猟犬烏の青春   作:面無し

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2-19 会議

 

 

「マーケットではお手数をおかけしました」

 

黒服は正面に座る大柄のロボットに声をかけた。

彼らの間にはつい昨日撮られた黒鉄の戦車を破壊する烏の映像が流れていた。

 

「構わん、出た損害の大半はそちらに持ってもらう契約だ。

こちらとしてもジャガーノートの実戦闘データをとれたのは大きい」

 

「そうですか、渡した技術が有効活用されたようで何よりです」

 

だが、とロボットの男は少し語気を荒げる。

 

「砂漠の件は別だ。なぜ奴らが砂漠施設の位置を特定している?

そしてすべてが破壊されたうえで、マーケットについている、見たこともない兵器も手に入れてだ。

元の計画では奴はアビドスの連中とマーケットに来るはずではなかったのか」

 

「落ち着いてください、契約時に話した計画に何の手段で彼女がマーケットに至るかは入っていなかったはずです」

 

冷静に黒服は自分を睨みつけるロボットに対して返した。

ロボットはガタリと椅子を鳴らして立ち上がるが、言い返せなかったか再度椅子へ乱暴に座り、舌を打った。

黒服はロボットに向けて話を続ける。

 

「最初の計画を話した際にお伝えした通りです。

彼女と敵対するなら全ての手札は未然に消えるかもしれないと覚悟することです。

我々は資本という巨大な力を持っていますが、それを覆すに足る力が彼女にはあるのですから」

 

ロボットは黒服の言葉をわかっているとでも言うように答えず、己の話したかった要件を口に出す。

 

「元の計画はこのまま進める。兵器の再生産もな」

 

「ええ、それで構いません。我々も可能な協力は惜しみません」

 

「ならば兵器の詳細な生産方法を教えてほしいものだな」

 

「クックック、それができればよいですが、あれ自体は私が持っていた知識ではありません。

別の契約の際に譲り受けたものですから、あれ以上の知識を今の私は持ちえません、これも最初にお伝えした通りです」

 

貴方もわかっているでしょうと言いたげな黒服の声にロボットは思い通りのいかなさにいら立ちを改めて覚えるが。

話しても無駄なのだろうと話題を変える。

 

「それで、あれはなんだ?」

 

「彼女ですか?」

 

黒服は映像に目を向けて、話し始める。

 

「彼女は破壊の力です」

 

「以前話していた、生徒もつ神秘というやつか」

 

ロボットの言葉に黒服は首を横に振る。

 

「いいえ、彼女個人は恐怖そのものです。彼女は名を与えられ、我々で言えば神秘となった側なのです。

生徒の体裁をとっているのは彼女は名を何かに付けられる以前から人の要素を持っていたからにすぎません」

 

黒服はその研究者気質によって声の熱がこもっていく。

 

「通常、キヴォトスにおいて生徒の人間性は後から付与されるものです。

しかし、彼女においては発生が逆、すでに人間性のある恐怖に後から理解できるものとして名を与え神秘とした。

キヴォトスにおいて彼女はその後から得た名とキヴォトス全体にある学園のテクスチャ、

そして世界線を渡る過程で三つの要素に分かれ、その一つとしてあの新しい体を得ました。

彼女はキヴォトスにおいて極めて例外的な存在なのです」

 

黒服は映像中の彼女のヘイローに目を向ける。

 

「あのヘイローや耳は彼女の神秘の表出ですが、

彼女にとって神秘とは己を出力した際、周りが理解しやすいように自分の外見を整えてくれるものにすぎません。

彼女をがそれを理解し、意識して使用しているかはまた別の話になりますが」

 

聞きたかった答えではなかったのだろう。ロボットはそうかとだけ短く言って席を立つ。

去ろうとするその背中に黒服は忠告した。

 

「気を付けることです。彼女と敵対するということは自ら死に飛びこむに等しい。彼女の力は計り知れませんから……」

 

「施設の開錠も奴の力とかいうやつか?」

 

「……いいえ、それは別の現象です。気になるならお調べしますよ?」

 

ロボットはいや、いいとだけ返答して帰っていく。話をすることはもうないというように。

出て行った扉を見つめながら黒服は言葉を口に出す。

 

「あなたですか?」

 

その問いかけに、短く声が答えた。

 

『はい』

 

それ以上問いかけても答える気はないのだろうと黒服は考えて、

もう一度映像に目を向ける。犬耳を生やした少女は黒鉄の戦車を全くの無傷で破壊していた。

黒服はやはりと確信する。

 

「あの程度で済ませてよかったというべきでしょう、いくら戦力を出しても、彼女は止められなかった。

計画はすでに先生の出現によって大きく外れている、彼女もいることを考えれば計画の失敗は確定事項でしょう。

残念ですが、既に計画は損害をいかに削るかという段階に入っている……」

 

