猟犬烏の青春   作:面無し

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いつも感想ここすき等ありがとうございます!!

大変励みになります!!

今回はお話ししていたIFです。


2-38IF 黒い鳥

 

 

 

 

 

 

振り上げられた光の剣が、あの戦車を両断した兵器が、人に向けて振るわれるのを見た。

 

 

 

「ダメ!!!!!」

 

 

 

声を出す。

私の声は彼女へ響かない。

 

手を伸ばす。

私の手は彼女へ届かない。

 

 

嫌に遅く感じる世界の中、必死に手を伸ばして叫ぶ私なんていない見たいに、光の剣は振り下ろされる。

 

淡い緑のそれは、夜の砂漠に映えて、あの男が声もなく両断される軌跡は、恐ろしく綺麗に見えた。

 

どさりと音を立てて斬れた二つの塊が地面に落ちる。

さっきまで怒鳴り声をあげていたはずのあの男は、さっきのたった一瞬で物言わない物になり果てていた。

 

明けかけの、けれどまだ暗い空の下で、二つの塊を足元に彼女が立っている。

その犬耳が、その翼が、その顔が、型どったみたいにはっきり見えた。

 

こうならないために、私は彼女に相対したはずなのに。

戦うことくらいが、私にとってできると言えることだったはずなのに。

 

どうして、こうなってしまったんだろう。

浮かぶ疑問に、それでもどこか冷静な自分の頭が答えていた。

 

私が気を付けていなかったからだろう。

私が皆を信用してなかったからだろう。

私が強くなかったからだろう。

 

油断して、驕って、先輩のアビドスに縋って、一人で殉じたからだ。

私一人で何とかしなきゃ、私一人で何とかできるなんて先輩風を吹かすみたいにしたから。

 

どうしてなんて、どうして思うんだ。

この光景は私の行動の結果だろうに。

 

静かに、時間が流れる。

私も彼女も何も言わないまま時間が過ぎる。

 

彼女がこの後どう動くか私にはわかっていた。

自分の失敗の結果を、引き返せなくなった彼女が何とかするのだろう。

 

そうしてほしくなかった。

彼女のあの車椅子の体を知っているから。

もっと色んなことをこれからしてみるはずなんだ。

行ったことないところに行ったり、食べたことないもの食べたり、音楽なんかを聴いたり、映画を見たり、本を読んだり、勉強したり、運動したり、普通の生活をするはずなんだ。

 

そのはずだったんだ。

 

だから、私はもう一度だけ声を出そうと力を込める。

この場を逃げて、全部私のせいにしてほしいと言おうと決めて。

 

 

『逃げて、レイヴンちゃん』

 

 

────────そう声を発するはずだった喉は、動くことはなかった。

 

 

 

私が声をかけるより早く、振り向いた彼女の眼を見たから。

 

見たことのない、真っすぐな、紅に輝く眼だった。

燃えるようなその眼が私をまっすぐ貫くから、理解する。

 

私にもう彼女は曲げられない。

ここで彼女を止められなかった時点で、彼女に過去の彼女と同じことをさせた時点で、彼女はもう止まらない。

 

そう感じる頭に、それでも何かを言おうと口を開ける。

でも、やっぱり私の頭はのろまなようで、白み始める空の下、私が何かを言うより早く─────

 

「……嘘」

 

振るえる、セリカちゃんの声がした。

 

 

 

*****

 

 

 

思わず漏れたのであろうセリカの声にホシノが振り向く。

肩で息をするアビドスの面々と先生がそこにはいた。

 

そうして、振り向くホシノに合わせるように、翼を広げる少女も彼女たちを見る。

 

「ひっ」

 

その引きつった声は誰が発したものだったか。

並ぶ顔を蒼白にして、紅の眼を見た四人の少女達は思わず後ずさっていた。

その顔は程度はあれど恐怖を宿し、あのラーメンを食べていた少女のことなど、頭によぎる隙間はなく、彼女達にとってそこにいたのは紛れもなくあの音声の中にいた殺人鬼だった。

 

それを見て、翼の少女は顔を伏せる。

きっとこうなるだろうと、彼女はどこか理解して、それを納得した。

顔をわざとホシノへもう一度向ける。

彼女に伝えないといけないことがあると彼女は思っていた。

 

しかし、退いたのは四人であって、最後の一人は違っている。

残った大人が、彼女へと一歩進んで目を向ける。

 

