今回もよろしくお願いします。
アビドスの校舎から30㎞地点、そこにヘルメット団の基地があった。
基地を遠巻きに眺めながめる私たちにアヤネの通信が聞こえる。
『皆さん、ヘルメット団アジトの10㎞圏内に入りました。敵反応多数です』
「よーし、それじゃあやっちゃいましょー☆」
「ええ、やってやりましょう!」
「「おおー!!」」
ノノミとセリカの言葉にシロコ…先輩とホシノが声をあげる。
私は複数人での作戦にいつかのアイスワーム戦を思い出していた。
総長の指揮で、戦友、チャティ、イグアスとス……いや五人での作戦。
あの時は楽しかった……そして、それをみんなに伝えられないのが残念だった。
「ほら~レイヴンちゃんも」
ホシノが私の隣に回って手をもう一度上げてくれる。
だから、私も倣って手をあげる。
「おおー!」
「おおー」
先生が言った通りあの時と違って私は一人ではないから。
今日はみんなと一緒に戦ってみよう。
『そしたら、私もアヤネと一緒にサポートで指揮をするね』
「ん、よろしく。先生」
先生の言葉を聞いてみんなで陣形を整えていく。
私はホシノと前衛だ。
隣に来たホシノが私に顔を向ける。
「レイヴンちゃん、みんなの動きとか、あんまり気にしすぎないでいいからね」
「そうなの?」
連携だのなんだのと聞くから頑張ろうと思っていたのだが。
「ん、このメンバーでレイヴンは新人、合わせるのは私たちの役目」
「そういうこと! 頑張りましょ!」
「大船に乗ったつもりでいてくださいね~☆」
皆がそう言ってくれるから、私は大きく頷く。
なんだろう、歓迎されているという感じがして、嬉しい。
「ありがとう」
『皆さん敵反応近づいてます!』
返答からあまり間を置かずアヤネからの通信が入る。
「行こうか」
「うん。行きます」
ホシノの声が聞こえて、今度はあの二人の声は……しなかった。
少し寂しい感じがするけれど、背中を預ける人がいる戦いは力強く走れる感じがした。
敵基地の攻撃作戦に関してはうまくいきすぎたくらいで、みんなでかかった相手は拍子抜けするぐらいに弱かった。
「いや~皆お疲れさま」
「ん、ホシノ先輩もお疲れ様」
ホシノの言葉にみんなでお疲れ様を言い合う。
前の時はみんな戦線から離脱して最後の私が決めたのだったか。
ただ、今回は人だし…
「芋虫ではないか」
「レイヴンちゃん、どうかしましたか?」
「いえ、以前戦ったことのある敵を思い出しただけ」
思わず小声で呟いていた私の顔を覗き込んでノノミがそう言うので慌てて手を振る。
「レイヴンちゃんが前に戦ったってどんな敵だったんですか?」
そこから追及されるとは思っていなかった。
どうしよう、アイスワームに言及しだすとサイズ的にACの話やらに発展しかねない。
サイズ的に人でも行けそうなやつ……と考えて思い出す。
「20mくらいの芋虫」
「え」
想像したのかノノミの顔が青ざめる。
「ちょ、聞いてたら、さっきの戦闘のどこが芋虫と関係あるのよ!」
「そこまで大きいのはおじさんも戦いたくないなあ~」
「どうして戦ったの?」
シロコ…先輩から疑問が飛ぶ。
あの時はコーラルの研究をしていた技研都市を探すために地下に潜った時だったか……どうごまかそう。
「えっと……探し物してて洞窟探索をして……食用で飼ってたみたいで」
「食用!?」
『その大きい芋虫は……食べたんですか?』
セリカが大きく叫んで、アヤネからも質問が来る。
私は食べたことない……はず。生命維持装置の栄養源として入れられたはあるかもしれないけれど。
「ない……はず」
「はず!? ちょっとレイヴンどういう食生活してたのよ」
『す、すごい話ですね……』
『前いたところはそれだけ大変だったんだね』
「はい、大変だったとは思います」
先生の声に頷きを返す。
あのミールワームの生産量によっては餓死者が出るくらいにとまではいわなくてもよいだろう。
「はいは~い、そろそろ芋虫のお話はやめよ~、ノノミちゃんが倒れちゃいそうだし」
ホシノからストップの話が出たので見てみれば、青い顔をしたノノミが何とも微妙な顔をして空を見ている。
たしかに、やめておいた方がよさそうだ。
「ん、作戦も終わったしそろそろ帰ろう」
シロコ…先輩に促されてみんなで帰り出す。
帰り道、皆とは食べ物の好みについて聞いたりした。
「今度、私のバイト先に来なさい、おいしいラーメンご馳走してあげるわ」
ミールワームの話を聞いていたセリカからはそんな約束もしてもらって、
仲間とはこういうものなのかなと少し実感がわいた気がした。
『借金返済』
セリカがその文言を出したのはうっかりだったのだろうと思う。
「借金返済って?」
しまったという顔のセリカにそう先生が聞き返して、
話そうとしたアヤネをセリカが止めて、どうしようかと目を泳がせる二人に話出すのを促したのはホシノだった。
「先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?」
「先生は信頼していいと思う」
そう言って、シロコ…先輩も加勢するが。
「これまで問題はずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん! 他の大人たちは見向きもしなかった!
