猟犬烏の青春   作:面無し

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一日二回行動です。
よろしくお願いいたします。


2-17 発射前

レイヴン到着の十数分前──

 

 

「レイヴン、あれはなんだ?」

 

私が指さしたそれを見て、レイヴンはいいものを見つけたと私に言った。

 

「あれはカーゴだね。私の世界で荷運び用で使用されてた」

 

もしあれがあるならとレイヴンは通路の先を見据えながら続ける。

 

「カーゴランチャーっていうあれを発射する装置があるはず。それが使えたらマーケットの方へ皆の増援に行ける」

 

声は極めて冷静に、無表情のままレイヴンはそう言うが、

私と便利屋のカヨコがレイヴンが言ったことを一瞬信じられないというようにオウム返しをした。

 

「あれを?」

 

「発射する?」

 

「そう。発射する。前に使った時はあれに乗って海を越えるのに使った。

サイズダウンしててもあれなら砂漠を超えてマーケットまで飛距離を出すのは余裕なはず」

 

コンテナを発射してそれに乗って海を越えるという話のイメージが出来ずに私は一瞬困惑するが、

話の通りならの通りなら言ってた通り、増援に行けるはずだ。

 

「それに増援は全員で行かなくてもいいから、残った人で爆薬なんかを詰めたカーゴを残りの施設に撃って地下もろとも吹き飛ばせばいい」

 

ついでで言うには物騒だと感じる案も出るが正直通信越しで聞くマーケット組の状態は急いだほうが良いとも感じるし、

そろそろレイヴンの物騒さにも慣れてきた。それで解決できるならと頷きあって施設を進む。

 

レイヴンは頭の赤い雷の輪が遠めでもわかる程度には何度か明滅すれば、レイヴンはこっちだと進む道を教えてくれる。

何かあるのだとは思うが戦闘しながら聞くには余裕がない、今回の一件が終わった後にみんなで集まった時に話題にしようと決めて施設を進む。

 

そして──

 

「ここだ」

 

レイヴンが大きな鉄の扉の前で止まるが、どう考えたってしまっているように見える。

 

「閉まってるぞ」

 

そう私が言えばレイヴンは少し黙ってから大丈夫と一言言ったかと思うと扉に目を向ける。

レイヴンのヘイローが明滅したかと思えば、閉まっていたはずの扉が開いていく。

これはさすがに聞かざるを得なかった。

 

「ちょっとまて、どうやって開けた!?」

 

どう考えたってこの扉は電子ロックだった。

それがヘイローの明滅によって開錠。

ハッキングか何かをしたのは明らかだ。

けれど、レイヴンは無表情のまま首をひねる。

 

「どうやって……こう……開くって思ったから」

 

説明になっていない説明に私はため息を吐く。

だが、詳しく問答ができる時間もない。

マーケット組と合流して、校舎に戻ってしっかり聞かせてもらおう。

 

「今はいい、わかった。行くぞ」

 

そう言いながら手扉の中に入れば、一際広い格納庫だった。

頭上には円形のレールが数本とその円の中心から外側に向けて太めの射出口であろうレールが伸びている。

円の中心には飛ばすカーゴを射出用のレールへ乗せるためのエレベータがあって、一台すでにカーゴが乗せられていた。

 

「デカいな」

 

純粋な感想を吐き出す。物資輸送用でここまで大きい建造物はキヴォトスでもあまり見ないだろう。

私の感想に便利屋の社長が頷いてくれる。

 

「本当ね、これで助けに行くのよね? どれに乗るのかしら?」

 

そう言われて私もあたりを見渡す。

有人で乗らるようなものはないように見えるが……

 

「あれにそのまま乗るよ」

 

そう言ってレイヴンが指さしたのはすでに乗せられていたカーゴだった。

 

「「は?」」

 

私と社長の声が重なる。

便利屋のムツキは今度は面白そうにクスクス笑いながらレイヴンに声をかける。

 

「本気で言ってるのレイヴンちゃん? ずいぶんスリルが出そうだけど」

 

「うん、1回やってるし」

 

 

社長とカヨコに目を向けると目が合う、思っていることは一緒だろう。

 

 

((1回やったんだ……))

(1回やったのね……)

 

 

「この施設も前のに比べて驚くくらい小さいし」

 

 

((小さいんだ……))

(小さいのね……)

 

 

「射出力も弱そうだし今回は奇襲をする関係上乗らずに外側で掴まる予定」

 

 

三人で頷く、レイヴンには十分な安全策をとって貰うのが必須条件になった。

 

残りのハルカはと思えば……すでに格納庫の探索に入っていて、なにやら見つけたであろう紙束を持って走って来ていた。

 

「ア、アル様、あっちの機械のあたりにこの資料を見つけました……」

 

「ありがとうハルカ、ちょっと見てみるわね……」

 

そう言って社長がハルカの持ってきた資料に目を向ける。

ムツキとカヨコも気になるようで横からそれを見に入っていた。

 

私も手持無沙汰なりに先ほどハルカが指していた機械へと足を向けてみれば件のカーゴランチャーの操作盤らしかった。

レイヴンの戦場の技術というからどんな複雑な操作盤かと思ったが、パッと見る限りはカタパルトと同じようなものらしい。

これなら……私でも操作できそうだ。

 

「レイヴンは……」

 

一応声をかけようと目を向ければ、アイツはすでにカーゴの上に乗ってハルカからなにやら紐を受け取っていた。

目を細めてみてみれば……

 

「『これで』……『からだ』『むすぶ』……なるほど」

 

