ポケモン廃人ではないが、知らん世界に現れた推しに全力を捧げる 作:なんちゃってアルゴン
※※※
連絡を受けてすぐさま問題の現場へと急行した一同。
パトカーと田村部長の車をかっ飛ばして向かった先で待っていたものは、お世辞にも平和とは言い難い光景だった。
「な、なんて事だ……!」
「ひどい……!」
荒事に慣れていない理央と田村部長が狼狽えるのも無理はない。
ガードレールはひしゃげ自動車は軽々と吹き飛ばされてしまっていて、避難しようにも被害の中心で暴れ狂うポケモン達のせいでそれどころじゃない。
すでに現場には警棒や拳銃、シールドなどを装備した警官隊が到着していたが、頑強なポケモン達を前にほとんどなす術のない状態だった。
「ッ! おらぁ! 退いた退いたぁ! 特殊未確認生物対策課のお通りだぁ! 現場の状況はぁ!?」
ダンガンとフカが警察手帳を見せながら、一番近くにいた警察官をとっ捕まえて状況を確認する。
「は、はい! 現在、市民の避難を最優先して進めておりますが、周囲を封鎖したり暴れ回る未確認生物を食い止めるので精一杯な状態です!」
「なぁにぃ!? 何だその体たらくは! お前達、それでも市民を守るお巡りさんか!」
「ひぃ! 申し訳ありませぇん!」
「……先輩、なら先輩はあの生き物達をどうにかできるんですか?」
「う、うぐぅ……!」
ダンガンが黙り込んでしまうのも無理はない。
ブロロローム 重さ:120kg
ケンタロス 重さ:88.4kg
ドンファン 重さ:120kg
そんな質量を持った生き物達が、動くものに反応しながら好き勝手に暴れているのだ。
これは、恐怖以外の何者でもなかった。
渋い顔をしたダンガンが振り返り、一同を見渡す。
「……ご覧の通りだ。今、俺達警察官は無力そのもの。騒ぎの中心の生き物1匹、満足に無力化出来ねぇ──だから、頼む! アンタらの力を貸してくれ!」
そう言ってダンガンは勢いよく頭を下げた。
それに続く様に、フカも深く頭を下げる。
周囲が何事かとざわめきだす中、イヌハギが口火を切った。
「ケンタロスはノーマルタイプ。某のルカリオで仕留められる」
「じゃあ、地面タイプのドンファンはあたしは貰いますね!」
「……残りは鋼・毒タイプ、ブロロロームか。まぁ何とかなるだろう」
そう言って3人は前へと進みでる。
そんなヒャッキ組の様子に我に帰った理央は自分の頬を両手で叩き、惚けていた自分に喝を入れる。
ここで共に戦えなければ、彼らを手伝うなど夢のまた夢だ。
「──暴れるポケモン達は、私達で食い止めます! なので皆さんは、逃げ遅れた人達の避難をお願いします!」
そう言って、前を行く3人に追いつく様に駆け出す理央。
その様子にまたざわめきが起きるが、それをダンガンが納めにかかる。
「お前ら聞こえなかったのか?! あの化け物共はコイツらが抑える! 俺達は、逃げ遅れた民間人の保護を最優先だ! さっさと道を開けろ!」
その言葉に発破をかけられ、一斉に動き出す警察官達。
ここに、理央・ヒャッキ組・警察との共同戦線が幕を開けた。
※※※
暴れるポケモン達と理央達の激突の少し前。
「ぼ、僕も何か役に立たないと……」
田村優蔵は、逃げ遅れた人がいないかを周囲を見て回っていた。
本来、ポケモンを持たない自分は民間人として避難しなければならない立場にあると理屈では理解しながらも、部下である理央が身体張っている中で自分だけが逃げるのは許容できなかったのだ。
その結果、田村はフカに直談判して今に至る。
現在、田村はポケモン達によって吹き飛ばされた車の近くを重点的に見て回っている。
「誰か……誰かいませんかー?」
「むちゅう……」
「──ん?」
車の物陰から、誰かの声が田村の耳に届いた気がした。
慌てて声のした方へ駆け寄るとそこにいたのは──。
「……君は?」
「──むちゅー?」
【ムチュール くちづけポケモン タイプ:こおり/エスパー】
※※※
「ブロロロ! ブロロロ!」
「モォ────! ドドドドド!」
「ドン・ファーン!」
互いが互いに暴れ方で競う様に、3匹のポケモン達の勢いは度を越して増しに増していく。
進行方向にある車をひしゃげさせ跳ね飛ばし、邪魔な障害物となったそれを押し潰し破壊する。
人や物への更なる被害が出る事は、もはや時間の問題だった。
