猟犬烏の青春   作:面無し

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いつも感想ありがとうございます。

余裕を見て返信していきたい…


アビドス編
2-1 アビドスの挨拶


 

 

「はい、レイヴンこれ」

 

「これは……身分証ですか」

 

先生に手渡されたIDカードを眺める。

シャーレのマークと私の顔写真の入ったカード。

姓名欄には私の名乗ったレイヴンという姓名の欠片もない名前が記載されていて、

カードに映った私は自分でも驚く程の無表情だった。

 

それを見ながら『旧世代型は感情が起伏が乏しい』と言っていた飼い主の言葉を思い出す。

G5のイグアスは良く喋っていたような記憶があったのだが、何かが私と違うのだろうか。

私も色々と考えて、感じているつもりだけれど、こうも無表情であれば、表情の練習をした方が……良いのだろうか。

 

「うん。これからどこかにレイヴン出かけるときに私が毎回ついていくことはできないし、

身分の証明っていうのはどんなところでも色々と入用になるからね」

 

考えている上から先生が言葉をかけてくれる。

確かに、ミレニアムに行くときも先生が身元の証明をやっていたし、

ウタハのところに行くならこれがあったほうがいい。

そう考えて眺めていて気付いた。

 

「一年生?」

 

「ああ、うん。レイヴンの年齢聞けてなかったでしょう?

とりあえずは一年生で作ったんだ。ダメだったかな?」

 

「いえ、問題ないです」

 

問題はない……が口調やもろもろを改めないとなと少し思う。

ウタハやユウカに今度あった時は頑張って丁寧に話してみようと、そう思った。

 

そうして、身分証を眺める私を見ていたかと思うと、先生はちょっといいかなと私に呼び掛けた。

 

「急だけれど、私は出張に行くんだ」

 

「出張、ですか」

 

先生はいつもなにやらと忙しいのは知っている。

私が文字の練習をしたり、ユウカ……先輩から算数を教えてもらっているときも、

唸りながら書類の山を崩しては呼び出されて出て行くのを繰り返していたからだ。

今回はいつもより遠くに出かけるらしい。

 

「うん。アビドス高等学校って学校でね。物資もないし、襲われてるらしいんだ

元々はすごく大きい学校だったらしいんだけど砂漠化なんかもあったみたい」

 

先生から聞く限りのその学校はかなりの危機らしい。

というわけでと先生は手を打つ。

 

「ということで、行ってくるよ」

 

「今日から、ですよね」

 

「うん。身分証を今朝渡したのもそのため、間に合ってよかった」

 

そう言って先生はあらかじめ準備してたであろう荷物を背負う。

私は留守番…一人か。

 

「レイヴンは好きに過ごしてね、私の居ない間もユウカたちは変わらず来るって聞いてるし」

 

そう言って、先生は私に笑いかけてくれる。

私は残されることに寂しさを感じる。

 

「レイヴン?」

 

思わず私は先生の服をつかんでいた。

 

「私も先生と行く」

 

 

 

 

 

 

一緒に行く選択をしたのは失敗だっただろうか。

先生に私の分の荷物も用意してもらってシャーレを出発しアビドス自治区に入って数時間。

 

「先生、アビドスってあとどれくらい?」

 

「えーえっとー……」

 

私の問いかけに先生は気まずそうに言葉に詰まっている。

つまり、まだしばらくはこのままということだろう。

ここに来るまでの最初の方に先生から聞いた「アビドスは広いらしいよ」がここまでとは思わなかった。

 

どこまで行っても無人の街。これだけ広くて誰もいないならACの運転も気を使わなくていいだろうなと、

したこともない気づかいを考えながら日に焼かれる。

 

アビドス自治区は砂漠化の影響か気温はかなり高く、じりじりと焼かれるような感覚がする。

 

何処かの取り立て屋の人もこんな感じの感覚だったのだろうかと少し思った。

あれは溶鉱炉だったはずなので、私はこんがりというよりは干からびる方向だろうが。

 

「ごめん……レイヴンここまでとは」

 

「大丈夫」

 

気温に関しては特に苦と思ってはいなかった。

今まで死んでいた感覚があることを感じられて個人的には満足している。

しかしこのままではまずいだろうとも自覚している、誰か一人だけでも会えたらと思っていると後ろから何かの走る音がした。

 

シャー

 

