猟犬烏の青春   作:面無し

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いつも感想ここすきありがとうございます!!

よろしくお願いします!!

あ、大人の戦いの回ですが、さすがに先生と黒服があっさりだったので折を見て追記する予定です。


2-51 再会

 

 

 

 

 

彼女の瞳から、あの男を見る。

私の視界というのであれば、やはりこの視界となるのだろう。

今の制限のある中では特に。

 

「カイザー理事、追い詰めたよ」

 

先生があの男へそう告げるのを聞く。

その横にはホシノを抜いたアビドスの四人、そしてレイヴン。後ろにはカタフラクト。

 

基地をほぼ放棄してまでかき集めた取り巻きをそばに置いて、カイザー理事はレイヴンたちを睨みつけていました。

自業自得だというのに、いまだに睨む元気があるとは……この男も懲りない。

 

ホシノはまだ後方にいる。カタフラクトとの走力の差と、この男が逃げる際にも襲撃をかけ、わずかに残った戦車も潰しに動いたことによるものだ。

後は彼女なりのアイビスへの対抗策のため。

 

今のこの状況、予定通りに追い詰めたというところになるでしょう……とりあえずは。

 

けれど、追い詰めたからこそ、この次の動きは手に取るようにわかってしまう。

嘗て、この男と同じ中間管理職をやっていた小物と同じ、自分を追い詰める物への最後の抵抗。

 

すなわち───

 

 

「追い詰めた? ちがうな。誘い込んだのだ! この私が!」

 

 

───秘策であるMTとアイビスの使用。

 

その声と共に、カイザー理事の周囲のハッチが開く。

現れるのはホシノと共に探していたMTが複数、そして───

 

空から飛来する人型。

本当に、使うとは……本当にわかりやすい。

 

 

 

 

 

『わざと逃がす?』

 

『はい、今の私たちは非常に有利ですが、アイビスやMTという戦力がある以上カイザーは負けを認めないでしょう』

 

『なるほど、追い詰めるように動けばわざと最大戦力を取りに行ってくれるってことか。

こっちはそれがわかってるからあらかじめ覚悟したうえで迎え撃てるし、相手の取り巻きも減らせる。私はいいと思うぞ』

 

 

 

作戦立案時、アヤネという少女の考えた予定通りに出てきたMT達と飛来する人型を見る。

この私が、ですか。何度目かに及ぶ既視感にレイヴンが小さく鼻で笑うのが聞こえる。

 

 

「レイヴン、予定通りに」

 

「分かった」

 

 

先生の指示にレイヴンは頷きます。

空中のアイビスを見つめて、カタフラクトへと目を向ける。

 

「メット!!」

 

『わかってるよ!! 捕まれミレニアム!!』

 

ブースターを吹かして加速したカタフラクトが空から迫るアイビスへと頭を向ける。

聞いた作戦の中ではカタフラクトは相手の前線部隊との戦闘で損耗する予定と聞きましたが、今であれば違う。

 

『レイヴン、捕まれ!』

 

「もう捕まってる。進めて」

 

カタフラクトが前進する。

飛来する、アイビスを視界に入れて、レイヴンの声が響きました。

 

「エンジニア部!」

 

『ああ! 砲手は我々の分野ではないが……ヒビキ、コトリ!』

 

『はーい! 撃っちゃいますよー!』

『くらってくださーい!』

 

その言葉と共に発射されたガトリングと32連ミサイル。

エンジニア部により調整も施された誘導性抜群のミサイルと、それに誘導するためのガトリングが人型へと飛んでいく。

 

しかし、相手はアイビス。

 

「躱された!!」

 

ブースターを吹かして横へと高速移動する人型をガトリングが追随するが、飛行速度に銃身の旋回が追いついていない。

ミサイルの誘導も、躱しながら突撃するそれには誘導が追いつかない。

ですが、ここまではレイヴンも知っての通り。

 

『ただで当たってくれるなら超兵器じゃないからね。これも追加だ!!』

 

その宣言と共に車体を大きく旋回させてアイビスへ向け、9連装レーザーキャノンが放たれる。

追随させていたガトリングを躱す先に、置くように放たれたそれを、人型は上空へ飛びあがることで躱す。

その足先だけを、レーザーが掠めた。

 

『よし!』

 

『カスっただけだ! だがこれでいいんだろ?』

 

「いい! ダメージさえ入れば脅威とみなして誘導できる! ホシノの所へ走って! 早く!」

 

そのレイヴンの声に導かれるように、アイビスがカタフラクトへとまっすぐ向かう。

慌てるように旋回したカタフラクトが、ブースターを吹かして速力をあげる。

目指すはホシノのいる場所へ────

 

