ポケモン廃人ではないが、知らん世界に現れた推しに全力を捧げる   作:なんちゃってアルゴン

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異変収束

 

「よし、まずはピジョンから倒すよ! リオル、カミッチュ、よろしくね!」

「アォン!」

「ミチュラララ!」

 

 イヌハギからの情報を受け取った理央の号令に、ポケモン達が応える。

 手負いである飛行タイプのピジョンを倒すのなら、弱点である氷タイプのポケモン達で攻めるのは定石だった。

 だが、それで容易く倒されてくれるほど、凶暴化したポケモン達は甘くない。

 

【野生のピジョンの かぜおこし!】

 

【野生のマリルの バブルこうせん!】

 

 "かぜおこし"によって発生した強烈な風が、"バブルこうせん"の速度と威力を上げて理央達に迫り来る。

 しかし彼女と彼女のポケモン達も、凶暴化ポケモンと同じ様に甘くはない。

 

「カミッチュは"こごえるかぜ"で、コノハナは"かぜおこし"で相殺して!」

 

 迫り来る強烈な風を、こちらも同じく強烈な風で相殺しにかかる理央のポケモン達。

 また、その隙を荒ぶるポケモン達が見逃す筈ないが、理央もそんな事は百も承知していた。

 向かってくるポケモン達を押さえる為に、こちらも負けじとポケモン達に指示を飛ばす。

 

「カヌチャンは"メタルクロー"でアイアントを押さえて! オニスズメは"つつく"でワンリキーを迎撃!」

 

 指示を受けた2匹が、襲いかかってくる2匹をそれぞれ押さえ込む。

 これによってマタドガス以外の野生ポケモンが全て動きを封じられたが、マタドガスは様子を伺っているのか動く気配をまったく見せない。

 それはつまり、理央の残りのポケモンが気兼ねなく動ける事を意味していた。

 

「今だよリオル! ピジョンに"アイススピナー"! ぶち抜いて!」

 

 指示を受けたリオルがピジョンに向かって突貫していく。

 標的にされた事に気付いたピジョンは当然リオルを迎え撃とうとするが、理央のポケモンとお互いの技が拮抗している状態にある為に動けない。

 奇しくもその状況は、先程イヌハギのルカリオが陥ったものに酷似していた。

 そこに、リオルの"アイススピナー"が容赦なく突き刺さる。

 効果抜群の技を受けたピジョンは、その一撃によってようやく戦闘不能となったのだ。

 そしてピジョンが倒された事で、戦局は一気に傾く。

 

「次はマリルを倒すよ! カヌチャン、コノハナ! そのまま"バブルこうせん"を押し返して! リオルは"メタルクロー"で追撃して!」

「アォン!」

 

 ピジョンが倒されて1匹になったマリルを、理央のポケモン達が仕留めにかかる。

 "バブルこうせん"ごとマリルを2匹の起こした風で吹き飛ばして、そこにできた隙にリオルが"メタルクロー"を叩き込む。

 予想外の反撃を受けた上に効果抜群の技を食らったマリルは、そのままそこで沈黙するのだった。

 

「まだまだぁ! カヌチャン、コノハナ、そのまま技の狙いをワンリキーに変更! 残りの皆はアイアントを倒して!」

 

 流れに乗ってきた理央の指示に、ポケモン達は力強く応えてくれる。

 まずワンリキーにダメージを与えていたオニスズメが地中へと離脱したタイミングで、カヌチャンの"ようせいのかぜ"とコノハナの"かぜおこし"がワンリキーに殺到する。

 どちらも格闘タイプのワンリキーにとって弱点となる強烈な風が容赦なくワンリキーを吹き飛ばし、そのまま意識を刈り取った。

 一方、アイアントには理央の残りのポケモン達が一斉に攻撃を仕掛ける。

 

【リオルの アイススピナー!】

【オニスズメの あなをほる!】

【カミッチュの おどろかす!】

 

