◇◇◇
呪霊討伐を終えて、真希と子供達を病院に連れて行った乙骨とタフは椅子に腰掛けて一休みしていた。
「問題ないってさ真希も子供も」
「よかった…」
「しゃあっ…」
そう五条に告げられた瞬間張り詰めていた空気感はなくなり、乙骨とタフは胸を撫で下ろして安堵した。
「何かスッキリしない顔だね憂太くん」
「…初めて自分から里香ちゃんを呼びました」
乙骨は真希と子供達が無事であった事を聞いたにも関わらず曇った顔をしていた。未だに自分から里香を呼び出した実感がわかないのである。
「そっか 一歩前進だね」
「少し思い出したんです」
そして乙骨の脳内にまだ里香が人間だった時の思い出が蘇る。自分が小さい時肺炎になりこの病院に入院していた時に里香ちゃんと出会った事、公園でいつも二人で遊んだ事、自分の誕生日の日に結婚指輪を送られ、結婚しようと告白された事、それを自分が
「いいよ!それじゃぼくらはずっとず〜っといっしょだね!」
と結婚を約束した事。今思い出しただけでも涙腺が緩んだ。
「……里香ちゃんが僕に呪いをかけたんじゃなくて 僕が里香ちゃんに呪いをかけたのかもしれません」
「これは持論だけどね…愛ほど歪んだ呪いはないよ」
乙骨は五条にそう言われて指輪をつけた左手をぎゅうっと握りしめ、「呪術高専で里香ちゃんの呪いを解く」ことを心に決めた。
「あの…結局特級過呪怨霊折本里香顕現されちゃったんスけど…いいんスかコレ…?上の人間にドヤされるんじゃないスか…?」
「はっきりいって重罪だからお前ら死ぬよ」
「い や あ あ あ(pc書き文字)」
「ははは 嘘嘘!そこんところは僕がなんとかしとくからマイ・ペンライ!よしっ!そうと決まれば!タフ!憂太!二人には放課後僕直々に呪力の練度を高める特別授業するから気合いいれてね!」
「はい!頑張ります!!」
「しゃあっ!ゾクゾクするのおっ アハアハ」
病院の廊下で二つの大きな声が鳴り響いていた。
◇◇◇
呪術高専某所、灯をつけてても尚薄暗い空間を僅かな光を反射してキラリと輝く黒いサングラスをした白髪の呪術師を4枚の襖が取り囲むように立
てられていた。この襖の後ろ側にいるのが呪術界の上層部の人間である。
「特級過呪怨霊折本里香422秒の完全顕現…この様な事態を防ぐ為に乙骨を君に預けたのだ…申し開きの余地はないぞ…五条悟」
と上層部の人間の一人が半ば腹を立てながら五条に説教をかます。
「まっ 元々言い訳なんてするつもりないんだけどねっ」
タフ語録が総じて煽り能力が高い事に気づいた五条はタフと二人きりで話す時、京都高の担任である自分の先輩(笑)である庵歌姫を愚弄する時、知性のある呪霊を愚弄する時、そして今回の上層部を全力で愚弄する時にタフ語録を使う事にした。
「何をふざけている!?「そうだ!その神経を逆撫でする様な喋り方を今すぐやめろ!非常に不快だ!」違う!…いや確かにそうだが今はその話はしていない!!……うおっほん!…ンッ!」
わざとらしい咳き込みをしてから彼は発言を続ける。
「折本里香があのまま暴走していれば町一つ消えていたかも知れんのだぞ!!」
「そうなれば命懸けで止めようとした…それが私です。
あの…私らがあの怨霊について言えることは一つなんスよ…ハッキリ言ってメチャクチャ分からない。呪術師の家系だと思ってたのにそうじゃないし、そんな女児の呪いがあそこまで莫大なものになってしまうんだから話になんねーよ。
理解できないモノは支配できないんだ悔しいだろうが仕方ないんだ。
だからこそみんなでトライ・アンド・エラーするのが重要なんだ。折本里香への理解が深まるんだ。もうちっと放置してくれや」
「………乙骨の秘匿死刑は保留だという事を忘れるなよ」
五条のタフ語録の応酬で完全にブチギレて目をかっぱらいて五条に警告する。
「………そうなれば 私が乙骨側につく事を忘れずに」
それに対して五条はタフ語録を使う事なく警告し返しこの場を去った。
サングラスの中から殺意のこもった蒼い眼光が上層部の人間全員を睨んでいた。
「ったく 野暮な年寄り共め ああはなりたくないね…キヲツケヨ若人から青春を取り上げるなんて許されてないんだよ…何人たりともね…」