 

 

『レイヴンちゃん、アイビスって誘導できたりする?』

 

『たぶんできる。あれは無人で動くし、動きが……あんまり言いたくないけど単調だと思う。

自分への脅威度の高い順で動くタイプだ……と思う。カタフラクトの弾幕で一発でも掠らせればいい』

 

『おっけー、じゃあおじさんちょっと準備するからさ、用意出来たら来てくれる?』

 

『わかった。ウタハもメットもそれでいい?』

 

あの時あなたはきっとチャティのことを思い浮かべたのでしょう。

彼が無人機の動きと言われたことをあなたは今も気にしているのですね。

 

それでも、貴方の戦場での評価は正しい。それに、あの無人機は技術的に言って程度が低い。

彼の名誉と彼の親のカーラのためにも私は思う。あれを彼と同じというには無理がある。

 

 

 

 

 

『そろそろだよ』

 

ウタハの声が響きました。

レイヴン目がカタフラクトの進行方向へ向けられる。

たなびく桃色の髪が見えた。

 

 

『待ってたよ、レイヴンちゃん』

 

「ホシノ」

 

『いやー、一晩頑張った成果がでるね、これは。

それじゃあ、おじさん。やっちゃうね!』

 

そのホシノの声と共に、桃色の髪をかき消して砂煙が上がる。

そして────

 

 

 

とても広く、幕というには厚い。ミサイルと、砲弾と、その他もろもろの発射兵器による雨あられがアイビスへと真正面から降り注ぐ。

一晩の間で狩り尽くし、最後には放棄されたカイザーの基地、そこに残された遠隔操作できる兵器をかき集め、自動操作で放つ狙いもない一斉飽和攻撃。

 

ただ、狙いなどつけなくとも、大小合わせて作った隙間の無い破壊の壁に抜けられるような場所はなく。

 

 

 

「これは……私も無理だな」

ああ、これは避けきれない。

 

 

私の思考とレイヴンの言葉が重なる。

 

 

 

ドドドドドドド

ドオォォォォン!!

 

 

 

レイヴンにさえそう言わせる弾幕がアイビスは真正面から襲う。

派手な爆発を複数あげて、劣化コピーの超兵器は大きな砂煙をあげて地に落ちていった。

 

 

 

「仲間がいるって……やっぱり凄いですね。ウォルター」

 

 

 

そんな感想をレイヴンが呟く。

 

ああレイヴン、そうですね。あなた一人で十分だと、私は知ってはいる。

けれど、そう思わせてくれるというのは良いことなのだと私は思います。

 

 

ウォルターもきっと喜ぶでしょう。

……私のことも呼びかけてほしかったですが。

 

 

ですが、ここからが本番とも言える。

なぜなら……アイビスの反応はまだついたままですから。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「いいのか。アビドス? カタフラクトが行ってしまったが」

 

 

MTと取り巻きを連れて私達を見ていたカイザー理事がそういった。

残った私達を舐めているのか、勢いを取り戻したと言う様にふんぞり返っていた。

 

けれど、問題は無い。

 

 

「ん、私達で十分」

 

「そうですよ! いくらレイヴンちゃんの世界の兵器があろうと、負けるつもりはありません☆」

 

「あんたたち全員ぶっ飛ばして、平和な学園生活を取り戻すんだから!」

 

「あなたには、これ以上好きにはさせません!!」

 

 

そう言ってアビドスの皆で銃を構える。

カイザー理事は得意げに笑った。

 

「そうかそうか、そんなに無謀な勝負がしたいとはな……」

 

いいだろうと理事が手をあげる。

取り巻きと、MT達が私たちに銃を向けるのを確認して、私たちは目を合わせる。

 

「予定は狂ったが……これで帳尻が合う、終わりだアビドス!」

 

そう言って理事が腕を振り下ろすその時に────

 

 

 

ドオォォォォン!!

