今回の話なんか冗長になってないですかね…大丈夫かな。
今回もよろしくお願いします!
『偶々だけれど、私たちの次にアビドスを狙ってるやつの情報を手に入れたんだ』
柴関ラーメンから戻った後、先生とレイヴンがそれぞれ『連邦生徒会に連絡することを思い出した』『お手洗いに行く』と言い訳をして話していたころ。
再生された
委員会の部屋に置かれていた記録媒体『アビドス廃校対策委員会へ』との題名と彼女の署名付きで置かれていたそれは、
怪しまれながらもあの時手助けしてくれたのだし聞くくらいはいいだろうという委員会メンバーの合意の元再生されたのだった。
『「便利屋68」依頼を受けて任務をこなすってなんでも屋で4人編成らしい。
アビドスと戦ってたとはいえカタカタヘルメット団をそいつらだけで倒してた。
生徒名簿から一応顔写真も手に入れたから見たかったら見てくれ』
その言葉に従って、アヤネがフォルダに保存された画像フォルダを開く、当然先ほどラーメン屋で談笑していた顔を対策委員会は見たのだった。
「この人たち……いい人だと思ったのに」
そう言いながらセリカは不満顔をしていた。
大将の厚意もあって出された特大のラーメン、ゲヘナから来てまでお仕事というのでバイトを私も頑張ろうと思っていたがゆえにの怒りが彼女の中にあった。
そのつぶやきを置いて、音声は続く。
『「情け無用」「お金をもらえればなんでもやる」がモットーらしい。私たちの後釜ということから考えれば依頼主はカイザーだろうな』
「ん、やっぱりカイザーが出てくる」
「そうですね。アビドスをそれだけ手に入れたいのでしょうか」
アヤネとシロコが聞こえた音声にそう反応する。
またしてもカイザー、ヘルメット団の次は便利屋とはどうしてそこまでとアヤネはまたいぶかしむ。
『まあ、ここまでが相手の話だ。次が本題』
「ここからが重要なんですね」
「そうみたいだね」
多分おじさんわかっちゃったけど、とホシノはそう思いながら椅子に深く座りなおす。
そして、この場にいない二人がなぜ外しているのかまであらかた察しがついて、少し不満を覚えていた。
(そんなことしなくても、レイヴンちゃんのお願いならおじさん断らないのに)
そう思いつつも、周りのメンバーを考えれば当然かとも思うので湧いてきた不満は心でつぶやくだけにしていた。
『こいつらが、襲撃に傭兵バイトを募集してるのを見つけた、実力者4人と傭兵十数人……やっかいだろ?』
だから、と音声は続ける。
『私に任せてくれないかな? 便利屋をアビドスに引き入れらえるかもって段取りをある程度考えてあるんだ』
そこで音声が一度途切れる。録音の向こう側で彼女が深呼吸する音が聞こえた。
『まず、私もこの募集に応じる。そうするとバイト間での連絡を回す必要があるからってその時限りの連絡先が作られるはずだ。
そこで今回一緒にくる傭兵のやつらにアビドス側にいいタイミングで寝返ってくれ雇いなおしをするんだ』
それは単純なプランだった。数の有利で相手が来るならそれを逆にできれば不利は相手になる。
『便利屋から傭兵に払われてる報酬は高すぎるって額じゃない。むしろ安すぎでさ私の方で用意した金で傭兵はなんとかできる』
ただ、問題の大本の便利屋についての話がない。
アビドスのメンバーがお互いの目を見あう、彼女は便利屋をどうやって引き込むのか。
『便利屋は三つプランを用意してる。一つ目は単純にお金、私の用意できた分と、シャーレの先生が手助けしてくれることになってる』
1つ目はこの時点では確定していないプラン、ホシノはそれに気づくも言わないし、ヘルメットの彼女は先生なら大丈夫といったレイヴンを信じてこの文言を話してした。
『次に、便利屋は社長がかなりこだわりが強いらしいんだ。格好良さとかロマンとかを求めるタイプらしい。
それで零細って部分もあるから、そこをつけばかなり有効になる』
2つ目はレイヴンが店で好都合だと思った部分。
当初はこだわりの情報だけで行こうとしてたところに補強の情報が入ってレイヴンは好都合に感じていた。
そして最後にと音声は続く。
『二つ目の交渉はレイヴンにお願いしてるんだ
それで……もしダメなら、社長をレイヴンが抑えて、雇いなおした傭兵で取り囲んで脅しをかける』
そこまで聞いてホシノは音声を止めさせた。
おそらくレイヴンはそれを受けたのだろうと彼女は考えていた。
だが、ウォルターから託された彼女だ。戦う場面はあれども、自分からそこに突っ込んでは欲しくないとも思う。
「皆、どう思う?」
皆にも聞いてみたくて彼女はそう周りの皆に聞いた。
