感想、ここすき等ありがとうございます。
よろしくお願いします。
「ここへの攻撃はいつ始まってもおかしくない」
アビドスに帰って、便利屋、対策委員、先生、レイヴンと揃っている前でメットさんが言った。
と言っても、レイヴンはほぼ意識が朦朧とした状態で、車椅子の体と隣り合って遠くを見つめていた。
私は内心すごく混乱していた。
(621さんを颯爽と連れて帰って、皆で迎えてって流れじゃないの!?)
最初に621さんを見つけた時にウキウキで用意していたキメ台詞も、諦めムードだったホシノさんに言うための台詞も、先生に負ぶわれたレイヴンや、車椅子の壊れた621さんや、ホシノさんもそのまま連れていかれたと聞いた中で言える台詞では当然なく。
「車椅子の621さんを連れて帰って来たと思ったらそんなことになってたなんて、驚いたわ」
そう見栄を張って、冷静な振りをして言うしかなかった。
しかも、しかも、レイヴンがこの状態な理由を聞いたら───
「レイヴンの本体が621なんだよ」
なんて先生から言われて……フフッ
(なんですってえーーーー!?)
そう言う話はもっと事前に聞きたかったわね!? なんてホシノさんのことで頑張っていた皆に言えるはずもなく。
(もっと、もっとそう言うのはレイヴン自身からシリアスで友情を感じさせる雰囲気で聞くものじゃないのかしら!?)
『便利屋の皆、信頼する皆にだから、話たいことがあって……』
(みたいな!!!)
さらに、さらにはその背中。
(翼生えてるーーー!?)
何、その何かのキッカケで生えましたみたいなの。
(黒いのが格好良くてちょっと羨ましい……じゃなくて!)
なんて右往左往する心の叫びは表に出さないように努めて、できる限りで対面を保ちながら私は冷や汗を流していた。
顔が崩れそうなのを頑張って保っていれば、カヨコとムツキが先生に追加で聞いてくれた。
「防衛線は皆でやるとして、相手の戦力の把握と車椅子の修理はどうするの?」
「そうそう、車椅子もレイヴンちゃんからしてリミットまでないと思うけど……」
それはその通りだ。結局私たちであのレイヴンの車椅子に太刀打ちできる人材はいない。
ミレニアムなんかに人を呼びに行くにしても今度は時間がかかり過ぎる。
しかも、もし人が来れても今度は修理用の機材も資材もない。
そう言われた返答にアビドスの皆は詰まっていた。先生も────
「ミレニアムの子に連絡を取ろうとはしてる……ただ返信がまだない」
それを聞いて、私は状況がかなりまずいという確信がどんどん詰みという文字に変わっていくのを感じていた。
カヨコは続ける。
「退却時に攻撃のことを話せば、ホシノは来てくれた可能性はないの?」
その可能性は私も考えた。ただ、状況を聞く限りはできないと私は思っていた。
そして、私の答えを肯定する様に先生は答えてくれる。
「来てくれた可能性はある。いや、絶対来ると思う。
ただ、相手がレイヴンの世界の兵器だっていうのが悪かった。
武装も豊富、人からして巨大すぎる図体で飛行可能な機動力。
砂漠という回避するには面攻撃に不利な地形は相手に有利だし、劣化のコピー品とはいえ短時間で片付けられない。
それに、取り巻きもあの場にはいた。レイヴンが行動可能なら、パルスブレードがあるからその手もありえたかもしれないけれど……」
「行動不能のレイヴン、かつ制限時間不明の中、時間のかかる相手との戦闘はどうしようもないって事ね」
先生は小さく頷いた。真剣な表情の先生、その手が強く強く握りしめられていることに私は気づいていた。
顔には出さない彼の気丈さが良くわかる。
少し間を開けてからいいかしらと皆に告げる。
「まずは、メットさんとアヤネさんが機械類は詳しいわよね? レイヴンを頼める?