 

 

 

後ろのMT達を巻き込むように爆炎が吹き上げた。

 

 

「なにぃ!?」

 

 

カイザー理事が振り向く、彼の取り巻き達もあわてるように振り向く中、私たちの通信機に声が響く。

 

『あ、あのぅ……タイミング、合いましたでしょうか……』

 

「ばっちり、ありがとう。ヒフ……ファウスト」

 

私たち覆面水着団の5人目、阿慈谷ヒフミからの通信だった。

 

 

 

 

 

『戦力ってゲヘナとアビドスとミレニアムかな?』

 

『ん、一応ヒフミにも声をかけた』

 

『でも返事がないので……やっぱり難しかったでしょうか』

 

『うーん……おじさんの見つけた周囲情報だと不明なのがもう一団あるんだけど……ヒフミちゃんだったりしない?』

 

『不明なら確認しておくか』

 

 

 

 

そんなホシノ先輩の一言から連絡をとれて、たまたま連携できたヒフミたちによる砲撃は、見事にふんぞり返っていたカイザー理事の驚く声を引き出した。

手をあげたままもうもうと煙をあげるMTの群れの残骸に呆然とする理事たちを見て少し胸がスッキリする気がした。

 

今まで舐められて嵌められて、ホシノ先輩を攫われて、レイヴンも攫われて、いいようにいいようにやってきたあいつにやっと一撃食らわせた。そんな気分。

 

「ここまでだよ。カイザー理事」

 

先生からの声が理事へ飛ぶ。

呼び出したMTはもう見る影もなく、集めた取り巻きだけの相手を前に私たちは銃を向けたまま宣言する。

 

「言ったはず、私たちで十分」

 

「いつでもやっちゃえますよ」

 

「観念しなさい!」

 

「アビドスへの利子の引き下げ、今まで多く取り上げてきた利子の返還を求めます!」

 

 

そう告げる私たちに、カイザー理事は手を下げて動かない。

少しの間が開く。

 

「ずっと……」

 

沈黙の後に聞こえたのは沸々と煮えるようなドスの効いた声だった。

 

「ずっとお前たちが目障りだった……対策委員会」

 

私たちへ向けての怒りの怨嗟がその声にあるように感じる。

この状況で、追い詰められて、湧き出すものを噴出させるようにカイザー理事は私たちに言葉をぶつけていく。

 

「これまで……あらゆる手段を講じてきた……」

 

その煮える言葉でカイザー理事は今までのことを話していく。

 

「ヘルメット団をけしかけて、便利屋をけしかけて、利子を上げて」

 

その言葉に、今までのことがよぎる。

ヘルメット団と戦ったことや、便利屋が来たことを、たびたび苦しくなる利子のこと───

 

「あの女を誘拐して、小鳥遊ホシノも手に入れて、全て、全てが私の思い通りのはずだったのに!」

 

 

車椅子のレイヴンが消えたこと、ホシノ先輩がそれを何とかしようと背負ってしまったこと───

 

 

「それでもお前たちは、滅びかけの学校に最後まで残って、しつこく粘って、どうにか借金を返済しようとして!!」

 

 

指名手配犯を捕まえたり、アルバイトをしたり、節約をしてみたりしたこと───

 

 

「あの女も見つけて、基地までめちゃくちゃにして、MTまで破壊して、こんなところまで逃げさせて!!!」

 

 

レイヴンを見つけたこと、彼女を恐れたこと、先輩が基地で暴れたこと、今こうして戦いに来たこと───

 

 

 

「あれほど懲らしめたのに、徹底的に苦しめたのに、毎日毎日楽しそうに!!!!」

 

 

この男の言う通り、私は楽しかった。

毎日皆と話して、仲良くして、学校生活を送って、楽しくて仕方がなかった。

怖いことも苦しいことも、あった、でもそれも私の中の一部で、最近は新しい友達もできて、本当に楽しかった。

アビドスに拾われて良かったと私は本当にそう思う。

 

 

「お前たちのせいで、計画が!!!! 私の計画があぁぁっ!!!!!」

 

 

叫ぶ理事を前に私は今までの日々に胸が熱くなる気がした。

皆がいるなら、私はいくらでも戦える。

 

 

「あんたみたいな下劣な奴に、私たちが折れるわけないじゃない!」

 

「叫ぶ元気があるなら、倒すのに胸も痛まない」

 

「あなたみたいな情けない大人に、絶対に負けません!」

 

 

そうして私たちとカイザー理事はにらみ合う。

 

「先生、戦闘に入ります、準備を!!」

 

「うん、任せて! 絶対勝とう!!」

 

 

「はい!!!」

「ん!!」

「もちろん!!」

 

アヤネと先生の言葉に合わせて私たちは取り巻き達との戦闘を始める。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「ホシノ、お待たせ」

 

カタフラクトから飛び降りて、ずっと、ずっと会いたかった友達へと歩み寄る。

色の違う二つの双眸が、私を見てにっこりと笑った。

 

「うん、待ってるって言ったからね」

 

本来なら砂漠で別れてからは二日と経ってない。

それでも、私にとってまるで一年も二年もあっていなかったような気がする。

私はこれまで失ってきたからか、友人が戻って来てくれたことがすごく嬉しくて───

 

