猟犬烏の青春   作:面無し

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2-50 作戦開始

 

 

 

 

 

「敵発見! アビドスの者と思われます!」

 

「近くの基地からも兵力を集めろ!」

 

北の砂漠からもだ! とカイザー理事は大きく部下に命令した。

昨日からのホシノの対応に始まり、基地の状態はボロボロ。

 

「あんな弱小のやつらに……だが」

 

彼は悪態をついてもまだ勝算を感じていた。

最初のアビドスの襲撃に使うはずだったMT部隊は破壊されたが、それ以外に再生産したMTやアイビスがまだ残っている。

カイザー理事はそれをあえて口に出すことで昨日からグラグラの自尊心を何とか保つ。

 

「ACがあればあの小娘も役に立ったかもしれんが……所詮人ではなぁ」

 

迎撃に出る部隊を見ながら、彼はあの忌々しい車椅子の少女を思い出していた。

アイビスはあれにぶつける。所詮人であればあれに敵うはずもない。

 

最初の部隊が相手に向かったという報告を聞き、カイザー理事はほくそ笑む。

かろうじて生き残っていた戦車やその他を詰め合わせた部隊だが、時間稼ぎにはいいだろうと彼はそう思っていた。

 

「MTとアイビスの用意をしろ!!」

 

そう今度こそと思って勢いよく号令を出す。

この時間稼ぎの間にアイビスを出し、小娘もろとも叩き潰せば、あのホシノも諦める。

あとは再生産した兵器でまた相手をじわじわと追い詰めて行けば万事上手くいくはずと彼はそう見積もっていた。

 

「今度こそ、徹底的に叩き潰してや─────「先行部隊!! 全滅しました!!」────は?」

 

ただそれも、ホシノの行動により冷静さを欠き忘れていた、とある兵器の存在によりあっけなく終わるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「エンジニア部には感謝しかないな!」

 

「いやいや、急ごしらえの改造で申し訳ないよ」

 

先行部隊を全滅させた勢いのまま操縦席でメットは大きく声をあげた。

唸るエンジンが響く車内で音にかき消されないようにエンジニア部のウタハも答えを返した。

 

今カイザーPMCの基地はアビドス一行の目の前にある。

MTや他の者も含めて手厚いと思っていた歓迎は思った以上に薄く、今乗っているこれで十分対応できた。

 

「MTに追加武装も乗せた装甲戦車、改造し甲斐しかありませんでしたね!」

 

エンジニア部のコトリがアビドスを出る際の興奮そのままに告げる。

 

カタフラクト、レイヴンの世界の劣化コピー兵器の一つ。

アビドスが行ったパーツ取りによる影響は、残ったパーツを戻し、欠けた部分はエンジニア部という技術力がついた今解決していた。

 

 

相手の戦車も何もかも弾薬類を補充され、MT部分には追加装甲。

ついでのように取り付けたブースターの推力に任せて後は全て轢き潰せば解決する。

 

あとはいいところで前衛部隊を下ろして基地に攻め込むだけだった。

 

「先生、指揮の準備はいいかな?」

 

後部座席へ乗る先生へとウタハが目を向ける。

後方部隊はこのカタフラクトによる敵陣の突破が一番の目的となっている。

掛けられた言葉に先生は強く答える。

 

「もちろん! 乗り込んだら基地の最奥まで突っ切るよ!」

 

先生がそう声をあげたのに風紀委員と便利屋を抜いたカタフラクトのメンバーが声をあげる。

士気も十分といったところでアヤネからそういえばと疑問の声が出た。

 

「攻撃には気づいているはず。当初の予定より戦力が少ないのは何かあったんでしょうか?」

 

「ん、拍子抜け」

 

そう言うシロコに周りも同意する。

静かな一人を除いて。

 

「レイヴン?」

「レイヴンちゃん?」

 

セリカとノノミがレイヴンを見た。

昨日の夜から変わらない犬耳と黒い翼を生やした少女は揺れる車内にも関わらず仁王立ちで微動だにしない。

 

両腰に自分とホシノのショットガン、腰背面に畳んだホシノの盾を持ち、胸部にはハンドガン。

彼女の申し出によるところもあるが、左腕のブレードも合わせればかなりの重武装をする彼女は呼ばれた声に我に返ったように反応する。

その隣に居るヘイローの出現した車椅子の彼女も含めて。

 