自転車と女の子だった。

軽快な音を立てながら通り過ぎていく彼女に一瞬固まってあわてて先生が声をかけた。

 

「あ、君!!」

 

通り過ぎた自転車がぴたりと止まる。

振り向いて返って来てくれた女の子は私たちに問いかけた。

 

「どうかしたの?」

 

「道に迷って、アビドス高等学校を知らないかな?」

 

「もちろん知ってる。私の学校」

 

先生の問いかけに灰色の髪をした女の子は答えてくれた。

 

「見たところ連邦生徒会の人みたいだけれど……用事?」

 

灰色の髪を揺らしながら彼女は首をかしげる。

髪の上の……犬耳?がピコピコと動いきながら、

その瞳は私たちを興味深そうに見ている。

 

「支援物資を渡しに行く」

 

そう答えて私は背負っていたバッグを揺らした。

女の子は納得したように頷いてくれた。

 

「支援物資……もしかしてシャーレの?」

 

「うん。シャーレ顧問の先生です。よろしくね」

 

「私は二年の砂狼シロコ、そっちの子は?」

 

シロコ……先輩の目が私を見る。

 

「レイヴン……です。よろしく……お願いします」

 

「ん、よろしく。話しづらい?」

 

挨拶をすると、シロコ……先輩がそう言ってくれる。

けれど、話しにくいとも言いづらく黙っていると察してくれたのか大丈夫と親指を立ててくれる。

 

「口調は人それぞれ、気にしないでいい」

 

そう言われてちょっと悩んでからもう一度口を開く。

 

「ありがとう。シロコ、よろしく」

 

「ん、よろしく」

 

あんないするねと、シロコはそう言ってくれて。

焼かれる太陽の下なんとかアビドス高等学校に着けたのだった。

 

 

 

 

「シャーレの先生!?」

 

「支援要請、受理されたんですね☆ 良かったですね! アヤネちゃん!」

 

「はい。これで援助も受けられます!」

 

送ってもらったアビドス高等学校にて先生が自己紹介すると、

案内された教室にいた四人は物資の到着を喜んでくれた。

 

「よかった……そういえばホシノ先輩は?」

 

「学校にはいるはず、呼んでくる」

 

黒髪ツインテールの女の子がそう言うとシロコはホシノ先輩を呼びにかけていき、

残ったメンバーのうち黒髪の女の子が丁寧に自己紹介をしてくれた。

 

「私は一年の奥空アヤネと申します」

 

そう言ってくれたアヤネの横でベージュの女の子が手をあげる。

 

「はーい、二年の十六夜ノノミでーす☆そして、こっちが~」

 

「一年の黒見セリカよ」

 

ツインテールの女の子もしっかりと自己紹介をしてくれた。

私も自己紹介を返す。

 

「レイヴン。よろしく。アヤネ、セリカ、ノノミ……先輩」

 

「ノノミでよいですよ~」

 

「ありがとう」

 

 

口調を頑張らないといけないなと改めて思いつつ

シロコが連れてくるといった先輩の名前を意識する。

 

昨日の夢に出てきたピンク髪の女の子。

彼女がここにいるならと私は思考を巡らせる。

 

黒服が言っていた。私のもう一つの肉体。

ルールによって分かれたもの。

良くはわかっていないが、今からくる人があの小鳥遊ホシノであれば、私もここにいるはず。

 

そう考えながら待っていれば、待っていた声が聞こえる。

 

「ホシノ先輩、こっち」

 

「待ってよシロコちゃ~ん、もうちょっとおじさんに優しくしてほしいな~」

 

「でも、自己紹介は大事」

 

ガラガラと開けられた扉からシロコにつれられた女の子が押し出される。

髪を見て確信した、彼女はあの小鳥遊ホシノだ。

 

「やあやあ、小鳥遊ホシノだよ。よろしくね」

 

「私はシャーレの先生だよ。よろしく。ホシノ」

 

眠る前の私に語り掛けてきた時と同じふにゃふにゃとした声でそう言って先生とホシノは挨拶をした。

ホシノの目が私に向く。

 

「そっちの子も、お客さんだよね?」

 

「私はレイヴン。よろしく、ホシノ……先輩」

 

私の自己紹介にホシノが少し目を細めた気がした。

 




初見の時からですが溶鉱炉の彼は不憫だなあと思いました。

アーマードコア側のネタもできる限り組み込んで行きたい所存…
次回は週末くらいになる予定です。

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