ポケモン廃人ではないが、知らん世界に現れた推しに全力を捧げる   作:なんちゃってアルゴン

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公安の協力者

 

※※※

 

 突然だが「バズる」とはどう言う言葉の意味をご存知だろうか? 

 

「バズる」とは、SNSやインターネット上で話題になる事で多くの人々の注目を集めること、またはその状態を指し示す。

 例えば、インターネット上に流れた自身の行いやSNSに投稿した内容が、多くの人から関心を寄せられる事などだ。

 ただ、それによって引き起こされる影響は、何も必ずしも良い影響だけと言う訳ではない。

 例えるならそう、多くの人々の注目を集めた事により、その本人の知られたくなかった個人情報までもが多くの人に知られてしまったりしてしまうなどがいい例だ。

 

 文明の利器や便利なツールほど、その扱いには気をつけなければならない。

 何故なら、それは容易く人を害する力を秘めているから──。

 

※※※

 

『「──と言う訳で、今話題の的となっているポケモントレーナーさんを取材させて頂こうと思います。いらっしゃるでしょうか……」』

 

「と言う訳で……じゃないんだよ。朝から全く……人様の迷惑も考えなさいよ。これだから近頃のテレビ局は……」

「あの……部長。本当に、ありがとうございました。わざわざ朝早くから車で迎えにきて頂いて……」

「いいのいいの、年を取ると朝早くに目が覚めるものだからさ」

 

「それより、住所とかの個人情報を勝手に見ちゃってごめんね?」と申し訳なさそうに謝ってきてくれる上司を見て、本当に頭が上がらないなと思う理央。

 何と、昨日のホームセンターでのあれやこれやが不特定多数の誰かによってSNSを通じ、全世界に発信されてしまっていたのだ。

 そして、その影響で朝早くからテレビのニュース番組に取り上げられてしまった理央の事を案じて、早朝からアパートまで理央を迎えに来てくれたのが部長だ。

 それも、事情も聞かないままにイヌハギ達ヒャッキ組も一緒に引き連れて。

 現在、関東某所にある理央の勤める会社の休憩スペースに、テレビをつけながら一同向かい合って座っている。

 

「えっと、まずははじめましてですね。私は凍田さんの上司に当たる、田村優蔵と申します。朝早くなのと休業の連絡は回してある関係で他の人はこないと思うので、どうか安心して過ごして下さい」

 

【部長 田村優蔵】

 

「……イヌハギと申す。タムラ殿、此度の心遣い誠に痛み入る」

 

 そう言って深々と頭を下げるイヌハギと、それに続いて頭を下げるウラギクとムカゴ。

 イヌハギ達ヒャッキ組は、この世界の一般常識にはまだまだ疎い。

 しかし、今日これまでのやり取りから理央や自分達の為に心を砕き、行動してくれたと言う事は理解する事ができた。

 だからこそ、普段から決して軽々と下げない頭を下げて感謝を伝えたのだ。

 

「あぁそんな良いですって! ほら、硬くならずに行きましょうよ。困った時はお互い様って事で」

「……しかし」

「いいからいいから! そうだな……まずはゆっくりお茶でも飲みましょう。話はその後って事で、ね?」

 

 そう言って全員分の暖かいお茶を淹れてくれる田村部長。

 しばし、そのお茶を啜りながらゆっくりとした時間が流れた後、落ち着いて話す事を意識しながらお互いの情報を擦り合わせていくのだった。

 

 

「うーん、なるほどなぁ。つまり貴方達はその「赤い月」と呼ばれる秘宝であるヒャッキの姿のルギアと、もう一つの秘宝であるところのヒャッキの姿のホウオウってポケモンを自分達の故郷に持ち帰る為に、この世界にやってきた別の世界の人達って事で合ってるのかな?」

「いかにも。無限の豊穣を齎す秘宝をヒャッキに持ち帰る事こそ、某らの悲願であり目的である」

「……で、凍田さんはそんな彼らを手伝う事にしたと」

「はい、そうです」

 

「ううむ」と考え込む様に腕を組む田村部長。

 

「──危険なんじゃないのかい? これまでテング団として頑張ってきたヒャッキの皆さんはともかくとしても、凍田さんには荷が重いんじゃないかな?」

「ッ!」

 

