ポケモン廃人ではないが、知らん世界に現れた推しに全力を捧げる   作:なんちゃってアルゴン

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ホームセンターパニック

 

※※※

 

「日用品OK。それに普段着、靴、下着とかもOK。それから食器と寝具関係に……あ、ポケモンに使う用の物も用意しないと! 後は、えーと……」

「──時にリオ。重ねて聞くが、お主の懐は本当に大丈夫なのか? 我等の為を思ってくれるのは感謝するが、些か買い過ぎなのではと思うのだが……」

「何を言っているんですかイヌハギさん! 私達はこれからヒャッキの為に秘宝を──つまり、ルギアとホウオウを捕まえてヒャッキに連れ帰らないといけないんですよ! 相手は伝説のポケモンなんですから、より万全の状態で捕獲に挑まないと勝ち目はありません。その為には、人もポケモンもコンディションを整えられる環境を準備しないと、です!」

「う……うむ……」

 

 無事にホームセンターに着いた一同。

 まず中々に目立っていたテング団の装束から、そこまで目立たないポピュラーな装いへと衣服を変え、その後は理央の部屋を活動の拠点とする上で必要になるであろう物を見て回った。

 人間が生活する上で必要になる要素の衣・食・住。

 衣と食は比較的に何とかなりそうだったが、住の要素には今後の事を考えてより良い物が必要と言う結論に至った。

 また、ポケモンが現れたと言う異常事態の為、品物はもはや早いモノ勝ちな状況となっていた。

 

「うーん、これよりもそっちの方が……いや、それならあっちかなぁ……んーまとめ買いなら、やっぱりこっちかなぁ……」

(かつて気まぐれに目を通した文献に、女子の買い物とは時間が掛かるものとの記載があったが……まさかこれほどだったとは……!)

 

 現在、一同が買い物を始めてから約3時間が経過。

 まだまだ先は長い。

 ちなみに、ウラギクとムカゴに至ってはこの場にいない。

 イヌハギと理央を2人きりにすべく、さり気なく2人を残してフェードアウトしていったからだ。

 しかし残念と言うべきか期待はずれと言うべきか、推しと2人きりと言うこの状況においても理央の買い物への様子にぎこちなさや下心の様なモノは見られない。

 

【特性:超マイペース】

 

 いや、マイペースなのはもちろんなのだが、今の彼女は「皆さんの役に立つんだ」「ヒャッキを救うんだ」と言う使命感によって己の我欲を打ち消している状態なのだ。

 哀れイヌハギ。

 いくらテング団屈指の実力者・三羽烏の一角だとしても、この買い物地獄からは逃れられない。

 イヌハギが覚悟を決めたそんな時だった。

 

 

「きゃ──────!」

「うわっ何だ何だ!?」

「もしかして、ニュースになってたポケモン?! ……うわっ危な!」

「ひぃっ! 化け物! こっちくんなー!」

 

 

「えっ? 何、今の声……」

 

 突然の悲鳴に困惑する理央。

 その時、姿が見えなくなっていたウラギクとムカゴがどこからか駆け寄ってきた。

 

「イヌハギ様! リオ殿! 襲撃です!」

 

 ムカゴの報告を聞いたイヌハギの顔が、一気に引き締まる。

 

「ッ! 何事だ!」

「モンスター共が店の中に押し入ってきたっ! 小さいのからデカいのまで、とにかく数が多いです!」

「そんなっ! まだお買い物の途中だって言うのに……!」

「致し方あるまい……ウラギク、ムカゴ! 一旦、店の外に出る! リオも準備を──」

 

「イヌハギさん! 危ない!」

 

 咄嗟にイヌハギを抱えて倒れ込む理央。

 そしてそのすぐ後、イヌハギがそれまでいた場所に人の頭よりも大きな岩が落ちてきた。

 彼女の行動がなければ、イヌハギの頭は潰れていただろう。

 

「イヌハギ様!? ──コイツ!」

「ッモンスターめ! 成敗してくれる!」

 

