猟犬烏の青春   作:面無し

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誤字報告等ありがとうございます。

今回もよろしくお願いします。


レイヴンへの印象整理回って予定


2-28 レイヴンを考える

 

 

───想像以上でした。

 

 

 

まったく歯が立たたない。企業の品は劣化コピーだとは聞いていただけれどここまで乖離があるなんて。

記憶媒体はSDのような差し込み式、シロコ先輩が持ってきてくれたカタクラフトの記録ボックス内に似たものがあったので楽に済むかと思いました。けれど……

 

「ん、このボックス解体したのはいいけど……記憶媒体に形が合わない」

 

そう、記録媒体の端子の数も合わない、物品は分解までは良いとして、新規の部品は作れないから壊してしまえば私たちでは元に戻せない。

なにより記録媒体同士の形も大きさも違ってカイザーの方が二倍ほどもある。

 

そして、今度はケーブル。

 

「これ情報のやり取りをするんだから読み出し用じゃなくて送信もするのよね。どれが実際送信用なの?」

 

ケーブル内で情報をやり取りする企画は内部の線の被膜の色等で決まっている認識です。

カタフラクトの線が技術書と一緒であればそれ通りに分解すればいいと高をくくっていました。

 

でも……全く違いました。カイザーのコピー品の方が明らかに線の種類が多い。

数が合わないとどれがどれなのか私にはある程度しか判別できませんでした。

これでくみ上げて果たしてしっかり動くのか……

 

 

そして、最後に私たちで用意できるもの。

 

「うーん……とりあえず市販のデータ通信用のケーブルは種類全部買ってきたんですけど……合わないですね~」

 

ノノミ先輩が買ってきてくれた大量かつ種々揃った記録媒体の接続用のケースとデータ送受信用ケーブル類。

二つを似たような形に改造して、差し込み口とケーブルを合うようにしたかったのですが……。

それの元として当てにしていたカイザーの技術がここまであてにならない以上私の知識ではどうしようもできませんでした。

 

「不甲斐ないです……っ」

 

「アヤネは頑張ってくれてる。私たちの方が知識がないから頼ってばかり」

 

「そうよ、アヤネちゃんが見てくれたから分解自体は無事すんだんだし!」

 

「一日二日で出来るものではないかもって言うのは前から話していましたし、焦らず行きましょう☆」

 

「そうだね、長い時間やっているしみんな一回お休みしようか」

 

先生の号令で皆で息を吐きました。

しばらくすれば、シロコ先輩と先生が教室を退室される。

 

「ん、私は先生に頼み事話してくるね」

 

そう言い残して行かれたシロコ先輩の隠し事や、ホシノ先輩の秘密も含めて、私は何も知らないんだなとすごく実感させられてしまう。

 

そうして、知らないからこそ想像してしまう。今探している車椅子のあの人と倒れてしまったレイヴンさんの過去のこと。

 

「レイヴンさんや、621さんのいた場所ってどんなところだったんでしょう……」

 

ポツリと漏れた声に残ってくれていた二人が反応しました。

 

「確かに、気になるよね。なんだっけ、20mの芋虫?」

 

「そんな話もありましたね。芋虫は……別として、空のお星様に好きに行けるなんて素敵ですよね☆」

 

そういって二人は笑顔でやり取りする。

 

「確かに、宇宙旅行って考えると良いですよね」

 

そう二人に同意をしてくれる。

そう、夢みたいな世界だ。SF物語にあるみたいにワープなんかもできるのかもしれない。

車椅子を見てる限り、どれだけ傷ついたとしても死なない限りは助かって、先輩が受けたウォルターさんからの頼み事を考えれば、621さんみたいな人でも回復出来る手術もある。

 

けれど、そんな夢みたいな世界だから。

 

「なのに戦場があるんですね」

 

そんな事が口をついてでた。

 

「あ、ごめんなさい」

 

思わず出た言葉を謝罪する。

いいんですよとノノミ先輩はにこやかに返してくださいました。

 

「気になっちゃいますよね」

 

「そうよね。キヴォトスだと銃撃戦が日常だけど、向こうだとそれに当たると死んじゃうのよね……」

 

正直想像も出来ない。前線に私はあまりでない私では撃たれる恐怖にも比較的縁遠く。

その恐怖はどれくらいのものだったのでしょう。

 

