猟犬烏の青春   作:面無し

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誤字報告等ありがとうございます。

よろしくお願いします。


2-23 風紀委員戦

 

 

「手早く済ませよう」

 

そう言いながら、目前の集団へレイヴンは駆ける。

風紀委員のしっかり組まれた陣形は便利屋によってところどころ崩されつつも元ヘルメットの言葉通り拮抗した状態となっていた。

 

『レイヴンちゃん、起きたんだね!』

 

「うん、前線を引き上げる。メット、爆弾のスイッチ見つけて」

 

彼女は隣を駆け抜けたムツキに返事をしつつ、前線を見ながらメットへ連絡をする。

元ヘルメットの少女は今まで指示のために相手の陣形を俯瞰してみていた端末を閉じながら返事をした。

レイヴンが居れば指示が多少なくとも戦線は大丈夫だと結論付けて。

 

『了解、最前線の銀髪が一応役職持ちだ』

 

その声を聴きながらレイヴンは前線の話題に出ていた銀髪を探す。

遮蔽物からチラチラと舞う銀髪を見つけて彼女はあれがそうかと思いながらカヨコの横を通り過ぎた。

 

「銀髪、皆に任せていい?」

 

『わ、わかりました! お任せください!』

『了解、他は頼んだからね』

『おっけー!』

『いいわ! やってあげる』

 

背中からの声に押されて、ハルカを飛び越えて彼女は風紀委員の前へと躍り出る。

便利屋の後ろから突然飛び出した新しい顔に少女に風紀委員のメンバーは一様に驚くが、遮蔽物にいた銀髪の少女だけがレイヴンへと自らの銃口を向ける。

 

「君は後、先に安い方からね」

 

「うそっ」

 

それを横目で一瞬だけ見たレイヴンは、放たれた弾丸を見もせずに躱して銀髪に向けて言い放ち、彼女の後ろで隊列を組む少女たちへ目を向ける。

そして、いまだに突然現れた少女へ面食らう少女たちの一人を足蹴にして、彼女は空中へ舞う。

 

(そう言えば、今のはフロイトが言ったのだったか)

 

陣形を組む性質上ある程度の固まりで動く風紀委員の少女をショットガンの散弾で纏めて片付けながら少女はそう考えた。

嘗て彼女の知り合い(チャティ)を屠った相手と同じようなことを自分は言ったなと思い出し少し苦く感じる。

そう感じながらも、彼女は攻撃を緩めない。

向けられる数多の銃口へ自ら突撃し、発射される弾丸を踊るように躱す。

 

「くっそ、ちょこまかと──ぎゃ!!」

 

「おい大丈夫──ひっ」

 

(あの時私は怒ったんだっけ、チャティを軽く見られたと思って)

 

『無人ACだな。そう言う動きだ』『(よくも……チャティは安くなんかないのに!)』

 

嘗て聞こえたその声と自分が思ったことが彼女の頭にリフレインする。

ずいぶんと身勝手な怒りではあるが、自分の大切な彼をそうみられたのが彼女は確かに不快だった。

彼女は銃を振り、少女の一人を殴り倒し、空中を舞いながら声をあげる。

 

「ごめんなさい。さっき安いって言ったの訂正する!」

 

周りの風紀員たちの真ん中へマーケット戦から少しだけ持つようにした手りゅう弾を一つだけ投げ込み、

爆発した中央へ降り立った彼女ははっきり告げた。

 

「私が、理由なく強いだけだ」

 

既に理由は焼けたから、とまでは彼女は口に出さなかった。

 

 

 

 

「なんだよアイツ!!」

 

銀鏡イオリ、風紀委員の切り込み隊長として最前線で便利屋と戦っていた銀髪の彼女はそう叫んだ。

初撃の弾丸を目も向けず躱し、背後の仲間たちをひたすらに蹂躙する。

本当は援護に回りたいが、目の前には便利屋が既にいて、援護に行くどころか人数差により押され気味というのが現状だった。

便利屋と一緒に現れた新しい生徒、イオリは自分のインカムへと叫ぶ。

 

「チナツ! あの新しい奴の情報無いの!?」

 

「すみません。連邦生徒会の生徒にあのような方はいなかったはず、

そもそもアビドス学区に入った生徒の話なんて一つも……」

 