「二つ目のプランまではいいと思う」
シロコがそう答えたのを聞いて周りの皆もそれに倣うように頷く。
だよねと返して、ホシノはアビドスの皆に話を続ける。
「メットちゃんさ、これもう始めてるとおじさん思うんだ」
「始めてるって…」
「うん、もう来ると思うよ便利屋さんたち」
受けないなら、どうするかを問いかけようと思った時、自動で再生された音声があった。
『多分、脅すってなると嫌がるだろうなって思ったんだ。
私と違って、あんたらって悪いことなんかしてこなかったいい奴だろうしさ。だからこれは止められたら再生されるようになってる』
そう言って流れ出した音声にアビドスのメンバーは耳を向ける。
『私は元ヘルメットだからさ、もう学籍もない。あんたらみたいに守る場所があるってうらやましいなってちょっと思ってる。
報酬の話で悪いけどさ、うまく行ったらアビドスの学籍が欲しいんだ。あんたらの仲間にってことじゃない、私はあんたらを襲った側だし』
それは元ヘルメット団員からの素直な気持ちだった。
『その……襲った側だけどさ、頑張ってるとは思ってたんだ。
何回も粘られるし、毎月ちゃんと借金の利子を支払ってるって聞いてたし』
私悪いことしてたからと彼女は続ける。
『今更かもしれないけど、この間手助けしたので団を抜けるってなって、
今回の便利屋の情報見つけて、私ちゃんとやり直せるチャンスかもって思ったんだ』
脅しは悪いことだ。わかってるよと音声の彼女は言った。
それでもと彼女は続ける。
『私はこのやり方しか知らない。でもやり直したい。このやり方以外のやり方を知りたい。
仲間じゃなくていいんだ、学籍を貰えたら私はアビドスの皆に迷惑かけたりしない、
かけたらすぐ退学で本当にいいんだ。一回でいい、一回でいいから、私にキヴォトスで頑張るチャンスをください』
もしよかったら、音声また再生してくれ。そう言って、音声は切れた。
対策委員会メンバーは顔を見合わせる。
「これは……最後まで聞こうか」
そのホシノの言葉にみんなが頷く。
再生された音声は具体的なタイミングの話がメインだった。
本当に、元ヘルメットである彼女のプランは脅しをかけるというその一点のみ。
最後に受けてくれるなら私に1コールだけかけてと言って音声は切れた。
「……おじさんは受けるよ」
ホシノは対策委員会メンバーにそう宣言した。
先輩なら脅しはダメだけどと目いっぱい注意したうえで、でも学籍はあげちゃうんだろうなと彼女はそう思ったから。
「皆はどうしたい?」
対策委員会へホシノは目を向ける。
彼女の思いまで聞いてしまった対策委員会は仲の良い委員会である。
そして、彼らは嘗ての生徒会長よろしく、優しい善性を持っていた。
「ん、私は賛成する」
「脅しにはできるだけならないようにレイヴンさんにお願いしましょう」
「お金なら私も出せますから! やっちゃいましょう!」
「仕方ないですよね! 今回だけ! 教えてくれたのは事実だし」
そして、ホシノはメモされていた電話番号へコールをかける。
事前に言っていた通り1コールだけで切った後、対策委員会へ目を向けて言った。
「じゃあ、一応戦う用意だけしちゃおうか」
「「「「おおー!」」」」
「それじゃあ行ってきます」
『はい、行ってらっしゃいレイヴンさん』
「いってらっしゃ~い」
「頑張ってください☆」
「ん、いい知らせを期待してる」
「気を付けるのよ!」
「行ってらっしゃい、レイヴン」
出発の挨拶にアビドスの皆と先生の声を受けてレイヴンはへイローを映す装置も切った状態で便利屋の前へ歩いて行った。
アビドスのメンバーはそれを不安げに見つつ、一応いつでも戦闘できるようにと銃を持ち直していた。
通信は繋がっている、何かあればいつでも助けに入ろうと彼らは思っていた。
「アル社長、少しお話がしたいです」
「あなた、レイヴンちゃんよね?」
「はい、先ほどぶりです」
レイヴンが便利屋と傭兵集団へ近づいていく。
便利屋たちは警戒するが、アルが片手をあげて攻撃をしないようにと合図を出しているため武器は構えていない。
「私たちが武器を持ってるんだから、わかってるでしょ。
今から敵対するのに、ヘイローもない子がそんな風に出てきちゃダメじゃない」
気を遣うようにレイヴンに投げかけつつ立ち上がり、アルはレイヴンの前に歩み出る。
ただし、冷静に冷静にと自分に言いつつそうレイヴンに返したアルはかなり内心テンパっていた。
(ななな! なんで出てきてるの!? ヘイローなかったら銃弾一発で死ぬって聞いたわよ!?)