「ヴゥゥゥゥッ! ワンワンワンッ!」

 

【イワンコ こいぬポケモン タイプ:いわ】

 

 愛らしい見た目など関係ない。

 その気になれば人間など容易く殺める事ができる。

 ポケモンと言う言葉が広がっているが、正式にはポケットモンスター。

 ポケットに収まらない存在は、ただのモンスターなのだ。

 

「ポケモンは怖い生き物」とは、つまりはそう言う事なのである。

 

「──某とした事が……迂闊であった」

「イヌハギさん! 大丈夫ですか?!」

 

「問題ない」と1人で立ち上がったイヌハギは、目と耳などの感覚をフル活用して周囲の状況を素早く探る。

 そして下手人であるイワンコを一瞥すると、腰の瓢箪の栓を素早く抜いた。

 

「ルカリオ撃ち抜け"こおりのつぶて"だ」

「──ガォン」

「……ワギャンッ!?」

 

 一撃。

 たった一度の氷の攻撃で、イワンコを吹き飛ばし戦闘不能にしてしまった。

 その顔は、すでに先程までの買い物に振り回される苦労人の顔ではなく、テング団リーダー格"三羽烏"イヌハギの顔へと変わっていた。

 

(カ……カッコイイー! 流石私の推し、カッコ良すぎるぅ〜! イヌハギさま〜!! ♡)

 

「──立て、リオ。此処は、すでに戦場だ」

「え? ……は、はい!」

「ウラギク、ムカゴ、始めるぞ。──行けるな?」

「「──御意」」

 

 体制は整った。

 これより、反撃の狼煙が上がる。

 

※※※

 

 その後イヌハギの立てた作戦はこうだ。

 

 現在、イヌハギ達一同は横に長いホームセンターの最端部にいる。

 このホームセンターは一階しかない為、端から反対の端に移動していけば自然と全てのエリアをカバーして行く事ができる。

 その過程で侵入してきたポケモンを一掃し、最終的に全てのポケモンをホームセンターから追い出すと言う力技の作戦だ。

 自分達の安全を最優先とするなら出口に向かって行けば良いだけなのだが、それでは当初の目的だった物資の調達が果たせない。

 今後の事を勘定に入れた時、買い物の成否は重要だ。

 そこで、離脱ではなく迎撃に打って出る事となったのだ。

 

 目指すは、ホームセンター反対側のエリア。

 

 

 

「落ち着いてくださーい! 慌てないで、近くのポケモンを刺激しない様に離れてくださーい! 野生のポケモン達は、私達が追い払いますからねー!」

 

「狙撃しろ"こおりのつぶて"だ」

「貫きな! "ドリルライナー"!」

「薙ぎ払え"はがねのつばさ"!」

 

「皆さん大丈夫です! ポケモンを刺激しない様に! 落ち着いて、落ち着いて避難してくださーい!」

(す、すごい……! なんてパワフルで荒々しい迫力! これが、ヒャッキのポケモンの力なんだ……!)

 

【ルカリオ(ヒャッキのすがた) いてつきポケモン タイプ:こおり/かくとう】

【オニドリル(ヒャッキのすがた) せんこうポケモン タイプ:じめん/ひこう】

【ダーテング(ヒャッキのすがた) からすてんぐポケモン タイプ:はがね/あく】

 

 凍てつく冷気の力を手にしたルカリオが、震える大地の力を手にしたオニドリルが、頑強な鋼の力を手にしたダーテングが、こちらに向かってくるポケモン共をバッタバッタと薙ぎ倒していく。

 そのあまりに異常な強さに、我先にと逃げ出すポケモンさえいた。

 

「──私達も負けていられないよ! カヌチャン"ようせいのかぜ"! リオル"こおりのつぶて"!」

 

 そんな強力な力を目の当たりにしても、彼女は決して挫けない。

 これからは自分も一緒に戦っていくんだ! と言う気概で店内の客を助けながら、必死になって彼らの後ろに食らい付いていく。

 