今更首突っ込んでこられるのなんて私は認めない!」
そう言ってセリカは教室を出て行こうとする。
それを、私は引き留めた。
「待って、セリカ」
「レイヴン……なによ」
セリカが振り向いて私を睨む。
さっきのラーメンの約束と言い、セリカは律儀なのだと思う。
今も、走り去ろうと思えば出て行けたのに。
「今、話してくれなくてもいい、信用には実績が必要。
だから、これからも助けさせてほしい。それで充分、そうですよね、先生」
ウォルターも『まずは実績作り』そう言っていたはずだ。
嘗ての私のように成果はそのまま相手からの利用価値になる。
「そうだね、今すぐとは言わない。話しづらいとも思うし」
先生は私の言葉に頷きを返してくれる。
私がもう一度セリカを見ると、セリカの睨みは一瞬和らいで、
少し唸ったかと思うと「わかったわよ!」と大きく言った。
「ちょっとくらいは……教えてあげる」
そう言って渋々といった形で席に戻った。
それを見てホシノが話し出す。
「ありふれた話だけどさ。学校に借金があるんだー」
そう言いだして聞いた金額は9億6235万。
四捨五入しておよそ10億……かつてのルビコンでの貨幣に直せは100000COAM。
テスターAC一機と少しくらいの金額……かつての私であれば安い依頼で済んだなと思うところだが、
それが大きい借金というのだからキヴォトスの貨幣価値が私にはわからず、先生を見る。
「先生、キヴォトスでの仕事はどれくらいの金額になるのですか?」
「そうだなー仕事にもよると思うけれど」
「バイトってなると1000円からって話になるよね~」
先生とホシノがそう教えてくれる。
なるほど、それくらいしか稼げないなら大変な返済だろう。
「私の貯金が使えればよいかと思ったけど……」
企業間の暗号通貨でもあるし……電子決済限定になるだろうか。
「いやいや、そういうのは使わないよ。あくまで私たちで返さないとね」
「ん、でも、借金の返済に出してもいいなんて、レイヴンの貯金が気になる」
遠慮をするホシノ先輩に頷いて、シロコ…先輩の問いに答えることにする。
ぼそぼそと嘗ての自分の貯金を計算する。
「たしか……最後は40,000,000COAMくらいはあったはずだから…うん、4000億くらい」
私が頷いてみんなに伝えた瞬間、一人を除いて皆が固まっているのを見た。
ごまかせばよかった。先の仕事の話を聞いたのに素直に答えてしまった。
私がどうしようとみんなを見ている中で唯一特に驚きもしなかったノノミが「わー☆」と手を合わせる。
「レイヴンちゃんもお金持ちだったんですね☆」
ということはノノミもお金持ちだったのか。
ならここから私の収入事情を話せばそういうものだとも分かってもらえるはず。
「前のところだと仕事は軽いのでも9億くらい入っててこれくらい普通で……」
そこまで話してまたしまったと思った。
さっきバイトの給料を聞いたところだったはずなのに。
「九億の……バイト!?」
「うへえ……想像つかないや~」
「レイヴン……どういう仕事なのか聞いてもいいかな?」
仕事の内容を聞かれて私は詰まる。人殺しとは言えない、何かでごまかさないと。
「重機を使って、設備とか機械を解体する。
大きい機械だったり、一人で一施設とかを受け持ってたから金額が大きくなる。」
嘘ではない、壊したのはまだ稼働している基地設備で、壊した機械は人が載っているACやMTなんかだけれど。
私の説明にみんなはどんな設備を壊したらそんなことになるのか等々聞いてくる。
どこまでなら……話していいだろうか。
「えっと、大きいダムとか、土地開発用の機械とか……」
「ん、設備も色々ある、サイズはどれくらい?」
サイズを聞いてもらえたということはここで数字を盛れば大丈夫なはずだ。
多重ダムはどれくらいの大きさだっただろうか。ACで飛び回っても大丈夫なのだからかなり大きいはず。
「サイズ……広さはミレニアムの先生と行ったエリア」
「スタディーエリアかな?」
「そう、そこと同じくらい」
適当に私の知っている少ないキヴォトス知識でも広い土地を指定しておく。
