◇◇◇
「マジか………」
「は─────っ なんだか気持ちええなあっ」
首と足のズキズキとした痛みで顔を顰めながら甚爾は花沢を睨みつける。
花沢が反転術式を覚醒させたのを見た時に甚爾の頭の中に浮かんだのは五条悟という術師を殺しかけるも五条が反転術式を覚醒させ返り討ちにあい死んでしまった光景であった。
この流れがデジャブだとするのなら、自分はこの男に負けてしまう。一瞬甚爾はネガティブな思考に至ったものの直ぐにニヒルな笑みを浮かべると共に掻き消した。
(思い出す…あの"筵山麓"の熱き闘いを……!!)
目の色が変わった……いよいよ伏黒甚爾が本気になる……!!
「少し……勘が戻ったかな」
「何でもいいですよ」
ブオソ……
花沢は灘神影流"夜叉燕"を発動、五条にコツを教わり月並みレベルにまで成長した簡易領域を展開し、射程に入ってきた対象にまず鋭い前蹴りを 中段辺りに繰り出し、そこから足を蹴り上げて 対象の顔面を狙う。
「フッ…なんだそれは…?もしかして迎撃するつもりか?」
ヒュッ
「なにっ?!」
対して、甚爾は瞬間移動の様に間合いを詰める移動技、"運歩"を発動。持ち前のフィジカル・ギフテッドを活かした"運歩"は花沢の意識を置き去った。
ボッ パパソ
パソパソパソ
ボボボッ
「はうっ あうっ」
反応が遅れ後攻に回った花沢は甚爾の猛攻に肉を削がれ、反転術式で治しながらも必死に対応すると同時に、寝技では分からなかった、打撃技だからこそ浮き彫りとなった自分と甚爾とのフィジカルの圧倒的な差を痛感していた。
甚爾は真希と同じ呪力がない代わりに爆発的な身体能力を得る天与呪縛の持ち主なのだが、真希が呪力が
タフ語録しか喋れない天与呪縛を持つは花沢は前者である。彼はタフ語録を喋れると言っても多少内容を変えたり、なんなら語尾に『っス』を付けさえすれば普通に喋れる。
だからこそ半端である。技術力で補えてはいるが、呪力なしの単純な身体能力では真希にも劣る。
「しゃあっ 灘神影流"爆丹拳"!!」
ゴオッ
防戦を強いられる花沢に甚爾の"爆丹拳"が降りかかる。"爆丹拳"は呪具を用いずとも全てではないが、数多の術師を体内で対象の呪力を爆発させ殺してきた甚爾の超危険必殺技である。
フッ
「しゃあっ 灘・真・神影流"霧霞"!『そう来ると思ってたぜ』なにっ?!」
ドォソ
「ぐはあっ?!」
花沢が甚爾の背後を取ったと同時に甚爾は並足を揃えて膝で軽くしゃがみ、踏み出して花沢の足を引っ掛けて下方向に向かって背中で体当たりする中国拳法の技の一つ"鉄山靠"を花沢に浴びせた。花沢は衝撃で吹き飛ばさせるが、甚爾の攻撃はこれで終わりではない。
ボッ
「うごおあっ??!!」
(ワっ…ワシ……この攻撃に心当たりがあるんや……"幻突"や!!)
"鉄山靠"を浴びせる際の甚爾の玄腿の震脚によって発生した"幻突"が花沢の腹部にクリーン・ヒットした。呪力を放出する紛い物ではない"謎のエネルギー"を放出する正真正銘、本物の"幻突"。未だに吹き飛ばされている花沢を甚爾は嘲笑うかのように急接近して迎撃する。
ボボッ
「しゃあっ 灘神影流"爆丹拳" "幻魔拳"!!」
ボソッ
「 う あ
あ あ あ
あ あ あ(pc書き文字)」
ドカァアソ
「はうっ」
甚爾の爆丹拳で体内で爆発が巻き起こる。黒い煙が口からモクモクとでている花沢は更に甚爾の幻魔拳を喰らった。
甚爾の幻魔拳も、呪力を用いずに花沢の顔面を陥没するまで殴り付けて花沢の脳内の視床下部を刺激して、顔面が破裂するイメージを引き起こさせる。花沢は激痛で受け身が取れずに地面に叩きつけられる。"硬筋術"を使用したものの、そのダメージは到底無視できないものだ。
「しゃあっ 灘神影流"塊蒐拳"!!!」
ボッ
甚爾の隙を全く見せない無慈悲な一撃。甚爾の"鬼"が花沢の体内に入った。
"塊蒐拳"は別名"鬼の五年殺し"。鬼に生き胆を喰われる様な激痛が五年続いて死ぬという。
「うがぁっ?!」
ズザザザ…
「しゃあっ! 灘・真・神影流"弾丸滑り"!!」
花沢が"弾丸滑り"で体内の鬼を逃した先にいたのは………
ギュルソ
「うぐあっ!!」
「えっ」
"塊蒐拳"を放った張本人である甚爾だった。
「クククク…しゃあっ 灘神影流"波涛返し"!!」
「なにっ 『ギュルソ ドソッ 』 はうっ」
"鬼"を"弾丸滑り"で受け流されることを予測していた甚爾は"霧霞"で花沢の背後に回り、自分から流された"鬼"を喰らい、すかさず花沢に触れて"波涛返し"で体内の"鬼"を花沢に受け流し返した。自分の攻撃を自分で受けるという奇行に驚愕した花沢は流された"鬼"を受け流せなかった。"鬼"が完全に花沢に棲みついてしまった。
「しゃあっ 灘神影流"兜浸拳"!!」
反転術式で治す間もなく花沢に甚爾の"兜浸拳"が命中!呪力は腹で、反転術式は頭で回すもの。浸透系の打撃である"兜浸拳"を頭に打ち込み脳に直接損傷を与える。
「はうっ」
ドサ…………
「よしっ キー坊?をぶっ殺してやったぜ!これで日頃のストレスも終わr『ばあ───っ』なにっ?!」
ボボボボボボボボボッ
「うがあっ?! あががっ?!!」
キー坊を倒した甚爾はノリノリでマッスル・ポーズを決めるも、背後から甚爾が倒した筈の花沢が出現。甚爾が振り向く間もなく花沢が霞突きの連打"ステルス・コンビネーション"が炸裂。甚爾の片足を花沢がしっかりと踏み付け吹き飛ばされず一方的に殴られる。
「しゃあっ 灘・真・神影流"四人霞"!!」
(幽玄真影流"四人霞"……だと…?だとしたら今まで俺が殴りまくってたキー坊?は分身だったのか……?!)
