今回もよろしくお願いします!
『レイヴン、私の計画を手伝ってくれるのがお礼ってのはどうかな?』
早朝にかかって来た連絡を取ると、ヘルメット団員はそうお願いをしてきたのだった。
なんでも、アビドスを狙う相手がヘルメット団から便利屋とやらに変わったらしく、
その情報と撃退を成功させてアビドスの学籍が欲しいと言ってみたいらしかった。
「手伝う内容によるかな。私基本戦うしかできないし」
『戦える奴が欲しいんだよ。タイマンでもあんなのと私は戦えないからな』
そう答えるヘルメット団員にそんなことでいいならと私は快諾した。
『やりい、じゃあ計画を話すぞ』
そう言って彼女が話してくれた話は至極単純な話だった。
『じゃあ、私は計画通り動くからな』
そう言って切れた電話を一度眺めて私は久々の依頼になるのかなと思考した。
でも、この世界で傭兵として事業をしているわけではないから、少し違うのだろうか。
なんにせよ、久々の仕事と思って、頑張ってみようと私は思いなおす。
独立傭兵レイヴン、久々の仕事だ。
それにしてもと私は独り言をつぶやく。
「傭兵ってキヴォトスでもあるんだ」
キヴォトスでも傭兵をやってみるのもいいのだろうか。
ウォルターが再出発をホシノに言ったとはいえ、私はそれしか生き方を知らない。
「生き方を見つけるって難しいですね、ウォルター」
貴方の願ったであろう普通の生活と仕事ってどのようなものだったのでしょう。
「それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます。
本日は先生とレイヴンさんにもお越しいただいているので、いつもより真面目な議論ができると思うのですが…」
アヤネの言葉と共にアビドスでの定例会議が始まる。
以前のブリーフィングとは違う、真面目な会議とは初めての経験だ。
「では、今回の議題は『学校の負債をどう返済するか』についてです。
ご意見がある方は挙手をお願いします」
そうアヤネの言葉が出てすぐ、それを合図にしたようにセリカが真っ先に手をあげる。
「はい! はい!」
「はい、1年の黒見さん。お願いします」
アヤネの指名の声がかかるが、セリカはその声に少し微妙な顔をしてセリカを見る。
「名字で呼ぶのやめない? ぎこちないんだけど」
確かに、普段は皆名前で呼び合っているのに今回アヤネは名字で呼んでいる。
普段みんな名前で呼びあっていることもあってかすごく違和感を感じた。
「いいじゃーん、おカタ~い感じもで。先生とレイヴンちゃんって初めてのメンバーもいるし、」
けれど、ホシノとしてはこういうのもいいらしい。
「ですよね! 委員会っぽいので私は賛成で~す☆」
ノノミもこれはこれで有りらしい。そういうものなのかと私は前回のブリーフィングを思い出す。
これが改まってということは、総長の時のはある意味皆砕けていたと言えるのだろう。
「まあ、先輩方がそう言うなら」
一応、今回の改まった呼び方についてはセリカは納得してくれたようで、
引き下がっていたが、それとは別で発表したいと言葉を続ける。
「とにかく、我が校の財政状況は破産寸前!」
そう言ってセリカが言ったアビドスの具体的な月返済額は788万円、
以前に聞いたバイトの代金からすれば本当にとんでもない額だと改めて思う。
ただ、大変だとは思うがそれを返すためにセリカが言い出した返済方法は私が聞いても危ないとわかるものだった。
「ゲルマニウム麦飯石ブレスレット?」
私はセリカが受け取ったというチラシを見ながらそこに書いてある商品名を音読した。
「そう! つけてるだけで運気が上がって、三人に売れば……」
どう考えても怪しい話を続けようとしたセリカに私は言う。
「詐欺だと思う」
「セリカちゃん……それ、マルチ商法だから」
「儲かるわけない」
そう言って周りから突っ込みを受けた上、ノノミから「かわいいです☆」とまで言われ、
ホシノからは「世間知らずだから気を付けないと」とまで言われたセリカは肩を落とした。
「そんなあ……私のお昼抜いて貯めたお金だったのに……」
「セリカちゃん大丈夫ですよ。お昼、一緒に食べましょう? 私がご馳走しますから」
ノノミがそんな風にセリカを慰めるとセリカは涙目になりながら彼女に抱き着き、最後には買ってきたというブレスレット二つを机に置いて少ししょんぼりした様子で席に座っていた。
柴関でのバイトを頑張っている姿を知っているだけに気の毒だと思い、私は一応チラシの法人名を覚えながらもう一度セリカへ目を向ける。
「えっと、それでは黒見さんの意見はこの辺で……」
そう気を取り直すように司会を続けてくれるアヤネに意見が続く。
ホシノからはスクールバスジャック。
「全校生徒の人数が少ないっていうのが問題だと思うんだよねー」
そう言ってホシノは意見を続けたが、ルビコンの企業同士で人員の奪い合いなんて起こっていたらと考えれば、キヴォトスでそんなことをすればどうなるかの想像は容易だった。やるならそこではないだろう。