そうして、考え込んで少し俯いてしまう私にノノミ先輩が手を打った音が聞こえて、私は顔を上げる。

ニコニコと笑顔のノノミ先輩は私達二人に向けてだからこそと言いました。

 

「621さんも連れ戻して、レイヴンちゃんも起きてもらって、みんなで美味しいもの食べましょうね☆」

 

「「はい!」」

 

二人で頷いてもう一度気合いを入れ直す。

そうして、戻ってきたシロコ先輩と先生も一緒にまた頭を捻って考えます。

皆でまた楽しく過ごすために。

 

うーん。なにか私の知識と繋がるものがあればいいんですけど。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「甘く見たつもりはなかったけれど……本当に見つからないわね」

 

621さん探しを始めて早数時間、メットさんにある程度ヒントを貰って探索を進めたのに、全く足取りがつかめていなかった。

 

「そうだね。やっぱり相手もプロというか、訓練してる相手っぽいし、上手く隠してるんだと思う」

 

私たちの中で一番潜入なんかに知識のあるカヨコが言うのだからその通りなのだろう、

けれど、ここであきらめる私ではない。

 

「いいわ、これくらいじゃないと張り合いがないもの! 真のアウトローはここからの大逆転を生み出すものなんだから!」

 

そう言って私は胸を張る。

そう、621さんを見つけて、レイヴンにも起きてもらって、彼女をいろんな所へ連れて行くのだ。

 

(任せて頂戴ね! ウォルターさん!)

 

私はイメージの中のウォルターさんにそう誓う。

ちょっと陰があるけど目に光があって、根はやさしいのに口下手で、トレンチコートにハットの似合うダンディなおじさまに。

 

聞く限り、レイヴンを飼ったなんて言っておいて大事にしてそうだし、なくなったレイヴンの先輩のこともきっと自分に飼われたせいでとか思ってそうな人のはずなのだ。

聞けたのが飼い主という名の保護者で『不測の事態を予測しろ』っていう教訓だけなんてもったいないわ。

 

「でも、実際どうする? 方角以外のヒントはないからもうノーヒントって感じだけど」

 

カヨコの指摘に私は胸を張った姿勢のまま固まる。

実際何も浮かばないのだ。その姿勢のまま私は頭を唸らせる。

 

そんな時に、私の背筋にヒヤッとしたものが当たった。

 

「ひゃん!」

 

思わず変な声が出て振り向けば、ムツキがニヤニヤとこちらを見て笑っている。

手にはペットボトル水が人数分。

 

「くふふ☆ びっくりした?」

 

そのいたずらっぽい笑顔とぱっちりと目が合う。

ウォルターさんへ意気込んだりなんだり見栄は張ってみたが、手詰まりに少し緊張していたことを自覚して息を吐く。

ムツキへ笑顔を向けて頷く。

 

「ええ、びっくりしたわ」

 

「やったー!! じゃあ、はいこれ。水分補給は大事だからね」

 

万歳ポーズで喜んだムツキが私に向けてペットボトルを指し出してくれる。

それを受け取って眺めて助けてもらったことを心の中で感謝した。

 

「一回休憩にしましょうか、ハルカはもう少し先よね?」

 

「そのはず」

 

カヨコの答えを聞いて、私はムツキの持っていたペットボトルを一本持って歩く。

ハルカは地下での一件からか、今回は本当にがむしゃらといった感じで621さんを探していた。

 

地下施設を爆破するとき、レイヴンからハルカが問われた私をもし殺さなければいけないならという話を思い出す。

あの話を聞いたから、彼女は問題の解決のために自分ができることをと必死に探すのだろうか。

レイヴンさんのことを秘密にするのはレイヴンさんが居なくなった方がいいからかという確認までして。

 

「ハルカ」

 

「あ、アル様! 申し訳ありません、何も見つけられずっ!」

 

少し砂にまみれたハルカが私に向けて深々と頭を下げる。

私は彼女にもペットボトルを差し出しながら彼女に顔をあげさせる。

 

「いいのよハルカ、探してくれて助かってるわ。

でも、砂は少し落としましょうか。真のアウトローが砂まみれじゃ格好つかないものね」

 

