◇◇◇
花沢は顔を拭い瓦礫から猛スピードで舞い戻る宿敵を見据えて、全身の末端に蒼く燃え盛る焔を宿していた。
「ホ ギ ュ ア ア ア ア ア ア」
ハイパー・コングはそんなこと知るかと言わんばかりに突っ込んでくる。ハイパー・コングの術式は"コング・スペシャル"呪力で所々の筋肉を肥大化、強化することによって攻撃力、防御力、スピードを瞬間的に強化する術式。
足を術式で強化することによって生まれる音速を優に超える超スピードでタフに接近する。更にハイパー・コングは術式でアホ程握力を強化することができる…その数……500トン。人間の肉体など暖簾でも潜るかのように簡単に消し飛ばす。
(もうお前から逃げないんダァ…覚悟して貰おうカァ)
ドパァソ
ギュソッ
花沢はそのコングの音速を超えることによって発生する爆発音と共に放たれた打撃を灘神影流"弾丸滑り"で受け流す。花沢は初めてコングの攻撃を見切ったことに歓喜するも、その膨大なエネルギーを受け流し切ることが出来ずに受け流した皮膚が破裂。そこから血がドクドクと溢れ出てくる。
ギュルルルッ
「しゃあっ!!! 」
ドパァソ
「ホギュアッ?!!」
花沢は受け流したコングの打撃の衝撃をそのまま自分の技としてコングにぶちかます。
シュウウウウウウウウウ………
ガシッ
「な…なにっ」
しかしコングは撃たれた箇所に筋肉を集中させることによってダメージを最小限に抑え、花沢の拳を筋肉で捕まえる。花沢はすかさず持っていた短刀の呪具で周りをこそぎ落とそうとするも、コングの筋肉はそれを許さずに刺した瞬間呪具の方が破壊されてしまった。コングは既に花沢を暴殺するべく握り拳が振り下ろされようとしていた。
ボッ
「しゃあっ 灘・真・神影流 "幻魔拳"!!!!」
「ホ ギ ュ ア ア ア ア ア ア」
花沢は多量の呪力を消費してコングに幻魔を植え付ける。コングは自分の顔が破裂するかの様な激痛に襲われのたうち回る。花沢はその激痛で筋肉を緩めて脱出できると踏んでいたが逆に筋肉の締め付けは強まり、のたうち回ることによって花沢は身体中の所々を壁に叩きつけられる。
ド ガ
ガ ガ
ガ
ガ
ガ ガ ガ
ガ ガ ガ
骨が壁にぶち当たる音がコングの周りを奏でていく。花沢は全身血まみれになるも未だにコングの筋肉は花沢の拳を離さない。灘・神・影流"超鞭打ち"による瞬発的に激痛を与える技を放てども全くビクとも手を離す気配を見せない。一通り暴れてコングは冷静さを取り戻して花沢に攻撃を仕掛ける。
「う お お お お お お お お お お」
ドソッ
ボッ
花沢はその場で地面を踏みしめて幻突を繰り出し、その衝撃でコングから脱出する。花沢はコングの筋肉を緩めさせるのではなく、自分の拳を幻突の衝撃千切り離して脱出したのだ。コングの攻撃は一発でも受ければあの世送りになる死神を宿した拳。花沢にとってはコングの攻撃を受けることに比べれば自分の拳を捨てるなどワケなかった。何より、
(今のワシには怖いものは何もない………怖いものは……孤独だけだ…)
戦友三人を失った今…これくらいの傷など屁でもない……むしろこれこそが彼等を死に至らしめた自分の懺悔なのだと考えていた。
花沢はコングと対話する素振りは全く見せない。彼はコングを殺す為のマシーンとなったのだ。
グググ………………
ドソッ
ボッ パソ ボボッ ボッ
パソ ボッ ボッ
ボッパソパソ
ボボッ
花沢は生身でコングを攻撃すれば筋肉で身体を捕まえられる為、衝撃波を放つ"壁走り幻突"でコングを四方八方から攻撃し、コングもその攻撃は防御込みで受けても無事では済まないことを察してラッシュで対抗する。