 最もな指摘だった。

 そもそも昨日今日ポケモンが現れた世界の人間に、伝説のポケモンをどうこうできると思う方が土台無理な話なのだ。

 テング団としてヒャッキ地方を救うんだと言う思いでずっとやってきた3人とは違い、理央は一般人だ。

 危険どころか無謀だと言うのが、素直な反応だろう。

 しかし、理央は「それでも」と続ける。

 

「……私はイヌハギさん達を手伝いたいんです。ただ推しだからだとか、ポケモンが好きだからって言うのももちろんあったんですけど……何より、今はヒャッキの皆さんに幸せになってほしいから。その力になりたいんです」

 

 それが、偽りのない彼女の気持ちだった。

 その気持ちを正面から受け止める様にジッと理央を見ていた田村部長は、その言葉を聞いてフゥーと息を吐き出し背もたれに寄りかかる。

 

「……凍田さんの気持ちはわかりました。なら──」

 

 ──プルルル、プルルル。

 

 会社の電話が鳴った。

 

「ちょっと失礼」と言って受話器を取りに行く田村部長。

 応答し、何度か受け答えしたと思っていると、突然「えぇ?!」と受話器を持ったまま慌てた様子で休憩スペースへと戻ってきた。

 

「あの、部長? 何かあったんですか?」

「……落ち着いて聞いてね。それが、公安警察を名乗る人からここに連絡がきた。どうやら、君達に昨日の事について話を聞きたいそうだ。僕達がここにいる事も、もうバレている」

 

 そう言って会社の駐車場が見下ろせる窓辺から下を覗いて見ると、そこには一台のパトカーが停まっていた。

 

「うそ……あんなに朝早くにアパートを出た筈なのに……」

「うん……流石公安警察だね……」

「──なぁリオ、その『こーあんけーさつ』ってなんなんだ?」

「えっとね……ヒャッキ地方のテング団みたいな人達かな。この国を見えないところで守ってくれているの」

「ふーん。で、そんな奴らがあたし達になんの用なんだ?」

「今し方タムラ殿が言っていたであろう。昨日の店での事を聞くつもりだと……。イヌハギ様、いかがされますか?」

「──今この世界の組織と敵対したところで、後々リスクが増えて面倒なだけだ。ここは応じるとしよう」

「……わかりました。では僕は、お巡りさんをここに連れてくるとします──ちょっと待っててね」

 

※※※

 

「──改めて、公安警察所属・特殊未確認生物対策課のダンガンと申します。……コードネームですが、よろしくお願いします」

「……同じく、フカです」

「さっそくで恐縮ですが、私達は貴方方に聞かなければならない事が山の様にあります」

 

 休憩スペースに通され席に座った2人は、単刀直入に切り出した。

 それからの受け答えは、およそ田村部長に説明したものと似たようなものだ。

 イヌハギが自分達の素性と目的についてを話し、認識の差異があるポイントや原作知識を話す必要がある箇所は理央が補足して話した。

 その内容をダンガンが事細かに確認をしながら、その内容をフカがノートPCに記録していく。

 やがて、おおよそ全てを話し終わったタイミングで、ダンガンが口を開いた。

 

「率直にお聞きします。今の話のおかげで貴方達は平和を重んじる方々だと言う事がわかりました。しかし、他のテング団の構成員がルギアとホウオウを手に入れる為にこの世界での破壊的活動を良しとした場合、それを貴方達だけでそれを食い止める事は可能ですか?」

「……難しいだろうな。某らはいわゆる少数派でしかない。他の三羽烏であるタマズサやアルネは、目的の達成の為ならどんな手段だろうと厭わないだろう──それこそ、生物爆弾である巨大化したパラセクトを躊躇なく扱う程度には……」

 

 苦虫を噛み潰したような顔で、イヌハギは答える。

 二次創作作品としての中のテング団について理央から聞かされたイヌハギは、それらの悪辣な凶行を物語の中の話と切って捨てる事はできないと判断した。

 そしてそれは、同じく話を聞いていたウラギクとムカゴも同じ意見だった。

 

「多分、タマズサがやるって言えば、他の団の連中は従っちまう。あたしらが何言っても聞きゃあしねぇよ」

「それほどまでにテング団において「タマズサ」とは圧倒的な存在なのだ。彼の妻であるアルネも同じくな」

 