ハルカの方でもレイヴンには気を使っていたらしい。

レイヴンと地下で何か話してからか目線も柔らかくなったように感じるし、少し安心する。

私の作戦でレイヴンが便利屋に睨まれているのは少し罪悪感があったからだ。

 

そうして、ほっとしている私に今度は社長が手を振りながら近づいてくる。

 

「どうした?」

 

私の問いかけに社長がハルカから手渡された束をいくつかに分けながら私に渡す。

 

「これが、この装置の操作方法資料、こっちが今回の格納庫にあったものの技術資料ね、

こっちは……そのほかの業務管理用の書類で、こっちが…」

 

そう言いながら渡してくれる資料に頷きながら思う。

マジでハードボイルドなアウトローを目指すにしてはまっすぐで優しく真面目な奴だなと。

メガネが非情に似合いそうである。

 

「これで大体分けられてるかしら」

 

「ああ、問題ないだろうな。技術資料は今見ておいて、アビドスにも持って帰ろう。

操作方法は、この資料もあれば私が動かせるだろうし、移送は本当に問題ないな」

 

それじゃあ、と便利屋と頷きあう。

作戦決行だ。

 

 

 

 

 

「武器は持ってるわね?」

 

「うん、ちゃんとしまいました」

 

「通信用のインカムは?」

 

「しっかりつけれてます」

 

確認事項を便利屋メンバーと一緒にレイヴンへ伝えていく。

いくつか確認し終えたところで、ハルカが手をあげた。

 

「す、すいません、全員で話せるタイミングでと思うとここだったので……その」

 

おずおずと差し出された手には見慣れない板のような装置と記憶媒体。

レイヴンが息をのむのが聞こえた。

 

「ハ、ハルカさん、それをどこで?」

 

「最初の施設でエアさんの前に……これと」

 

そう言って見せられたのは黒地に白い線の入ったレイヴンへと書かれたカード。

納得したようにレイヴンは頷く。

 

「わかるのか?」

 

「はい、このカードの差出人は……アビドスと一緒の方が良いでしょう。記憶媒体も。けれど、こちらは……」

 

そう言ってレイヴンは板のような装置を手に取る。

 

「これは持っていきます。こいつは私の世界に在った武器です。

左手に装備して、相手を切断する光の刃を形成します。でも、ただ、これは生身で使う用ではないはずなんですよね」

 

そう言ってレイヴンが左手に着けた装備を見る。

少し離れてと言われたので離れてぶんぶんとレイヴンが腕を振るのを見てみるが、言った通りの刃が形成される様子はない。

サイズ的には今の彼女にぴったりなのだが。何か条件でもあるのだろうか。

そう思う私たちに向けてレイヴンは何も出ない左手をもう一度見つめてから私たちへ再度目を向ける。

 

「マーケットへ急ぎましょう」

 

そう言った声はいつも通り冷静だが少し残念そうに聞こえた。

 

 

 

 

 

私は操作盤へ移動してインカムをつける。

 

 

「通信確認」

 

『良好』

 

よし、じゃあ始めるぞと言って、操作盤を操作する。

閉まっていた天井が開いて、カーゴランチャーごと地面へせりあがっていく。

周囲に敵がいないことを確認しつつ、レイヴンへと手をあげる。

 

「紐は?」

 

『ちゃんと結んだ』

 

「よし」

 

完全に床がせりあがったのを確認してから周囲をもう一度確認する。敵影はない。

 

「よし、エレベーターあげるぞ」

 

『了解』

 

エレベーターのスイッチを押せば、レイヴンの乗ったカーゴがせりあがっていく。

便利屋の社長がレイヴンへ向けて見送りの手を振っているのが見えた。

 

「行ってらっしゃいレイヴン! あっちを頼んだわよ!」

 

『うん、頼まれた。皆を無事に帰してくるよ』

 

インカムなしでもここまで届く通りの良い声の頼みに、いつもより少し元気に発されたレイヴンの声が聞こえる。

そして、その返答と一緒に彼女の光輪と頭に変化が出るのを私と便利屋は見た。

 

いつか見た犬耳と、光輪、そして……燃える惑星。

 

条件があるのだろうと今は考える。

だが、詳しく考えるのは後にしよう、さっき言ったっとおりまずは無事に皆を帰すことだ。

 

「発射準備完了」

 

『いつでもいける』

 

それにこたえて私はスイッチを押す。

レール上のカーゴへ射出用の装置がカーゴへ接続される音が聞こえる。

私の方へ走ってきた便利屋が今はどうなのかと聞きたそうに私の方を見る。

私は大丈夫と親指を立てて返事をして、レイヴンへ告げる。

 

「問題ないね、発射する」

 

『うん、行ってきます』

 

その言葉と共に、射出機についたブースターの音と、電磁加速器の駆動する音が聞こえて、

一瞬のうちに超加速したカーゴはマーケット方面へと射出されていく。まるで流星か何かのように。

どう考えたって最悪の乗り心地だろうに、二度も経験するとは……私なら一回だってごめんだ。

 

「うまく着地できるように幸運を祈るよ」

 

『ありがとう』

 

そう言って彼方へ消えていくカーゴを私は見送る。

レイヴンからのマイクを切り忘れたのであろうぼそっとした追加の返答がする。

 

『意外と最高の気分だよ』

 

ついでに聞こえた別の誰かの名前も私は聞かなかったことにした。




アルちゃんがアルちゃんが!便利屋が!
探索とかになると超仕事できる団体になっちゃう!!

スピンオフ漫画とか見る限り基本は仕事人として依頼を真面目にこなそうとしてくれるから、
見栄を張る場面がないとマジで仕事がひたすらできる完璧な社長になっちゃう気がしてます。

爆発落ちはまた今度ですかね。
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