理央とヒャッキ組はそんな暴れ狂うモンスター達の正面に立ちはだかり、これ以上の蛮行を阻止しようとしていた。
「──来るぞ」
「ッ!」
各々が腰の瓢箪を構える。
これらは、ヒャッキ地方におけるモンスターボールの様な物だ。
そして向かってくるモンスターに合わせて栓を開き、自らの相棒達を呼び出した。
「カヌチャン! "つぶらなひとみ"で弱体化させて!」
「カヌヌ!」
カヌチャンの愛らしい瞳が、暴れ回るポケモン達の攻撃の力を削いでみせた。
それでも、3匹の勢いは止まる事を知らない。
だが──。
「ルカリオ"こごえるはどう"だ」
「ガォン」
そこにルカリオの超低温の波動が突き刺さる。
それはヒャッキのルカリオの専用技"こごえるはどう"。
強力な冷気で相手の素早さを下げる力を持っていた。
【こごえるはどう 威力80 命中100 こおり 特殊 効果:相手を凍てつかせる波動で攻撃する。相手の素早さを下げる】
「──これより各個撃破に移る。総員、かかれ!」
イヌハギの号令を受け、各員がそれぞれのポケモンを打ち倒す為に己の相棒に指示を飛ばしていく。
「よっしゃあ! 行くぜカバルドン! ドンファンに"エナジーボール"だ!」
「カッパババァ! ぷしゅっぷしゅっ!」
【カバルドン(ヒャッキのすがた) じゅうりょうポケモン タイプ:みず/くさ】
「やるぞパラセクト! ブロロロームに"キノコばくだん"だ! 焼き払え!」
「ノットリィィィィ!」
【パラセクト(ヒャッキのすがた) かえんたけポケモン タイプ:ほのお/むし】
【キノコばくだん 威力70 命中100 ほのお 物理 効果:爆発する胞子の塊で爆破する。水タイプにも効果抜群となる】
(す、すごい……! ヒャッキのポケモンが勢揃いしてる……!)
そんな中、理央は1人の二次創作ファンとしての感動を抑えきれずにいた。
何せ、創作の中の更に創作の中の存在でしかなかった彼らが、生きて一緒に戦ってくれているのだ。
こんな事態でもなかったら、1匹ずつ触れ合っていきたいくらいだった。
(……ハッ! いけないいけない、ここは戦場だった)
昨日のイヌハギの言葉が頭をよぎる。
一瞬でも気を抜けば、命の保障はない。
「──カヌチャン! リオル! 私達は、みんなのサポート! 気を抜かないで行くよ!」
「ヌッチャン!」
「アォン!」
こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。
※※※
ここはヒャッキ地方・テングの国のテング団アジト。
薄暗い実験室の中で、1人佇む女がいた。
「……ん。このオーパーツによるオーライズテストも問題なし。続いて、ギガオーライズの動作実験に入る」
「いよーうアルネ! 今日も実験ごくろーさん。調子はどうよ?」
「……タマズサ」
【テング団ボス”三羽烏”タマズサ】
【テング団ボス”三羽烏”アルネ】
「キュウビの国から奪ったオーパーツによる動作実験は軒並み問題はなし。オーライズの方も問題なく出来てる。後は、オーパーツの量産とフーディンでのギガオーライズの証明が出来れば完璧」
「カッカッカッ! そーかいそーかい! そりゃあ結構なこったな! これで晴れてアルネも俺様と同じ、ギガオーライズ使いって訳か!」
「俺も夫として鼻が高いぜ、テングだけにな」そう言って手近な椅子にどかっと乱暴に腰掛けるタマズサ。
アルネの方は表情こそ変わらないが、彼の妻として己の評価が高くなったのを感じて誇らしげだった。
そんな時、タマズサがそう言えば……と言う。
「イヌハギの奴はどこ行ったんだ? あのヤロウ、いつもコソコソと忙しないこった」
「ん。イヌハギなら、サイゴクへの侵攻の為の先遣隊として、一度サイゴクに向かってる。そう先日話し合って決めた筈」
「あり? そうだったか? そうだったかもな! カッカッカッ!」
そう言ってひとしきり笑った後、タマズサはニヤリと笑って立ち上がりアルネを背後から抱きしめた。
「……なに?」
「──良い事考えついたんだよ。お前のギガオーライズの実験、もっと良い所でやる気はねぇか?」
「……それは、どこ?」
「アイツが出かけてる間によう、アイツの為にちょーっとオニの国に攻め入ってオーパーツを取ってきてやらねぇか? 俺様ってやっさしー!」