「リオル! "こおりのつぶて"でお客さん達にポケモン達を近づけさせないで! カヌチャンは"メタルクロー"で近づいてきたポケモンを追っ払って!」

 

「あ、ありがとうございます! 助かりました……!」

「す、すごい……! あの変な生き物達をあっという間に……!」

「おい嘘だろ……本物のポケモンの次は、本物のポケモントレーナーかよ!」

「おねぇちゃん、すごいすごい! みんなやっつけちゃった!」

「ありがとう! もう大丈夫だから、お姉ちゃん達の後ろに隠れててね!」

 

 襲いくるポケモン達から客を守りながら、目的のエリア目指して進撃を続ける一同。

 しかしその途中で、理央の頭には一つの疑問がよぎった。

 

「うーん? コラッタ、ニャース、デルビル、ポチエナ、マンキー、コマタナ、イワンコ……何だか、進化前のポケモンばっかりですよね」

「油断するなよ、リオ殿。進化前の個体がこれだけいると言う事は──」

「まあ、そりゃあいるよな……親玉って奴らがさぁ!」

 

 まもなく反対側の最端エリアに差し掛かると言うタイミングだった。

 

「──くるぞ」

 

 

 

【ラッタ ねずみポケモン タイプ:ノーマル】

 

【ペルシアン シャムネコポケモン タイプ:ノーマル】

 

【ヘルガー ダークポケモン タイプ:あく/ほのお】

 

【グラエナ かみつきポケモン タイプ:あく】

 

【オコリザル ぶたざるポケモン タイプ:かくとう】

 

【キリキザン とうじんポケモン タイプ:あく/はがね】

 

【ルガルガン(まひるのすがた) オオカミポケモン タイプ:いわ】

 

 今までホームセンターを荒らし回っていたポケモン達の元締め。

 7匹にもなる進化したボスポケモンとでも言うべきモンスター達が一同に集結していた。

 敵の敵は味方、と言う奴だろうか? 

 揃った7匹達は争う様子も見せずに、イヌハギ達一同を睨み唸り声を上げている。

 しかしそんな圧にも負けずに、自らのポケモンに指示を飛ばす声が響いた。

 

「ッ! カヌチャン! "つぶらなひとみ"!」

 

 先手必勝。

 相手の方が頭数が多く力もある様な多勢に無勢の状態ならば、まずは相手の方を弱体化させてしまえば良い。

 勝負事の戦略には、相手の弱体化を狙うものだってある。

 それに、相手のメンツはヘルガー以外は物理攻撃が主流の顔触れだ。

 "つぶらなひとみ"による攻撃力の弱体化は、戦闘に小さくない影響を与えた。

 

「──良い判断だ」

「助かるぜリオ! オニドリル! ヘルガーに"ドリルライナー"!」

「ダーテング! グラエナに"シザークロス"だ!」

「キリキザンに"インファイト"だ、打ち倒せ」

 

 テング団である彼らは、その隙を決して見逃さない。

 的確に効果抜群のタイプ相性を狙う事で、一撃の元にそれぞれの相手を倒していく。

 当然彼らとて無抵抗な訳はなく、反撃に動こうとするが──。

 

「カヌチャンは"つぶらなひとみ"を継続! リオルは"こおりのつぶて"で相手を妨害して!」

 

 理央のポケモン達がそれを許さない。

 再度カヌチャンの"つぶらなひとみ"で攻撃力を下げ、リオルの"こおりのつぶて"で相手の行動を先んじて潰していく。

 その結果ラッタの"かみつく"が、ペルシアンの"みだれひっかき"が、オコリザルの"クロスチョップ"が、不発に終わった。

 

(よし、私だって負けてない! イヌハギさんにウラギクちゃんにムカゴ君と──何より、ポケモン達と一緒に戦っているんだ!)