その歩みに、顔を逸らしたはずの彼女の眼が大人へと向けられた。

 

 

「レイヴン……今から─────

 

 

ただ、向けられた顔にかけようとした言葉は、進む彼女に届くことはなく。

選んだ彼女にその大人の言葉はもう、意味がなかった。

彼はこの世界での恩人ではあっても、彼女の飼い主ではないから。

先生の言葉に被せるように彼女は言う。

 

「先生、私は行きます」

 

それは宣言。変わらない彼女の、大人に対する自分の答えの掲示。

そして、先生として発言するであろう男への牽制。

 

あなたの言葉で私は変えられないという、意思表明。

先生は言葉を紡げなかった。愕然とするその顔に、その目に少女は優しく言葉を続ける。

きっと、彼の言おうとしてくれた言葉は自分のためを思ってくれた言葉だろうからと。

 

「いいんですよ。これは、私が決めたことです」

 

そうして、その優しさに返すかのように微笑む彼女は、一度目を閉じた後ホシノの方へ目を向けた。

 

「過去は変わらない。そう言ったろう、ホシノ」

 

戦う前にホシノに言った通りになっただろうと彼女は告げる。

自分を大切に思ってくれた桃色の友人にの優しさをありがたいと思いながら。

それでも、自分はそういう生き方しかできない人間なのだと言う。

 

「私は、私にできることで、君を助けるよ」

 

そう言って、彼女は一歩ホシノへと歩みを進める。

最後に、彼女へと何かあるとでもいうように。

 

ただ、外から見れば、それは殺人鬼が少女へ近づいているように見えたのがいけなかった。

 

 

「う、動かないで!!」

「先輩に近づかないで!!」

「止まってください!!」

「動かないでください!!」

 

アビドスの四人が、銃を構える。

自分の知った彼女への恐怖にすくみながらも、親しい先輩へと歩む殺し屋へと下手に動くなと彼女たちは武器を構える。

やめてほしいと、そうするなと先生とホシノは彼女たちへと手の平を差し出す。

けれど、それで簡単に銃を下げるアビドスの生徒達ではなく、それで歩みを止める彼女でもなかった。

 

「好きに撃て」

 

それごときに当たらないというように、彼女は眼も向けずに歩みを進める。

そして、いまだに砂に座るホシノへ屈み、その耳元へと顔を近づけた。

 

「─────」

 

「え」

 

ぼそりと彼女が呟く言葉に、ホシノが小さく声を漏らした言葉だけがアビドスの面々へと聞こえた。

呆然とする彼女をそのままに翼の少女は登る日へと体を向け、二歩三歩と距離を取る。

 

「ありがとう、ホシノ」

 

そうして、そのお礼を最後に、彼女の体が燃え上がるのを全員が見た。

その黒い翼も、犬耳も、ヘイローも、何もかもを包むように、大きく炎が燃え盛る。

 

「レ、レイヴンちゃん!!!」

 

ホシノの喉がやっとそこで声を出した。

燃え盛る炎へ手を伸ばし、そのうちの少女を引き戻そうとする。

しかし、その手の届く直前に、焔は砂漠へと歩み、手は何もつかめなかった。

吹きあがる炎に、肉を焼くようなにおいが混じる。

 

「あ、あ……」

 

それが正しく彼女の焼ける匂いだと理解して、ホシノは顔を青くする。

ダメ、ダメとうわごとのように繰り返す。

 

 

けれど、それを無視する様に歩む焔から、それは現れた。

機械のみで作られた翼。

焼け落ちた衣服と肉の下、むき出しになった装甲の身体。

人の顔から変貌した、人を模しているだけの機械の顔。

犬耳のようにも見える機械のアンテナ。

そして…………かろうじて彼女が元はその人物だったことを示すように浮かぶ、赤い惑星と三重円環のヘイロー。

 

黒い人型のその胸と背中には、真っ黒に塗りつぶされてなお浮かぶ鳥のエンブレムがあった。

 

 

全員の見守る中で、それは生まれた。

大きくその機械の翼から蒼炎を吹きあげて。

 

 

 

 

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

 

無機質な音声が、産声のように砂漠の中で鳴り響いた。

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

あの人みたいに行かないでほしかった。

飛び立つ直前の彼女を見ながら、時間が止まってほしいと思った。

 

