猟犬烏の青春   作:面無し

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いつも感想ここすき等ありがとうございます!!

よろしくお願いします!!

タイトルは確定事項なのでネタバレではない……そういう認識です。


2-49 カイザーPMC敗北前夜

 

 

 

 

 

「見つからなかったね。入口」

 

「はい、ネットワーク上でも見つかりませんし、おそらくは……」

 

「基地の外、だよねえ」

 

潜伏場所で何度目かの休憩を取る。

MTやアイビスの保管庫を探してもう日暮れ、成果は全くだった。

ついでのようにやっていたカイザーへの嫌がらせの方が成果が大きい。

 

この基地の戦力はほぼほぼ私一人で制圧しきったと言っていい。

追加の増援がまた来るだろうが、皆を相手するには私とケイトさんもいる限り大丈夫。

 

問題はそんな雑魚なんかではない。

肝心のMTとアイビスが見つからないのだ。

私の連行時には確かに一緒にいたあの巨体が見つからない。

そして、カイザー理事の近くにもいない。

 

「近くに置いている、もしくはすぐ呼び出せる位置にいると思っていましたが……」

 

ここで手詰まりかなあと二人で意見を合わせる。

一旦は私の反乱劇もここまでだ。

 

少なくとも、あれの相手は本当にレイヴンちゃん頼みになる。

一つ考えていることはあるが、使えるかはわからない。

 

「いやあ、おじさんも年だね。久々に暴れてくたびれちゃったよ」

 

皆を待つに目的が変わったことで、ちょっとだけ気を緩めて盾と銃を下ろした。

昨日の夜から今まで動きっぱなしで流石にくたびれてしまった。

 

「おじさん……というにはホシノは若いのでは?」

 

「いやー? 学生証ではおじさんレイヴンちゃんより二つ年上だよ~?」

 

私のおじさん呼びににケイトさんが突っ込んくれる。

会話の節々で素直な感情が見て取れるし、なんだか素直な人だなというのが私の感想だった。

なんだかその素直な反応がレイヴンちゃんを見ているようで、嬉しくなった私は追加でふざけてみる。

 

「体もあちこち重くてまいっちゃうな~~」

 

「そうなのですね。レイヴンより二つ上……50より上だったとは」

 

「うえ!? レイヴンちゃんってそうなの!?」

 

思わず飛び出した驚愕の情報に思わずふざけるのが吹き飛んで聞き返してしまう。

車椅子の方は傷跡が酷くてわからないし、もう一つは言わずもがな学生だしでそんな風には見えなかったのに。

そう声をあげた私だったが、電話の向こうのケイトさんは楽しそうに笑う。

 

「え……」

 

「すいません、冗談です。実年齢は私も知りませんが、50は越えていないはずです」

 

思わずあっけにとられた私の前にすぐに出された種明かし。

聞き返すのに起き上がらせた体制を崩して、私は息を吐いた。

 

「もう~酷いよケイトさん……」

 

「すいません、つい」

 

そう謝ってくれた彼女との間で、やはりというか何度目かの気の抜けた空気が流れる。

知り合って間もないけれど、緊張ばかりしていても辛い。こういう空気はありがたかった。

レイヴンちゃんを知るもの同士ってことだろうか。

この空気だからこそ、思い切って、私は考えていたアイビス用の手を彼女に打診する。

 

「ねえ、ケイトさん」

 

「なんでしょう」

 

「オシレーターを、使いたいんだ。アイビス用に、協力してくれる?」

 

電話機の向こうの彼女に緊張が走ったのがわかる。

彼女が自分の秘匿を願っている事から考えれば、断られる可能性はある。

けれど、私としてはケイトさんがいくら大丈夫と言おうと、はいそうですかと友達をそのままアイビスと戦わせる気にはなれなかった。

 

「私が使えるような別の方法でもいい。教えてほしいんだ」

 

彼女の返答が詰まっていた。迷っているのがわかる。

それでも、私の考えていることはきっと彼女もわかっているはず。

だから、ゆっくりとその返答を待つ。

 

そして───

 

「一つ、方法を用意しましょう」

 

そう、答えが聞こえた。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「トリニティの協力、ヒフミちゃんに打診できました☆」

 

「絶対とは言えませんが、ティーパーティー……トリニティの生徒会に掛け合っていただけるそうです!」

 

ゲヘナから帰ってしばらく、私は別働として出かけていた対策委員会の皆からそれを聞いた。

これで、戦力としては、ゲヘナは風紀委員と便利屋、ミレニアムはエンジニア部とユウカ、暫定ではあるがトリニティからヒフミ、そしてアビドスのメンバー。思った以上によく集まったと個人的には思う。

 

今までほぼ一人でやってきたからだろう。

キヴォトスでは私の新しい知り合いたちが集まってくれるのがとても嬉しかった。

 

『私たちは現地で合流の予定よ! また明日、皆で頑張りましょうね!』

 

夕方にはアル社長からもそんな励ましのメッセージがムツキの端末経由で届いている。

このメッセージの前には、ちゃんと眠れそうかとか、寂しかったら電話でもつなぐかとか、届いていたし、凄くお世話を焼いてくれている。

 

ああ、なんだろう。とても、暖かい。

 

『ありがとう。しっかり寝れそう』

 

そう返して、息を吐く。

ホシノ、後は君だけ。

 

私は、体を起こす。

最後に一つだけ試しておくことがある。

 

 

明日に───アイビスに備えるために。

 

 

 

 

 

 