甚爾に一回目の"爆丹拳"が放たれ"霧霞"を使用したあの時から、花沢は甚爾に自分の分身と闘わせ、本人は甚爾の視界外から迎撃のチャンスを伺っていた。
甚爾はもう片方の足で幻突を発動。弾丸滑りで花沢は受け流すも、甚爾は脱出に成功。
(おいおいおいマジかよ…四人霞ってことは……他の二人の分身もいるってことじゃねぇか……何処だ……何処にいる……他の二人の分身は……?)
ボボボボボボボボボッ
周りに意識を向けている為、花沢の猛攻に甚爾は坊戦一方となっていた。しかし、呪力を持ち合わせていないにも関わらず呪力を感知できるフィジカル・ギフテッドによる過剰な五感を駆使しても他の二人の分身の気配を感じない。此処で甚爾はようやくその謎に気づく。
(ハッ……ま…まさか……このキー坊?の分身は三人の内の二人が隠れてて此処に一人いるんじゃなくて
そう、花沢は敢えて分身を二人に縛ることによって分身の戦闘能力を底上げ、"四人霞"と叫んでおくことでタフ・シリーズを読んでいる甚爾に分身が後二人いる様に錯覚させ意識を分散した。
花沢は真希より身体能力は低い。しかし、その事実など毛頭気にならない程の呪力量と技術力と戦闘IQをタフは持ち合わせていたのだ。
分身が一人だけだと甚爾は今更気づいたがもう遅い。意識が周りに向きかかっていた甚爾の腹部を花沢の拳が襲う。
ドォソ
「なにっ?! ぐはあっ」
甚爾は"弾丸滑り"で慌てて弾丸滑りで受け流すも、タイミングが遅いせいか、花沢の渾身の拳の衝撃で甚爾が勢いよく吐血する。
(ふぅ……はぁっ……す……少し反応が遅れたが……これくらいのダメージなr『ドォソ』なにっ)
安心していた甚爾に襲い掛かる禁断の衝撃"二度打ち"。驚異的身体能力て放たれる拳の衝撃が先行し、呪力の衝撃が遅れてやってくる。
これが灘神影流 花沢喜一オリジナル "地雷殺・改"。偶然にもその技は彼の後輩 虎杖悠仁 の使用する"逕庭拳"と同じ物であった。
"死と直面しても決して心乱してはならない 慈しみ祈り全身全霊で受け止める……これ菩薩の境地なり"
「しゃあっ 灘・真・神影流"菩薩拳"!!!!」
ドォソ
「はうっ」
花沢の菩薩拳で甚爾は胸に坐禅を組みし菩薩の像が刻まれ、その場に倒れる。倒れるや否や、甚爾は指一つ動かなくなった。どうやら心臓が止まってしまっているらしい。
ドソッ ドソッ ドソッ ドソッ ドソッ
「はうっ」
甚爾は花沢の心臓マッサージで、既に死んでいるのでおかしな表現になるが蘇生した。
「な……何故……?」
「フンッ おとんじゃなかったらお前みたいなクズ野郎とっくにぶっ殺してるよ "生殺与奪の権は常に我にあり" だからね」
花沢は顔をゴッゴッと殴って"宮沢熹一"ではなく、元の"花沢喜一"の顔に戻し、首を掻っ切るポーズを見せつけて地面に横たわっている甚爾を挑発するが、甚爾は花沢の顔を見て花沢に気づかれない程に微妙に口角を上げて笑う。
(そうか……今…顔を見てはっきりと分かった……お前の正体が……)
「ハッ……殺すなら……しっかり殺せよ…バカヤロー」
こうしてあの世での盛大な死闘を終えて、二人が向かったのは………
◇◇◇
ズル………ズルルルルル……………
「どうだ
「ワシの金でラーメン啜ってるおとんの姿が無様すぎてもうそのまま死んでくれって思ったね」
「俺はもう死んでるんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ。」
ラーメン屋であった。
この小説を書くきっかけとなった小説家がワシの小説にお気に入りをして下さってるんやが一向に感想を書いてくれる素振りを見せて下さらない……俺は悲しいぜ!