猟犬烏の青春   作:面無し

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感想等々ありがとうございます!!

今回もよろしくお願いします。



2-26 土地と利子

 

 

夕暮れのアビドス対策委員会室、倒れたレイヴンをメットに任せて、先生、便利屋68、対策委員会の全員が集まって長机を囲む。

メット自身も通信越しで会議には参加している状態である。

 

事件の概要は発見者のアヤネから告げられた。

 

「見回り時、621さんの教室を見に行った際です。あの人がいた教室は誰もおらず、窓が割られていました。

621さんの教室は施錠されています。鍵はマスターはホシノ先輩が管理、それ以外はこの対策委員会室での管理です。

621さんは車椅子を使用しています。状況から見て……外部から入った侵入者に連れ去られたものと思われます」

 

その話を聞いて、まずは便利屋のカヨコが手をあげた。

 

「まず、その621さんって誰なの? 番号の名前の人で車椅子を使うような人がアビドスにいたってことだよね?」

 

「はい、621さんは校庭にあるあの大きい黒焦げの機械から出てきた方です。

かなり大きな手術痕と五感をほぼ喪失してらっしゃる方で……身元が不明のため病院等に素直に出すこともできないため、アビドスで匿っていました」

 

その返答にじゃあじゃあと今度はムツキが手をあげた。

 

「校庭のあの機械って何なの? 医療用の機械……ではないよね?」

 

「ん、621さんが見つかった時の話からして、コクピットがあったからあれは乗り物らしい」

 

「ふーん……でさ、気になるんだけど、急に倒れちゃったレイヴンちゃんと関係あったりする?」

 

入れられた質問、アビドスのメンバーはチラリと全員がホシノの方を見た。

それに釣られるように、便利屋も彼女を見る。

ホシノは慌てたように声を出した。

 

「ええ~、おじさんは何も知らないよ」

 

だが、それで逃がす対策委員会ではなかった。

 

「それは嘘。レイヴンとホシノ先輩はなにか秘密があるはず」

 

「621さんの事で読んでいる本が変わったりしてること、みんな気づいてました。レイヴンさんが来てからですよね」

 

二年の二人がホシノの弁明を否定する。

 

「教えてください、ホシノ先輩」

 

「レイヴンのこと心配なんです。621さんのことも、お願い」

 

けれど、それへの答えは謝罪の言葉だった。

 

「皆、ごめんね。隠してるのはそう。心配なのは私も同じ……だけど、教えてあげられない」

 

「「「「え……」」」」

 

「それはどうして?」

 

断ると思っていなかった対策委員会メンバーが驚く中で、便利屋のアルが静かに聞いた。

彼女の目はホシノをまっすぐ見ている。

見つめられたホシノはその目からは視線をはずして答えた。

 

「……ごめん」

 

アルはその答えが気に入らなかった。

 

「私はレイヴンは仲間だと思ってたけれど、それを助けられるかもしれない情報を伝えないの?」

 

「……私も、レイヴンちゃんは仲間だし、友達だと思ってるよ」

 

彼女にとってあまり話したくない事柄を共有した同士だとホシノは思っている。

 

「けれど、それでも言えないんだ。ごめん……本当に、ごめんなさい」

 

ホシノは頭を下げた。

そうして頭を下げている相手を責められるアルではなかった。

しかし、ここであきらめる彼女でもない。

 

「……わかった。メットさん」

 

『ん? どうした』

 

「風紀委員の団体のような大きいのが移動したらわかるって柴関で言ったわよね。

小さい団体なら、どこまでわかる?」

 

『カメラとかを駆使してだからな……今回の団体を探すならかなり厳しいと思う。

そもそも攫うことが目的だ、痕跡もできる限り消してると考えるのが当然だと思うが』

 

「できるだけでいい」

 

『わかった。目星はつけてやる』

 

そうして彼女は便利屋に向けて宣言する。

 

「その621さんとやらを助けに行くわよ。勧誘した社員候補が倒れたのに手を打たないなんて、私のアウトローに反するわ」

 

「了解! そしたら準備してくるねー!」

 

「そうだね、野宿の準備もした方がいいかも、ハルカ……どうしたの?」

 

「いえ、その、少しだけ。……ホシノさん」

 

教室から出る便利屋の内ハルカが足を止める。

俯いたままのホシノへ目を向ける。

 

「答えられたらでいいので、確認だけさせてください」

 

そう言って彼女は続けた。

 

「レイヴンさんが居たらホシノさんの大事な物は守れませんか?」

 

ホシノが顔を上げる。

そして小さく首を横に振った。

ハルカはいつか聞いた彼女の覚悟の話を思い返して安心した。

彼女のような未来はまだ無いと確信できたから。

 

「よかった。必ず、見つけてみせます」

 

そう言って彼女は便利屋を追いかけて行った。

 

 