アビドス自治区はさすがに盛りすぎだと思ったからだ。
皆は疑うような視線を私に向けているが、私からあかせることはない。
すこし気まずい気分でみんなを見るが、まだ私への疑念が晴れた様子はない。
どうしよう。そう悩んでいると、ホシノが一度手をたたく。
「まあまあ、あんまり追及するのもかわいそうだし、とりあえず今日は解散しよ~」
助け舟を出してくれて助かったと胸に手を置く。
みんなが仕方ないなあと言いつつ分かれていく中で、私は先生を見る。
「先生、解散したけど、泊まるのはどうするの?」
「そうだなあ」
「空き教室つかってよ、空いてるからさ」
話す私たちに後ろからホシノが提案してくれる。
「いいの? ありがとうホシノ」
「いやいや~、ヘルメット団の件もあったし頼りにしてるよ」
じゃあ案内するね~と言いながらホシノについて空き教室を二つ通してもらう。
「片方が私で、もう片方はレイヴンだね」
「うん。ありがとう。ホシノ」
「ううん、いいんだよ」
じゃあちょっと中を見てみようかなと言いつつ、先生が教室に入ったのを見て私も自分の部屋に入る。
ホシノはまだいるはずと思って、私は声をかける。
「案内、夜にお願いしてもいい?」
「うん、また待ってるね」
連絡先交換しておこうね~なんて言ってホシノは携帯を私に見せてくれる。
モモトークを交換して、教室を見終わった先生ともまた顔を合わせて、
また明日もよろしくなんて言いながらホシノと別れた。
「おいしかった?」
「はい、ありがとうございます」
ホシノからもらっていた夕飯を先生と食べて感想を言い合う。
先生が私の顔をよく見ているのはなぜだろうか。
「レイヴン」
先生から呼びかけられる。
「はい」
「君が秘密にしているのを無理に聞きたいとは思ってないんだ」
私のごまかしはバレていたようだ。
表情などは手術の影響でなかっただろうに、それでもバレるとはよほど下手なのだろう。
でも、聞きださないでくれるのはありがたい、この世界は人死にが少ないと聞いている。
私の人殺しの経歴の話は良いものではないし、最初に考えた通り、ルビコンを証明できない。
「ありがとうございます。ですが、なぜ秘密がばれていることを伝えてくれたんですか?」
私は同時に浮かんだ疑問を口に出す。
お昼の時のように私に周りを頼ってほしいと、自分もいるといったのでも十分だと私は思っていた。
「隠し事は本人もいつの間にか傷つく場合がある。
話してくれたらそれは嬉しいけれど隠し事は悪いことじゃない、
だから、隠していてもいいんだって伝えておくほうが良いと思ったんだ」
そう言って先生は私の方に微笑みを向ける。
「レイヴン、過去の秘密にとらわれないで、君のいきたい方向に進んでね。私は全力でそれをサポートするよ」
『お前自身の感覚に従え』
嘗ての飼い主が私にかけてくれた言葉と同じように感じる。
いや、あの時はコーラルの処遇についての選択だったし、少し違うのか。
私の前にはもうコーラルはないのだから。
しかし、それがなくなって、生きる先は今はない。
「ゆっくり、見つけてみます」
「うん、今日は夜も遅い、ゆっくり休んでね」
『ゆっくり休め、621』
さっきの重なった言葉でか、再度先生と彼が被る。
私はしっかり頷いた。
「はい、先生。おやすみなさい」
ウォルターあなたにもこう言って、挨拶をしっかり返せたらよかったのに。
「お待たせ、ホシノ」
「いやいや、全然待ってないよ」
夜の校庭、LOADER4の下でホシノと合流する。
「あの時の、レイヴンちゃんだよね?」
「うん。手を握ってくれて、ありがとう」
あの夜のお礼を言う。
「いいんだよ。じゃあ、ついてきて」
そう言うホシノに従ってついていく。
この世界でのもう一つの肉体、C4-621の体。
案内される間の時間はすごく長く感じた。
私は虫が苦手なので、ミールワームは初見の時軽く叫びそうになりましたね。
やっとこさ621の体の方にもっていけたぞう。
まだやりたいことには全然こぎつけてないので頑張って書いていく所存です。