そうしてハルカの頭の砂を払えば、アワアワと慌てるハルカがまた自分なんかが私の手を煩わせてと言うので、良いのよと言い含める。

 

服を一緒に広げて砂を払って、水を飲む。

隣に立つハルカを見て、最初は彼女を睨んでいたハルカにだから念を押して聞いておきたかった事を私は問いかける。

 

「レイヴンとは仲良くなれそう?」

 

それを聞かれてハルカはまた右を見て左を見てと迷ってから目をつぶって答えようとする。

 

「そ、それはもちろん「ハルカ」は、はいぃ!」

 

だから私は間に挟むように言った。

 

「正直に言っていいのよ」

 

そう言われてハルカは俯いてポツポツと話してくれた。

 

「正直分かりません。

レイヴンさんはアル様に銃を向けました。それに、撃ちもしました。今も許した訳ではありません。

だから仲良くなれるか私には分かりません。

 

ただ、嫌いという訳ではないです……地下で私と一緒に戦ってくれたのもカタフラクトを一緒に乗ったのも、私は良かったと思ってます。

だから、レイヴンさんが倒れてしまったのが621さんに原因があるなら、私は621さんを見つけます。それで、またレイヴンさんとお話したいです」

 

その返答に私は頷く。

そうよね。あんなに睨んでいたのだもの。

同学年って聞いたし、良い思い出があるなら十分、これからよね!

 

「ありがとう。答えづらいことを答えてくれて。私が言うからと思って欲しくなかったの」

 

「そ、そんな。アル様の言うことに間違いはありませんから!」

 

そう強く言ってくれるのは嬉しい。

けれど、私も間違えるから。出来るだけ何でも皆に相談したい。

でも、私は社長だから、それは口に出さずにハルカに自信満々で胸を張る。

 

「ありがとう、ハルカ。そう言って貰えると嬉しいわ。この後も頑張るわよ!」

 

 

「はい! 便利屋はお仕事はきっちりですよね!」

 

そう言ってお水をもう一口飲んで二人でおーっと手を挙げた。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「どう思う?」

 

「どう思うも何も、社長なら大丈夫でしょ」

 

遠目にアルとハルカを見ながら隣のムツキにそう返す。

大方ハルカが無理して同意して自分のために必死なのかと心配したんだろうと考える。

そんな事ならハルカは既に撃っていそうな気がする。

 

「そういうカヨコちゃんはどうなの?」

 

「私?」

 

突然振られた話題。レイヴンと仲良くなれそうかということだろうけど。

 

「どうかな。悪い子じゃないとは思ってるよ。最初に襲ったのは私たちからだし。けど、仲良くとは別かな」

 

ハルカほど必死にとは私はなれない。

ただ、あの子は私を怖がらないし。物怖じしないから話しやすいとは感じてる。

 

「犬耳だったのがそんなに残念?」

 

「いや、なんでそうなるの」

 

私が猫好きだからって猫耳の女の子だと可愛がるかはまた別だろうに。

私は便利屋の一社員だし、アルが決めたならそれでいい。彼女を仲間にするならそれもいいと思ってる。

 

「残念とかそういうのはないよ」

 

「ならどう思ってる感じ?」

 

 

そう新ためて聞かれると難しいけれど……

 

「そうだな……音楽とか聞いたことなさそうだし。布教してみるのもアリかなと思ってるよ」

 

そう答えて、変わらずニヤニヤと笑うムツキにも質問を返す。

 

「そういうムツキはレイヴンのことどう思ってるの?」

 

「えー? 私はねー」

 

もったいぶるように顎に指を当てたムツキは、二歩三歩と歩いてから振り向いて、ニッコリ笑って答えた。

 

「ある事ないこと言って揄ったら楽しそうって思ってるよ」

 

そう言ってアルの方へかけていくムツキの背中。

 

「程々にしておきなよ」

 

そう一応聞かれなさそうな注意だけはしておいて私もその背を追いかける。

 

もう夕暮れが近くなる。

メットさんにまた情報がないかも聞いて、明日に備える必要もある。

誘拐という関係上あんまり時間をかけると相手に有利になる。

 

社長とハルカがあんなに頑張っているし、早く何か進展があれば良いけどとそう思った。

 

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