先ほどの忠告を彼が聞けばよいですが、と黒服は暗闇に呟いた。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

アビドスにて──

 

マーケットでの戦闘や、砂漠の地下施設破壊から一夜明け、

私は朝から連邦生徒会へ電話をかける先生を見ていた。

 

「本当ごめんね。リンちゃ……リン、彼女にはよく言っておくから……

それにほら、クロノスとかに報道されたりはしてないし、まだ噂程度って、

あ……はい……そう言うものではない……はい、その通りです。ごめんなさい」

 

ペコペコと電話越しに頭を下げる先生を見て私は昨日のマーケットでの戦闘がダメだったのだろうなと思い出す。

傭兵時代なら名は売れたほうが良いが……現在は傭兵家業は先日のヘルメットの一件以外ほぼ休業状態だ。

顔も隠さず、連邦生徒会の制服を着て、派手にやり合ったのはさぞかしまずかったのだろう。

 

言い訳はしたい、ジャガーノートにみんなが襲われたのだからと。

けれど……今回の施設攻略からマーケットまでを振り返れば、自分がやらかしまくっているような気がしないでもなかった。

エアのことはハルカさんに喋って、ウォルターの話も名前を出さないようにしたとはいえ便利屋やヘルメットに話したし。

嘗ての戦場の兵器とかも話してしまったし……兵器についてはこの世界に来ているため説明のために仕方なかったと言いたいが。

 

ウォルター……隠し事をしたり頭を使うって難しいのですね。

 

そんなことを思っていると、携帯を切った先生が私に向かってくる。

 

「レイヴン、話はつけてきたよ」

 

「ありがとうございます。それで、私の処遇は?」

 

「一応……罰みたいのは無しかな。

ただ、今回みたいなことがあるなら今の連邦生徒会の制服は違うのにしてくれって言われちゃった。

あとは、噂程度だけれど君の話が流れてる。犬耳の連邦生徒会制服を着た女の子が銀行強盗を庇ってマーケットで巨大戦車相手に大立ち回りって」

 

赤いヘイローに犬耳、自分に自覚はなかったが本当にそんなものが生えていたのかと思う。

噂は……普段の自分と合わない情報とはいえ、確かに連邦生徒会の制服はもうまずいだろう……コートは格好良くて好きだったのだが。

私は先生へと頭を下げる。

 

「お手数をおかけしました。先生」

 

「いや、いいんだよ。でも、噂はまずいかもしれない。

今は君がその大立ち回りの人物だって割れてないからいいけれど、今後もあの耳やヘイローが出てくるなら時間の問題だろうし」

 

「そうですね……」

 

いっそこの世界でも独立傭兵というのも手だろうか。

私のできるお金を稼ぐ手段が本当に乏しいというのもある。

けれど、ウォルターを考えれば私が戦いに生きることを彼は望まないだろう。

 

便利屋にお願いして戦闘の以外の依頼をこなす技術を教えてもらうのが無難だろうか。

けれど、その場合は私に技術面での知識がないに等しいのが辛い。

 

正直、キヴォトスでの生活基盤を作ってもらった先生にあまり迷惑はかけたくないというのもある。

 

「レイヴン」

 

そう考えこむ私に先生から声がかかった。

 

「シャーレにいてくれて、いいからね」

 

優しい人だなと思う。私が迷惑かと思って出て行くとか言い出すだろうと思ったのだろう。

皆、世話を焼いてくれて本当にありがたい……ルビコンでも殺伐とした世界ではあったが私に関わってくれる人は優しい人が多かったように思う。

ここはルビコンではないし、今度は優しさを向けてくれているなら、大事にしたい。私は先生に頷く。

 

「ありがとうございます、出て行こうとは考えていません。

でも、身の振り方は考えたほうが良いでしょうか、銀行強盗の幇助をしたとなれば私のことは広く知られてしまいます」

 

服を変えても耳があれば気づかれるかもしれない。私も顔を隠していなかったしそちらでもバレるという可能性もある。

やはり……傭兵が一番でただ雇われたとかにするのが無難だろうか。

ううん、と悩む私の頭に手が置かれる。目を向ければ先生が微笑んでいた。

 

「あまり気にせず、レイヴンの好きに過ごすようにしてね。

この間も私たちを助けるためにしてくれたことだし、責任は私がとるからね」

 

「ありがとうございます」

 

でも、傭兵でもこの人はある程度許してくれそうな気がする。

いい解決策はすぐ浮かばなかったが……便利屋稼業を一つ候補にしておこう。

キヴォトスは戦闘自体は多いし、戦いをメインじゃなければウォルターも許してくれたり……してほしいと願った。

 