コングが衝撃波以外何もないいわば虚空を殴り続けている間に花沢はコングの間合いに接近する。
「しゃあっ!!! ブラック・フラッシュ!!!!」
バチィィィィィイイイイソ
花沢は浸透系の打撃の黒閃をコングに放つ。その際彼は自分の拳を捕まえられない様に未だコングの身体に張りついて離れない自分の千切れた拳を的として殴りつけたのだ。
「しゃああああああああああっっっっ!!!!!!」
ボボボボボボボボボボッッッ
「ホ ギ ュ ア ア ア ア ア ア ア」
花沢が掲げるたった一本の
間も開けずに花沢はコングの顔に接近して眼球を予めゴム弾から実弾に入れ替えておいた拳銃で、さらにゼロ距離でブッ放す。
パァソ
もう片方の目も弾丸を撃ち抜こうとするが、コングの渾身の振り払いで銃は破壊されタフは遠くまで吹き飛ばされる。
ドソッ ゴッ ゴッ ズザザザザザ…………
「げほっ」ビチャッ…ビチャ…
地面を滑り終えて幻突の打ちすぎで脚が疲弊しガクガクと震えて大量の血を吐血する花沢をコングは目を輝かせてラッシュを撃ち込もうとする。
その際花沢は不思議な現象を目の当たりにする。
(な…なんですかあこれはァ ワ…ワシとゴリラ呪霊が二人いるですゥ あわわっ よく見たらワシ飛んでるですゥ はひ──っ)
灘神影流 "空眼の目付け"
闘いを第三者の視点で俯瞰する。言わばサード・マン現象を起こさせることによって、相手の攻撃を見切ることができる。
田舎道でコングに遭遇したあの日、花沢はコングから強烈な殺気を浴びて呪いを認識できる様になり、更に自分の身が危機に晒されたことによってその場で無意識に"空眼の目付け"を発動。そこからは無意識に身体が勝手に動いてコングの攻撃を避けながら田舎道を脱出。
当時コングはあの田舎道の呪いであった為、花沢を追うことが出来なかった。そして無意識状態の花沢は顔をキー坊の顔に変えてあの路地裏呪霊がいた都会に紛れてコングから身を潜めた。
ここまで読んでもらえれば分かる通り、花沢はこの世界の人間ではなく、異世界どころか転生すらしておらず、ただの花沢の勘違いだったのである。
花沢も何となくその結論に至り、では何故自分は今コングによって首を一回転させられて折られたのに生きているのかという疑問が浮上するが、コングが今攻撃の真っ最中の為、その疑問は霧の様に消えた。
ドドドドドドドドドドッッッッッ
コングによる人間の顔一つ程の大きな拳による雨が降り注ぐ。花沢は空眼の目つけを発動した状態で弾丸滑りを行うも、コングの猛攻は受け流すには強力すぎた。一分も経てば左腕は消し飛び、上半身は筋肉が剥き出しになり、見るも無惨な姿になってしまった。更に足も幻突を多用してフラフラ、右手は拳がついていない、言うなれば矛先がない槍。
(ゴリラ呪霊はピンピンしているんだ。ブラック・フラッシュを打ち込んでも……幻魔拳を撃ち込んでもナァ………なにか……なにかもっと決定的な打点は…………………ッッッ??!!!!)
刹那浮かんだコングを確実に祓えるであろう必殺技。しかし、その事象は可能なのか?そもそもその現象は起きるのか?定かではないが花沢は窮地に陥ればどんな方法でも痛々しいくらいに必死にすがってきた。だからこそ勝利を掴んできたのだ。
(ここで……此処で荼毘に伏すワケにはいかないんだ。ワシが荼毘に伏せば直毘人のじいちゃんが死んだ時に縛りが解けて真依ちゃんがまた危険に晒される。また乙骨を里香ちゃんとの二人ぼっちにさせてしまう。おとんに恩返しできなくなってしまう。そして……なによりも……こんなゴリラに負けたらタフ・シリーズの顔に泥を塗ってしまう………!!!全ては愛するもの全ての為に!!!!)