仲良く話していた彼女たちと戦うのに抵抗ありつつも自身の目指す真のアウトローと会社のモットーを解かれ自分を奮い立たせてやってきたというのに……いざ戦おうと思った矢先、無防備に両手をあげてレイヴンが出てきていたのだ。
事前に決めていた合図に従って、傭兵や便利屋の仲間へストップをかけているが……
(思ってたシチュエーションと違うじゃない!!)
情け無用なのごめんなさいね! で戦うんだとイメージしていたのにと彼女は言い出したいが、そんなことは知らないレイヴンは言葉を続ける。
「ねえ、アル社長、その依頼は蹴ってアビドスに寝返ってくれませんか?
今なら、ハードボイルド? で、アウトロー? なカッコいい断り文句もつきますよ」
レイヴンは微笑みながらあるにそう告げる。
冷や汗を内心掻きつつも冷静にと言い聞かせてアルは返す。
「一応、聞いておこうかしら?」
「こう言うんです『偶然でも同じ釜を共にしてしまったの、そんな相手を撃つ趣味はないわ』って」
にこやかに提案してくれるレイヴンにアルは「カッコいい!」と一瞬ときめいていた。
それでも、受けた仕事は仕事と自分に活を入れる。
「でも、ごめんなさいね。一度受けた仕事はきっちりこなすのもハードボイルドなアウトローには必要なことだと思うの」
「そうですか、このまま手を出さないなら今回の依頼と同額、寝返ってくれるなら倍額出そうかと思っていたんです」
「ば、倍額!?」
一瞬本音が漏れたが、慌てて元の冷静な顔に戻りながらアルは続ける。
「アビドスは借金があるってラーメン屋さんで言ってたじゃない」
「ええ、ですのでアビドスではなく私の所属するシャーレから出すんです」
シャーレ? と聞き返すアルにレイヴンはユウカから教えてもらったシャーレの説明を思い出しながら言った。
「はい、シャーレは連邦生徒会所属の組織なので、多少大きい額でもいいですよ」
それを聞いて、アルは自分がとんでもないことを聞いたような気がして聞き返した。
「連邦生徒会所属?」
「はい、連邦生徒会はキヴォトスでの政府にあたるんでしたっけ」
(これ……まずいんじゃない?)
アルは薄々そう感じ取っていた。すでにそのテンパった内面は表に出だしている。
そんな彼女にレイヴンは続ける。
「政府にたてつくというのもアウトローですが、今の状況からすると……
借金に苦しみながらも頑張っている学校、企業にやとわれたやつが乗り込んできたって方が重要でしょうか。
借金に苦しむ学校を襲うのって恰好良いんですか?」
(た、確かにーっ!!)
