猟犬烏の青春   作:面無し

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誤字報告、感想ありがとうございます。

よろしくお願いします!
今回はちょっと短めです。


2-33 烏の場所

 

 

 

 

対策委員会の教室には重い空気が漂っていた。

眠ったレイヴン、失踪したホシノ、狙われるアビドス。

 

そして、アビドスで使える戦力は便利屋と対策委員会の四人、先生とメットの10人。

攻め込まれるなら防備として複数人いるし、追いかけるのも見つけるのも複数人が必要。

人数が割に合わなかった。

 

救うなら、ホシノかレイヴンかは選ばなければならない。

選ばなければならないのに、その選択をアビドスの四人は決めかねていた。

 

「私はレイヴンを探す」

 

そう最初に言ったのはメットだった。

 

「私にとって、レイヴンもホシノも恩人だ。ホシノがアビドスの存続とレイヴンの生存を願ってたなら私はそれを実現する」

 

そう宣言するメットにセリカが問いかける。

 

「で、でも、レイヴンは……いいの?」

 

「いいもなにも、ホシノが借金と交換にでなけりゃホシノとレイヴン両方助けたとしても何ともならないんだぞ」

 

メットの意見は当然だった。アビドスの選択にはそもそもの問題としてアビドスの借金問題があった。

それを解決できるだけの理由がなければホシノを助けたとしてもアビドスは保証金と利息でつぶれるのは目に見えていた。

それを対策委員会も理解はしている。しているが、ホシノという長い時間を過ごした先輩を彼女たちは見捨てられなかった。

 

「私は、ホシノ先輩を助けます」

 

次に決めたのはアヤネだった。メットとアヤネの目が合う。

 

「ホシノ先輩はアビドスにとって必要な人です。連れ戻して最後の生徒会の役職の下、シャーレを通じて対策委員会を公認組織にしてもらいます」

 

「レイヴンはいいのか?」

 

「レイヴンさんは……確かに助けたい。ですが、私にはホシノ先輩が……守ってくれと言われたものがアビドスなら、それはホシノ先輩もです」

 

決める二人の間で、他のメンバーは揺れる。

助けたい思いはありつつも、レイヴンへの恐れもある。

ホシノを助けたいのはやまやまだが、借金という壁もある。

 

空気が張り詰める中、先生が手を打ってそれを切った。

 

「皆、焦らないで」

 

 

彼は選択をするつもりはなく、どちらもを救う選択はまだできると考えていた。

 

「ホシノがこの手紙を用意していた以上、何も言わずに立ち去る予定だったはず。

今日一日は皆と普通に過ごして分かれるはずだったんだ。ホシノが相手と合流するには時間がかかる。

ホシノの身柄が確保できない限りは進攻にはまだ時間があるはずなんだ」

 

彼はホシノの行動とカイザーの動きを推理する。

そのうえで今後の動きを考えた。

 

「便利屋の皆にはこのまま621さんを探してもらおう」

 

「ホシノ先輩はどうするの?」

 

シロコが言う。先生は少し考える。今の状態でとれる探索方法は一つしかなかった。

 

「足で探すしかない、何にしても私は生徒を諦めるつもりは無い。皆にも協力して欲しい」

 

彼の目は揺らぐ事なく皆を見つめた。

 

 

*****

 

 

 

 

ヒントがない中でも続けた探索だったが進展はほぼなく、それらしいカイザーの施設も見つけられていない。

アビドスの郊外で広げたテント、夕飯でお腹は多少膨れたけれど、変わらない現状に私の中では焦りのようなものがあった。

 

「砂漠の空って星が良く見えるよね~」

 

ムツキが明るく言ってくれるけれど私はそれに乗れるだけの元気がなかった。

今の私たちに足で探す以上に取れる方法はない。

 

私は社長、こういう時こそシャッキリしていないといけないのに……。

お昼にウォルターさんに誓って、ハルカとも掛け声を出して入れた気合が急速にしぼんでいくのを感じていた。

 

夜空を見上げる。もう夜中のアビドス公害は人も居なくて、夜はとても暗い。

ムツキの言う通り瞬く星はとても綺麗でよく見える。なのに……目的の人は影も形もよく見えない。

 

ふと、影も形も見えないその621さんってどんな人なんだろうと思った。

以前に聞いたレイヴンの故郷の話、人が普通に死んでしまう場所で、そこが戦場なら……という想像はレイヴンにもお仕事をと皆に相談した前日に散々悩んだ事。

 

車椅子でも戦える事はレイヴンの話を聞く限りはわかっていた。

あの地下から持ってきた兵器は乗り物ばかりだったし、操縦が出来るなら戦闘はできるのかしら。

 

私の頭の中ではロボット映画に出てくる人物がコクピットに乗る絵しか浮かばなかった。

それが車椅子で本来は五感がほぼないというのが違うけれど。

 

そんな状態でも戦うような人がいるなんて……私には信じられなかった。

美味しいものはわからない、音楽も聞けない、触れても何も感じなくて、いい香りの香水も楽しめなくて、この星空も満足に見れないなんて。

どんな思いなのだろうかとわかるわけもないことを考えてしまう。

 

そんな人にとっては……戦場でも一つの生きる場所になってしまうのだろうか。

 

(なんだか沈んできちゃいそう……)

 

私は気分を変えるために携帯を取り出す。

 

画面を見て───

 

(壊れてたんだったわ……)

 

見栄を張った最新機種の携帯はあの砂漠の件からそのままで、見事に割れた画面はうんともすんとも動かなかった。

 

「あ! アルちゃんが面白い顔してるー!」

 

「え、アル様! どうされましたか!」

 

「また何か考え込んでたんでしょ。レイヴンのことで」

 

「そうよ! そうなんだけどー!! そうじゃないのよー!!!」

 

叫んで星空を見上げる。

そうして私の叫びが夜空へ消える。

 

 

 

───何か聞きなれない音がしたような気がした。

 

 

 

ぴたりと止まった私の動きに皆が何かと私の顔を覗き込む。

 

「どうしたの、アルちゃん?」

 

「何か聞こえなかった?」

 

ムツキに目をやるがムツキは首をかしげる。

 

「動物か何かじゃないの?」

 

カヨコがそう言って周囲を見渡すが、あれは違う。

何かが動くような音ではない。

何かが金属をぶつけて響くような、耳鳴りのような、そんな音。

私は周囲を見渡す。

 

「わ、私も聞こえました!」

 

その私に、ハルカが手をあげてくれた。

 

「ハルカも聞こえた?」

 

良かった幻聴ではなかったらしい。

けれど、二度目の音は聞こえてこない。

でも、心がはやるような気がする。

 

「近くの建物に上るわ」

 

「え、ちょ。アル!?」

 

「アル様! 方角わかります!」

 

建物へ駆ける私にハルカが方角を指し示してくれる。

手ごろな建物を上った私は示された方角を睨んだ。

 

アビドスの夜の郊外、砂に埋もれた都市の光源は星と月だけ……真っ暗な廃墟が立ち並ぶ場所は真っ暗だ。

そして、真っ暗だからこそ、見える。遠くに何かがチカチカと光っている。

 

「何かいるわ!」

 

皆に手を振って合図して自分のSRのスコープを覗き込む。

チカチカと明滅する光源へ拡大すればそれは何かが発する火花だった。

 

私は胸の中で確信を得る。

きっと、あれが今回の目的の人。

 

「見つけた」

(そうそう、こういう展開を待ってたのよー!!)

 

私は、心の中でガッツポーズしながら皆へと合図を送った。

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