 防御力の高い方のポケモンであるアイアントにとって、それらの物理攻撃は致命傷にはならない筈だった。

 しかし、頭数と手数によってそれを補って向かってくる理央のポケモン達には、たった1匹でしかないアイアントにはなす術がない。

 抵抗するも虚しく、アイアントは他の凶暴化したポケモン達と同じく地に伏せるのだった。

 

「よし……よし! 群れのポケモン達は倒せた! あとは、マタドガスだけ!」

 

 ようやく見えてきた勝利と言う名のゴールに、理央の心は自然と高まってくる。

 しかしそれを嘲笑うかの様に、ついにマタドガスが動き始めた。

 自身が率いていたポケモン達が倒された事で、本格的に理央達を敵だと認識した様だ。

 

「スモモモッグァー!」

 

【野生のマタドガスは 瘴気を撒き散らした!】

 

【野生のマタドガスの ステータスが上がった!】

 

 再びマタドガスから大量の瘴気が撒き散らされ、それらが地面を這う様にこちらへと向かってくる。

 ただ、対処方法が割れている事から、理央は余裕を持ってポケモン達に指示を飛ばした。

 

「何度来ても吹き飛ばしてあげる! コノハナ! "かぜおこし"! カミッチュ! "こごえるかぜ"! カヌチャン! "ようせいのかぜ"!」

 

 これで瘴気を吹き飛ばしつつ、マタドガスにもダメージを与える事が出来れば勝利は一気に近づくと言うのが、理央の目論みだった。

 しかし、それは容易く破られる事になる。

 

【野生のマタドガスの ねっぷう!】

 

 理央のポケモン達が起こした風を、マタドガスの放った強烈な熱風が容易く押し返してみせた。

 そしてそのまま理央達の元へと殺到し、ポケモン諸共力づくで吹き飛ばしてしまう。

 先程までの勝利への流れから一転、起き上がった理央の目に映るのは倒れ伏す自分のポケモン達の姿だった。

 

(うそ……たったの一撃で、皆が……!)

 

 かろうじてダウンしていないのは、カヌチャンとカミッチュだけ。

 それ以外の理央のポケモン達はマタドガスの"ねっぷう"をまともに受けてしまい、戦闘不能に追い込まれてしまっていた。

 そして理央の方も熱風の余波を受けてしまい、吹き飛ばされた衝撃で立ち上がれずにいた。

 そんな隙を、凶暴化したマタドガスが見逃してくれる筈もない。

 

【野生のマタドガスの ヘドロばくだん!】

 

 理央に向かって、ヘドロでできた爆弾が飛んでくる。

 そこに一切の慈悲はない。

 その事に近くにいたイヌハギもルカリオも理央自身さえも反応できずにいた。

 しかし、ただ1匹だけ理央の危機に反応したポケモンがいる。

 

「カヌヌー!」

 

 それが理央の最初の相棒、カヌチャンだ。

 カヌチャンは"ねっぷう"を受けて満身創痍な筈の自身の身体に鞭打って、身を挺して理央を庇ったのだ。

 幸いな事に、鋼タイプを持つカヌチャンに毒タイプ技の"ヘドロばくだん"は効果がない。

 しかし、無理矢理傷だらけの身体を動かした事で、カヌチャンはもう倒れる寸前だった。

 

「カ、カヌチャン……!」

 

 そんなカヌチャンの様子に理央は青ざめ声が震えるが、カヌチャンは気丈に笑ってみせた。

 カヌチャンは理央が1番最初に出会い、1番最初に仲良くなったポケモンだ。

 だからこそ、理央がカヌチャンを見てきた様に、カヌチャンも理央を見てきたのだ。

 その期間はまだまだ決して長いとは言えないが、今それでも彼女を守ろうとして身体が動いたのだ。

 そんな理央を思うカヌチャンの想いが、カヌチャン自身に変化を起こす。

 その身体から溢れる光は、一歩先へ進んだ証。

 光が収まる頃には、カヌチャンは更に頼もしいポケモンと化していた。

 

「カヌヌヌー!」

 

