よろしくお願いいたします。
『おい、風紀委員長が来たぞ!!』
そんな通信がメットから入った。
『嘘!?』
アルがそんな風に叫んだ通信を聞きながら、私はこれは好都合だと思った。
メットへマイクを繋いで声を出す。
「あいつなら場を収めれられる。レイヴンも一緒でしょ? こっちに誘導して、私たちはさっさと逃げる」
だが、そんな私の提案はダメだと否定された。
『もうあの二人戦闘を始めてる! インカムが初撃で吹っ飛んで連絡がつかなくなった』
ため息をつく。単独行動という話はレイヴンも聞いていたはずだ。
それなのに戦闘を開始するなんて……ヒナなら最初から戦闘なんてしないはずだし、武装解除させようとでもして敵対行動と見られた?
なんにせよ、先生の指揮もあるとはいえレイヴンが後方部隊を潰すという当初の作戦がなければ追加人員で追い詰められる。
戦力の増強が欲しい……私は対策委員会のメガネの子に問いかける。
「アヤネ、ホシノってまだ連絡つかない?」
『はい、連絡繋がりません! 何度か連絡は入れてるのですが……』
「まずい……先生」
私の問いかけによどみなく返事が返ってくる。
『大丈夫だよ、また伝えるね』
迷いなく言われた口調に今のこの状況も考えのうちと知って安心する。
今は彼を信じて、また目前の風紀委員へ目を向ける。
その時だった。
紫の光が一筋レーザーのように空に向けて放たれて、空を横切りに薙ぎ払ったのを見る。
あれと相対しているであろう彼女を想像して祈る。
「出来るだけ無事だといいけど……」
*****
初撃の殴りは何とか掠るだけで済ませたが、連撃で放たれた蹴りをもろに食う。
壁を砕いた自らの体が外を舞う中、何とか地面の状態を確認し、自らを狙う委員長の銃口に手りゅう弾を投げた。
着地した先の風紀委員が突然現れた私に驚き距離をとる中、大きくないはずなのに、声が良く通って聞こえてくる。
「全員、離れていなさい」
彼女が右わきに抱えたマシンガンから放たれた弾を大きく迂回する様に避け、風紀委員長の居る建物の階下へ走る。
進行をふさぐように降り立った彼女が再度銃口が向けるのを見て、牽制する様にショットガンを放ち接近し、ショットガンを振り上げた。
ショットガンを振る/手で弾かれマシンガンが横に薙ぐ/屈んで回避、左手でハンドガンを撃つ/身を翻して躱されマシンガン/左に回り右手でショットガンを一発/上体を前に屈めて躱され放たれたままのマシンガンが胴を切る/体を寝かせて下をくぐり、転げて移動しながら間にハンドガン二発/二歩後退して回避したところにそのまま体を起こしてショットガンを向け、腕で弾かれた脇からハンドガン一発/ぐるりと回転して躱され、顔を狙ったマシンガンの振りぬきを片手で受け、蹴る。
蹴りは後ろに跳んで逃げられ、再度向けられた銃口にハンドガンで牽制しつつ接近/ショットガンをしまいながらマシンガンを右手でつかみ、ハンドガンを撃ちこむ/手で腕ごと弾かれ、振り払うように右に大きく振られたマシンガンをわざと放す/ふらつかずすぐさま切り返されたマシンガンの銃身に一歩後退/その腹に彼女の足蹴が来ていたのをもう一歩大きく飛びのいて躱し、もう一度向けられたマシンガンを大回りにかけて躱していく。
『強い』そう確信した。
大回りしながら手りゅう弾を放る。
彼女の前の前で爆発した爆風の煙が彼女を隠す間に、遠巻きにいる風紀委員たちへ目を向け、駆ける。
「え……はっ?」
「よこせ」
私の接近に面食らったその一人の銃をつかみ振り回す。
勢いのまま飛ばされた彼女のアサルトライフルをありがたく受け取って、爆風の方へ目を向ければ空を舞う紫の翼が見える。