家は基本戦闘面のメンバーになるでしょうから学校外にトラップを仕掛けておくわ。
学校内はアビドスの皆に頼むわ。それでいい?」
「分かった」
メットさんの返答とアビドスの皆が頷いてくれたのを確認して、私は始めましょうと手を打つ。
正直、私には返って来てからのアビドスの皆の態度も気になっていた。
心ここにあらずというか、気持ちと頭がズレてしっかり考えられていないというか。
さっきの仕切りも、本来ならアビドスの人がやるべきなのに。
ホシノさんが行ってしまったというのがあるとはいえ、何かがある……とは思いつつも、私は立ち上がる。
「行くわよ、レイヴンのことは心配だけれど、私たちにできることをしましょう」
「はい!」「了解」「おっけー!」
三人の返事を聞いて、委員会室を出ながら私は考える。
621さんとレイヴンが同一人物以外の秘密が何かあるわね。
そうでなければあの態度がおかしい。教室に入ってから誰もまともにレイヴンの方を見ないなんて。
(いいわ、防衛の準備が終わったら聞きましょう。きっと、ホシノさんが最初にいなくなったことにも関係するはずだし。
私はハードボイルドなアウトロー、華麗に攻撃もいなして、レイヴンもホシノさんも助けてやるんだから)
私はぐっと胸の前で手を握った。
*****
私は自分にあてがわれた部屋で自分を思い切り叩きのめしたい気分になっていた。
けれど、アロナもいる手前、そんなことはできない。
努めて冷静を装って、私はモモトークを開く。
ユウカに送った連絡には、既読がまだついていない。
レイヴンの状況も、ホシノの状況も、借金への対応も、後手に回っている自覚があった。
生命維持のための車椅子が必須の関係上急ぐべきはレイヴンで、さっきカヨコに言った撤退した理由も本当ではある。
けれど、あの場で生徒であるホシノを行かせてしまったというどうしようもない事実に、私は自分への怒りではらわたが煮えかえる思いだった。
深く踏み込まない、生徒の自主性に任せる、いいことだと信じている。
けれど、それで上手く皆を導けない自分が不甲斐なかった。
だが、自分の怒りに時間を使う暇はない。
私は息を整える。
レイヴンのこと、ホシノのこと、借金のこと、それぞれで私にできることがいくつかある。
私はホシノの退学届けを持って、アロナへと声をかける。
「アロナ」
「はい先生!!」
びしっと敬礼をしてくれたアロナにできる限りの微笑みを返して、私は伝える。
「まずは、レイヴンの車椅子のヒントを見つけよう」
私は校庭の黒鉄の残骸を目にやる。彼女を考えて踏み込んでこなかった場所。
だが、彼女の過去を知って、彼女の命が危機の中、踏み込まない等と自分に綺麗なことは言えない。
生徒の味方を名乗るなら、生徒に綺麗ごとを言うために、まず私は私を曲げられる人間であるべきだ。
『シッテムの箱』そして信頼する生徒の一人、アロナならそれができるはずだから。
*****
拘束されて車体に揺られながら、私はレイヴンちゃんのことを考えていた。
『待って! 行かないでホシノ!』
そう呼んでくれた彼女の心配をする。
きっと先生や皆がいるから大丈夫だろうとは信じている。
けれど、どうしても心配をせずにはいられなかった。
きっとカイザーに攫われて拘束されたところから無理矢理脱出したんだろう。
大方扉でも車椅子でぶち破って。
あの子をあのまま放置するのは危険だ。
最初に皆で621さんの状態見た時から分かっている。
車椅子に何かあったら、場合によってはさっきの場所からアビドスへ帰るまででも危ない。
先生が私を行かせてくれてよかったと私は安堵していた。
普段私と喋ってくれてる時には見たこともないほど眉間にしわが寄っていたのを見て、そんな選択をさせたことを申し訳なく思った。
(でもこれで……アビドスは)
アビドスは守れたんだ。先輩から託されたものは。私がしっかり守れた。
そう、思った時だった。
ずっと進んでいた車が砂漠の真ん中で止まる。
「急に何?」
止まった車の前の席、自分だけずいぶんと豪華な椅子に座るカイザー理事へ私は聞いた。
「何、ついたから止めたまでだ」
そうして連れらて降りた先、何もなかったはずの所に現れた施設と兵器たちを見て、私は自分の愚を悟った。
