今回もよろしくお願いします。
「そろそろ、退いてほしいなあ、レイヴンちゃん!」
「こちらの台詞だ。そろそろおとなしく待っていろ、ホシノ」
ホシノはレイヴンへ盾を前に向けながら突撃し、何かしらで拘束できないかと動く。
しかし、翼も生えたレイヴンは持ち前の脚力による跳躍と空中機動によってそのすべてを躱す。
レイヴンはレイヴンで周りの奴らを手当たり次第に攻撃しようとするのをホシノが妨害し、その周りの取り巻きからの攻撃への対応もあるとして攻めきれない。
(ホシノ……)
(レイヴンちゃん……)
やはり強い───というのがお互いに対する感想だった。
戦闘中の身のこなしからして、レイヴンはホシノが強いとあたりをつけていたし、ホシノはホシノでレイヴンの強さはマーケットや風紀委員戦の内容を聞いて知っている。
「それだけの強さがあるなら、皆で手を組めばいい」
「手を組んだとして何とかならないことだってある。レイヴンちゃんならわかるでしょ」
問答も先ほどから埒が明かないとレイヴンは考えていた。
それはホシノも同じだった。周りでちょこまかと援護のようなものをしてくる取り巻きだが、ホシノのタイミングに合っていない。
どころか、場合によってはホシノの方を狙ってくることもあった。
(私が目的だから当然か……場合によってはレイヴンちゃんも)
レイヴンを退かせるのがやはり第一条件だとホシノは考える。
レイヴンがいるならアビドスのメンバーも時間そうなくここに来る。それに合わせて雲隠れできるようにしなければならない。
(なら……取り巻きは減らさないとかな)
数がこのままいればアビドスとの合流時にアビドスの皆とも戦闘になることをホシノは危惧していた。
レイヴンの攻撃を今は妨害はしているが、それもレイヴンの実力も相まってボロが出だしている。
「退いてろって、最初に言ったもんね……」
そうつぶやいて、ホシノはレイヴンのカイザーを狙う銃口から身をかわした。
レイヴンは迷いなく一人を打ち抜いて、ホシノに目を向ける。
「気が変わったか?」
「都合が悪いと思っただけだよ」
そうして、戦局が変わる。
レイヴンの範囲攻撃、手りゅう弾等をホシノはあえてカイザーの取り巻きへ返すようにしたりして人数を調整していく。
それを見て唇をかんでカイザー理事が怒号を飛ばした。
「お前ら何やってる! 二人相手に、しかも取っ組み合いしている相手に!!」
ホシノがレイヴンと相対するならと漁夫の利を狙っていたが故の声だった。
レイヴンの登場に面食らっていたカイザー理事だったが、戦闘が始まってしばらく、勢いを取り戻しかけてきた彼は取り巻き連中の不甲斐なさに辟易していた。
小娘二人、しかも喧嘩中である。人数的にも有利であることは明らかなのに、ここまでてこずることに彼はイライラしていた。
「あんな小娘がイレギュラーだと? 笑わせる」
一度拘束を解いたくらいでとカイザー理事は思っていた。
周りの取り巻き達さえしっかりしていれば両方の得をとれるはずだと彼は考える。
黒服の忠告を無視して。
「そろそろ、おとなしくして!」
「断る……その盾、いいな」
「っ、だめ────
理事が見ていた戦闘のさなか、レイヴンは自分を掴もうとしたホシノの盾を蹴る。
その跳ぶ先には取り巻きへとヤジを飛ばすカイザー理事がいた。
「死ね」
レイヴンの銃口が理事へと向けられる。
何が起きたのかを理解する間もないカイザー理事へその銃撃が放たれようとして、後ろから追いついたホシノにレイヴンは投げ飛ばされた。
勢い余ったホシノは止まるついでにカイザー理事を蹴り飛ばす。
「がっ……ぐ……」
転げた理事に向けてホシノは怒鳴った。
「どけって言っただろ!」
「人を蹴り飛ばしてなんだその言い方は!」
そう勢いよくホシノにかみつくが、今度は頬をかすめた弾丸に、理事はひっと声を漏らした。
つい先ほどまで目前に迫っていたレイヴンの脅威を彼は理解する。
「クソッこの私があんな小娘に……! お前ら何をやっている! こうなったら……」
腑抜けた腰のまま、理事は声をあげる。
無様だなと思いつつレイヴンは考える。
レイヴンの目的であるホシノの連れ帰りだけであれば、この場でカイザー理事さえ殺せれば最悪達成できるつもりだった。
(悪いが、お前を連れて帰るために、お前には死ぬ気で私を止めてもらうぞ、ホシノ)
戦闘前、レイヴンが言ったことは事実だった。
彼女はこれからも人を殺さなければならないなら殺せる人間である。
ゆえに、彼女にそれをさせたくない普通の生き方を望むホシノの行動はレイヴンにとって都合がよかった。
「ホシノ、お前に私は止められない。
誰かを殺して、救いたい人を救えるなら」
「させない……君にもう、そんなことはさせない」
戦闘は続けられ、少しずつ戦局は動いていく。
(失敗した……今度は減りすぎてる……)