でも、変わってしまった彼女に掛ける声も、伸ばせる手ももうなくて─────

ただ、時さえ進まなければ全部、何もかも放っておけるじゃないかと、考えることを放棄できると、そんな願いを願ってしまう。

 

けれど、そんな願いは当然叶わない。

飛び立つ彼女の背に、私はそれを見ているだけ。

 

 

そうしてまた、守らないといけない物だけ、私の元には残された。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

カイザー理事殺害なんてニュースが紙面の端になるような事件だった。

カイザー本社ビルの爆発を皮切りにカイザーコーポレーションという企業が崩壊するという一連の事件は、その進捗を毎日一面で掲載されるほどの大きなものとなった。

 

それはとある襲撃者が単独で行ったものであり、カイザーの建築物、役員、商品、それらを時間を問わず休みなく破壊、殺害するという手法で行われ、キヴォトスにおいて史上最悪の単独犯による犯行と言われている。

 

当然、カイザーという巨大企業に関わっていたキヴォトスでは多大な混乱が生まれた。

電気水道ガス物流といった基本インフラから、コンビニの店舗その内装みたいなものまで、カイザーが関わってさえいればそいつは来る。

無差別に起こされるそれにどう対応しろというのか。

唯一の救いと言えば、殺害はカイザーの役員でさえなければされなかったことくらいだ。

 

それが本当に救いと言えるのかは、人によるだろうけれど。

 

もちろん、キヴォトスの側も何もしなかったわけではない。

連邦生徒会主導の下、ゲヘナ、ミレニアム、トリニティの三大校、その他の学校まで含めて連携して行われた対襲撃者への対応は、大規模かつ綿密な連携網をキヴォトス内に構築することとなり、この連携網はゲヘナとトリニティ間でのエデン条約での治安維持機構の前身となる部隊の創設にも寄与し、後のサンクトゥム攻略戦でも活用されるものとなる。

 

 

 

しかし、それだけの大規模な連携の下でも、かの襲撃者は止められることはなかった。

 

 

 

記録によれば、ヴァルキューレと、それに吸収されたSRTの元生徒たち、ゲヘナの風紀委員、トリニティの正義実現委員会、ミレニアムの特殊部隊C&C、そして、各学園から集められた部隊で構成された大規模部隊、そしてそれを指揮する連邦捜査部シャーレの先生という単独の相手に対して過剰ともいえる戦力をつぎ込んでなお、その襲撃者を捕えることはできず、有効打すら与えられなかったらしい。

 

 

どう考えたって規格外の相手だ。

この事件の犯人にキヴォトスは破滅させられるなんて話も出た。

でも、そんな事件はある日を境にぴったり止まる。

 

 

 

────────『カイザーコーポレーション解体』

 

 

 

それはシャーレの先生が主導となり突き止めた、カイザーによる今までの悪徳な商売に関連する告発からなされたものだった。

カイザーの被害者たちへの救済も大規模に報道され、それに伴って止んだ破壊は、今でも有名な事件としてキヴォトスの記録に残っている。

 

 

 

 

 

 

実は、かの襲撃者についてはその後もいくらか記録や、今でも噂がある。

記録については─────

 

サンクトゥム攻略やエデン条約で、その犯人が敵戦力の殲滅を手伝ったとか。

ミレニアムに関連して起きた砂漠の大蛇退治やその他の巨大機械の対応にそいつが現れてぶったおしてくれたとか。

先生が関わった大きなバケモン相手の戦闘には突然現れて相手をボコボコにしていつ間にか消えたとか。

 

噂の方は───────

 

シャーレの先生を含めた三大校の中の数人はその正体を知っているとか。

その本拠地はアビドス砂漠にあり、その姿を今も見ることがあるとか。

その目的はその砂漠にあるとある小さな学校を守るためだったとか。

シャーレの先生もその正体を知っており、その襲撃者に会う方法を今も探しているとか。

何か事件があった際、どんな治安部隊より早く鎮圧されている場合、その襲撃者の仕業であるとか。

 

でも、そんなうわさや記録があるにもかかわらず、襲撃者の居所については今も確定した情報はなく、各組織では今も警戒が続けられている。

 

 

 

────────友人のために、随分と派手にやりやがったもんだ。

 

 

 

「はぁーあ」

 

 