アルはもう白目をむいて叫びかけていた。
さらにレイヴンの追撃が入る。
「ラーメン美味しく食べたし、楽しくお話しした社長とは戦いたくないです」
にこやかな表情から一変、寂しそうな顔をしながら見つめるレイヴンにアルの善性はボコボコだった。
「う……くっ」
これは先生との言いつけ通り戦闘せずに押せるかとレイヴンは少し考えていた。
けれど、アルの背後から声がかかる。
「レイヴン、社長への声掛けはそこまで」
「カヨコ課長、でしたね」
そのレイヴンの言葉にカヨコは頷く。
「今回のクライアントはかなりの高額の報酬を提示してる。
規模が大きい相手とみて間違いない……そんなところからの依頼を蹴って今度は私たちが狙われる可能性は踏めない」
カヨコのその言葉に同調する様に、灰色の髪を揺らしながらムツキも同意した。
「そうそう! 傭兵もいて数の有利もある。この状態で寝返ってって言うのは難しいんじゃないかな?」
その言葉を聞いてアルが少し勢いを取り戻す。
「そ、そうね。私たちが有利であることに変わりはないわ。私には社員を守る義務もある。
カヨコの言った通りクライアントから狙われて社員を危険に晒すなんてできないわ」
その言葉を聞いて、レイヴンは少し考えてからまた口を開く。
「私の実績として、ここにいる全員の三倍程度の部隊と単独で戦って勝利しています。
この人数差で戦っても私一人で勝つ自信があります。それでも、やりますか?」
レイヴンの目はまっすぐアルを見つめている。
アルは若干気圧されながらも頷いた。
「私の答えは変わらないわ。一度受けた仕事はきっちりこなす。それが、アウトローよ」
「そうですか……残念です。本当に」
眉を下げて悲しそうな表情をレイヴンが一度俯いてため息を一つ吐く。
彼女が好都合だと思っていたラーメン屋で聞いた話と自分の経験でできそうな説得はここまでだった。
もう一度上げた彼女の顔は何も映していない無表情だった。
「へ?」
ラーメン屋での控えめな微笑みや話口から、柔らかい人柄の印象を持っていたアルがその無表情に一瞬面食らって間の抜けた声を出す。
その一瞬の間に彼女の視界は裏返っていた。
「動くな」
その言葉と共にアルの目の前にはレイヴンがコートに仕込んでいたハンドガンの銃口があった。
そして、カヨコたちの強みだった傭兵たちの銃口はカヨコたち自身に向いていた。
「これは……」
カヨコの言葉にレイヴンはアルへ目を向けたまま答えた。
「形勢逆転だ。痛い目を見たくなければ私たちアビドスの味方になれ」
レイヴンの声が響く、一瞬固まる全員の中、一人だけぶつぶつと喋る人物がいた。
「アル様を脅しましたね、アル様に裏切りをさせようとさせて、アル様に銃を向けて!
許さない許さない許さない許さない!!!!」
ハルカの怒声がレイヴンの耳に届く。
その恨み節に目を向けないまま、レイヴンは銃をアルの顔から少しだけ離して撃った。
アルの真横を打ち抜いた銃弾の音にハルカの声が止む。
レイヴンは目を向けずに言った。
「ハルカさん、気持ちはわかりますがお静かに。大事な社長の顔が傷つきますよ」
さて、とレイヴンは続けた。
「引き受けてください社長、今のままであなた方が勝てる見込みがないのはわかっているでしょう。
顔に傷を作って、仲間に怪我をさせて、仕事は失敗して、それで帰るのがハードボイルドなアウトローですか?
社員を守るのが義務なのでしょう?」
レイヴンは彼女とラーメン屋で話していて思っていた。
彼女はアウトローというが善性が絶対に捨てられない人だと。
嘗ての主のように彼女はたぶん非情になり切れない。
だから、
「わかったわ……話を受ける」
だから、ここまですれば必ず受けてくれるとレイヴンは踏んでいた。
「約束ですよ?」
レイヴンはアルへ確認する。頷いたのを確認してから、便利屋のメンバーへ目を向ける。
「一旦、銃を置いてください」
銃が置かれたのを確認してから、やっとアルの顔から銃を放して、彼女は自分の後ろのアビドスのメンバーへ手を振った。
振り返された手と共に、皆からの通信が入る。
『いや~受けてくれてよかった』
『ひやひやしましたね』
『お疲れ様!』
そんな風にねぎらってくれる皆へお礼を言ってから、彼女はまたアルへと目を向けた。
「社長」
「どうしたの?」
いまだに自分の上に乗った少女の顔をアルは見つめた。
レイヴンの表情には微笑みが浮かんでいる。
アルはラーメン屋で見たものとは違うそれに今回こそが彼女の本物の表情なのだと思った。
「あなたを撃たないで済んでよかった。親しくなった人を何人も撃って来たので」
その顔は安堵の表情にも見えて。アルは答える。
「そうね。二度と今日みたいに向けられない様にお願いしたいわ」
※アルちゃんに非情さを足したらウォルターになるけれど、
非情になったらアルちゃんじゃねえなというのが個人的なイメージです。