「ごめん。どうしたの?」

 

その様子に皆は視線を合わせる。

先生と共に機械の体に接続をしたという話を受けたのは今朝のこと、それから出発までも話したりとあったが、毎度の如く彼女は二つの体で反応するのを繰り返していた。

 

コクピットで接続した体が、そこを離れたとしても接続は切れなかった。

それにより彼女は車椅子に意識がありながら、体は自由に動くほうを操っているという状態となっていた。

 

それだけならまだ見た目は変わらないはずが、意識が車椅子にある関係か、体はつられて動くし、原因不明で車椅子の方にまでヘイローが浮かんでいるのである。

 

もちろん車椅子の方は不自由故に動きが鈍くはあるし、走るなど一定以上からはシンクロしない。

ただ、その動きは周りから見れば違和感そのもので、頭に急に現れたヘイローと併せて、今までから急に変えて本当に大丈夫なのかと周りは心配だった。

 

「レイヴンさん……本当に大丈夫?」

 

「何か異常があるなら今からでも前の状態に……」

 

先程静かだった事もあってユウカと先生からも心配目のが飛ぶ。

レイヴン曰くアイビス相手ならこの方が絶対に良いというこから、先生も他の彼女たちも頷いたが、状態が変わったのなら異常が起きてもおかしくない。

けれど、レイヴンは大丈夫と念を押した。

 

「本当に大丈夫、何も動くのに支障ないし、機体への接続は神経接続だから無意識で体が二つとも反応するのは当然」

 

そう言ってレイヴンはムキッと元気ポーズをとってアピールする。無表情のままで。

周りからの視線はそのレイヴンを疑わしそうに幾らか刺すが、今から何やと話してもいられない。

 

「そうだとしても、心配」

 

「そうですね。異常があればすぐ教えてください。別のプランも一応整えていますし!」

 

「ありがとう。本当に大丈夫……ちょっと考えごとしてた」

 

シロコとアヤネの念を押した言葉に頷きつつレイヴンは自分の黙ってた考え事の中身を話し出す。

 

 

「敵が減ったのはホシノかもしれない」

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

皆が来ている。その事実がケイトさんから告げられたのはつい先ほどのこと。

 

『戦力は確認できる限りでカタフラクト一機、ゲヘナ風紀委員四名、便利屋、アビドス、ミレニアムから四名そしてトリニティから戦車隊もいるようです』

 

便利屋の皆はともかく、トリニティや風紀委員の娘までいるとは思わなかった。

トリニティはヒフミちゃんだろうか……ゲヘナはきっと先生たちが頼みに行ってくれたんだろう。

今の状況からすればずいぶんと過剰にも思える戦力だった。

 

元はと言えば私が間抜けだから捕まっているのに。

信じていたとはいえ、事実としてそれが目の前にあるとすごく皆からの気持ちを感じる。

追いかけて来てくれることが、凄く嬉しかった。

 

 

「レイヴンちゃんは?」

 

 

名前の出なかった友人のことを聞く。

ケイトさんはさも当然と言うように答えてくれた。

 

『快調のようですよ』

 

「よかった……ミレニアムの人たちは間に合ったんだね」

 

やってきたことの答えが今でてきている。

あの時は私が消えてレイヴンちゃんが戻る予定だったからミレニアムのウタハさんに接触したけれど、上手くいったようで何よりだ。

よし、と私はオシレーターを背に立ち上がる。

せっかく皆私を追いかけてくれたんだ。

最後のひと踏ん張りをする必要があるだろう。

 

「それじゃあ、皆と合流しようかな」

 

『わかりました……ホシノ』

 

ケイトさんから呼び止められる。話す内容は想像がついている。私との協力はあくまで私の脱出の協力まで。

私はケイトさんわかってるよと頷く。

 

「連絡先……交換する?」

 

少しだけ仲良くなった友達の知り合いにそんな感じで聞いてみる。

ただ、答えはわかり切っていた。彼女の今回の接触はイレギュラーで、レイヴンちゃんに自分をさらしたくないなら、さっきの私のお願いも、今回の会話もすべて彼女は大目に見てくれたから連絡をくれたのだ。

そして、その予想に違わない答えが返ってくる。

 

『いえ、やめておきましょう。私は、あくまでレイヴンの選択を守るものです。

ああホシノ、貴方の後輩から連絡が入ったようですよ』

 