「よかった。また、会えた」

 

「うえ!? れ、レイヴンちゃん!?」

 

ホシノが背負っていた武器やらなんか関係ないと、ホシノを抱きしめる。

私より一回り小さい体で、基地を壊滅させて、本当に頑張ってくれたんだと思う。

 

「よかった。よかった……」

 

そう自分に押し付けるように彼女を抱きしめる。

彼女は生きている。私の新しい友人は、過去のルビコンのようにまだ失ってない。

ホシノの体温をしっかりと感じるから。

 

そんな私をおずおずと抱き返してホシノは私の背を叩く。

 

「うん、ごめんね。君のおかげだよ。私がここまでやれたのは」

 

その言葉を聞いて、私はゆっくりとホシノを放す。

聞きたい事も、やらないといけないこともまだあるから。

 

「ホシノ、その背中のは?」

 

「これ? オシレーターって言うらしいよ。ほら、アイビスの腕にある奴」

 

「ああ、あれか」

 

その言葉を聞いて私は思い出す。エアに散々切りかかられたっけ。

コーラルのエネルギーを使っているあれはかなり痛いはずだ。

分身までして切って来た時は驚いたし、当たらなかったからいいものの、当たってたらどうなったか。

キヴォトスでもこれはかなり強力だろう。でも……

 

「使えるの?」

 

この私の体なら、パルスブレードも使えているし使える可能性はあるけれど、そう考えてホシノに聞いてみる。ホシノは自慢げに胸を張った。

 

「いいことを聞いてくれたねぇ、実はいろいろあって、おじさん使えちゃうんだなぁ、これが」

 

まぁ、一発だけらしいんだけどね。と苦笑いをしたホシノに私は驚いた。

 

「一発でもすごい。どこかにジェネレーターでも接続したの?」

 

「ああ、いや……そうではないんだけど……」

 

ちょっとしどろもどろのホシノを不思議に思う。

ホシノが改造して使えるようにしたのではないのだろうか。

ただ、それを聞こうとする時間はなく、割り込むようなメットの声がする。

 

『おい、そこのイチャつき二人組、アイビスが起きたようだぞ』

 

『確かに熱い抱擁だったね、ホシノさん?』

 

「あ、いや……あはは」

 

イチャつく? 仲良くしていたということだろうか。

それは事実ではあるが……今はそれを考えている時はない。

私は視線をアイビスへ向ける。

 

そこには、確かに立ち上がりもう一度ブースターを吹かしている彼女の偽物がいた。

ホシノと再会できたからだろうか、見ていると、少しエアを思い出す。

 

 

「ホシノ、オシレーター使ってくれるんだよね?」

 

 

私はホシノには目を向けず問いかけた。

目を向けられなかったのは、今の自分の気持ちを彼女ならわかるかもと思ったからだろうか。

 

「うん。使えるよ。メットちゃんたちも、援護だよね?」

 

『そこの烏がそうしろって言ったからな。普通ならカタフラクトがメインだろうに』

 

「まあね~……で、レイヴンちゃんは大丈夫そう? 気持ち的なとことか。しょんぼりでしょ?」

 

んー? と私を覗くホシノを見る。

……どこでバレたのだろうか。

私は一瞬困惑する。

 

 

「耳垂れてるよ」

 

ハッとした。

この耳は貴方の犬の証……とはいえ読まれるとは恥ずかしい。

私は一つ息を吐く。まっすぐ見つめるアイビスとあの時の彼女をゆっくりと思い出す。

 

そして、私の頭は、強化人間としての感覚は、あれは違うと判断出来る。

 

似ているだけで、これはただの感傷で、今の私が考える必要のないものだ。

 

 

 

本当のアイビスは───

 

───彼女の遺志で人らしく動いていたから。

 

───紅い光を放っていたから。

 

───もっと強い力の匂いを放っていたから。

 

 

そして何よりも───

 

 

───私の大事な彼女(エア)の声がしないから。

 

 

 

 

「大丈夫だよ。ホシノ」

 

私は一歩を踏み出す。

あれはただの、主の望みを阻むガラクタだ。

 

 

私は目を閉じる。

己の脳に、コーラル管理デバイスに、命じる。

 

 

ウォルターの亡き主の犬として。

 

 

『強化人間C4-621より、AC『LASTHOUND』へ、モード切替を……実行』

 

 

 





エアちゃん大丈夫やで、心の中でめちゃめちゃ呼びかけられてるであんた。

まあ猟犬は主が一番だからね。仕方ないね。

次回はやりたかったことの一つの内半分が叶う予定です。
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