 

 

 

そして下足室で待っていたアル達にハルカは頭を下げる。

 

「お待たせして、申し訳ありません」

 

「大丈夫だよハルカちゃん、全然だから」

 

「そうよハルカ、言いたいことは言うべきだもの。

さ、準備はいいかしら? 便利屋68は仲間を見捨てない主義、レイヴンを助けに──」

 

そう言ってアルはバッと門を指さして行った。

 

「行くわよ!!」

 

ただ、すぐに……

 

「それで、メットさん、どこ探せばいいかしら?」

 

格好つかなくもなっていたが。

 

 

 

 

 

残った委員会室、残された委員会のメンバーと先生がいる。

 

「先生、先生はどうしたらいいと思う?」

 

シロコが先ほどのやり取りを見ていた彼へと目を向け、他のメンバーも彼を向く。

黙っていた彼は皆を見渡してから言った。

 

「ホシノにはホシノの事情があると思う、だから、みんなできることをしよう。

確認したいことや、やりたいと思っていたことはあるかな?」

 

その言葉にメンバーは一度悩んで、あっとアヤネが声をあげた。

 

「ホシノ先輩、レイヴンさんや621さん以外でも、聞きたいんです」

 

そうしてアヤネは一枚の紙を差し出す。

話を振られたホシノはさっきの話もあり気まずいのか、控えめに言った。

 

「ええ~、おじさんでわかるかなあ」

 

そう言った彼女の前に差し出されたものを見て、ホシノは固まった。

差し出された書類は地籍図への登録名義の変更書類。連邦生徒会へと嘗て提出されたアビドスの一部地域が変更されたという書類の控えだった。

 

「学校の資料室でこの一枚だけ見つけました。名義のところ……アビドスからカイザーコンストラクションへ変更になっています

カイザーがなぜアビドスの土地を狙っているのはヘルメット団の件から明白でした。土地の売買が行われた可能性は当然考えておくべきでした……」

 

ただ、重要なのはそこではありません。とアヤネは続ける。

 

「この、土地売買、どこからどこまでの範囲で行われているか……ご存じですか?」

 

ホシノは今度は否定をしなかった。

ごそごそと、彼女が取り出したのは大きめの地図。

アヤネはそれを見て驚いた。

 

「これは……地籍図ですか」

 

「地籍図って?」

 

「土地の所有権が書いてある地図のことですね」

 

「ん、重要なのは内容の方、ここが私たちの居るアビドス校舎で……」

 

セリカの問いにノノミが答え、シロコが図を覗き見て分けられた土地をなぞっていく。

その顔はどんどんと、表情をなくしていた。

ホシノから答えが告げられる。

 

「アビドスの土地は……もうほとんどない、おじさんも今日知ったんだ」

 

静かに地籍図へと目を向けて俯くホシノの表情を委員会のメンバーは見ることができなかった。

そうだ! とセリカが声を出す。

 

「ブラックマーケットでの書類があったじゃない! やつらがアビドスを襲ってたことになるし……」

 

いや、足りないと思うと声を出したのは先生だった。

 

「マッチポンプの証拠はマッチポンプの証拠だ。賠償なんかで借金の返済についての有利な証拠にはなるかもしれないけれど、

この土地の売買を取り消させるには証拠としては不十分だと思う……」

 

アビドスのメンバーはもう何も言えなかった。

 

「ごめん……ごめんね。本当に」

 

『おい、便利屋と入れ替わりだ。大ボスが入って来たぞ』

 

入れ替わりにメットからのそんな通信が入った。

 

 

 

 

 

委員会メンバーが校庭に出た時、その大柄なロボットの男は取り巻きの部隊も引き連れて、ふんぞり返ったまま挨拶をした。

 

「やあ、アビドスの諸君──私は、カイザーコーポレーションの理事を務めている者だ。そして君たち、アビドス高等学校が借金をしている相手でもある」

 

「あなたが……」

 

「正確に紹介すると、カイザーコーポレーション、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事だ」

 

嘗て黒服といた男はそうアビドスに自己紹介をした。

二メートルはあるかという体格からアビドスと先生を見下ろしていた。

先生は生徒たちの前に一歩踏み出して答えた。

 

「──私は連保操作部シャーレの顧問、先生です。カイザー理事……急に来た理由を教えていただいても?」

 

「なるほど、貴様が例の()()()()()が言っていたシャーレか。なに……これを見てもらえばいい」

 

そう言って理事は印刷された写真を取り出して差し出す。そこにはつい先ほど出てきた便利屋の姿があった。

 

「これは、我々の施設を攻撃した侵入者として目星をつけていたものたちだ。なぜ、そんな人物がアビドスから出てきたのか……説明いただけるかな?」

 

アビドスのメンバーが攻撃したなら対面が悪いから、そのつもりで便利屋を差し向けたのが当時の計画。知られても問題はない、便利屋とアビドスのつながりにさえ気づかれなければ。