(なんだ、嫌に警備というか、兵器が外に出てる……)
そう思ってみたところで私は気が付いたのだ。
これで終わったとすっきりした頭だから、一気につながったのだと思う。
黒服が私のスカウトからレイヴンちゃんの秘匿でアビドスの返済に切り替えたのはさっきみたいにレイヴンちゃんは何かを覆せるから。
カイザーと黒服が手を組んでるだけというのはわかってる。なら、今のこの私の誘拐はカイザーの独断。
ヘルメット団を雇っていたのはカイザーの方だったことを考えれば、この兵隊を動かしているのもカイザーの手によるもの。
なんでこれだけの兵力が……? と考えたところで私は自分の失態に気づいた。自分という生徒会の重さに。
(対策委員会に決裁権を正式移行してない……私は、何をやっているんだ)
過去の思い出に、先輩との生徒会のことをそのままにしておきたくて。
ずっと、胸の奥の大事なところに置いておきたくて、生徒会という学校の最高権力が移行するという対策委員会の公認を私は行っていない。
ただ、置いて、設立して、皆で笑っていられる場所みたいに置いただけ。
そこの中身を、私は自分だけにしまって動かさなかった。
借金の返済にレイヴンちゃんのことと、大事なものに気を取られ過ぎてまた失敗したのか……私は。
私を呼び止めていた彼女を思い出す。
『ホシノがここでカイザーに渡って、いい結果になるとは思えない』
本当に彼女の言いう通りだった。
黒服の条件をのんだ時から何を経れば私は学ぶのか。
私は自分の眉間にしわが寄るのを感じていた。
何が守るだ、レイヴンちゃんに迎えに来てもらって、守られたのは私みたいなものじゃないか。
何が殺させたくないだ。結局来てくれた彼女に救われたのは自分のくせに。
私が、彼女へ言い返せることなんて一つもなかったのに。
本当に、わからずやだ。
……ごめんね。レイヴンちゃん。
でも、だからこそ。私は私に言いつける。
一度目をぎゅっと瞑り、一呼吸して開く。
────今決めろ、抗うことを。
目の前の助手席でふんぞり返っている男の背中を睨みつつ、私は考える。
(アビドスは先生がいる。防衛線なら今は便利屋の皆もいるから大丈夫なはず。
それよりも皆の気がかりはレイヴンちゃんのはずなんだ……でも、これに関しても大丈夫なはず)
私は背筋を伸ばす、ここに来るまでに自分のやってきたことが無駄ではないと確信した。
それよりも、私がやるのは今からだ。私は、レイヴンちゃんがあの時来てくれた時を思い出す。
拘束されていたのに来てくれた彼女、閉じ込められたのに脱出した彼女。
あの車椅子の彼女にできたのだから、多少敵が多かろうが、拘束されていようが、私にできない道理はない。
私があがいて時間を稼ぐほど、皆がここに来やすくなる。
私は自分の手錠を確認する。
三重にかけられた特別性、ノノミちゃんでも解けないだろう。私には到底できない。
そもそも今の私は非武装だ。歩くと走る以外でできることはジャンプでの立体軌道くらい。
ゆっくりと連れられながら、私は周囲を観察する。
おそらくと、私はレイヴンちゃんに思考を巡らす。
(皆来る、先生もレイヴンちゃんもきっと来る。私がしてないといけないのはなんだ?)
人型のあの兵器の対応は必須になる。他の兵器の対応もしながらだとみんな苦しい戦いになる。
レイヴンちゃんのブレードは強力だけど、結局レイヴンちゃんは一人しかいない。
場合によってはあれはレイヴンちゃんが一人で相手することになる。
ハッキングができればいいけど……私にそんなスキルはないし、武器もない。
でも、武器だけなら目の前の施設にある。爆薬もあるはずだ。
拘束を何かで外せれば、私ならなんとかできる。それだけの自信がある。
私が───いや、私もやるんだ。皆きっと来てくれるから。
先生のムーブが難しい……原作だとよく言われますが複数人格いるんじゃないかみたいな時がありますよね。
一応生徒第一先生の動きにできているように掛けたらと頑張ってやっていきます!
今後ともよろしくお願いします。
また原作とは、違う流れになりますね。よろしくお願いします!!
レイヴンがいるからね、特異点は皆に少しずつ影響しちゃうってイメージです。
原作も先生には皆ほだされてるし。そんなかんじです。