猟犬烏の青春   作:面無し

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感想誤字報告嬉しいですね。

貰えるとこう頑張るぞってなりますね。

今回もよろしくお願いします!
ホシノの台詞エミュって難しいですね…


2-4 委員長は過去を聞く

 

 

 

機械式の車椅子を見る。

五感の内、味覚と嗅覚を失い、衰えた視覚、マイクの補助なしでないと機能しない聴覚、ほぼ触れていることを感じられない触覚。

筋肉もなくもぞもぞと這って動くしかできない肉体、この車椅子などの補助がなければ数時間で死ぬ程度しか動かない内臓機能。

コーラルに脳を焼かれ、ACに生体接続して動かす以外の機能がないと言って当然、廃棄処分予定だったあの時の自分がそこにいる。

 

「ありがとうホシノ。私の世話をしてくれて」

 

「ううん、私は重要なことは何もできてなかったよ」

 

私の隣にいたホシノは車椅子の私に寄り添ったときに置かれた椅子にもう一度座る。

 

「レイヴンちゃんの体がもう何も残ってないってことと、車椅子がレイヴンちゃんの命をつなぎとめてるってことくらいしかわからなくて、体を拭いてあげたりも手術痕が多くておっかなびっくりだったし、何かあったらとは思っても車椅子はうちの知識じゃ何もできないし」

 

「不甲斐なくてごめんね」そういうホシノの座る椅子の向こうにはうっすらと本の影が見えた。

私の車椅子の操作方法がわかる資料でもないかとあれこれ探していたのだろうかと思う。

専門家ではないけれど、恒星間航行までできる私の居たところの車椅子は技術力やそもそもの機械の仕様面でも乖離があるはずで、

ホシノの思うような情報は見つからなかっただろう。

私はもう一度礼を伝える。

 

「いや、それでもありがとうホシノ、こんな廃棄予定のあったやつを拾ってくれて。

車椅子のことは……キヴォトスでも一番頭のいい技術者に任せないといけないような代物だと思う」

 

「そこまでのものなんだね」

 

ホシノはそう言って影に置かれていた本を手に取って背を撫でた。

予想をしていた通り本は『電動機器工学』と題されていた。

私は先ほどのホシノの台詞で気になった部分へ言及する。

 

「うちと言っていたな。アビドスの皆も?」

 

「うん。全員知ってる。セリカちゃんが借金を言っちゃった時は一緒にバレないか心配したよ~」

 

ホシノは頬を掻きながらそう言って続ける。

 

「レイヴンちゃんのことは私に一任してもらって秘密してるんだ。包帯ぐるぐる巻きの人を匿ってるなんておおっぴらにできないでしょ?

みんなと私の違いはあの夜の話を皆は知らないから。この子は621さんだと思ってるってことかな」

 

秘密にするのは当然だと思った。そもそも包帯ぐるぐる巻きの人間なんて厄介だし、

私自身放っておかれても文句は言えない身だと思う。

まあ、ACが校庭に現れてしまったのだから放置も難しいとは思うが。

それにしても、621か……ウォルター以外に呼ばれるのは少し違和感を感じる。

 

「アビドスでは、ホシノが技術屋なのか?」

 

「ううん、一番はアヤネちゃんかな。おじさんはわからないって言われて何かないかなって調べてたんだ」

 

「そうか……私も内部の装置については詳しくない」

 

「そうだよねー。乗ってる人で作ったわけじゃないもんね」

 

その通りだった。カーラやチャティでもいればいいのだが。

けれど、私にもわかることはいくつかある。

 

「でも、操作方法なんかで良ければ、教えられる……はず」

 

「ほんとに? そしたら教えてほしいな」

 

ホシノがそう言って笑みを浮かべるが、その前に私の方も確認したい。

 

「ホシノ、教えるのはいいけれど、このまま診てくれるの?」

 

「うん。ウォルターからの依頼私は受けたつもりだからね」

 

「え、ウォルターから?」

 

突然出てきた飼い主の名前は予想外だった。

 

「うん、君の再手術と再出発をさせてほしいんだって」

 

そこまで聞いて合点がいった。おそらくあの人が手配していた闇医者のことだろう。

きっと、用意してくれていると思っていた。

嘗ての飼い主は私の思っていた通り優しさを捨てきれていない人だったのだなと思って私は一瞬の嬉しさを感じる。

けれど、それとは別でホシノに言っておかないといけないこともある。

 

「ホシノ、その依頼は別の人への依頼だし、ここまで世話をしてくれたのはありがたいけれど、アビドスの皆に背負わせられない。

私自身に関しても、ウォルターの依頼や私の状態を見る限り訳ありと分かっていると思う。

私はあんまりよい人物でないし、シャーレの方で引き取ったほうが良い」

 

