猟犬烏の青春   作:面無し

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感想等々ありがとうございます!!

今回もよろしくお願いします!!


2-21 アビドスの怪談

 

 

 

「んっしょ」

 

ガタリと音を立てて鉄の蓋を開ける。

中にはみっちり詰められた配線の束とチカチカ光るLEDの光がそこかしこに見える。

 

「どうですか?」

 

「ん、ギリギリ入れそう」

 

「わかりました、じゃあ私たちは別のところにしますね」

 

「よろしく」

 

ノノミとそんな話をしてギリギリ開いた隙間に潜っていく。

口に明かりをつけた懐中電灯を咥えて、先を見れば、アヤネの言っていた通りの黒いボックスのようなものが見える。

私はそれに手を伸ばしながら朝の会議が終わった後でみんなと話したことを思い出していた。

 

 

 

 

 

「それで、何から調べるの?」

 

朝の会議を終えて、空き教室に集まった私たちはアヤネに尋ねた。

アヤネには会議で決まった土地の調査もある、工学の知識が乏しい私たちもできることは全部やらないといけない。

私の問いかけに彼女は今朝レイヴンが説明してくれた技術書をもう一度広げる。

 

「いいものが校庭にあります」

 

そう言って、アヤネは窓から見える校庭を指さす。

砂漠へレイヴンたちが乗って来たカタフラクトとかいう巨大兵器。

帰りは時間もあったしメットがなんとかかんとかレイヴンの真似をして乗って帰って来たと聞いていた。

そうか、あのカタフラクトはレイヴン世界の兵器の模倣品と聞いている。

 

「そっか、ガワだけの模倣品って言っても程度真似ができてるかも」

 

「そうです、朝にレイヴンさんが、あの兵器は集積回路がコアとなるコクピットの部分に集中してると言ってました」

 

アヤネのその言葉の続きをセリカが引き継ぐ。

 

「つまりコクピット周辺の資料を見ながらあれを開けて探せば、

カイザーが作った接続プラグのコピーが見つかるかもってことね!!」

 

「もし見つかったら、それを使えるように改良するのもしやすいですね☆」

 

 

 

 

そうして朝の会議の後、ホシノ先輩が出かけたのを見計らってカタフラクトのコクピット周りの整備口を開けていたのだ。

私の担当は、アヤネ曰く、カタフラクトの兵装類の弾薬数なんかを記録している部分……らしい。

ノノミは後ろの兵器類との情報伝達部分、セリカはそもそも最終目標である621さんの乗っていたコクピットブロックの接続場所の調査。

 

朝の会議で土地のことも調べることになり、それを担当しているアヤネを除いたメンバーで頑張っている、のだが……

 

「ん、はふれない……」

 

何とか手を伸ばしたレコーダーの箱は単純に引っ張るだけでは外れてくれなかった。

なんとかもう少し体を突っ込めば、レコーダーに接続されたケーブルが外れないようにロックされているのが見える。

持ってきていた先端付け替えができる工具の先端部分を体をひねりながら取り出す。

ロックされているコネクタを見比べる。

 

「ん、あっふぁ」

 

何とか合うものを見つけ出してコネクタを取り外そうとするが……

 

 

ガチッ

 

「っ!」

 

外そうとしたコネクタは外れてくれなかった。

何とかちょっと開いた隙間からこの状態では駄目だというように赤い光が漏れていた。

電子ロックなのだろうか。コクピット内からの操作でとれるかと考えて、体を放す。

もぞもぞと整備口から出てきたとき、ちょうど接続部分を見ていたノノミとかち合った。

 

「あ、シロコちゃん、どうでした?」

 

「ん、金具に電子ロックがかかってる。そっちは?」

 

「こっちも同じでした」

 

そう言って、ノノミは持っていた工具を置いて軍手を外していた。

私はレイヴンとメットが座ったと聞くコクピットに目を向ける。

運転だけなら何とかなったとメットは言っていたけれど、正直信じられない。

計器やら何やらがあるが各種ボタン等も含めて丁寧に指示が書いてるわけもなく……

 

「ここからロックを外すボタンか何かを見つけるってことだよね」

 

「そうですね……」

 

ノノミと顔を見合わせる。電子機器に明るくない私たちでは手も足も出ないことは明白だった。

アヤネが返ってくるのを待つ? でも、土地のこともやってくれているアヤネにこれ以上負担はかけたくない。

そう思ってノノミの方を見ると、ノノミの方も何か決意したように私を見ていた。

 

二人で頷きあう。

 

「私は右から」

 

「じゃあ、私は左からですね☆」

 

そう言って二人で手を伸ばそうとしたその時だった。

 

カチッ……ガション

 

そんな何かの押されるような音と共に、後部と私が今までいた整備口の方から何かの外れるような音がする。

 

「「え?」」

 

まだ何も触っていない私は動きを止めて振り返る。ノノミも同時に振り返っていた。

お互いに顔を見合わせて、もう一度音のした方を見て、もう一度お互いを見る。

先に口を開いたのは私だった。

 

「ノノミ……何か触った?」

 

「いえ、なにも」

 