チナツと呼ばれた風紀委員の救護担当兼後方支援の少女は便利屋と追加で現れた少女にイオリと同じく困惑していた。

戦闘訓練を積んだ風紀委員たちを複数相手に戦える人間はゲヘナの調査ではアビドスには一人を除いて存在しないはずだった。

 

そのやり取りの最中にも便利屋のハルカはイオリへと肉薄しショットガンと肉弾戦をもって攻撃を仕掛けてくる。

 

「くっ」

 

「アル様を……柴関ラーメンを……よくも、よくも!!!」

 

イオリは後退しながらもハルカに対応し、合わせるように迫る便利屋の他メンバーの攻撃も必死で躱す。

けれど、人数差は彼女一人で覆せない。

追い詰められてどうしようもないかと彼女が思った時だった。

 

「待ちなさい!!!」

 

 

 

 

良く通る声がして、一時戦闘が止まる。

アビドス学園の方角、便利屋のそばに現れた対策委員会の面々の内、セリカが仁王立ちして叫んでいた。

 

「あれは?」

 

イオリがインカム越しにチナツへ問いかける。

 

「アビドスの廃坑対策委員会の方々ですね、それからあと一人は……シャーレの先生?」

 

「シャーレの先生? なんかいるのか」

 

「はい、連邦生徒会が新しく設置した組織そこの顧問である……大人です」

 

そうやり取りする風紀の面々に対して、対策委員会のメンバーは近づいていく。

代表する様にイオリたちの前に飛んできたドローンからアヤネが問いかけた。

 

『アビドス対策委員会の奥空アヤネです。所属と今の状況の説明をお願いします』

 

「それは……『それは私から説明します』」

 

イオリが口を開こうとする、しかし、それを遮るように新たな声が割り込んだ。

 

「アコちゃん……?」

「アコ行政官?」

 

イオリとチナツが割って入った人物の名前を呼ぶが、アコと呼ばれた少女はそれに答えないままに続けた。

 

『こんにちは、アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します』

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

通信の先で私は行政官と名乗った女とアヤネの言葉を聞いていた。

 

『行政官……風紀委員会のナンバー2……』

 

『あら、実際はそんな大したものではありません。あくまで風紀委員長を補佐する秘書みたいなもので……』

 

そのやり取りに被せるように、メットからの通信が入る。

 

『レイヴン、これは私とお前の通信だ。スイッチ見つけた』

 

その言葉に遠目に見える先生を確認し、周囲でいまだに自分を警戒して銃口を向ける風紀委員を見ながらぼそりと返事をする。

 

『再開したら、任せる』

 

『了解』

 

短いやり取りで通信を終えて、変わらず話し続けるアコの声を聞く。

 

『ただの秘書なら、そこの風紀委員も緊張しないはず』

 

『だ、誰が緊張してるって!?』

 

シロコの指摘に銀髪の女の子は叫んだがすぐに押し黙る。

緊張しているというのは確からしい。

 

『なるほど、素晴らしい洞察力です。確か……砂狼シロコさん、でしたか。

……アビドスには生徒会の面々だけが残ってると聞きましたが、皆さんのことのようですね』

 

そう言ってアコがシロコ先輩の名前と生徒会しかいないと言うあたり、アビドスのことは大体調べがついているのだろう。

遠目に見える委員会の面々は4人だけ、ホシノはやはりいなかった。

黒服のところからはまだ帰っていないらしい。

 

『アビドスの生徒会は5名と聞いています。 委員長はどの方で?』

 

『今はおりません。そして私達は生徒会ではなく対策委員会です』

 

アヤネの声が固く言い放つ。続くようにセリカが声を出す。

 

『アビドスの生徒会ならずいぶん前に解散したわ! 私たちが事実上の代理みたいなもの。

何か用があるなら、私たちに言いなさい!』

 

『それに、銃を向けたまま「お話をしましょう」なんて言うのも態度としてはどうでしょう?』

 

セリカに続けたノノミのその指摘を受け入れて、アコから銃を下げる指示が出たことで私に向けられた銃口も下げられる。

私が何を言うのかと思っていれば、アコは素直に謝罪と銀髪の子が命令に無いことをしたと言い出す。

そして、あくまでも便利屋という校則違反者を捕まえに来たつもりらしい。

けれど……

 

(嘘だな……)

 