◇◇◇
場面は乙骨と夏油との死闘に変わる。既に最終局面に差し掛かっていた。
「知ってるかい?特級を冠する人間は四人…呪霊だと十六体存在する。これはその内の一体 特級仮想怨霊"化身玉藻前" 更に……私が今所持している四千四百六十一体の呪霊を一つにして、君にぶつける……
呪霊操術 極ノ番 『うずまき』」
夏油の指先に数々の呪霊が圧縮され、巨大な悍ましい球体となる。
(そういえばタフ君こう言ってたっけ…『どの世界にも言えることやが…中身のない奴ほど数を誇る』って………ハハッ)
乙骨はタフや真希達との日々を思い出しながら、折本の頬にふれる。
「里香………いつも守ってくれてありがとう。僕を好きになってくれてありがとう。最後にもう一度力を貸して……?コイツを止めたいんだ……!!その後はもう何もいらないから、僕の未来も、心も、体も、全部里香にあげる………これからは本当にずっと一緒だよ。
愛してるよ里香………一緒に逝こう?」
チュッ
「あ゛っ…あ゛ぁ…あ あ゛あ あ あ あ あ あ あ あ゛ あ゛
憂太!!!! 憂太っあ゛!!!! 大大大大大大大大大大大大大大好きだよぉ!!!!」
折本は興奮の余り今まで閉じていた目を見開きそこから強力は無尽蔵の呪力をかき集め集中させる。
(自らを生贄とした呪力の制限解除!!)
「そうくるか!! 女誑しめ!!」
ギ ュ イ イ イ イ イ イ
「失礼だな……純愛だよ」
「ならばこちらは……大義だ!!!」
ドソッ
◇◇◇
花沢は足と腕に今使えうる呪力全てを籠める。そして、ただ未だ殴り続けているコングを見つめて待つ。
「ホギュアッ??!!!」
…………再度コングが幻魔に襲われ、花沢の目の前で隙を晒すのを、花沢は見つめて待っていた。
ドソッ
先ず幻突をゴリラに浴びせる。呪力と射出された衝撃が0.000001秒内の誤差で当たり黒閃が発動。更に、呪力で歪んだ空間が元に戻る0.000001秒が経つ前にその空間に霞蹴りで接近して霞突きで空間をゴリラごと殴りつける。その衝撃と呪力の誤差僅か0.000001秒内。黒閃が発生。呪力で歪んだ空間に、更に黒閃が打ち付けられる。
空間の歪みの深みは増し、亀裂が走り、呪力の火花は激しく燃え盛る炎となり、黒い呪力は
呪術界史上誰も成し遂げた者がいなかった……黒閃の重ね掛けが発動。その打撃の威力は通常の打撃の平均6.25乗。黒閃をただ単に二回連続で発動させるのとは文字通り桁違いの威力を誇る。その者の腕に例え拳がなくとも問題なかったのだ。
「しゃあっ シン・ブラック!!!!!!!!!」
ボワァァァアッッッ バリバリバリバリバリバリバリ
ドゴォオオオオオオオソ
「ホ ギ ュ ア ア ア ア ア ア ア ア ァ………」
コング一匹を葬ることなど……拳がなくともワケなかったのだ。
「ぅ………うぁ………ぅぁぁぁぁ……
う あ あ あ あ あ あ あ あ」
花沢は改めて戦友を失った現実に、空を仰いで泣き叫ぶ。
何かを愛した二人の高専生の死闘の決着は……同時に幕を閉じた。
流石に500億トンは無謀すぎるからナーフしたのん。感想が少なくなったんスけど……もしかしてかなりヤバい話の展開しちゃったんじゃないスか?
感想を書いて頂きたいですね……創作意欲が上がるんでね