 

 しかし、それだけで制圧できるほど、野生のモンスター達は甘くはない。

 

「ルガルルルゥ──!」

 

【ルガルガンの "アクセルロック"!】

 

【効果は 抜群だ!】

 

「──しまった! リオル!」

 

 こおりタイプのリオルに、いわタイプの技は効果抜群。

 "アクセルロック"を正面からまともに食らってしまったリオルは、大きく吹き飛ばされてしまった。

 慌ててリオルに駆け寄り、状態を確認する理央。

 それに気付いたリオルは素早く立ち上がり、気丈にも握り拳を上げてみせる。

 

(よかった……ダメージは大きいだろうけど、何とか大丈夫そう……)

「──今は戦闘中だぞ。気を抜くな、リオ」

「は、はい! すみません……」

 

 リオルの無事に安堵する理央に近づいたイヌハギは、ピシャリと言葉をかける。

 戦場では、一瞬の気の緩みが生死に直結するからだ。

 

「某らがそれぞれ3匹を相手取る。リオ、お主はルガルガンを抑えられるな?」

「──はい! やってみせます!」

 

 それは、この者になら任せても良いと言うイヌハギなりの信用の現れだった。

 

「カヌチャン、リオル、行くよ!」

「ヌッチャン!」

「アォン!」

 

 再びルガルガンに向かい合う1人と2匹。

 先に動いたのはルガルガンだった。

 

【ルガルガンの "アクセルロック"!】

 

「"メタルクロー"で受け止めて!」

 

 岩を纏った猛犬の突撃を、硬化した両手の爪で正面から受け止めてみせる。

 2匹の闘志は、十二分に充分だった。

 

「今度はこっちの番……! カヌチャンは"メタルクロー"でルガルガンを引き付けて! リオルは"ふるいたてる"で力を溜めて!」

 

 進化したボスポケモン相手に長期戦は分が悪いと判断した理央は、カヌチャンを壁にリオルに攻撃能力アップを指示。

 隙を見つけた瞬間、一撃でルガルガンをKOするべくリオルに力を溜めさせる。

 一方、そんな企み知った事かとルガルガンの猛攻は止まらない。

 カヌチャンは何とか時間を稼ぐ為にと凌いでこそいるが、限界は刻一刻と近づいてきていた。

 

 

 

 しかし、勝機は思わぬところからやってきた。

 

 

 

「──おねぇちゃんのポケモンいじめるな!」

 

 先程助けて後ろに庇っていた子供が、ルガルガンに向かって床に落ちていた瓦礫の破片を投げつけたのだ。

 

「ッ! そうだ、やめろ!」

「ここはお前のいるところじゃないんだ!」

「お店から出て行ってちょうだい!」

 

 そして子供の行動につられる様に周りで怯えていただけだった大人達も、各々近くの物をルガルガン目掛けて投げ付け始めた。

 それまで凄まじい勢いで攻撃していたルガルガンだったが、突然の事に面食らったのか攻撃の手が僅かに鈍った。

 

(──ここだ!)

 

 彼女は覚悟を決めた。

 

「カヌチャン! "ようせいのかぜ"でルガルガンの足を止めて!」

 

 指示を受けたカヌチャンの"ようせいのかぜ"が、鈍ったルガルガンの動きを完全に封じ込めた。

 

「今だよリオル! 全力全開──"アイススピナー"!!」

 

 "ふるいたてる"で力を限界まで溜めていたリオルの"アイススピナー"が、ルガルガンを捉えた。

 そしてリオルの氷の一撃を真正面から受けたその身体は、2度3度バウンドして店外まで吹き飛ばされた。

 

(やった……?)

 

「──リオ、リオ! やったな! これであたしらの勝ちだ!」

「ルガルガンを含めた大物共は全て倒された! その影響で小物共も逃げていったぞ! もう安心だ!」

「えっと……これで、勝ち? 私は、勝てたの?」

「──リオ」

 

 イヌハギが彼女の名前を呼び、ゆっくりと近づいていく。

 理央の側まで来た彼は、状況が飲み込みきれていない彼女を労う為に目線を合わせ声を届ける。

 

 

 

「お主の勝利だ──よく、戦ったな」

 

 

 

「──はいっ! イヌハギさん!」

 

 

 

 こうしてホームセンターでの戦いは終結したのだった。

 

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