外からの操作? 通信機器が基本的にどの兵器にも搭載されてると言ったのはレイヴンだ。

あり得ない可能性ではないが、そうなれば今度は誰がという話になる。

 

 

どういうことだろうと考えていると、今度は私とノノミの携帯が着信音を出す。

 

「ん、誰かな……」

 

そんなことを言いながら携帯の画面を見て再度固まる。

 

 

『髢九¢縺セ縺励◆縲ゅΞ繧、繝エ繝ウ繧偵h繧阪@縺上♀鬘倥>縺励∪縺』

 

化けた文字が私の端末に表示されていた。

ノノミを見る。若干青い顔をした彼女に画面を見せれば、私にも画面をみせてくれる。

 

全く同じ文字化けした文字が書かれていた。

 

携帯は相変わらず鳴り続けている。

けれど、着信に出る勇気はなかった。

 

二人同時に着信の拒否ボタンを押す。

ドクドクと嫌にはっきり聞こえる心臓の音を感じながらノノミに声をかける。

 

「ノノミ」

 

「はい」

 

返事をする彼女の顔は珍しく何の表情もないくらい凍り付いていた。

 

「早く出よう」

 

「わかりました」

 

二人でそう示し合わせて急いで駆ける。

ガバッっと整備口に顔を入れようとして、その暗闇に一瞬腰が引けるが、首を振って体を思い切り突っ込む。

 

「ん、ん!!」

 

もう一度咥えたライトの先に見えた記録用のその箱を手にむんずとつかんで何も確認せずそのまま体を引っこ抜く。

そして、私とほぼ同時に作業を終えて接続用のケーブルを一本丸ごと抱えたノノミと一緒に慌ててカタフラクトから出る。

 

そのまま小走りで離れた後、取り出したものを地面に置いてからやっと二人で息をついた。

 

「怖かったですね……」

 

「ん、びっくりした」

 

何だったのだろうかと思う。思うが、とりあえず目的のものは手に入った。

そうして二人で息を吐きながらもハイタッチするのと同時に。

 

「いやあああああ!!!」

 

そんな声を出してセリカが621さんのコクピットから飛び出す声が聞こえた。

 

 

 

*****

 

 

「ここが621さんのコクピット……」

 

真っ暗な中でライトをつけた私は621さんがいたというコクピットを眺める。

モニターも何もない、操縦桿すらない部屋は普通コクピットと言われて想像する部屋とは程遠い。

アヤネちゃんが言ってた通り、621さんは車椅子をそのまま操作用の操縦桿として考えるだけで操作していたんだと実感する。

 

頭で考えただけでこんなに大きな機械を動かすなんて信じられないと思う。

噂に聞いた限りのミレニアムの機械でも、脳波で精密にコントロールできるようなものは聞いたことがなかった。

 

「ここからコネクタか何か接続できる場所を探すのよね……」

 

私はあの621さん車椅子があったであろうコクピットの床を見る。

薄暗い中に、外せそうな取っ手を見つけてめくれば、『引く』と書かれたレバーを見つけた。

 

何かしらこれ……とりあえず引いてみる?

 

そう考えてコクピットの入り口にできるだけ体を寄せながらレバーを引くと……

 

ガシャ

 

そんな金属音と一緒に床から小さな金属のパーツが四つ飛び出したのを見た。

位置からして、車椅子の固定パーツだろう。

 

「これじゃないわよね……」

 

見ただけでわかる開きそうな場所はここ以外にはない。

けれど、一番可能性があるのはこの車椅子があったはずの床であることは間違いない。

私はライトをできるだけ掲げて床を見ていく。

 

「んー?」

 

特に開きそうなところは本当に何もない、車椅子固定用の金具に関しても、何かを接続できるようなものはついていなかった。

壁にも目を向けてみるが、621さんの車椅子を止める以外のものは本当に何もないように見える。

 

手詰まりかな……とそう思った時だった。

 

ガシャン

 

「うそ!?」

 

コクピットの扉が勝手に閉まった。自動ドアなんて話は聞いていないのに。

慌てて扉の方へ移動して手をかけるが扉は開かない。取っ手のようなものもついてない。

 

「閉じ込められた!?」

 

私は慌てて扉を叩いてみるが当然何の反応もない。

どうしよう。どうしよう。どうしよう。

 

そうして頭がぐるぐるするような感覚がしている私を追い討ちするように、音が鳴る。

 

 

ジジ……ジジジ

 

「ひっ」

 

毛が逆立つのと同時に、思わず引きつった声が出た。

響いた電子音のノイズに恐る恐る振り返ったが何も部屋自体に変化はない。

 

けれど、開く以外の変化がすぐに出た。

 

『き、起動……起動しま……ききき起~動、起ー動』

 

今度は引きつった声も出せなかった。

壊れたラジオみたいなノイズ混じりの声が続く。

 

『きいいいいお媒体のとおーーだし……な……ます』

 

そんな声とともに621さんのコクピットの最奥の壁が若干開いたかと思うと……

 

ガコンっ

 

そんな音と共に何かが私の方に飛んできて、

合わせたように開いた扉に向けて私は思い切り叫んで飛び出していた。

 