【ナカヌチャン ハンマーポケモン タイプ:フェアリー/はがね】

 

「し、進化した……! ナカヌチャン……!」

 

 理央は突然の相棒の進化に驚き目を潤ませるが、残念ながら状況が最悪な事には変わりない。

 いくら進化したからと言って、削られてしまった体力が戻る訳ではないからだ。

 現にナカヌチャンもカミッチュも息も絶え絶えで、後一撃でも技を食らえば戦闘不能は免れないだろう。

 一方、相手のマタドガスはレベルが高い事に加え、溢れ出す瘴気の影響でステータスと凶暴性に拍車がかかっている。

 

(でも……絶対に、諦めない……!)

 

 これで戦いに挑むなど無謀の極みでしかないが、それでも理央は守るものの為に背中を見せない。

 

「……リオ、聞け。策がある」

 

 そんな彼女の後ろ姿を見せられて、イヌハギが黙っていられる筈はない。

 

「イヌハギさん?! だ、大丈夫なんですか?!」

「お主が時間を稼いだ故、いくらか動ける様にはなった。ルカリオ、お前も行けるな?」

「──ガォン」

 

 イヌハギとルカリオは何とか立ち上がり、互いに臨戦態勢をとる。

 そしてイヌハギは懐から何かの爪の様な物を取り出してルカリオに投げ渡すと、自らのオージュエルを構えた。

 

「イヌハギさん、まさか……!」

「そうだ。これで決着をつける!」

 

【オージュエルが オーパーツの力を解き放つ──ッ!!】

 

「行くぞ、ルカリオ。ギガオーライズ"ウガツキジン"ッ!!」

「ガォンッ!!」

 

 オージュエルの光によって解き放たれたオーパーツのオーラは鎧となり、ルカリオの身体を覆っていく。

 そしてオーラの鎧とルカリオは完全に一体化し、ルカリオを新たな姿へと変化させた。

 その姿は、まさしく鬼。

 牙は長く伸び獰猛さは増し、白かった身体には毒々しい紫色が宿った。

 そして背中には厳しい氷の毒棘が生え、全身に強い冷気を纏っている。

 最後にウガツキジンと思われる鬼神の姿が浮かび上がり、オーバーラップして消えた。

 

【ルカリオ<ギガオーライズ> いてつきポケモン タイプ:こおり/どく】

 

 そしてギガオーライズした事でヒャッキのルカリオに眠っていた大妖怪としての力も目覚め、その力を上昇させていく。

 

【特性:だいようかい 戦闘中に一度だけ、自分の最も高い能力が上がる】

 

「すごい、なんて迫力……! これが、本物のギガオーライズ……!」

「オオワザにて短期決戦を狙う! リオ、お主らはルカリオのサポートだ!」

「はい! いくよ、カミッチュ! ナカヌチャン!」

 

 その掛け声を受けて、3匹はマタドガスに向かって走り出した。

 ギガオーライズしたルカリオのオオワザは近距離物理技である為、マタドガスに近づく必要があるのだ。

 しかし、容易く近づくのを許してくれるほどマタドガスも優しくはない。

 迫り来る敵を消し飛ばすべく、容赦のない技を放つ。

 

【野生のマタドガスの ねっぷう!】

 

「ナカヌチャン! カミッチュ! ルカリオを守って!」

 

 理央の言葉に応えるべくナカヌチャンとカミッチュは己の技を"ねっぷう"にぶつけつつ、その身を盾にしてルカリオを守る。

 2匹はマタドガスの放つ熱風によって吹き飛ばされてしまったが、その甲斐あってルカリオはマタドガスとの距離を詰める事ができた。

 しかし、オオワザを当てる為の距離にはまだまだ足りない。

 むしろ下手に近づいてしまったせいで、マタドガスにとって技を当てる格好の的となってしまった。

 そしてもう、ルカリオを庇うもの達はいない。

 

「ルカリオ、避けてー!」

 

 理央の叫びも虚しく、マタドガスは無防備に近づくルカリオに容赦なく熱風を浴びせかける──

 

