お気に入り500件突破しました。
ありがとうございます!
今後も頑張って書いていきます。
よろしくお願いします!
私は高い建物へ上ってみんなが探してくれてるのを見ていた。
後方支援のメットちゃんやアヤネちゃん、先生まで皆して私を探してくれてる。
レイヴンちゃんを見捨てるって言ったようなものなのに、そうやって探してくれてる事が正直嬉しくて、でも、私の勝手でそうさせて申し訳なかった。
でも、それに見つかるつもりはない。
手紙にも書いた通り、これは私のやるべきことだから。
先輩が残してくれたものを私は、私のすべてをかけて守るつもり。
それにしても──
皆油断し過ぎだとおもう。
あの時、皆が学校から離れていたのを狙って、カイザーはレイヴンちゃんを攫って行ったのに。
レイヴンちゃんの車椅子の方の体が見つかったという連絡があれば皆が学校に戻るからわかるはず。
なら便利屋の皆はまだレイヴンちゃんを保護できてない。
「じゃあやっぱり、私は友達を見捨てることになるんだね」
わかっていたけれどやっぱり辛いことを確認する。
せめても、もう一つの体の方は奪わせないようにしないと。
私は最後のできることとして、アビドスの校舎を眺めた。
誰かがレイヴンちゃんを狙って近づいたなら、攻撃するために。
けれど、眺めていればいるほど。皆とそう言えばあんなことしたなあなんて思いだす。
「ああ、ダメだな……気合を入れないと」
今の状況では、私しかアビドスを守れないんだから。
そうやってもう一度思いを入れてアビドスを見続けた。
思い出の校舎が、白み始めた空を映して明るくなるのを見納めにして目を放す。
後ろにはまだ暗い夜空を残して、私は砂漠へと歩いていく。
アイツらが指定したのは砂漠とアビドスの真ん中あたり。
ここからなら日の出に合わせてつくだろう。
歩きながら、校舎に残してしまった寝たきりの彼女を思う。
「レイヴンちゃん、ごめんね。でも、レイヴンちゃんなら……」
大切なものを失った君なら、私が大切なもののためなら何が出来るか理解できるはず。
そうして私は前を向く。
頭には彼女との最初の日からのことが思い出されていた。
包帯を初めて変えた時のことを覚えている。
いつかの夜におっかなびっくりやったと言ったのは冗談でもなんでもなく本当だった。
包帯の下には無数の手術の跡、それに糸まで残ってるものも多かった。
どう考えたって杜撰な後始末のように見えたそれが、手の先から足の先まで、果ては顔にまであるのだ。
とてもショッキングな見た目だ。
アビドスの皆でやったけれど、途中から全員顔が青ざめていって、一年生の二人なんか途中途中で泣きそうな顔になってたっけ。
何かの拍子に縫合後の場所を割いてしまわないか、ちょっとしたら怪我させてしまうのではないか、そんな不安を感じていた。
実際の所、縫合の糸は丈夫だったし、傷自体も繋がっていたからそんなことは起きないのだけれど、医者でもない医療知識も基本は擦り傷切り傷レベルの当時の私たちにそんなことわかるわけもない。
体を拭くなんてのも怖かったから、濡れタオルでポンポン優しく触るくらいがいいかななんて皆で話したっけ。
目覚めた夜はあの時は私はちょっと焦っていた。
全く目覚めない君に何がしてあげられるのかっていうのと、このまま死なせてしまったらどうしようなんて考えて。
黒服がいたのを見ていつ以来か本気でやり合うつもりでいたっけ。
あの時、君が目覚めたのを見て本当にほっとした。
乞われて握った手は暖かくて、ああ、もっと頑張ろうなんて一人で勝手に思ってたんだ。
ウォルターから頼まれたという以外に、私は、目の前でボロボロの君を守ることで……なんというか庇護欲みたいなのかな、感じてたんだ。
君は私が守らなくちゃって、今のアビドスを守らなくちゃって思うみたいに。勝手だけれどね。
だから、あの動ける体できてくれたのは面食らったよ。
二つ体があるとは聞いてたから、もう一人いるんだとは思ってたけれど、こんなに早く会うなんて思ってなかったから。
しかも、大人と一緒っていうのはいただけないって思ってたっけ。あの時は私も先生を警戒してたしね。
でも、だからレイヴンちゃんと二人きりで話せる機会を作って、秘密を共有したのがすごく特別な気分だったんだ。
お互いのあんまり触れたくないことを、お互いだけ持ってるお友達っていうのかな。
私って同学年いないからさ、レイヴンちゃんも学年としては年下だけれど、なんというか後輩じゃない友達っていいなって思ったんだ。
まあ、その秘密を利用されちゃったから……情けない限りだよね。
