじさんに話したいなんて、これは告白かなあ?」

 

そう言っていたずらっぽく私を見つめるホシノの目は

台詞と裏腹に私が話したい内容をあらかた察しているように見えた。

 

「セリカの誘拐について」

 

「……だよね。あのメットちゃんが撤収中だったことからしても、

レイヴンちゃんは襲撃からほぼ時間を置かずに現場に行けたことになる。事前に襲撃を察知して見つけに行ったとしか思えない」

 

どうやって知ったのと目で聞いてくるホシノにどう説明したものかと少し考えてから口を開く。

 

「理屈はわからないが、私の夢で知ったんだ。

夢の中でセリカが襲われる声とか、メット団の奴が捕らえるように指示してる声とか銃声がして、

だから、確認する様に動いて、現場を見つけることができた」

 

「夢で? 予知夢を見たってこと?」

 

ホシノは私の言ってることのイメージがつかないようで、私を見極めるようにまっすぐに見つめてくる。

私は私の中で一応考えていた理屈をホシノに話していく。

 

「未来予知ではなくて、現在進行形の情報を得たと思ってる。

つまり、私が寝ているときにセリカが襲われて、その様子をそのままリアルタイムで私は夢で見たと思ってる」

 

「……? それは未来予知とは違う理屈を考え付いたから話してくれたんだよね」

 

「ああ、私の車椅子を起動したときの音声を覚えてる?」

 

「ええっと『脳深部コーラルなんちゃらデバイス』だっけ」

 

「そうだ。そのコーラルに鍵があると思ってる」

 

あまり説明したくない以前の惑星の話、だが話さなければ話は進まない。

 

「コーラルは……自己増殖する物質で、燃料や情報伝達物質の役割ができる。

そして、おそらく空気中にある程度あるとそれを通じて遠隔で電子機器と通信が可能なんだ……と思う」

 

嘗てエアがハッキングを縦横無尽にできていたのはそういう理屈なのだろう。

コーラルが使用されたデータベースやある程度充満している空間でなら彼女のハッキングは驚異的だった。

衛星砲すら掌握してしまえるほどに。

 

「ということはセリカちゃん携帯と、レイヴンちゃんが繋がったって言いたいんだね」

 

「ああ、私も資料を見て特性を知っているだけ。空気中にあるっていうのも実際どこまで繋がるのか詳細は知らない」

 

エアのようなCパルス変異波形だったからできた芸当の可能性も十分にあり得る話だ。

私は今回その理屈に当てはまらないはずだから、実際どういう理屈なのかはよくわからない。

ホシノは私の話を聞いてしばらく思い出すように天井を眺めてからもう一度私を見た。

 

「私の知る限り。キヴォトスでコーラルは聞いたことないかな。別の名称だったとしても自己増殖可能な燃料っていうのを知らない」

 

私も同意見だった。このキヴォトスにコーラルはないはず。

私の脳にある分を除いてそうであってもらわなくてはキヴォトスを焼かなくてはいけなくなる。

だから、私もキヴォトスにコーラルはないだろうととホシノに同意する。

 

「キヴォトスにあるコーラルはあの車椅子の私の脳にある分だけのはずなんだ。

だから、なぜ繋がったのかの理屈が私もわかってない。でも事実として私はセリカの危機を感知で来た」

 

「だから、話してくれたんだね」

 

ホシノの声に私は頷く。

しばらく車椅子の私を眺めてからもう一度ホシノは口を開く。

 

「もし、今度同じことが起こったらすぐ私にも教えて。

何か条件があって発動するなら、次起きたのと今回起きたのを合わせて検証できるかもしれないし」

 

いっぱい頼ってねそう言ってホシノは私にウィンクをしてくれた。

それに頷いて、私はもう一つ話しておきたかったことを話そうとする。

 

「もう一つあるんだ」

 

「カイザーのことだね」

 

だが、ホシノはそれもわかっていたらしい。

 

「カイザーはアビドスが借金をしてる先なんだ。

それがアビドスを襲ってたヘルメット団のバックについてる。レイヴンちゃんはどう思う?」

 

そう問いかけられて、私は迷いなく答える。

 

「マッチポンプということだね」

 

その答えにホシノは頷いた。

 

「先生も気づいてると思うけれど、物的証拠は何もない」

 

現状追及する手段がなければ動けない。

 

「今は調べる先が出てこないし、動かないほうがいいと思う。

証拠を押さえられるタイミングがあった時にしっかり動けるようにね」

 

そう言ってホシノは困っちゃうよね~っといつものふにゃふにゃした調子に戻る。

 

「MVPのレイヴンちゃんには、これからも頼りにしてるよ~」

 

「また言うの……ちょっと恥ずかしい」

 

戦友の真似をした私のことをニヤニヤと笑いながらまた揶揄うホシノに私は目をそらす。

 

「かわいいなあレイヴンちゃんは~おじさんとデートとかしな~い?」

 

「柴関ラーメン、奢ってくれるならいいよ」

 

「しょうがないなあ~」

 

そんな話をしながら椅子を立ち上がる。

さっきから揶揄われたからだろうか彼が今日の私を見てたらといった妄想が頭をよぎる。

 

『流石だな戦友、君に真似してもらえるとは誇らしいよ』

 

私の顔を覗くホシノがまたニコニコしているのを感じて、

何かあったかと問いかけるが、ホシノは別にと答えてくれなかった。

 

「教えてホシノ」

 

「また今度ね~」

 

なんて言いつつ教室を出た。

 

 

****

 

 

アジトの私物を回収してトンズラしようと近づいたら爆発音がして、

遠くから眺めればつるんでだ連中が軒並みぶっ飛ばされている現場だったので私はぞっとしていた。

 

「おっかね~離れててよかった」

 

ヘルメット団を倒した連中を望遠鏡で眺める。

リーダーをしていた赤メットに襲撃者の内スナイパーライフルを持った奴が近づいていくのを見た。

 

「えっと『ようするに……』」

 

顔を隠していない襲撃者側が何かを言っているのを読んでいく。

読唇術の心得なんてないけれど、唇が大きくはっきり動いてくれたから私でもある程度読めた。

 

「『アビドス……ひきうける』かな」

 

アビドスを今度はあいつらが襲撃するのか。

これはレイヴンに連絡したほうがいいかななんて思いながら観察を続ける。

 

「『べんりや……なんちゃらえいと』……『なんでも屋』か、へえ」

 

屋号の情報もわかったところで私は眺めるのをやめる。

あんまり覗きすぎてバレるのは嫌だった。

 

「私物は今度だな」

 

場合によっちゃ今回ので全部だめになってる可能性もある。

レイヴンのお礼も考えないといけないしと考えて、もうちょっと考える。

 

「これ、便利屋について調べたらアビドスに恩を売れるか?」

 

売れる恩は売っといた方がいいかもなと思いながら私は現場から離れる。

うまくいけば、学籍やらなにやら上手くいくかもと思って私は気合を入れることにした。

 

 





※メットちゃんはちょいちょい出てきそうな予定
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