 休憩スペースが重苦しい沈黙に包み込まれる。

 このままでは「赤い月」を求め過激な活動を良しとするテング団が、異界からこの世界に現れてしまう。

 しかし、本来ならばサイゴク地方に繋がっている筈の時空の歪みが別の世界である所のこの世界に繋がっていたり、そもそもこの世界にはポケモンが現れたばかりで彼らの言う秘宝であるヒャッキのルギアとヒャッキのホウオウがこの世界にいる事すら怪しかったりと、疑問と謎は尽きない。

 さらに問題なのはこの世界に秘宝がなかった場合でも、ただ戦争を求めるタマズサの主導によって侵略がなされてしまうであろうと言う点だ。

 他の誰が異を唱えたとしても、タマズサの持つ規格外の力により例え1人でも戦いを起こす事ができてしまう。

 そうなってしまった時、おそらくこの日本……ないし、世界は終わりだ。

 ただでさえ今はポケモンが現実世界に突如として現れた直後である為、このままだと大混乱は避けられない。

 それどころか、街や人への甚大な被害が発生する事は想像に難しくない。

 

 この場にいる誰もが事の深刻さを再認識し、打ちのめされている時だった。

 

「──何とかしなきゃ」

 

 消え入りそうな声で、しかしハッキリと言葉にしたのは理央だった。

 その場に居る全員の視線を受け止めながら、彼女は再度ハッキリと告げた。

 

「──何とかするんです。この世界の事も、ヒャッキ地方の事も! 私達で助けるんです!」

「……それがどう言う事か、わかってんだろうなぁ嬢ちゃん」

 

 ダンガンは彼女を試す様に、鋭い視線を向ける。

 尚、彼の方が年下なのは突っ込んではいけない。

 そしてダンガンの視線を真っ向から受け止める様に、理央は答える。

 

「……私1人じゃ何もできないかもしれない。何の力にもなれないかもしれません……でも、私は1人じゃない! イヌハギさん、ウラギクちゃん、ムカゴ君──そして、ポケモン達がいるんです! できない事なんてない! あっても可能にして見せます! 皆さんのヒャッキの世界を、この世界を、争いでめちゃくちゃにさせる事なんてさせません!」

 

 理央の声が、休憩スペース中に響き渡った。

 それは、イヌハギ達と会って全てを打ち明けた時から、彼女が心に決めていた事だった。

 

「──良く言った!」

「……先輩、彼女は一般人ですよ?」

「べらんめぇこんちくしょう! 守るべき市民にこんな威勢の良い啖呵切られて、黙っていられるかってんだ!」

「……ハァ、わかりました。凍田さん、田村さん、並びにヒャッキの皆さん。これからも皆さんが世界の為に尽力していただけると言うのなら、我々公安警察の協力者と言う形を取らせていただけますか?」

 

 頭を抱え溜め息を吐いたフカだったが、切り替えてこれからの体制について提案する。

 

「──某らもか?」

「はい。ヒャッキの世界から来られた皆さんは、この世界での身分や戸籍が存在しません。そうなると諸々の問題が発生するので、我々に協力していただけるのなら、それらの問題をカバーする為の措置を講じさせていただきます。こちらの世界で活動をするなら、より動きやすくなると思います」

「……承知した。そちらと協力関係を結ばせてもらおう」

「おお! そいつは助かるぜ。なんせ今はポケモンが現れた影響で、猫の手でも借りたいところだったんだ」

「昨日は連絡もひっきりなしに来てましたもんね」

 

 ──プルルル。プルルル。

 

「そうそう、丁度こんな感じでなぁ」

 

 ──プルルル。プルルル。

 

「……先輩」

「わぁってるよ! こんちくしょう! ──もしもし?!」

 

 乱暴にスマホに応答するダンガン。

 そして──。

 

「なぁにぃ?! 国道をポケモン共が暴走中だぁ?!」

 

 新たな事件の訪れを告げたのだった。

 

※※※

 

「う、うわぁー!」

「やばいやばいやばいって!」

「おい! 早く退けって……うわぁー!」

 

「ブロロロ! ブロロロ!」

 

【ブロロローム たきとうポケモン タイプ:はがね/どく】

 

「でたぁ! ポケモンだぁ!」

「走れ! 逃げろ! 襲われるぞー!」

 

「モォ────! ドドドドド!」

 

【ケンタロス あばれうしポケモン タイプ:ノーマル】

 

「助けてぇー! 助けてぇー!」

「ひぃー! もうダメだぁー!」

「わぁーん! お母さーん!」

 

「ドン・ファーン!」

 

【ドンファン よろいポケモン タイプ:じめん】

 

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