◇◇◇
しゃあっ よう 戦友! 乙骨編 その1
今日の放課後はワシと乙骨 二人だけの特別授業だ。真希は入院、パンダと棘は任務にいっている。なんでも、ワシらは入学するのが遅かったからそれを補う為に実行するらしい。指定の部屋へ移動すると五条が既に椅子に腰掛けていた。部屋にはテレビや積み上がったDVDなどが置かれてある。とてもじゃないが修行する様な場所とは到底思えなかった。
「よく来たね!じゃあ…始めようか。」
「よ…よろしくお願いします!!」
「アンタの倒し方を教えてくれよ」
乙骨は五条の最強の威圧感緊張しながらも応え、タフは五条に宣戦布告していた。呪術について完璧にマスターした暁には五条に喧嘩を売ろうと思っているのだ。
「いい声だよ憂太!威勢がいいねタフ!よしっ…と…まずは呪力の基本から。術式は知ってる?」
「術式…?それって手術の術式…?」
「術式ってなんやそれワシゃ知らんで」
五条の質問に対して、二人とも首を傾げていた。
それを見た五条は何処からかは知らないが二缶の缶ジュースを二人に見える様に取り出した。
一つの缶ジュースに五条が右手をもう一つの缶ジュースに左手をかざした。
そして五条の手が蒼い炎で包まれたかと思えば缶ジュースが片方はゴンと何かにぶつかったかの様に凹み、もう片方はギャルルルッと捻れて潰れた。ワシと乙骨はその光景に釘付けになっていた。
「コレが呪力と術式。まあ簡単に言うと電気と家電みたいなもんさ。電気だけじゃ使い勝手悪いでしょ?だから家電に電気を流して様々な効果をある訳」
「す…すごい」
「ふうん つまり今からワシらはその術式を身につけるというわけか」
「いや…タフは術式は使えないよ」
「えっ」
「術式ってのは生まれながらにして体に刻み込まれてる物なんだ。後から身につけられるもんじゃない。だから呪術師の実力は才能がほぼ八割を占めてるんだよね。」
「なんかワシのこれまでの人生全否定されてるみたいでムカつくんスけど」
それを聞いてさっきまでこう言ってタフがムスッとしていたが突然破顔しニヤニヤしだした。
「なんかあんま悔しがってないね 君なら周りのものぶち壊すくらい負けず嫌いっぽそうなのに」
「ムフフフ…術式が使えないって事はその分灘神影流を磨けるってことやん!!」正に逆転の発想である。
「そう!その勢いだよタフ!僕も下手な術式より単純な肉弾戦でゴリ押しされた方が怖いしね」
「因みに乙骨の術式は何なのか教えてくれよ」
「ああ 乙骨の術式は
「強すぎを超えた強すぎ」
「よしっ!次は呪力について。みんな知ってると思うけど呪力の源は負の感情。怒りや嫉妬、悲しみなどだね。」
「あっ だから真希さんはいつも怒ってたのか!」
それを聞いた乙骨はズレた考察をしていた。もし本人がここにいたら乙骨は殴り飛ばされていただろう。五条もそれを聞いて「違ウヨ」と否定していた。
「オホンッ…みんな感情の火種から呪力を捻出する訓練をしているんだ。逆に大きく感情が触れた時、呪力を無駄遣いしないようにもね……で呪力の練り方を数十分で習得したタフと里香ちゃんが取り憑いている憂太たちにはかなりしんどい修行をしてもらう………それは」
「それは…?」「それはあっ…?」
ゴクッと緊張と期待を二人はゴクッと同時に喉を鳴らして飲み込んだ。
「ジャジャーン 映画鑑賞で〜〜す!!」
「映画………鑑賞???」
乙骨は驚愕していた。それもそうだろう。修行とは本来滝とか山籠りとかトラップゾーンとかを連想するだろうが修行の内容がまさかの映画鑑賞なのだから。タフ君も当然驚愕しているだろうとタフの方を見るが、
「しゃあああああああっ!!!!やっとマトモな映画が見れるわあっ!!」
「タフ君?!」
なんとタフは歓喜していたのだ。闘うのが大好きで滝にも修行の為、強くなる為に喜んで苦しんでそうなタフが大歓喜していたのだ。しかもマトモな映画と言っている事から既にその修行を受けているような口ぶりである。
「タフ君…?マトモな映画ってもしかしてこの修行受けた事あるの?」
「ワシのおとんはここの学長やさかい一度…いやっ…正確には受けてないわっ」
タフの脳内に流れる存在する記憶………
◆◆◆