【野生のマタドガスの ねっぷう!】

 

 ──筈だった。

 

【しかし 上手く決まらなかった!】

 

 結果として、ルカリオを"ねっぷう"が襲う事はなかった。

 それを好機と見たルカリオは、更にスピードを上げてマタドガスへと迫る。

 一方、マタドガスはパニックに陥っていた。

 何度試してみても、"ねっぷう"が出せない。

 これは一体どう言う事なんだと、凶暴化している筈なのにオロオロとし始めるマタドガス。

 そんなマタドガスの姿を見た理央もまた、訳がわからずオロオロとしてしまう。

 突然の不調? ラッキー? PP切れ? 

 様々な可能性が理央の頭を過ぎるが、どれもこれもピンとこない。

 そんな時、ふと倒されたカミッチュが視界に入った事で、理央の疑問は解消される。

 

(……もしかしてヒャッキカジッチュ系列の特性、のろわれボディの効果!? このタイミングで!?)

 

【特性:のろわれボディ 攻撃を受けると相手の技をかなしばり状態にすることがある。非接触攻撃に対しても発動する】

 

(何にしろラッキーだ! 他の遠距離攻撃の"ヘドロばくだん"はギガオーライズして毒タイプを持ったルカリオには効果が薄い! これなら、きっと届く!)

 

 ルカリオはそんな理央の考えを裏付ける様に、やぶれかぶれに放たれる"ヘドロばくだん"を軽くいなして突き進んで行く。

 そしてついに、オオワザの射程圏内にマタドガスが入った。

 そのままマタドガスに肉薄したルカリオはその拳を手刀の形にし、限界まで尖らせる。

 それは最早、拳であり剣。

 一振りの名刀と化したその一撃は、ありとあらゆる物を貫き穿つ。

 

「オオワザ──"ウガツイチゲキ"!!」

 

【ルカリオの──ウガツイチゲキ!!】

 

 自身の存在全てを貫く様な鋭い衝撃が、マタドガスを襲った。

 そのまま浮かんでいる事など当然出来ずに、勢いよく地面に叩きつけられるマタドガス。

 しかし、高いレベルによるものか凶暴化の影響からか、ギリギリ戦闘不能にはなっていない様だった。

 

「──ならば、こうだ」

 

 イヌハギが持ち出したのは、空の瓢箪。

 栓を開けて口を向ければ、忽ち瓢箪の中にマタドガスは吸い込まれていく。

 そしてスポンと音を立てて、その身体は瓢箪に収まった。

 これによってようやく、今回の事態は収束したのだった。

 

※※※

 

 その日の夜。

 公安の管理する宿泊施設の理央の部屋には、とある目的で人が集められていた。

 

「いきなり呼んでしまってすみません。皆さん、突然の事だったのに来てくれてありがとうございます」

「いえ、それは別にかまいませんが……理央さんとイヌハギさんは、もうお身体は大丈夫なのですか?」

「はい! あの後ゆっくりお休みさせていただいたので、もう大丈夫です!」

「某も問題はない」

「なら良いんですけど……」

「おい理央、まどろっこしい話ならいらねぇぞ。お前さんがこの面子をわざわざ集めたって事は、何かあるんだろう?」

 

 今回、理央の部屋に集められたメンバーはイヌハギ、ダンガン、フカ、そしてチャチャだ。

 急に会って間もない理央に呼ばれた事にチャチャは少なからず緊張している様だったが、きっと相応な理由があるのだろうと背筋を正す。

 

「リオ様。貴女様が私を呼ばれた事には、何かしらの重要な意図があるのではないかと考えております。間違いないでしょうか?」

 

 その言葉に理央は表情を硬くして頷く。

 何故ならこれからする話は、ヒャッキ地方とこちらの世界の未来に大きく関わる事だからだ。

 それからしばらく部屋に沈黙が流れたが「チャチャさん」と理央は重くなった口を開いた。

 

 

 

「──オーラギアスと言う言葉に、心当たりはありませんか?」

 

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