「そうだね、技術的にも今のアビドスだと不足だとは思う。

レイヴンちゃん自身が来てくれたのなら、君に任せる方がいいのかなとも思う」

 

だから、これはわがままなんだと言ってホシノは私を真っすぐに見つめる。

 

「私に君を助けさせてほしい」

 

「どうして、そう思ってくれるの?」

 

私の問いかけにホシノは少し俯いて私の目をもう一度見た。

 

「これは私の大事なことなんだ。隠してるわけじゃないけれど明かしてるものでもない。

だから、交換にレイヴンちゃんのことも教えてほしいな」

 

私のこと、ルビコンでのことだろう。話してよいか悩んでホシノから少し目をそらす。

どこまで、話すのが良いだろうか。銃撃戦は日常と聞いたが、キヴォトスでの死は今のところ聞いていない。

ヘルメット団等のチンピラはいるがそれでも餓死と日々隣りあわせということは聞いていない。

人が死なないルビコンという表現が正しいのだろうか。

そんな土地の人間は死を振り撒いて来た自分をどう思うだろうか……私には悪いイメージしか湧かなかった。

 

「ホシノ……私は怖い」

 

私はうつむいたまま言った。

ホシノは少し唸ってから立つと私の手を取っていった。

 

「そしたら、私の話をするよ。それで話したい分だけでいいから、教えてほしいな」

 

私は少しだけ顔をあげてホシノを見る。

目が合ったホシノはにへらっと笑って少し茶化す。

 

「若い子の秘密を無理矢理聞こうなんて、おじさんできないよ~」

 

「うん。ありがとう。そしたら先に話したい分だけ話すよ」

 

「いいの?」

 

そういう私にホシノはもう一度目を見つめて確認してくれる。

 

「うん。以前にできなかったことだから、話して聞いて築ける関係もあると思うから」

 

 

 

 

 

そして、私は嘗ての自分についての話しをした。

 

「私が元居たところは恒星間航行技術が確立してる」

 

「恒星間航行って……月とか近い星じゃなくて空の光ってる星に向けて移動して、戻ってこれるってこと?」

 

「そう。あの車椅子も、校庭の機械もその世界の技術でできてる」

 

「あっちゃあ、それはおじさんたちには手も足も出ないよ~」

 

そもそもの技術の乖離の話や。

 

「私は強化人間なんだ。脳にデバイスを埋め込みとある情報伝達物質を媒介にして五感等の能力を高める手術を受けた」

 

「五感を……でも、レイヴンちゃんの五感は」

 

「そう、私の五感はいや、肉体もほぼ死にかけと言っていい。

でも、肉体の感覚は私の世界の技術では機械を通せばいい、あの私が乗っていた機械があっただろう」

 

「うん。だいぶボロボロだったけど」

 

「あれは元々人型なんだ、手足がもげて黒こげの鉄くず状態だったがな」

 

「そっか……人の肉体での感覚が死んでても、同じ感覚で操縦できる機械があるなら拡張した感覚が適用される」

 

「そういうこと。この車椅子の私にはそれしかできない」

 

強化人間についてや。

 

「ウォルターは……私の拾い主なんだ」

 

「拾い主……廃棄予定っていうのと関係ある?」

 

「うん。私の手術は正直失敗なんだ……五体満足で動けない、人体の機能も満足にない私は売れ残っていたんだ。

そもそも、情報伝達物質を使用した強化人間手術にも新しい手法が出て。私は旧型と呼ばれる世代だった」

 

「それを引き取ったのがウォルターなんだね」

 

「うん。ウォルターは死ぬだけの私に彼の元で働くものという意味をくれた……だから恩人なんだ」

 

ウォルターについて。

 

「あの校庭の機械はアーマード・コアっていうんだ」

 

「アーマード・コア?」

 

「人型をメインとして、足や腕、胴体や頭部といった各部を交換可能で……汎用性のある……機械かな」

 

「そっか。それに乗ってレイヴンちゃんはお仕事してたんだ」

 

「うん」

 

私が乗っていたACについても。

 

「話せるのは……これくらいかな」

 

一通り戦ったりという部分だけは伏せながら話終えれば。

真剣に聞いてくれていたホシノは少し背伸びをして感想を言ってくれる。

 

「いやあ、すごい話を聞いちゃったなあ。別の世界の話なんて」

 

「突拍子もないとは思ってる。証明も……あの校庭の機械と車椅子の強化人間しかいない。

それに……ウォルターとのこととか話してないこともいっぱいある」

 

「いいよ。話せないことは話さないでいいって言ったのは私だから、レイヴンちゃんの話も信じるよ」

 

そう言って、ホシノはお礼を言ってくれる。

 

「ありがとう。レイヴンちゃん、君を教えてくれて」

 