 

「いやあああああああああ!」

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

リンちゃんに言われたレイヴンの服をどうしようかと考えていた。

袖なしの服に上から白いコートのあの制服、レイヴンが戦う時には良く跳び上がるが故にまるで翼のように見えて綺麗だったのだが……

 

 

「買いに行くかな……それとも」

 

モモトークからエンジニア部であるヒビキの欄を開く。

新しい装備のあの光の剣も合わせた衣装なら、コスプレ趣味で衣装作成もしている彼女に頼む方が良いだろうか。

それに彼女はエンジニア部故にレイヴンの事もある程度承知してくれている。

そうして私が連絡を打ち込もうとした時だった。

 

『先生、大変です!!』

 

机に置いたシッテムの箱──先生専用の携帯型オーパーツから水色髪の小さな少女が顔を覗かせる。

 

「アロナ、どうしたの?」

 

私の問いかけにシッテムの箱の管理AIの彼女は答えた。

 

『アビドスの校庭で正体不明の次元の揺れを感知しました!』

 

「本当に!?」

 

それを聞いて慌てて校庭を見る。

けれど、目に見えるような変化は何もない。

アロナと一緒に校庭を眺めていると、校庭のカタフラクトよレイヴンが呼んだ兵器から慌てて出てくるノノミとシロコの二人を見た。

二人は何かカタフラクトからとって来たのか黒い箱と大きなケーブルを持っていて、なにやらカタフラクトを振り返って喋っているのが見えた。

 

「大きな変化はないようだけど、まだ揺れはある?」

 

『はい! 規模としては小さいですが確かに』

 

それを聞いた直後、今度は校庭に停めてあった黒い機械のそばにあった黒い大きな箱からセリカが出てくるのが見えた。

 

「いやああああああああ!」

 

とんでもなく大きな声で叫びながら。

大変だと慌てて私は駆けだす。

 

「行こう!!」

 

『はい先生!!』

 

校庭に走り出た時には校内にいたアヤネも校庭に慌てて来ていて、現在のアビドスに残っているメンバーが全員集合している状態だった。

 

 

 

 

「皆大丈夫?」

 

「ん、私とノノミは大丈夫……ただ」

 

「大丈夫ですよセリカちゃん、何もいないですからね」

「う……ぐす……ううー」

 

 

急いで来た私の問いかけにシロコが答える。

彼女が指さした先にはノノミの胸に抱かれて唸るセリカがいた。

 

『先生、次元の揺れはもう消えたようです』

 

「わかった」

 

アロナの声に小声で返答しながら、校庭の皆へ近づいていく。

そして状況の飲めない私は皆に問いかけた。

 

「これは……どういうことかな?」

 

「私から説明します」

 

私の隣にいたアヤネがそう言う。

彼女はノノミからセリカが持ってきたという何かの端末のようなものを受け取って続けた。

 

「私たちはホシノ先輩とレイヴンちゃんがしている隠し事を暴こうとしているんです」

 

そうして説明してもらったのはレイヴンの元居た世界についてレイヴンとホシノが隠し事をしているという内容だった。

けれど、私はひっかかる。

 

「二人が秘密にしてることを探ろうとしてるのはわかった、でも、それならどうしてこの校庭の機械を?」

 

それを聞いた私から、アヤネは少し目をそらした。

答えにくい、質問だったのだろう。シロコとノノミ、ちょっと落ち着いたがまだノノミに引っ付いたままのセリカも露骨に気まずそうな顔をする。

 

「先生に……先ほどの話では話していないことがあります」

 

そう言って、アヤネは話し始めてくれた。

 

「ですが、既に秘密を探っている現状で先生にまでその情報を広めてしまうことに抵抗があります。

先生のことはもちろん信頼しています……でも」

 

言いづらそうにそう言ってくれたアヤネに私は笑顔で頷く。

 

「教えてくれてありがとう、もちろん無理にとは言わないよ。

もし、手伝えることがあったら教えてほしい、その時も何のために必要か教える必要はない」

 

「いいんですか?」

 

そう言って驚いた顔で私を見る皆に頷く。

 

「もちろん、秘密を暴こうとするのは良いこととは言い切れないけれど、

皆で話して必要なことだって思ったんだよね? なら、何か起こったならその時は私の責任にしていい」

 

そう言って皆に笑顔を向ければ、皆もやっと少し晴れたような表情になってくれて、少し安心する。

「じゃあさっそく」とアヤネが言って。皆で委員会室にとなった時にまたアロナから声が届く。

 

『先生、一瞬ですがまた揺れが発生しました』

 

「そうなの?」

 

『はい、今度は今私たちがいる場所に──

 

そう聞いている最中だった。

大きな爆発音がして、地面が揺れる。

 

「こ、今度は何!?」

 

そう言っておびえたようにセリカが私の服をつかむ。

皆で屋上まで出て、外に出れば離れた位置から黒煙が上がっていて、

皆それが上がる方向をよく知っていた。

セリカの大きな声が良く響く。

 

「あっちは柴関ラーメンじゃない!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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