「どいて!」
大きく発せられたその言葉のすぐ後に放たれた紫の光弾を相手の足元へ駆けて躱し、スライディングしながら下からライフルを放つ。
連射された弾丸を滑空しながら躱した彼女が着地からは被弾をいとわずマシンガンを私に向けたのに面食らう。
「ちっ」
軽く舌打ちして大きく躱し、近くの建物の影に隠れ、ライフルを放って他の武器をリロードする。
こちらの被弾は最初の蹴りが一発、相手には手りゅう弾二発とライフル数発。
最初に蹴られた腹はまだ痛い、まだ7割元気という感じだが、それよりも驚くのは相手の状態だ。
相手に入れた被弾は私がACだったなら既にAP5割切ると言っていい。
私の弾丸は通りづらく、その防御力に任せて彼女は私を狙って弾丸を放ってきた。
銃弾では死なないが、今までの戦闘経験上数発撃ちこめば相手は沈んでいたはずだった。
それを手りゅう弾二発も余裕で耐えるとは思っていなかった。
(四脚……いや、タンクの相手をしてるみたいだ)
そう思いながら、私は武装を確認する。
(弾丸はまだある、でもメイン火力の手りゅう弾は後三つ……)
補給場所を聞けていないのはまずかった。インカムを初撃で無くしたのを後悔する。
(ACの時は頭で済んだのに……)
現実の肉体の不便に辟易しながら、私は建物の影から躍り出る。
向けられた弾丸をから大きく迂回する様に躱しながらショットガンを放つ。
またも被弾を無視して向けられた銃口からの弾丸を回り込んで接近しつつ躱す。
だが、彼女は再度の接近戦はしないとでもいうように後ろに跳んだ。そして……
驚く私は構わず後退した彼女が立つ位置を見て、しまったと思う。
「構えて!」
委員長の後ろでまとまっていた風紀委員たちの銃口が慌てて私に向けられる。
放たれた弾丸から逃げる私に、彼女の銃口がまた私から少し逸れた方向に向けられる。
私を素直に狙う弾丸を躱す私の進行方向に銃口があることを見て、私は彼女の思考を悟る。
彼女の持つマシンガンの銃身は淡く光るように見えた。
*****
紫の光弾を彼女に向けて放つ。
後退した先にいた、離れてくれていた筈の委員の子たちを頼って撃ってもらった弾丸、それを躱す彼女を挟み撃ちする様に薙いだはずが、彼女は最小限の動きで全てを躱して私へと足を向ける。
委員の子たちは変わらず銃撃してくれているのに、それを縫うように躱す彼女を見て驚きを隠せなかった。
(銃弾の雨を飛び込んで躱せるなんて……マーケットの報告書にあったミサイルの回避なんて目じゃない)
再度私に組み付こうとする彼女を委員の子たちは狙えない。彼女が私に近すぎる。
「くっ」
迎撃する様に銃口を突き出すが、合わせるように彼女は左に躱し、私に向けてショットガンが向く。
撃たれる前に銃口を向けようかと考えるが、間に合わない。
痛みを無視して左手で彼女のショットガンをつかむ。
右手のマシンガンを振り、受け止められたのを確認してから、空いた胴へと蹴りを放とうとする。
けれど、それにわざと体を彼女が寄せたせいで私の足は彼女の胴に合わさって蹴り抜けない。
ショットガンを放して足で無理矢理彼女を突き放して、マシンガンをもう一度向ける。
私の行動を予期していたように後ろに跳んだ彼女が私の銃口へ突っ込んでくる。
マシンガンの若干広がって連射される弾丸がどう着弾するかわかっているかのように無傷で彼女は突っ込んでくる。
接近戦は避けたかった。
最初の接近戦、私が動き出すより彼女は数舜早く動いていた。
素直に付き合っていたらいずれ速度で追い越されて一方的にやられてしまう気がする。