ホシノは調整が崩れだしていることに気づいていた。
取り巻きを庇い、数の調整を考え、攻撃せずにレイヴンを抑えることを考える。やる事の多さが理由の一つ。
そして、その制限された動きを学びとるのに、空中での起動も追加されたレイヴンに時間が要らなかった事が理由だった。
地上でしか動けないホシノに対して、空中での移動がある程度可能なレイヴンは圧倒的有利となる。
故に、先生や他のアビドスメンバーが遠目に二人を確認した頃、取り巻きは全滅、レイヴンとカイザー理事の間にホシノが立つのみとなっていた。
*****
周囲のある程度減らそうと思っていたカイザーの取り巻きはいつの間にかほぼ全て気絶していた。
雲隠れする時の足止めに使いたかったけど、相手がレイヴンちゃんでは仕方がない。
でも、これで守るのはもうカイザーの理事一人だけ、ここまでくれば私は最悪庇うだけでレイヴンちゃんを止められる。
レイヴンちゃんもそれは理解してるはず。
私の目にはレイヴンちゃんがそれを理解してか少しだけ目を細めたのが見えた。
「通さないよ、レイヴンちゃん」
レイヴンちゃんにそう呼びかける。
私を見据えて、そうかと一言呟いた。
そして────
「やってみろ」
その平坦な声とともにレイヴンちゃんが私を見据える。
その目に今までにない心臓を掴まれたような錯覚を覚えた。
思わず乾いていたはずの口からさらに唾を飲み込むような動きを無意識にしていた。
この緊張が、心臓の感覚がレイヴンちゃんが戦場で負っていたものなのだろうか。
なら、きっとこれが最後、私がここで抵抗出来なきゃレイヴンちゃんはキヴォトスで引き返せなくなる。
私は先輩の盾をしっかり握り直した。
死にに行くつもりでカイザーに行くんだ。
友人ひとりくらい止めれなくてどうするのか。
竦む足に力を入れる。
真っ直ぐ私に向かって駆けるレイヴンちゃんを、私は見つめた。
*****
私はホシノの目を見据えていた。
ここでホシノさえ何とか突破すれば、走るか隠れるかしかできないカイザー理事など、残った手りゅう弾も散弾も全部ぶち込んでスクラップにしてやれる算段だった。
理事さえ消えれば、引き渡しは失敗し、ホシノはアビドスに帰るしかない。
あとは私が、カイザーという企業を焼くだけにできる。
目の前で構えられた盾に突っ込む。
そのまま、それを足場に斜め後ろに跳ぶ。
翼を広げて滑空しようとした目の前に……ホシノ。
体をひねり、空中で回転する様に受け流す。
くるりと反転した視界の先、空中で盾を足場にする彼女が見えた。
「つかまえ───
「甘い」
盾を足場に、私に飛び込んだホシノを見てから、翼を閉じる。
重力に従って落ちる私を、跳躍によって飛び上がるホシノは捕まえられない。
そう思った私の視界に砂が映った。
「なっ───
AC戦では通常あり得ない、視界不良。
そして、さっきまでの戦闘では使われてこなかったアビドスのどこにでもある砂。
戦闘で今まで一度も意識しなかったそれに私は対応できず、不意打ちを受ける。
そして、この体になって、肉眼での視界不良を私は初めて経験した。
「くっ」
ふさがれた視界に私は思わず身をすぼめて空中で回転する。
ただ、これがいけなかった。
目が塞がったせいか、落下するような感覚以外の方向感覚がなくなったのだ。
ホシノの位置がわからない。そんな私の手を誰かがつかむような感覚がした。
「やっと、捕まえた」
私は腕を振り払う。けれど、逃がさないというように組み付かれる。
いつかの委員長との戦いのように、私とホシノは落ちていた。
このままでは地面に当たる。私は翼を広げる。
空気を掴みできるだけ速度を殺しながら空中でホシノを振り払おうと格闘する。
「はなせ!」
「離さない!!」
もつれるように地面につく、直前私の視界がうっすらと戻る。
私は一発だけと念じて私とホシノの間で手りゅう弾のピンを抜いた。
「なっ」
爆風を受けて、私とホシノの体が離れる。
直撃した爆風で体が痛むが、そんなことはどうでもよかった。
着地した地面を蹴って、戻った視界からカイザー理事を見つける。
私と、理事の目が合った。
「殺す」
「ひっ」
視線に、理事が小さく声をあげたのがわかった。
私は走る。足音から、ホシノが私の後方にいるのがわかっていた。
私は左腕のパルスブレードを意識する。
これなら、一撃、一撃だけでいい!
「起動!」
『メイン……テム……起動』
マーケットから動かなかったそれが、光の剣が現れる音がする。
「ダメ!!!!!」
私はそれを理事へと振り上げて────
「アロナ!!」
目の前を通り過ぎる、先生の端末───その防壁に弾かれて、吹き飛ばされた。
先生は原作でもそうですがハピエンを呼ぶ人の予定です。
レイヴンは……先生とは違う特異点の予定※設定が物語で出せるかは不明