つい先ほど撮られたように見える写真は明らかにここに張っていなければとれない写真だった。

先生は改めて口を開く。

 

「彼女たちに連邦捜査部より砂漠調査の依頼をしています。ブラックマーケットへ出所不明の装備が流れ出ている話から外套の砂漠施設を調査、正体不明の新兵器群は……マーケットに流れている兵器類と同じく法律上機構等で違法なものと推定されたため破壊を指示を行いました」

 

「なるほど、あくまで彼女たちはお前の指示で操作に入り、ここのアビドスと懇意なことは彼女達個人の話だとそう言うことかな?」

 

「そうです」

 

それを、男は鼻で笑って言った。

 

「浅い言い訳だな」

 

明確な嘲笑を滲む態度に、シロコが強い怒りを込めながら発言した。

 

「……どの口で、もとはと言えばその砂漠もアビドスの土地だったのに」

 

それを軽くいなすように理事は答えた。

 

「だが、我々が買った。正式な手順を踏んでな。何も言いがかりをつけられることはない」

 

「ふざけないで! ヘルメット団を仕向けて、便利屋も雇って、ここまで私たちをずっと苦しませてきた犯人があんたなんでしょ!? あんたのせいで私たちは……アビドスは──!」

 

「セリカちゃん、待って」

 

セリカの発言を止めたホシノは理事を見つめて言う。

 

「それで、何をしに来たの? わざわざ説明をしてもらいに来たんじゃないんでしょ?」

 

「ふっ、物分かりが良くて何よりだ。そう、一つ話をしに来たのだ、君たちにも重要な話のはずだ。何せ借金の話だからな」

 

そう言って男は通達する。愉快なものでも見るような声をしながら。

 

「便利屋とつながっているかもしれない君たちをこれ以上信用することはできない。信用評価を下げさせてもらう……連絡がすぐ来るはずだ」

 

その言葉に合わせるかのように、アヤネから通達が入った。

 

「カイザーローンより連絡が……変動金利が3000%上昇、他含めて、来月以降の利子の金額は9130万円……と」

 

「はい!? どうしてそんな──!」

 

慌てるアビドスを見ながら愉快そうに理事は笑った。

 

「分かったかな? 君たちの首紐は、誰が持っているか」

 

ついでだと理事は続ける。

 

「本日の昼頃にもわが社の土地で戦闘があったそうだな。自治区内とはいえ通達なしで勝手にされてはいけない……一週間以内にわが社に三億円を預託してもらおう。なに、戦闘などが起こる治安の中でも君たちが返済できることを証明してもらわねばいけないからな」

 

「そんな……! そんなお金、用意できるはず……」

 

「ならば学校を捨てて去ったらどうだ?」

 

アヤネの言葉に理事は冷たく言い放った。

 

「──自主退学でも、転校でもいい、それで全て解決だ。君たちの借金ではないのだからな」

 

「そ、そんなことできるわけないじゃないですか!」

 

「そうよ、私たちの学校なんだから! 見捨てられるわけないでしょ!」

 

「アビドスは私たちの学校で、私たちの街」

 

対策委員会メンバーはそう反発する。

キヴォトスにおいて学校とは自治区がある通りほぼ国と言って過言ではない。

彼女達にとってそこは自分の国と同義の居場所だった。

それを簡単に捨てられるはずもない。

しかし、それでもなお、理事は続けた。

 

「ならどうする? 他にいい手でもあるのかな? 何か……差し出すか?」

 

アビドスは言葉に詰まる。彼女たちは言い返せなかった。ここから返す言葉は彼女たちにはない。

その言葉を聞いて顔をあげたホシノを除いて。

 

「……いいよ、勝手に上げればいい。借金は私が解決する」

 

ホシノの言葉に対策委員は言葉が出なかった。

先生が彼女に問いかける。

 

「それはどうやって?」

 

ホシノは答えなかった。

それにより秘密にされたレイヴンに絡むことなのだと、全員が察する。

セリカは我慢が出来ずにホシノに詰め寄っていた。

 

「どうして、どうして教えてくれないんですか!?」

 

「ごめんね、でも大丈夫。何とかするから」

 

詰め寄るセリカにホシノは謝るしかできなかった。

それを愉快そうに眺めてカイザーは言った。

 

「では、諸君。支払いを待っているぞ」

 

 

そう言って取り巻きと共に去っていくロボットを対策委員会は見つめるしかできなかった。

 

 





原作から流れが変わっておりますがご了承ください。
大体レイヴンをヒナと同格のほぼ最強にして、
場合によってまだ強くなるっていう話を書きたかったっていう最初に書きたかったのが原因です。

彼女にかかれば大体気に入らない奴は最後は焼けば解決にできてしまう予定なので。
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