きっちり断られた返答に続けて言われたケイトさんの言葉の通り、私の携帯の画面にはアヤネちゃんの名前が映っている。

随分とタイミングが良い。ケイトさん自身この状況になったなら、あまり私と話さないほうが良いとでも思ったのだろうか。

 

映る画面を見て思う。これにつなげば、おそらく皆と会話できる。

そして、ケイトさんとの会話は切れる。

 

タイミングは今しかないだろう。

私は最後になるだろう彼女にお礼を言う。

 

「ありがとう。助かったよ。ケイトさん」

 

『いえ、レイヴンをよろしくお願いします』

 

本当に最後までレイヴンちゃん一筋な彼女の言葉を聞く。

口を開けばレイヴン、レイヴンと、お熱い。

 

一つ深呼吸をして私は携帯の受話器を取る。繋がった!! と嬉しそうな声が聞こえた。

心配をかけたであろう一年生の後輩に、何時もの先輩として、声をかけた。

 

「アヤネちゃーん、色々心配かけてごめんね~」

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「ホ、ホシノ先輩!! 無事なんですか!?」

 

『うん、おじさんは無事だよ。拘束されたけど、途中で解いたんだ』

 

レイヴンさんの言う通り繋がった連絡にカタフラクトの後方組の皆さんからは驚きの声が上がっていました。

当初の予定ではホシノ先輩は捕まっている予定でしたし、端末の反応があっても素直に連絡しても繋がらないかもと思っていました。

けれど、レイヴンさんの言われる通り繋がった連絡と、そこから流れる声に私は思わず出そうになる涙をぬぐいました。

今はまだ、やるべきことがまだあります。

 

「敵のこの状況、ホシノ先輩が暴れたからって事でいい?」

 

私の横でシロコ先輩が問いかける。

レイヴンさんの見立てたホシノ先輩が反乱を起こしたのではという推論は、今拘束を解いた先輩と話せていることからもきっと事実なんだと私は思う。

 

そして、少し照れくさそうに笑うホシノ先輩の声が通信から聞こえました。

 

『いやあ、年甲斐もなく張り切っちゃった』

 

その答えはレイヴンさんの予想通りのものでした。

敵から装備も得て昨日の夜から襲撃を繰り返していたというのを聞く。

 

『皆が来てくれるって思ったんだ。ありがとね』

 

えへへなんて照れる先輩の声になんだかやっと今までのアビドスが戻ったような感覚がする。

けれど、作戦自体はまだ残っている。

気を取り直すように私は先輩に告げた。

 

「ホシノ先輩、作戦の共有をいたします」

 

そう言って私は先輩に今回の作戦概要を伝えていく。

当初の予定は待ち構えているであろうカイザーの軍勢をカタフラクトで強行突破し、基地に突入。

ホシノ先輩を奪還する間、カタフラクトで敵の軍勢を迎撃しつつ他メンバーで時間を稼ぎ、基地に乗り込んだメンバーでホシノ先輩と待ち構えているであろう理事を捕まえれば作戦完了というものでした。

ですが、第一段階の先輩の奪還とカイザーの軍勢はほぼなくなっていたこと、加勢がまだ来ていない事を考えれば作戦はほぼ半分程度が無傷で達成できたことになる。

 

私たちの作戦を聞いた先輩は良いことを聞いたというように嬉しそうに返事をしてくれました。

 

『じゃあ、後は理事を捕まえられたら目的は達成だね。おじさんの装備ってあったりする?』

 

その問いかけに、私の後ろにいたレイヴンさんが静かに答えました。

 

「私が持ってるよ。ホシノ」

 

電話の向こうで、先輩が大きく息を吸う音が聞こえました。

無言が少し流れて、ホシノ先輩のとても、とてもやさしい声を聞きました。

 

『今度は、待ってるね』

 

「うん。渡しに行く」

 

通じ合うような二人の間を少しだけ羨ましく思いました。

私のような葛藤もなく、恐怖もなくレイヴンさんと最初から通じ合えていたホシノ先輩とレイヴンさんとの二人だけの何かを感じて。

 

『敵は昨日から潰しに潰したから、後はカイザー理事だね』

 