多分、皆レイヴンちゃんの過去を知っちゃったよね。秘密にしてたのに。
私がレイヴンちゃんと621さんは同一人物ってさえ一言言えば、昔のことを知られたりなんかなかったかもしれないのに。
先生はきっと君の過去を受け止めてくれると思ってる。
でも、うちの後輩ちゃんたちがどう思うかが心配なんだ。
皆優しいからさ、優しいからこそ、レイヴンちゃんを怖がらないかが。
君にはさ、メットちゃんっていう新しい後輩まで作ってもらったと思ってるんだ。
最初は私も彼女を受け入れていいか迷ったけどさ、彼女いい子だしね。
最初の弾薬とかも、本当に助かったんだ。
じり貧だったから私一人で乗り込んでって略奪とかするしかもうないかななんて思ったりしてね。
そんな風に先生と一緒に色々してもらったのにさ、後輩には過去を知られたり、連れ去られてしまったり、挙句には助けられもしないなんて、申し訳ないよ。
───足を止める。
ついこの間見た、デカいロボットがまたふんぞり返っているのが見えた。
あんな奴の会社に入らないといけないなんて、本当最悪だ。
でも、それなんかより、私は今からアイツに伝えないといけないことの方が最悪。
───憂鬱な気分のまま私は足を進める。
最後にレイヴンちゃんとしっかり話した内容って何だったかな。
ああ、風紀委員会の来た日の朝の会議が最後だっけ、犬耳について聞いたとき。
モフモフしてて、シロコちゃんとおそろいでいいななんて思ったっけ。
皆で詰め寄って、淡淡しているレイヴンちゃんを見るのは楽しかった。
でも、その後は色々あったから。話せずじまいだっけ。
風紀委員長ちゃんには対応悪いことしてしまったなと思ってる。
黒服の件があったとはいえ、威圧感マシマシで話しちゃったし。
焦っているといけないね。周りが見えなくなって、考えが浅くなる。
そうして、君を取りこぼす。
もうすぐ日の出が来る。
───ロボットの男の前に私は立った。
「偉い人がわざわざ来てくれるなんて、ありがたいね」
「大事な取引だからな」
取り巻きも大勢連れて、カイザー理事と名乗った男は相も変わらず自信満々な様子で私を見下ろしていた。
「たしか……『私の身柄と引き換えに、取引をしたい』だったかな?」
「私の身柄と引き換えにアビドスの借金をなかったことにしてほしい」
元が私が持ちかけた不利な交渉。勝算はあるとはいえ、私は相手を怒らせたりしないようにできる限り言葉を選んで話す。
「ふーむ、君の身柄にアビドスの借金と同額の価値があると?」
事前の連絡で分かっているだろうに、わざわざこの男は私に聞くのかと思いつつも私は説明した。
「黒服とお前たちが手を組んでいることは知っている。手を組んでるだけで、仲間でないことも。
黒服は、アビドスの借金と同額の価値を私に見立てていた。私は……その分だけのアイツとの手札になる」
「なるほど……確かに得があるようにも見えるが、それでいいのかな?
確か一人君の学校から連れ去られたとかいう情報が入っているのだが……」
お前が攫ったんじゃないかと叫びたくなる。
けれど、私は手を握ってそれを我慢する。
「我々であればその人物の場所もわかるだろうが……君はその人より、アビドスの方が大事ということかな?」
「そうだよ」
「そうか、ではしっかり言質を取っておかねばな。行方不明の仲間より、あの学校の皆の方が大事だと」
わざわざ言わせたいなんて悪趣味なこいつに腹が立つ。
でも、その選択をしたのは私だから。
私がそうすると決めたから。
眉間にしわが寄るのを自覚しながらも、私はゆっくりと口に出す。
「私は、いなくなった子よりも、アビドスが大事……だから、私と引き換えにアビドスの借金をなかったことにしてほしい」
「お前は、そいつを見捨てるんだな?」
殴りつけてやりたかった。
私はできるだけ息を整える。
目をつぶって、レイヴンちゃんを思い浮かべた。
あの凛々しくて、無表情な、私の友達。
「そうだよ。私は、レイヴンちゃんを……見捨て───
「その必要はない、ホシノ」
声と共に風が吹く。
目を開けば、目の前を舞うのは烏の羽。
───背後を振り返る。
大きく開いた翼が見えた。
朝焼け日にキラキラと輝く夜色の翼を広げて彼女が立っている。
「な、お前なぜここにいる!!」
ロボットのそんな驚いた声がする。
「レイヴンちゃん……」
私は思わず彼女の名前を呼んだ。
彼女は頭上の惑星を赤く光らせて、優しく私に微笑んで言った。
「おはようホシノ、迎えに来た」
レイヴン復活!!
レイヴンの基本の体に関してはアビドスでかけそうですね。
他に決めたやつは他の章になる予定です。
次回はレイヴン回の予定