なんとなく私はそう思った。さっき柴関で見せてもらった今までの依頼に明らかな違法の依頼はなかった。

ここまでの数をわざわざ自治区外という今のように問題になる場所に派遣するのがおかしいと感じる。

……私は総長の部隊に一人で同じくらい向かってこられたが。

 

『風紀委員会の活動に、ご協力いただけませんか?』

 

『先ほども言いましたが……そうはいきません!!』

 

アコが言った提案はアヤネに全くの間もなく断られる。

当然の反応だろうと思う私に、改めてメットから通信が入った。

 

『先生も入れての三人通信だ。風紀の包囲が進んでる。おとなしく交渉する振りしてるがとんだ狸だ。

先生にも状況を伝える。レイヴンは敵陣の中盤。迎撃用の爆弾があってレイヴンの周り一帯はそれで何とかなると思っていい。

爆発は私がやることになってる』

 

その通信に、短く先生の返答が聞こえる。

 

『ありがとう、もし再開したら、レイヴンは後方に一人でメットはレイヴンについてあげて。他の皆は私が指揮をするよ』

 

『「了解」』

 

その返事を終えた当たりで、話は自治権の違反の話になっていた。

ここはアビドスの自治区、そこに警察権を持ったゲヘナの風紀委員が警察権の行使のために入るのは越権行為ということらしい。

 

『便利屋の方々の処遇は我々が決定します』

 

そう告げるアヤネだが、それを聞いてもアコは何も引かずに続けた。

 

『この兵力でも怯みませんか……あなたが居るからでしょうか、先生。

貴方も、彼女たちの引き渡しについてはアビドスの方と同意見と見てよいですか?』

 

その言葉に先生はいつものように優しげな声で答えた。

 

『うん、私も同意見だよ、彼女たちの引き渡しには賛成できない』

 

その言葉に続くように、アビドスの面々も言葉を続ける。

 

『そうよ! 便利屋とは一時的に協力してもらってる。渡すなんてありえないわ!』

『ん、最初の爆撃もあなた達の先行攻撃と聞いてる。そんな相手に協力する義理はない』

『そうですね。アビドスの問題もまだ未解決ですし、彼女たちにはまだいてもらわなくてはいけません』

 

『そうですか……残念です……』

 

そう大げさにため息をつくアコが鼻について、私はインカムに手を伸ばした。

 

「アコと言ったか?」

 

できるだけ声は低くする。ウォルターならこの嘘をつく女にどう問うだろうか。

 

『あなた……連邦生徒会の方ですね。お名前を先に伺っても?』

 

「レイヴン……それで、この攻撃の目的は本当に便利屋だけか?」

 

『シャーレ所属の方ですか。はい、もちろんです。

先ほどもお伝えした通り、便利屋は校則違反者です。治安維持部隊である我々が動くのは当然……』

 

違うなそう私が思ったその思考に沿うように、カヨコが答えを出してくれた。

 

『先生……でしょ?』

 

アコの返答はない、私は自分の考えを続けた。

 

「そうだな。便利屋は手練れだ。自治区外で数をそろえるのは非効率。

ゲヘナ内の問題にならない場所で待ち伏せして罠を張るほうがよっぽど効率がいい」

 

『そう、こんな非効率な運用は風紀委員長のいつものやり方とも会わない。これはあんたの独断行動。

私たちを相手にするにも多いこの兵力、アビドスの人数を含めてもまだ多い、なら結論は一つだけ』

 

ユウカから聞いた……シャーレは超法規的組織なのだという言葉を思い出す。

 

「シャーレの先生という、法律を超えて行動できる人間を押さえたかったから」

 

その言葉に、アコは自分の行動の答え合わせをしてくれた。

なんでも、ゲヘナと対立しているトリニティという大きい学園がシャーレの報告書を持っているという話から来たらしい。

私はマーケットの時にトラックに乗っていたヒフミという少女のことを思い出す。

彼女の居たトリニティとゲヘナで結ぼうとしている条約にシャーレという越権ができる組織という不確定を彼女は入れたくなかったらしい。

 

「ついでに不良生徒を拘束できればとは思いましたが」

 

そう閉めてくれた彼女に納得する。

なるほど、やっとすっきりした気がする。

 

「よくわかった。なら、それに対する答えも決まってる。お断りだ」

 