 

 

 

 

 

先生との会話を終えて、昨日の報告会が始まってのことだった。

 

「最初に、皆さん昨日はありがとうございました。

カイザーがヘルメット団の幇助をしていた証拠を押さえることができました」

 

ですが、とアヤネは続ける。

 

「そんなことはいいんです」

 

その言葉と共にアヤネは昨日砂漠からとって来た資料を出した。

 

「レイヴンさんの光の剣、砂漠にあった地下施設の兵器たち、マーケットでの巨大戦車、校庭のカタフラクト……

全てこの資料に乗っている物であり、私の知る限りキヴォトスでここまでの技術は存在しません、便利屋の皆さんから聞きました。

それに、マーケットで助けてくれた際に着いていたヘイローに犬耳についても、メットさんからセリカちゃん救出の際にも生えていたとお聞きしました。

犬耳については分かりませんが、レイヴンさん……ここにある兵器について全てご存知ですよね?」

 

皆の視線が私に向けられる。思わず後ずさりするが、その私の背中は先生にあたる。

 

「私にも教えてほしいな」

 

振り返った私に先生は笑顔でそう言って、私は観念する様に手をあげた。

 

「人間関係以外なら」

 

 

 

 

「この資料にあるのは私たちの世界に在る兵器」

 

そう言いながら私は話し始める。

以前恒星間航行可能な世界であること、自分の居た戦場は通常の歩兵なんかいなくて、

MTがほぼそれの役割であること、ジャガーノートや今校庭に停めてるカタフラクトはそこの兵器だとか、

けれど、調べた限りMTは無人兵器になっているし全て著しいダウンサイズと装甲なんかの性能面もダウンされていることを共有する。

 

「レイヴンちゃんの剣は?」

 

そう聞かれて私は左手から取り外していたパルスブレードを取り出す。

 

「これはパルスブレード、私の世界での武装の一つ。これだけは……サイズダウンしただけ」

 

どういうわけか知らないが、これだけは小さくなっただけで元と同じ威力を保っている。

そうでなければジャガーノートにはもっと叩き込まないといけなかったはずだ。

 

「話せるのはこれくらい……聞きたいことはある?」

 

私の問い返しに、皆は首を横に振った。

納得してくれたようで何よりと思ったが、それとは別にということでアヤネが手を挙げた。

 

「カイザーは砂漠で兵器開発をしたかったということでしょうか?

レイヴンさんの世界の兵器情報が入ったので今までの研究に加えてMT等をあの場所でとか……」

 

しかし、その発言はヘルメットが否定した。

 

「それは無いだろうな。カイザーは大企業だ。

兵器開発の土地が必要なだけならアビドスでなくていいし、そもそも私らヘルメットにアビドスを襲わせない。

施設は土地が余ったから使っただけだと思う」

 

それじゃあとカヨコが続ける。

 

「じゃあ土地特有のものが原因ってことだろうけど……アビドスにすごく貴重なものがあるとか?」

 

そこまで聞いて、私は以前ホシノから聞いた希少鉱物の話を思い出す。

ホシノに目を向ければホシノも私の方を見た。

わたしの考えてることが伝わったかは怪しいが、ホシノも話をしてくれる。

 

「砂漠に希少鉱物があるって話があったりはしたんだけど……不確かだからそれでカイザーが来るとはおじさん思えないんだよね」

 

確かにそうだと思う。

コーラルの際も本物のレイヴンがコーラルの情報をリークしそれの確度が高いから企業は来たのだ。

不確かな情報だけで企業が動くことはない……ならなぜ?

 

皆で考えて見るが結論は出ず、暫くした所で、アヤネがまた手を挙げた。

 

「土地については私に任せてくれませんか?

以前の資料を探せば、何か重要なものがあるとかの記録があるかもしれませんし」

 

その言葉に皆は頷いて、この話題は終わりとなる……が、

その話が終わったと思った直後に、また皆からの目が一斉に私に向いた。

 

「えっ」

 

私は思わず声を上げる。

その怯んだ私にみんなが群がる。

 

「レイヴンちゃん、頭触っていい?」

「ん、耳、おそろいだった。不思議」

「可愛い耳でしたよね☆」

「ど、どうやって生やしたんですか?」

「そうよ、ヘイローまで出しちゃってどうしたの!?」

「急にニョキって出てきたしびっくりしたよね~」

「今は何も無いみたいだけど、どういう原理?」

「前にも生えたって聞いたわよ! わ、私も1回触っていいかしら?」

「あ、あの、生えてる時って耳が良くなったりってするんですか?」

「やっぱ私の見た通りだった! 幻覚じゃなかったんだ」

 