大きく声を上げながら読み返していた手帳を閉じる。

あいつが消えた後の色々をまとめ、今のアイツがどこにいるのかを探るための手帳。

けど、もう半ば諦めた手帳を持って、私はバスを降りた。

 

もう目の前になった久々の学校を私は眺める。

前は公共交通機関なんてなかったのに、本当に頑張ったもんだなと私はそんな感想を持っていた。

 

今日は久々、一年前、あの大犯罪者に入学させてもらった学校に二週間ぶりの登校である。

まあ、進級もちゃんと勉強したから問題ないし、おさぼり気味なのは許してもらっている。

色々と私自身やりたいことがあるのだ。

 

正門をくぐれば、集まった四人と、大人が一人。

私は手をあげる。

 

「よう、来たぞ」

 

「あ、フネさん。お疲れ様です」

「お疲れ、急に呼び出してごめんね」

 

「いいんだよ、アヤネ、セリカ」

 

「ん、イベントの設営はフネが一番頼りになる」

「他の学園の方々との繋がりもありますからね~」

 

「まあ、治安維持では私は役に立たないし、これくらいはな」

 

挨拶をしてくれる四人に私は返す。

今日の予定は、来る入学式に向けての準備と設営。

おおまかな機材自体は学校にあるが、追加の手配なんかを私が担当しているのだ。

なんてったって、新入生が両手の数を越えて来てくれるのだから。

 

私は袖をまくる。

そして、今も私たちを眺めて微笑む大人へと顔を向けた。

 

「先生も、久しぶりだな」

 

「うん、元気そうで何よりだよ。フネ」

 

私の挨拶に先生は笑顔で返してくれた。

ただ、その笑顔は毎度の事ながら少しくたびれた様子で、またこの人は無茶をし通しなのだろう。

今もなお、この人だけはあいつのことを諦めてない。

私は四人へ向けて、準備の話をする。

 

「そうしたら、機材は体育館でいいか?」

 

「うん、お願い」

 

頷くシロコに、私は手をあげて返して。

周りを見渡す。一応いるはずの残りの一人を探して。

 

「そういえば、ホシノは?」

 

その問いかけに、皆がお互いの目を見合わせる。

その反応で、私はこいつらが何を思っているのかを察してしまった。

答えの帰らない質問に、一人残った先生が私に応えてくれる。

 

「ホシノなら屋上だよ。レイヴンと一緒に」

 

その答えの、あいつの名前が出た瞬間に、皆の顔に影が差す。

大げさすぎて、気をどう使っていいのかわからなくなるくらいに。

 

あいつはいつか読んだなんとかホッターの例のあの人ではないのだけれど。

 

ただまあ、私に何とかできることではないと、私は息を吐く。

私はあの日の光景をカメラでしか見ていない。実際に見たこいつらの内心を測るなんて私にはできない。

 

「じゃあ、挨拶だけして用意してくるよ」

 

そう言って手をあげる私に、控えめに手をあげる四人と、しっかり手を振ってくれる大人が、あいつの微妙な存在感を示すようで私は苦い気分になった。

 

 

 

 

 

 

屋上に登れば、今年卒業したはずのあの先輩は真新しい作業服を着て鼻歌を歌っていた。

扉の音に振り向くと同時に、私の方へとにこやかに手を振る。

 

 

「おっフネちゃーん! おかえりぃー!!」

 

 

桃色の髪をした先輩はそんな言葉をあげてご機嫌そうな声を出す。

車椅子にのった、今も目を覚まさない、あいつの包帯の体を隣に置いて。

一つ息を吐いて、私は問いかける。

 

「昼寝か?」

 

「うん。レイヴンちゃんと一緒にね。ポカポカして気持ちいいよ~」

 

そう言って、ホシノは車椅子の彼女にねーっと声をかけた。

ヘイローはついているのに反応を返さないあいつの体に向けて、まるで起きてるみたいに声をかける。

 

「そうか、その……卒業生なのにいいのか?」

 

ちょっと遠回しな問いかけ。

けれど、その意図を汲んだ先輩は迷いなく頷いた。

 

「うん。おじさんはずっとここにいるよ。ここにいないといけないからね」

 

当然でしょという目だった。何を言うのかというようにも見える。

 

あいつが消えた後、諸問題はある程度の解決を見たのにと私は思う。

けれど、私が言えた口でないというのも私は理解している。

私も、いまだにアイツが見つかったらいいななんて思っているから。

 