シロコ…先輩も賛成寄りで声をあげたが、アヤネが諫めて却下となる。
「やっぱそうだよねー」
なんてホシノは言っていたが、私と車椅子のことで真面目に話してくれている彼女を見ていると初めから却下前提のようにも見える。
こういう抜けた感じがかつての彼女のなりたい頼れる先輩という感じなのだろうか。
続いては、シロコ…先輩。
「銀行を襲うの」
彼女の案は金がないので金がある場所を襲うというシンプルな意見だった。
計画からターゲットまですでに準備済みであり、覆面まであって本当にいつでもいけるという感じだ。
「却下! 却下ー!!」
「そうです! 犯罪はいけません!」
でも、その意見は一年生の二人が止めていた。
当然の意見だと思う、襲ってしまえば追いかけられるのは必然だし、後のことを考えれば少し心もとない。
さっきのホシノといいバスや銀行ではなく、襲うならもっといいのがいる。
「シロコ…先輩、襲うならカイザーのトップを人質にするほうが早いと思う」
「ん、それは確かにそうかも…」
「レイヴン!?」
「レイヴンさん!?」
私の意見に一年生二人から驚きの声が上がるが、私は無視して続ける。
「『借りた金をなぜ返す必要がある』って言ってるやつもいたし、襲って借金をチャラにしてもらったうえで、そのまま会社を手に入れれば返さなくていい」
「そっか、そうすればアビドスの今後も安泰……」
そこまで話して、私はシロコ先輩と少しだけ通じあうものを感じて頷きあう。
トップにそれだけの価値があるかを確認しなければいけないが、それさえ確認出来れば話は早い、借金があるという事実さえ消えればアビドスは何とかできる。
幸いなことにここはキヴォトスで、ルビコンのように死人は出にくいし、
嘗ての私と違い失敗したとしても健康な肉体がある。
けれど…
「ダメ! ダメです!」
「レイヴンさんって実は結構過激……?」
そう言って今度は私も一年生二人から諫められる。
ダメと言われてしまえば仕方ないので、私はおとなしく両手をあげてやめると意思を伝える。
私とシロコ先輩が案をひっこめた次にはノノミが手をあげた。
「アイドルをしましょう! スクールアイドル!」
犯罪でなくクリーンなお金稼ぎとして提案されたそれは、私には初耳の言葉だった。
「ノノミ、アイドル……ってなに?」
聞いた私に、ノノミが教えてくれるには、歌って踊ってキラキラしている物らしい。
ステージに上がってそうすると、お金がもらえるのだとか。
踊ると聞いてイメージするをするが……私が思いつく人物は一人しか出てこなった。
「ノノミ、踊るのってこう……スロースロークイッククイックスローってやつ?」
私はいつかの変人を思い出しながら、彼の言っていたテンポを口ずさむ。
けれど、ノノミとしてはそれはイメージと違ったらしい。
「うーんすこし違いますね……」
こんな感じですよと言って、ノノミが見せてくれたアイドルとやらの動画は確かに私が言っていたテンポとは全く違うものだった。
ご友人、君のステップはきっと変人のステップってやつだったんだね。
そうしてノノミの意見は出たが「却下」とホシノが短く落としてしまう。
「キメポーズも考えてたのに……」
そうノノミは残念そうに言いながら、決めていたキャラ付けや、団体名まで教えてくれる。
セリカが突っ込みを入れ始めたあたりで、アヤネが困ったように声を出した。
「あのう…議論がなかなか進まないんですけど……」
そうして困った風なアヤネに向けて今度は私が手をあげる。
「私からも案がある」
「……レイヴンさんから?」
さっきの銀行の件でだろうか、少し視線が痛いが私は頷いて続きを話す。
「外部から依頼を受けて、解決報酬をもらう形の事業を立ち上げるのはどうかな?」
そう、嘗ての私のように。
幸いなことにちょうど今朝同じような業態で動いている便利屋という相手も知っている。
私はアヤネにさらに続ける。
「名前が売れるまでは先生もいるからシャーレに来る依頼をこなすのもいいと思う。ね、先生」
そこまで言って先生を見れば先生は親指を立てて笑顔を向けてくれる。
そうして、どうかな? とアヤネをもう一度見ると。
「レイヴンさん…誤解してごめんなさい」
アヤネがそう言って、私の手を取り、そしてそのままお礼をつづけた。
「ありがとうございます。まともな意見が出てくるなんて……」
そう言うアヤネのはふるふると震えていて、ここまでの会議を見る限り思っていたが、いつもこの調子とすれば、彼女はみんなをまとめるのに結構苦労をしているらしい。
そうして私の手を握るアヤネを見ていると、その後ろからホシノが顔を覗かせる。
「じゃあ、レイヴンちゃんの意見に皆賛成ってことでいい?」
その確認に皆は頷いて、定例会議はここで終了となったのだった。
うちのレイヴンですがそれで解決できるなら暴力を辞さないタイプです。
火ルートのレイヴンですしね、そういうものですね。