猟犬烏の青春   作:面無し

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いつもここすき、感想ありがとうございます。

多分……次回か次々回でやっとこさアビドスがエピローグになる……はず?

よろしくお願いします。


2-53 清算

 

 

 

 

 

 

カイザー理事とアビドスの生徒による対決は、トリニティ総合学園のヒフミ……もとい、ファウストの率いる部隊による砲撃と、そもそものアビドスの生徒らの錬度、そして先生という指揮官の有無による差によりもとより優勢だった。

 

「観念しなさい!」

 

セリカの言葉が砂漠に響く。

自分の想いを素直に吐き出す彼女のその言葉はカイザーの耳にも確かに届く。

しかし、アイビスという最後の切り札と、まだ地下や他の施設に残してあるMT部隊の存在にすがって、カイザー理事は必死で叫んだ。

 

「まだだ、まだ私は負けていない!! MTも残っている! 部隊の人間もな!」

 

そう言ってカイザー理事は自らの部下へと迎撃の指示を飛ばし、自らは埋もれた廃墟へと退いていく。

 

「早くMTを呼び出せ!! 追加のMTで時間さえ稼げば……」

 

そして、MTを呼び出す作業をしていた部下を怒鳴りつける。

追いかけてくるアビドスの生徒たちの銃撃が彼の焦りを煽り立てていく。

最後の部下たちを前に押し込めて、自分を後方にして、自分守って最後の最後までカイザー理事は一発逆転の目を狙っていた。

 

 

 

そして──────

 

 

 

「MTの呼び出し準備、完了しました!!」

 

 

ついに、その願いは届く。

理事は思わず高笑いをあげた。

 

「クックク……ハハハッ! ハーッハッハッハッ!!!」

 

準備させていたMTはこの周辺以外の地下にもある全MTである。

それさえ呼び出せば、基地を出る前に呼び出していた砂漠の北のデカグラマトン大隊も合わせて、形勢は逆転したも同然。

彼は退いた先、アビドスの元本校舎だった廃墟の近くへと建てた格納庫の前でゆっくりとアビドスの生徒たちへ振り向いた。

 

大手を広げ、意気揚々と、もう、恐れるものなどないとでもいうように。

 

 

 

「見つけた! もう逃がさない」

 

現れたアビドスの対策委員は大手を広げて待ち構えたその男へ銃を向ける。

だが、その銃口にもひるまず、男は涼し気にアビドスの生徒たちへ向けて口を開く。

 

「逃がさないだと? こちらの台詞だ!」

 

そうして、彼は部下から受け取った端末を操作する。

カイザー理事の背後の地面が音を立ててせり上がり、開いたハッチからの内側からMT部隊が出現する。

アヤネが隠れてした通信越しに、ヒフミ……ファウストの声が小声で届く。

 

「すいません。支援を続けたいですがあんまり打ちすぎると、言い訳が……」

 

「あとちょっとなのに……」

 

セリカの悔し気な声を出す。

弾薬自体はまだあるとはいえ、大型兵器の群れを相手できるほどの戦力は彼女たちにはなかった。

それでも……

 

「まだ負けてない」

 

シロコが銃を構える。

その目をまっすぐカイザーに向けて主張する。

 

「レイヴンたちはアイビスを倒す。このMTさえ倒せば私たちの勝ち」

 

仲間たちの増援など無くともやれると彼女は前を向く。

それは、あの時銃を捨てた彼女の強さを間近で見たからか。憧れる先輩の強さを知っているからか。

彼女は目の前の部隊も自分たちだけで乗り越えるつもりでそう言った。

 

そして、それに同意する様にニコニコと残ったノノミも銃を構えた。

それを眺めて、二度三度と余裕のある頷きをして、大手を開いたカイザー理事はニヤニヤとした笑みを浮かべて言う。

 

「いいだろう。これだけの部隊を前にどれだけ持ちこたえれるか、見ものだなぁ……」

 

そして、その余裕のままに声を張る。

 

 

「これで、終わりだ!」

 

 

その声を合図にMT達は銃を構え─────

 

 

 

 

「それはどうかしら?」

 

 

 

 

─────残った数少ない部下も巻き込んで、派手な爆発と共に自壊した。

 

 

 

カイザー理事は何が起きたのか理解するのに十数秒かかっていた。

自分の背後から派手な爆発音が聞こえ、何の銃撃もアビドスに撃たれない状況を彼の頭は理解したくないと思っていた。

その間抜けにも思える顔を眺めて、やっとすっきりしたとでも言わんばかりの声がアビドスの背後から掛かっていた。

 

「綺麗に決まったねー! イタズラ成功って感じかな?」

 