私は息を吐く。私がこの人に出来ることは何もない。

黙る私に気を使う用にホシノは私に問いかける。

 

「フネちゃんは入学式の準備?」

 

「おう」

 

「いやぁ今年も新入生が来てくれておじさん嬉しいなぁ」

 

そう言ってホシノはあいつへと目を向ける。

 

「レイヴンちゃんも、そう思ってくれるよね」

 

そうして、あいつの手に自分の手を重ねる。

返答もないのに、まるであるかのようににこやかにあいつへとホシノは笑いかけた。

あの日から変わってしまったその様子に、私はまた気づかれないくらい小さくため息をついた。

 

あの日、こいつが飛んでからのことを私は思い返した。

あれから、ホシノは学校周りの防備や、自治区内の治安維持、制度の策定にすごく積極的になった。

以前から彼女を知っている四人が驚き、心配をするほどに。

 

でも、その活動の功績は大きなものだった。

カイザーの崩壊に合わせてアビドスの復興は少しずつなされて行ったし、鉄道の話なんかも、皆に事前に相談して、先生の力も借りて、全部全部この人は解決していった。

 

皆の手をよく借りている、人に頼れるリーダーだとよく知らない奴は言ったっけ。

でも、私と先生と、他のアビドスの皆は知っている。

 

あの積極性は、こいつの体の世話と安全を優先するためで。

人に頼るようになったのはあの日ホシノの携帯に届いた車椅子の設計図を理解するための勉強をしたかったからだ。

ミレニアムの奴を頼って直してもらったものを自分でもできるようにとするためだ。

 

ホシノの全てはあの日から、この包帯巻きとこの学校のためだけに回ってる。

 

 

私は屋上からアビドスを見まわす。

まっさらな青い空の下に、まだまだ復興しかけの街が広がっていた。

ここにアイツが目撃される噂が本当なら、ひび割れた器みたいなこの先輩を置いておくなんて薄情な奴だと私は思う。

 

「ホシノ、レイヴンを探さないのか?」

 

私は聞いた。

この人が望めばもしかしたらと思う部分もあるから。

でも、ホシノは首を横に振る。

 

「頼まれたからね」

 

それは、あの時私たちの聞こえなかったあいつの遺した言葉なのだろう。

呪いみたいなものばっか残しやがってと私は思う。

 

 

アビドスとこの包帯巻きに、この人はこれからも縛られるのだろう。

あいつとこの人の過去の誰か以外に、この人に結ばれた呪いみたいなものを解ける奴はもういない。

せめても、生きているこいつさえ戻ってくれば一つは外れるのに。

 

 

眺める水平線に、あの時見たアイツの影はなかった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

とある有名な話がアビドスにはある。

この自治区には悪いことを企むやつを懲らしめる人が居るという話だ。

 

大きな翼をもつそれは、黒い翼と体躯、頭には耳がある。

自治区の秩序を乱すものが現れたらそれは出てきて、邪魔者を殺すのだという。

 

 

それは『黒い鳥』と呼ばれた。

 

 

アビドスの秩序を乱すものを、何もかも焼きつくす、死を告げる鳥。

おとぎ話のような話。でも、これは本当の話。

 

アビドスの高校に今もいる用務員が見た話だ。

 

 

 

 

 

アビドス高等学校の屋上でそれは立つ。

眠りについた友人の眠りを守るために。

 

「ホシノ……」

 

今も想う友人の寝顔を遠く眺めて、鳥は街を眺める。

平和になった街、彼女の守りたい街を見る。

 

その眼には今日の目的となる武装集団の計画が映っていた。

鳥は翼を広げる。噂に違わぬ破壊をもたらすために。

 

「はじめよう……わたしのために」

 

鳥は、飛び立つ。

 

 

 

GOOD END1『黒い鳥』






ACVDのあの話やってみたかったんですよね!

この世界ではアビドス三章での反転は起こってない想定です。
レイヴンに呪われたホシノは地下pの干渉があったとしても暴走機関車になれなくなってしまったので解決です。

ちなみにこの世界の地下Pはレイヴンによってぶち殺されてます。
クロコは脅しに来たら死んでたので酷くびっくりしたでしょう。


クロコもホシノも何も乗り越えられてないけど、キヴォトスは平和なのでGoodENDです。やったね!
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