 

群がる皆、撫でられる頭、投げられる質問。

私は戸惑う。

 

「待って、私も知らなくて…」

 

そう言うのだがそれそれと暫くもみくちゃにされああと、

先生たちと状況の整理をする。

 

「前の時は私がセリカの追跡を頼んだ時だね」

 

「今回はマーケットに増援よね」

 

そう言って先生とアル社長が出してくれたその時の状況だが、共通しているのは私が1人で戦った事くらいだ。

けれど、それだけならヘルメット団との初戦闘時はなかった。

それを話せばあ、っと思いついたようにノノミが手を上げる。

 

「誰かにお見送りされるとかどうでしょう?」

 

確かに片方は先生にもう片方は便利屋とヘルメットに見送られた。有り得るかもしれない。

次に手を挙げたのはシロコ先輩だった。

 

「ん、どっちもお願いことをされてる」

 

確かに片方は先生から、もうひとつはアル社長から頼まれている。それもあるかもしれない。

そこまで出た所で、ホシノが手を上げる。

 

「レイヴンちゃんは犬耳って聞いて思い当たることはない感じ?」

 

そう改めて聞かれる。そう言えばと思い当たる節は1つある。

私はウォルターに飼われていた。彼の飼っている強化人間につけられたあだ名があったはずだ。以前戦ったスッラもそうよんでいたか。

 

「猟犬って呼ばれてたことがあるからそれかな?」

 

そういうと、今度はムツキから私に手が挙げられた。

 

「はーい。そしたら、そのあだ名はなんで着いたかによるんじゃないかな?」

 

どうしてそう呼ばれたの?

聞かれた問いかけに私は言い淀む。

ウォルターのあだ名が調教師で、その人に飼われてたからなんて言えばどう考えたって皆からウォルターが悪く見られてしまう。

私は少し考えてちょうど良い言い訳を思いついた。

 

「お仕事を……忠実にこなすからだったはず」

 

そう言った私に皆がなるほどと頷いてくれる。

これならまだ嘘では無い。

少なくとも、私はウォルターが用意してくれた仕事なら何でもする。

 

皆は私の言葉に何かしら頼み事をしたらかななんて納得してくれたが、

便利屋とホシノとヘルメットの三人はチラチラと私をまだ見ているように感じる。

 

ホシノは私が過去をある程度知っているし、便利屋とヘルメットはウォルターのことを知っている。

気づかれた部分もあるだろう。けれど、先生もいるしあんまり先生にウォルターの話はしたくない。

ウォルターと同じ優しさを持っていても、彼はウォルターと同じ選択はできない人だと思うから。

 

私の耳はとりあえずは誰かから頼みごとをされて一人でそれをこなしたからというのに落ち着いた。

けれど、ウォルターの話が出た時点でおそらく条件は決まっているようにも感じる。

単独の戦闘任務を受けること……多分それだろうなと考えつつ私は会議の終了を聞く。

 

皆が部屋から出るのを見ながら朝の仕事件や企業の動きも含めてどうしようかなと私は考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

会議が終わってしばらくしても、委員会室で私は変わらず企業の目的と自分の身の振り方を悩み続けていた。

 

ヘルメット団を退け、便利屋も味方にした。

けれど、どうせ企業連中のことだ致命的な何かがない限りまた何かしらで攻めてくる可能性はある。

ルビコンでも、総長が死ぬまでベイラムはコーラルを狙ったし、最後の最後までアーキバスの連中もいたのだから。

それに身の振り方についても戦闘以外で耳が出ないなら私は社会経験のないペーペーである。

それこそ本当に傭兵家業でもしないと先生の脛をかじることになってしまう。

 

けれど、そんな私を心配するように声が二つかかった。

 

「何か悩み事? 私でよければ聞くわ……

「レイヴン、どうかしたか? 悩み事なら……

 

元ヘルメットとアル社長が同時に声をかけたので固まっている。

お互いに顔を見合せて、これまた同時に言った。

 

「「あ、どうぞ……あ、ごめんなさい……」」

 

優しい二人が私の為に見合わせたりしているその光景が面白くて、つい私は、珍しく、笑いが口から出るのを感じた。

 

「ふふふ」

 

そして、そんな私に驚く顔をする二人に私は言う。

今回の件とは別で、朝に悩んでいた方の相談なら二人が適任だろう。

 

「便利屋とヘルメットに相談していいですか? 依頼をこなすような仕事がしたくて」

 

そう言った私に二人は快く頷いてくれた。

 

 




黒服がまた色々説明してくれました。ありがたいですね!!

ヘイロー設定はまたしばらくしたら新しいのが出てきてくれるはずです……たぶん。
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