夕暮れの校庭で、私は自分の乗る車椅子を押す。

流石ウタハだ、あんなにバチバチ言ってた車椅子はもうそんな事があったとは思えないほど滑らかに動く。

 

私はコクピットブロックの入口に立っていた。

脱出機能の無いACに、何故か着いている遭難時にブロックだけ排出する機能。その産物。

セリカと先生が入り、先生が入って電源が入らなくなったと聞いた。

 

誰かの仕業だろうとは思う。

黒服の裏にいて、私に伝言を渡した誰か。

私にパルスブレードと音声を渡すようにした誰か。

先生にあの設計図の本を渡した誰か。

 

敵では無いとは思う。その誰かのおかげで私は命拾いをしたから。

でも、絶対の味方でないとも思う。黒服に情報を渡したのはその人だと思うから。

 

複数……だとは思いたくない。私の事情を知っているなら、場合によっては────

 

嫌な予想を振り払う。普通を目指すと決めたのに、いまだに物騒な発想を捨てきれない私に少し辟易した。

先生もいる、皆もいる、明日帰ったらホシノもいる。

 

だから、大丈夫と自分に言い聞かせた。

キヴォトスはルビコンではない。きっと、あそこより平和なはずなのだ。銃撃戦はあっても人は死なないのだから。

 

 

「さて……」

 

私は車椅子を止める。私の愛機、主人から貰ったRaDのAC。

ここに来たのは、予想していた私の事を確かめるためにだった。

 

先生が入ってから電源が落ちて、開きっぱなしの扉を見る。

ついでのように、感づいていた後ろの人に声をかけた。

 

「先生、どうされたんですか?」

 

「あ……ごめんね。皆寝だしているのにどうしたのかと思って」

 

後ろから先生の声がする。

確かに、明日に備えて皆は学校お泊まり会と言ってすでに寝る準備に入っていた。

私は先生の方を向く。いつもの優しい笑顔がそこにあった。

 

「気になっていることがあるんです。私の体について」

 

「体の……二つの体のこと?」

 

ああ、流石先生だ。察しが良くて助かる。

 

「はい。ユウカとウタハから黒服の話は聞きましたか?」

 

「うん。聞かせてもらったよ」

 

先生は微笑みを絶やさずに頷く。けれど、私はその眉間が少し潜むのを見逃さなかった。

きっと、先生も黒服とは会っている。私がユウカたちと話していたあの時に、先生はどこに出かけるかをぼかした。

だから、きっとその時に。

 

「彼から伝言を貰いました。その中に私は『ACを駆るもの』だということがあったんです」

 

「AC……この機械のことだよね」

 

それに頷いて、私の黒く焦げた愛機を見た。これはもう動かない。それは確定している。

非常用のジェネレーターなら動くだろう。けれど、誰かのせいでそれもダメ。

だが、私がACを駆るものという存在であるのなら────

 

「最初はこの機体だと思いました。でも、今の動く体が機械の体なら、この体がACの可能性もある」

 

意識の移動とはまた別に。

言いながら車椅子を押すのを再開し、乗り慣れた何もない個室へと入っていく。

 

「体を小さくするならできるかもしれないけれど、ウタハの見立てでは乗り込むような仕組みはないんじゃ……」

 

「ですがそもそも、私は意識の移動を行っています」

 

「意識だけ乗り込む……とか?」

 

「近いかもしれません」

 

似たようなことだ。私が今やろうとしているのは意識の移動に使われているであろう何かが、ACの接続に使えるのかを試そうとしている。

愛機ではなく、機械の体をACとして接続したならどうなるか。

 

「待ってレイヴン。ACへの接続って言っても、車椅子の破損でACの接続部分と君の脊椎の接続は切れてるって聞いたよ」

 

「ええ、ですので。コクピットへは条件の確認のためです」

 

コクピットに乗るのが条件かもしれない。他にも条件が複数あるかもしれない。そもそも接続できるかも確定ではない。

だから、皆には秘密にして出てきたのだ。

 

愛機への接続は確かにカーラの車椅子が必要だ。

でも、黒服の言っていたことが重要なら、必要なのは二つの体だけ。

車椅子はACへ接続を行うのに必要なだけで、操作を行うために必要なのは私の頭さえあればいい。

私は、そのための強化人間(そんざい)だから。

 

「見ていてください」

 

車椅子をコクピットへとロックする。

すこし、深呼吸をして、私は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

赤い、雷光が見える。

このまま目を開けば、出来損ない(C4-621)の視界が広がるだろう。

 

けれど、今日はこれが目的ではない。

私はルビコンでいつもやっていたように、出撃前にいつもしていたことをする。

 

「「脳深部コーラル管理デバイス起動」」

 

車椅子の音が二重に聞こえる。自分の耳ともう一つの体の耳から同時に頭に響く。

 

『ACへの接続プロセスを起動』

 

「「AC接続プロセスを起動します」」

 

赤い雷光がより強く光る。

ざわざわと背中を翼が擽るような感覚がした。

 

そして────

 

「接続プロセスが完了しました」

 

完了を告げる声が一つだけ聞こえる。

目を開ければ見慣れた、私の世界が見えた。

 

 

 

 

 

 

COM<メインシステム 通常モード起動>

 

 

 

MAIN SYSTEM

●――――――――――――――●

NON-COMBAT MODE ACTIVE

 

 

 

 

 

強化人間、C4-621の接続を確認・・・CLEAR

 

 

 

 

AC NAME

 

 

『LASTHOUND』

 

 

STANDBY

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ACNAMEは揺れてます。

特殊タグをもっと扱えれば……くっ
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