「まあ、基地探しの延長やったにしては上出来かもね」

 

「あれが……アル様の敵ですね。ようやく、見つけました」

 

「そうねハルカ。これで、大詰め」

 

カツカツと音を立てて歩く一人を先頭に彼女達が歩いてくるのをアビドスのメンバーと先生は待っていましたとでも言いう顔で見ていた。

 

「うちの臨時社員に手を出した男が見えたのだけれど……お邪魔だったかしら?」

 

現れた先頭の一人が先生に向けてそう問いかける。

 

「いや、これ以上ないタイミングだったよ」

 

「なら良かったわ。それじゃあ、直接会うのは初めてね、カイザー理事」

 

ふふんと鼻を鳴らして、胸を張った彼女は、カイザー理事へ向けて自陣満々に名乗りを上げる。

 

 

 

「私たちは、金と依頼で動くアウトロー集団、便利屋68。アビドスに……加勢するわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(決まったわーーーーーー!!!!)

 

便利屋68社長こと、陸八魔アルは内心小躍りしたい気分なのを自分の銃をぐっと握ることで我慢していた。

昨日からの頑張りはこういう時のため。そのための教え、そのための調査、そのための準備、その成果が今。

 

(ウォルターさん! あの教えはこうよね、こういうことよね!!!)

 

彼女は教えの実践が実を結んだことに感動を覚えていた。

彼女の頭ではダンディな顔をした彼女の想像の中のレイヴンの恩人が、優し気に頬を緩ませて笑うところまで想像できていた。

そんな彼に心で親指を立てつつも、ここで喜びに打ち震えていては格好がつかないからとアルはカイザー理事へと言葉を向けた。

 

「さて……カイザー理事、終わり……なんだったかしら?」

 

外面だけ見れば極めて冷静に、煽る彼女の声にカイザー理事はフルフルと震える。

彼の中でのプランはまたしても崩れ去った。その悔しさのままに、声が絞られる。

 

「便利屋ぁ……貴様ら、せっかく雇ってやったというのに……」

 

それはまさに映画に出てくるような悪役の台詞だった。

当初巨額の報酬を出して味方につけたつもりだった便利屋68。

砂漠の施設破壊から始まり、先ほどの口ぶりからこの基地の場所の特定も彼女たちの仕事、そして、今回はMTという逆転の芽さえも。

最初の依頼など無かったかのような彼女たちを睨みつけてカイザー理事は恨み言を言う。

 

 

アルは何をわかり切ったことをとでも言うようにわざとらしくため息をついた。

彼女の内心、この状況で颯爽と現れた自分はまさに映画の主人公のようで……アウトローに相応しかった。

 

「あら、前金は受け取らなかったはずだし、断りの連絡も入れたはずよ」

 

その言葉通りに、アビドスに寝返ると決めたその日に連絡を彼女たちは入れている。

そうできるように彼女たちはモットーとして前金も受け取らないでいる。

もっとも、そのせいで傭兵を雇ったので金欠になってしまったのだが、彼女の中ではアビドスの皆との出会いと思えば良い事だった。

 

アルは銃を理事に向けたまま問いかけた。

 

「次はどうするの?」

 

さあ足掻けとでも言うような台詞がアルの長年憧れたアウトロー像から出力される。

その言葉を振り払うようにして震えていた理事は声をあげる。

 

「うるさい! 増援だ! 増援がもうすぐ……」

 

 

もう取り巻きもいないなか、威勢だけは良く理事は叫ぶ。

だが、アルがここにいる時点でその望みは消えている。

アルはそう言えばとでも言うように返した。

 

「増援……北の部隊のことかしら?」

 

その反応に理事はぴたりと動きを止めた。

その言葉からどういう状況かを読み取って、また歯を食いしばる。

その顔に診て、アルの後ろにいたムツキがクスクスと笑いながら言った。

 

「ぜーんぶ、倒してきてあげたよ♪」

 

「まあ、数は多かったよね」

 

風紀委員会と一緒に、彼女たちは全て、全て片付けてきた。

チナツとアコを除けば前線で普段戦っているメンバーかつ、風紀委員長のヒナもいれば、大隊であっても結果は同じ。

彼女達にとってはその程度の相手を倒す難易度は高くなかった。

 

その増援も潰えたことをお知らせしたうえで、もう一度笑みを理事に向けてアルは問いかけた。

 

 

「もう一度聞くわね。次は……どうするの?」

 

その笑みは相手を見透かす悪魔のごとく、まさにアウトローの表情だった。

 

カイザー理事は必死に声を絞り出す。

藁を掴むように、追い詰められた彼は声を出す。

 

「ア、アイビスだ! カタフラクトなんぞ相手にならん! そこにレイヴンとかいう小娘一人増えたところで……」

 