「はあっ 映画で授業だあっ? それはおかしいだろおとんップ 怒らないで下さいね 映画で修行ってバカみたいじゃないですか。」
「つべこべ言わずに映画を見るんだ熹一!詳細は後から説明するからとりあえず観たい映画を選べ」
「あざーっスガシッ…んーと…ハローキティー…スヌーピー…クマのプーさんに…って 全部可愛い系の映画じゃないかよえーっ おとん ワシは高一なんやで?!バッチバチのシリアス・ムービーが見たいんじゃあっ もうええわっ ワシが自分で修行するわっ」
ドタドタドタ
そしてタフは階段を登っていってしまった。
「熹一!おい待て熹一ッ!!熹一〜〜〜ッッ!!!」
◆◆◆
「ってな事があったんや…」
「ハハハ……タフ君って結構そういう映画のジャンルとか気にするんだね…」
乙骨はタフは映画であればどんなジャンルでもなんの抵抗もなく見漁るタイプだと思っていたので意外だった。
あの…さっきからの乙骨のタフに対する偏見が愚弄レベルなんすけど…いいんスかコレ…
「話を戻すんですけど五条先生…一体映画鑑賞でどうやって呪力の練度を高めるんですか」
「なんで映画館じゃなくてこんな所へ呼び出したの」
二人の質問に答える様に五条はあるぬいぐるみのような物を引っ張り出した。
「そ…それは?」
「このデザインって…ま…まさか…」
それは夜蛾学長が作製した呪骸の内の一体。グローブを両腕にはめた可愛らしいクマのぬいぐるみ…
ツ
カ
モ
ト
!
今は鼻提灯を垂らして寝ているようだ…
「何…?このキモかわいい人形?」
乙骨はそう言ってツカモトを手に持った。
「おとんの作った呪骸の一体、ツカモト兄さんや。あとキモカワイイ?クソカワイイと言うてくれや」
………パチッ ボグッ 「ぐへっ」
乙骨はツカモトを吟味していたころ突然ツカモトが起き上がり、乙骨を殴りつけた。
「痛ったあ……」
「ツカモトは一定の呪力を流し込まないと目を覚ましてぶん殴ってくる さっきも言った通りここには色々な映画が揃ってる
感動、ワクワクする神映画 後味が悪い胸糞映画 話が難解すぎて意味がわからなかったり設定がめちゃくちゃな観てるだけで困惑するクソ映画etc…
まずはツカモトを起こさず一本の映画を無傷で観通すこと コレがどんな状況下でも一定の呪力出力を保つ訓練 多すぎても少なすぎてもダメ
分かったね?」
「分かり…ました…」
乙骨は殴られた頬を抑えながら答えた。
「あっ タフ君にはツカモトと同じ特性を持つもう一体の呪骸、ブラパンがちゃんとついてるから取り替えっこしなくて大丈夫だからね!」
「どうも…タフっス!!よろしくっス!ブラパン兄s『ドカッ』はうっ」
タフと乙骨の過酷な修行が今始まる!!映画視聴開始だ GOーっ!!
おまけ
しゃあっ よう 戦友! 真希編
それはタフが真希のお見舞いに行った時のこと
「ジャーン!真希食事を持ってきたで!胚芽パンで作ったブロッコリーと鶏のササミの特製サンドイッチや もちろん味付けなしで」
「おお サンキュータフ 」 パクっ パサ…パサ…パサ…
「どうや このサンドイッチめちゃくちゃうまi「クソまじーよ」えっ」
「せめて味は付けようぜ…せめてよ」
「でもワシせっかく作った料理を愚弄する人嫌いなんだよね品が無いし頭悪そうで「てめーが聞いてきたんだろうがよ」」
「なめるなっメスブタァッ」
「なんだとゴルヴァア!!」
雨が降って地面が固まるんだおそらく絆が深まるんだ
タフ坊のキャラクター・ボイスは誰がいいのか教えてくれよ
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岩田光央
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小野坂昌也
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福山潤
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岩崎諒太
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サクーシャ