ただ、それも一瞬のこと、二人はすぐに次の行動へと話を移す。

一番の課題である借金の解決。そのためにはカイザー理事を何とかするしかない。

そして未だに出てこないアイビスも懸念となる。

ホシノ先輩はうーんと唸りながら教えてくださいました。

 

『MTとアイビスは昨日から散々探したけれど……ここにはないっていうので間違いないと思うんだよね』

 

それを聞いて私は思いつく、MTの場所ではないけれどアイビスがここに無いなら使える作戦を。

 

 

「わざと逃がす、というのはどうでしょう?」

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

約束通り、昨日の仕事を急いで終わらせて来たお昼時、デスクワークとほかの業務で疲れた私に、アビドスの日差しが眩しい。

 

『北方から敵大隊を確認しました』

 

「そう、それじゃあ準備を始めましょう」

 

アコの連絡を受けて、私は後ろにいる皆にそう告げた。

 

「今日は昨日足を舐められた相手の手伝いかあ」

 

「私は脅された相手ですね……」

 

チナツとイオリの二人は少しだけ不服そうに今の状況を嘆く。

そして、合わせるように。

 

「……よろしく頼むわね」

 

「よろしくね~☆」

 

便利屋の二人が手を振って、残りの二人が会釈をしてきた。

私も片手をあげて返す。

 

「しかもこいつらとかよ……」

 

『それは私も同意見です。なんで彼女たちと一緒なんですか委員長』

 

私は特に文句のない配置だったのだけれど、アコとイオリからはそんな風に文句を言う。

組むことになった時にも話したはずなのにと私はため息をついた。

 

「今日は私たちは風紀委員だけれど、風紀委員じゃないわ。わかってるでしょう?」

 

あくまで、私たちは個人として『たまたま』アビドス砂漠を迷っていたらカイザーに襲われた不運な生徒。

便利屋たちは砂漠でこれまた『たまたま』あった同じ学校の生徒。

回りくどいけれど仕方がない。

 

私たちはあくまで助っ人、カイザー理事を捕える役割は基本的にはあの子たちに任せるしかないからだ。

アビドスとなんでも連絡を取れるわけでもないし。便利屋は連絡役としてちょうどいい。

 

「何かあれば、頼むわね」

 

私は便利屋の社長へと目を向ける。

彼女は若干慌てたような顔をしながらも胸を張って頷いた。

 

「ええ! この基地も見つけて貢献した立役者ですから!!

この増援も食い止めて、しっかりレイヴンに合流させてもらうわ!」

 

「流石ですアル様!! わ、私も頑張ります!!」

 

相変わらず仲の良い四人だと思う。

慕ってくれる後輩は居るが、お友達と言うには上司部下というのが多い私には少し眩しい。

ただ、その眩しさの中で私は昨日見た笑顔を思い出す。

 

『うん。また話そう。ヒナ』

 

あの子となら仲良くなれるだろうか。

上司でも、部下でもないのだし。

 

そう思って、よしと気を入れ直す。

 

面倒なことは早く終わらせるに限る。

この後にはしっかり約束が入っているのだから。

 

「始めよう」

 

 

私はそう言って銃を構えた。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「おい!! 増援はどうなっている!?」

 

 

カイザー基地の司令室で理事はそう叫んでいた。

 

 

「そ、それが北方の方の大隊はまた別の敵に留められているらしく……」

 

「他の所からも呼び寄せろと言ったはずだぞ! それはどうなってる!?」

 

相手に奪われたカタフラクトによる突撃、増援の妨害。

当初の勝ち筋から外れ、ホシノから受けたあのダミー手りゅう弾による挑発と逃げられない状況も効いて、彼はもう散々な状況に苛立ちを持っていた彼はもう平静でなどいられなかった。

 

「この状態ではMTの出撃も間に合わない……どうすれば」

 

彼の頭に一か所だけ場所が残る、黒服からの当初の依頼で指定されたアビドスの本来の本校舎だった場所。

この基地からもほど近い、あそこまで移動できればという確信が。

 

「黒服が実験場を作ろうとしていたのだ。あそこは重要地点……だからな」

 




さて、大体カイザー理事は掌の上になる役です。
仕方ないね、レイヴン相手でスネイルと同じだからね。

残業続きで遅れてすまない……頑張って書きます。

ヒナとかホシノ辺りって……お友達生やしたくなります。
そういう意味ではゲヘナギャル二人とヒナちゃんの絡みはもっとやれってなりましたね。
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