通信越しに入れた言葉に、アビドスの皆も賛成してくれる。

ため息をつくアコは仕方ありませんねと言ってから言葉を続けた。

 

『ゲヘナの風紀委員は、必要でしたら戦力を行使することもあります。その際の遠慮は一切いたしません』

 

その言葉と共に、メットから聞いていた追加の増員が現れる。

私が突破しかけていた箇所以外からも現れて完璧に包囲されているという状態に見える。

 

「本当に数を用意したのだな」

 

彼の口調のままに続ける。

 

『大は小をかねると言いますから☆』

 

そうお茶らけた様にいうアコに向けて、私は彼が言いそうな煽りを考える。

 

「大という割にはずいぶん少ないようだが」

 

『……いつまでそう言っていられるか、見ものですね』

 

再度構えられた銃口を感じながら、インカムを切り替えて、皆へとつなぐ。

 

「アル社長、協力お願いしていい?」

 

本当なら私も守らず逃げるのを優先したってよかったであろう社長に私はお願いする。

返答は思ったよりも早く帰って来た。

 

『もちろんよ! ついでなんて扱い許せるわけないわ。

そんな三流みたいな扱いで背中を向けて逃げるなんてアウトローがすることじゃないわ!!

それに、あの爆弾、使えるんでしょ?』

 

「うん。じゃあ、先生は皆に任せるね」

 

『ええ、任せなさい! 便利屋は信頼には信頼で報いるわ!!』

 

そうして、戦闘態勢に入る私たちに、アコの通信の音声が聞こえた。

 

『……準備はできたようですね。いいでしょう、それでは』

 

大きくはっきりと彼女は宣言する。

 

『風紀委員会、攻撃を開始します。対策委員会と便利屋を制圧し、先生を安全に確保してください』

 

 

 

 

 

彼女のその言葉に合わせるように私は後ろに駆けだす。

合わせるように、設置された爆弾が爆発して後方部隊への道が開けた。

 

『え?』

 

突然陣地内で起きた爆発に一瞬届いたアコの言葉にアル社長からの得意げな声が聞こえる。

 

「うちのハルカがしてくれた仕掛けよ。ついでとは舐めたわね」

 

ずいぶんと様になったその言葉に押されて、私は宣言する。

 

「後方部隊の殲滅を開始する」

 

私の耳に二人の声がまた届く、きっと今の私にはまた彼の証が生えているだろう。

 

『621、仕事の時間だ』

『行きましょう、レイヴン』

 

「了解」

 

返事を短くして駆け抜ける。

一度開いた道を埋めるように再度やってきた部隊が前を埋めていくが、

それらを蹴散らすように銃を撃ち、足蹴にし、銃床で殴りながら突き進む。

 

メットからの通信が私に入る。

 

『レイヴン、いい知らせだ。そのまま進めば相手の後方部隊の内、救護部隊の居るところにつく、

そこを潰せば倒す敵の絶対数がだいぶ少なく済むぞ、隣には補給所の一つもあるからついでにやってやれ』

 

「わかった」

 

見えてきた救護用のバス車両を見据えて私は返答する。

いくらかあらかじめついていた防衛用の部隊を蹴散らして、バスの扉へ手りゅう弾を投げれば、

中から慌てたようにベージュ色の髪をした少女と数人の生徒が飛び出してくる。

 

爆発したバスを眺めながら私は後方部隊ならちょうどよさそうだと思いつつ。

出てきたベージュ髪の生徒を抱え込み、隣の補給場所へと駆けだした。

 

「へ? ええ!?」

 

抱え込まれた少女の慌てる声を無視して私は補給場所へも手りゅう弾をいくらか投げて、離れつつ、暴れる彼女を抱えたまま一つ高めの建物を見繕ってその中へ飛び込む。

 

「きゃあああああ!!」

 

窓を破りながら入る私に抱えた彼女の叫びが聞こえるが、そんなものは無視して私は彼女を壁へと投げる。

 

「ひゃ……あうっ」

 

背中から壁に当たって座り込む少女に私はハンドガンを突き付けて問いかける。

 

「補給場所の数と配置は?」

 

「っ、その容姿はマーケットの……」

 

彼女が他のことを答えようとしたため顔の隣りへ発砲する。

 

「補給部隊の数と配置は?」

 