敵いっこない! そう言おうとして彼は自分の耳に届く特徴的なブースト音を聞いた。

 

 

 

 

 

 

炎を噴き出して飛ぶ、特徴的な音と、キャタピラの音、彼はそれを聞いてやっとだと声を出す。

 

「来た! 来たぞ! カタフラクトが逃げてきた! アイビスも引き連れてな!!」

 

そう言って、得意げに彼は言葉を連ねる。

 

「アイビスさえいれば、お前ら等恐れることはない!」

 

威勢よく、調子づき始める。

 

「どいつもこいつも、私に対して生意気を言って! この私を苛立たせて!」

 

今こそ目にもの見せてやるというように彼は便利屋へアビドスへと言葉を連ねる。

飛来するものを見て何を言っているのかと言いたげな便利屋とアビドスを置いて、彼はやっと巡ってきた運に感謝した。

 

「今こそ! 私に平伏しろ! このアイビスを持って私はキヴォトスでのし上がる!!」

 

向いてきた運に任せて、宣言する。

自分こそ、またこの立場から上手くのしあがるのだと。

その喜びのままに音のする方へと、彼にとっての本当の希望へと彼は目を向けて叫んぶ。

 

 

「私こそが……企業だ!!」

 

 

 

 

 

ただ、その希望に満ち溢れた彼が見たものは、自らめがけて飛来する────

 

 

 

「ふんっ!!!!!」

 

 

 

 

──────拳を振り上げたレイヴンであった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「レイヴンちゃん!?」

「レイヴン!?」

 

カタフラクトの上から急に飛び立った私に驚くヒナとホシノを置いて私は加速する。

 

状況は見えている。通信でも聞いていた。

勝利はもう決まったも同然、今までの鬱憤をぶつけられるのだと確信したときには私の足は動いていた。

 

 

やっと、やっとなのだ。これで、予行演習の意味も出る。

私は心の中で喝采していた。

 

総長! ただいまよりレッドガンの流儀による授業料の清算を開始いたします!!

そんな心の宣言をあげて私は飛ぶ。

 

ブレードを起動しそうになるのを必死で抑えて、左腕を振りかぶる。

 

 

「私こそが……企業だ!!」

 

 

そんなオリジナルの中間管理職も言いそうなセリフを吐く男のにめがけて握る拳は、今までで一番、振るのが軽かった。

 

 

ゴッ

 

 

「ゔっ」

 

 

鈍い音と共に私の拳が理事の腹部へ吸い込まれる。

ぐりぐりと腹部に食い込ませながら私は唱える。

私の所属する部隊の流儀……その一文を。

 

「泣きを入れたら……」

 

拳を勢いで振りぬき、クソ中間管理職二号が大きく宙を舞う。

くるくると回転しながら綺麗なアーチを描く大きな的めがけて、私は思い切りブーストを吹かした。

加速する自身の体を感じながら、とても、とても充実した気持ちで私は両足を前に突き出す。

その顔面に私の足が届くとき、私の顔はきっと満面の笑みだっただろう。

 

 

ドゴシャッ!!

 

 

 

「もう一発!!!!」

 

 

私の蹴りを受けてクソ野郎が水平に飛んでいく。

地面を何度かバウンドし、大きな砂煙をゴロゴロと吹き飛んだあいつはかなり小さく見えるところまで吹き飛んで止まった。

 

 

フーッと私は強く息を吐く。そのまま空へとこぶしを突き上げて。

そして、私が手をかけてしまったあの人にしっかりと心で宣言した。

 

 

『授業料の清算を完了しました!!!』

 

 

彼なら応えてくれるとそう思う。

 

『よし! 遠足はここまでだ!! しっかり帰るように!! 手洗いとうがいを忘れるなよ!!』

 

そう、きっとこんな風に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああでも───

 

「レイヴン……」

 

先生はそうではないかもしれない。

私は拳をあげたまま振り向く、あっけにとられながらもすっきりしたような顔のアビドスの皆と便利屋の皆が見えて、その後ろで苦笑いする先生がいる。

そして、追いついてきたカタフラクトから見ていたであろうホシノとヒナもどこか呆れたような顔をしていた。

 

 

「ちょっとやりすぎかな」

 

 

苦笑いのままそう注意する先生に、私は答えた。

 

 

「今回は大目に見てください」

 

 

全ては私の友人のためだったのだから。

 

 




便利屋の調査は次回話に出る……はず!

没案ではレイヴンがホシノをお姫様抱っこして現れる予定だったりもありました。

パンチからのブーストキック受けても理事は生きてます。一応。酷いことになってそうですが。
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