「ううん。信じてくれて嬉しい」

 

「いやあ、そう素直に言ってもらえるとおじさん照れちゃうよう」

 

ホシノは頭を掻きながらそう言って、さて、と一つ置いて「今度はおじさんの番だね」と言った。

ホシノは話し始めた。

 

「おじさんはさ、昔は今みたいな性格じゃなかったんだ」

 

「うへうへしてないってこと?」

 

「うへ~正面から言われると弱いなあ。まあ、その通りなんだけどさ。

昔はもっとトゲトゲしてたんだ。おじさんが一年生の時かなあ。

当時はもうアビドスの砂漠化は結構深刻でさ、生徒は今よりはいたけれどそれでも苦しいことには変わりなくて、

私とある先輩の二人で生徒会……今の対策委員会みたいなものをやってたんだ」

 

「二人となると厳しそうだね」

 

「うん。実際うまくいってなかった。当然だよね今だって五人で何とかしようって思ったって、

ヘルメット団にやられて、先生やレイヴンちゃんが来なかったらどうなってたかわからない。

でも、二人でいろいろやったりしたんだ。アビドスにあったオアシスの跡を二人で掘り起こしたりとかね」

 

「オアシスの跡を? 水でも掘ってたの?」

 

「ううん。水じゃなくて、超貴重な鉱物が入ってる花火が捨ててあるって聞いてね。

100gで100万もするんだって聞いて私もノリノリで掘ったんだっけ……見つからなかったんだけどね。

そんなことをやってたけど……私はさ、そんなうまくいかない状況が嫌だったんだ。

当時の先輩はね騙されやすい人でね。いつも失敗ばかりしてて、そのたび私がいつも助けに入って。

……喧嘩したんだ。すぐ謝ろうと思ったけれど、先輩はその間に行方不明になってた」

 

「その先輩は」

 

「うん。見つかったよ……砂漠で衰弱死してね。そうして先輩を失って、色々あったよ」

 

「…………」

 

「その後はね、ノノミちゃんが来てくれて、シロコちゃんを見つけて、

対策委員会を作って、セリカちゃんとアヤネちゃんが来てくれて、五人で頑張って」

 

 

***

 

 

「そうして、今の私がいる。私はその先輩みたいになりたいんだ。

だから、私に君を助けさせてほしいな」

 

そう言って私は言葉を区切った。

レイヴンちゃんを見ると、いつも無表情のはずの彼女が俯いては何かを言い出しにくそうに指を絡めていた。

 

「レイヴンちゃん?」

 

「あ……いや、仲の良い先輩を失ったというのの気持ちが……その、そこまで話してくれたからもうちょっとだけ」

 

そう言ってレイヴンちゃんは私の目を見る。

 

「ウォルター以外にも私にも大切な人がいたんだ、エアっていう私の仕事にずっとついてきてくれて話してくれた人や、

カーラって言ってウォルターと同じように私を歓迎してくれた人、そのカーラの作ったAIでメッセージを送って話してくれたチャティや、

私と一回しか仕事をしてないのに友達って呼んでくれたラスティとか、私に新しい呼び名をつけてくれた総長とか、

大事な人がいたんだ……」

 

そう言ってレイヴンちゃんは多くの人の名前を出してくれる。

けれど、私の話を聞いて教えて教えてくれるということは……

 

「皆、もう居ないけれど……居てほしかったと思うことがあって」

 

「そっか……」

 

そういうことだよね。彼らはもういないユメ先輩のように。

すこしの沈黙が流れる、お互いに対して掛けられる言葉を私は持っていなかった。

けれど、話してくれたことには応えなければいけない、だから。

 

「ありがとね。教えてくれて」

 

「いや……」

 

そうして、お礼を言った後で私は手をたたいて努めて明るく声をかける。

 

「さっレイヴンちゃん。まだおじさん話したいことがあるんだ」

 

「なに?」

 

返答をしてくれるレイヴンちゃんは気分を変えたのが良かったのかいつもの無表情に戻ってくれていた。

 

「黒服の言葉とか、この車椅子のレイヴンちゃんとか検証したいなって」

 

「そっか、そうだね」

 

そうして、二人でどう検証しようかと相談する夜が続く。





※今回のホシノは基本シリアスモードなためほぼ一人称が私になるだろうというのは個人解釈です。


ストーリーの読み込みが足りなかったら申し訳ないのですが、
ホシノは絶対レイヴンとであれば失ったもので通じ合える部分があるというのが個人的な感覚なんですよね。
まあ、レイヴンは直接手をかけてたりするので違う部分もありますが。
今回はレイヴンとホシノのキズナ回と肉体の話で書いてたのですが、
長くなったので次回が肉体関連の話になる予定です。
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