少女は逡巡する様に押し黙る。

あまり時間もかけていられない。

数発撃ちこんで吐かせるかとも考える。

 

だが、銃撃での脅しは……また先生を心配させるだろう。

ウォルターの望む普通なら、先生に心配される事はない……そのはずだから、まずは話す段取りをつけるところから始めてみよう。

私は私が最も親しみを覚えた彼の真似をする。

 

「私はレイヴンだ、君の名前を教えてほしい」

 

「え……えっと、火宮チナツです」

 

「そうか、よろしくチナツ。私は今シャーレでお世話になっている。君が風紀委員では何をやっているのか教えてほしい」

 

「ふ、風紀委員では……救護部隊をしています」

 

問題なく答えてくれている。流石だ……戦友。

 

「マーケットでの話も知ってくれているんだったね。どれくらい広まってる?」

 

今の状況とできるだけ関係ない話をする。

戦いに関係することは答えにくいから、答えやすいところから。

 

「噂程度なので、大きくは……三大校の情報部の方や生徒会は知っていると思います」

 

「そうか……思ったより広まっているんだな。

申し訳ない、元の話もしたい、チナツは今回の作戦どう考えた?」

 

「先生がいる時点で今の戦闘は失策だったと思いました。

それにあなたがいたのとあの爆弾を考えれば、最初の戦闘は撤退だけならもっと簡単だったはず」

 

「そうだな、逃げるだけなら私たちは最初に爆発させて逃げてよかった」

 

「なら、どうして?」

 

「先制攻撃の時に、私の居た場所で一般人が巻き込まれていたんだ」

 

「まさか……それの放置を嫌って?」

 

彼女の顔が青ざめる。全く関係ない一般人を巻き込むのは気にするらしい。

私は左手のパルスブレードを見せた。

 

「私にはこの武装がある。 これなら今の状況でも切り返せる、でもできれば使いたくない」

 

「光の剣……ですね。マーケットの戦車をたやすく切り裂いたと聞きました

先生に、マーケットでの戦車を無傷で打倒した貴方……確かに言う通りかもしれません……」

 

よしと私は心の中でこぶしを握った。

やっぱり戦友はすごい。

 

「だから聞いてる……補給場所の数と配置は?」

 

そうもう一度チナツへ聞いた。

そこへ

 

「今いいかしら?」

 

別の誰かから声がかかった。

振り向いてハンドガンの銃口を向ける。

 

白い髪に大きな二本の角、紫の瞳が私を見ていた。

 

「ヒナ委員長」

 

気の抜けたような、安心したようなチナツのその言葉に私は目の前のそれが彼女たちのトップなのだと理解する。

 

「君がトップか……先生を確保しにわざわざ来るとは、手間をかけるな」

 

「いいえ、あくまで戦闘を止めに来たの、先生は関係ないわ。前線まで連れて行ってほしい」

 

大きく立体的な紫のヘイローがあるからだろうか。ホシノと同程度の身長から感じる威圧感にしてはとても大きく感じる。

本物は機体越しでも匂い立つと言ったのは誰だったか……それに似た感覚を私は今やっと実感していた。

 

カヨコ曰くアコの単独行動だとは聞いている。

けれど、これをそのままはいそうですかと前線の皆の元には連れていけない。

もし、何かでこいつが敵対したなら、場合によってはこいつ一人で盤を返せる……私のように。

 

「もうすでに戦闘は始まっている。

ナンバー2と聞くアコがやったことをお前の指示でやっていないとどう証明する?

それがなければお前が私をだまして前線に行こうとしているようにも解釈できる」

 

これで終わると思ったら背後から一撃なんて経験はあのクソ中間管理職の一度で十分だった。

私の問いかけにヒナは眉間にしわを寄せてため息をついた。

 

「アコ……そうね、今の私では証明できない」

 

「なら、ここは通せない」

 

戦闘を止めるのが目的で受け答えができるなら、話が通じそうと考えて、

銃でも捨てて証明すると言い出してくれるかと思っていた私は、やはり平和ボケしていたのかもしれない。

 

「そう、なら力で開けてもらうわ」

 

だから、紫の瞳が私の目前まで迫るのに、一瞬遅れた。

 

 




やっとヒナを出せたぞ!!

ここからヒナちゃんVSですね。
書きたかったシーンでもありますので。
頑張りたいと思います。
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