(でも、体力で勝っている。このまままともな接近戦には持ち込まないで押し勝つ……)
私は彼女がまたショットガンで牽制してくる前に、自分から彼女へ飛び込む。
伸ばした左腕で向けられたショットガンの銃身をもう一度つかみ、足を払う、
跳んで躱した彼女をそのままショットガンごと空中に投げてマシンガンを向ける。
力を込めた愛銃が淡く光り、もう一度光弾を放つ。
空中の彼女なら躱せないと思ったはずの攻撃を、空中の彼女が当然というように体を捩って躱したのを見て、降り立った彼女が再度私に接近する。
(しつこいっ)
今度はどう突き放そうと思考する私の前に向けられたショットガンが見える。
斜め前に飛びこむように回避しながら彼女の頭をマシンガンで薙いで、屈んだ彼女を続けざまに横振りした足で蹴り飛ばそうとする。
それを軽業のように空中一回転しながら躱した彼女に一歩引いてマシンガンを向けようとして、また目の前に手りゅう弾があった。
目前で爆発したそれに視界が煙る。彼女を補足はできないが勝算はあった。
(まだ十数発は耐えられる……)
痛くはあるが先ほどの爆発を受けても私の肉体に大きな損耗はない。
何もなければ、このまま押し切れるという自信があった。あの光の剣を除いて。
煙を翼で振り払う。晴れた周囲に彼女は見えない。
周囲を警戒しつつ、遠巻きに見ていた風紀委員の子を見つける。
私の目的はあくまで前線の到達というのを忘れてはいけない。
見渡しながら彼女たちに近づこうとして、私の立っていた場所のすぐ近くの建物が爆発する。
それにとっさに反応した私の背後、爆発の反対側から駆け寄る足音に気づいて振り向いたとき、その左腕は私の銃をしっかりと抱え込んでいた。
(拘束された……まずい!)
背筋が凍った私の目が捕らえた彼女の目は、獲物を捕まえたと言わんばかりにギラギラ光って見えた。
*****
振り向いた風紀委員長への銃を抱え込んだことで私はやったと思った。
接近戦で分があることはわかっている。火力がなければ殴り倒して銃をこのまま奪えばいい。
すべての銃をしまい込んで空にした右手を私は振り上げた。
右腕を振り下ろす/掌で受け止めた彼女を銃ごと持ち上げて振り上げ/顎への蹴り上げを銃を両手持ちに変えて回避/ そのまま叩きつけ/地面の彼女からの蹴りを片手を放して手で受け止め/そのままそれも抱え込む。
無理な体制の彼女をもう一回振り下ろし/片手のまま手で地面を受け止めた彼女が今度は私を足で振り回す。
(体格差関係なしかっ……)
何とか地面に着地するが変な体制で着地したせいで動きづらい。
周囲の風紀委員も考えて、無理矢理風紀委員長を大きく振って投げ飛ばした。
「ふうん!!!」
解放された彼女へそのまま大きく跳び、彼女が翼を広げるのを確認して、私は左手のパルスブレードを見せつけるように右上に振り上げる。
「読んでたわ」
彼女が空中で飛び込んだ私が振り下ろした左腕をつかんだのに合わせて、私は微笑む。
つかまれた私の手を軸に体を曲げて風紀委員長の腹を両足で拘束し、空いた右手で彼女の襟をつかむ。
このまま地面にと思ったところで彼女の右手もマシンガンを離して私の襟をつかんでいた。
「貴女が下よ」
その言葉と共に引かれた襟、どちらが下になるかの攻防をしながら地面へ落ちる。
ぐるぐると回転しながら降ちる私に、大きく叫ぶ大人の声が聞こえた。
「危ない!!」
/で区切る構文は初めて試しました。
ヒナとでの描写の違いは彼女たちの思考の速度差だと思っていただければ幸いです。
次回もそう時間なく書ける……はず