――Side 夢見朧
体育祭1週間前の午後、オレたちはヒーロー学基礎の一環で、再びUSJ(ウソの災害や事故ルーム)にいた。
「前回はあんなこと*1がありましたので、改めて救助訓練をやっていこうと思います」
そう告げているのは十三号先生。
「怪我をしたと聞いてますが、大丈夫なんですか?」
先生を尊敬してる麗日が問いかけると、十三号先生は雰囲気が重くなった。
「体の方は完全に治癒したから大丈夫。背中も多少削れたとはいえ、骨や神経とかの治療に注意が必要な部分に被害がほぼなかったからね。……ただ、うん。……今度の治療はリカバリーガールか、綾さんと朧君の連携治療の方が良いかな」
「カツユを複数雑に背中に貼り付けたの根に持ってます?」
オレの言葉に知ってる人はなんとなく納得した顔に、知らない人は疑問符を浮かべる。
「リカバリーガールの治癒より体の負担軽く、綾さんと朧君の連携より早く治って傷跡残らない上、単独で完治できるのは間違いなく素晴らしいモノなんだけどね。僕もその……アレはちょっと苦手でね」
「事情知らなかったり、蛞蝓苦手だとそうなるわな」
相澤先生も納得した顔で頷く。
「声はそこらの娘より美声なんだけどねぇ」
「とりあえず脱線してるんで話戻しません?」
綾の言葉にハッとしてオレは話を引き戻す。
「おっといけないですね。……では、救助訓練の方をやっていきましょう」
――Side 緑谷出久
山岳エリアに移動した僕たち。
そしてそのエリアの一角にある深い裂け目の近くまで移動した。
「今回ら裂け目から転落し、2名が、骨折、1名が頭部に怪我と右半身重症の大怪我を負っている3名の救助を想定してそれを助けてもらいます」
十三号先生の言葉に続いて相澤先生が口を開く。
「一応最低限の救助用具は持ってきた想定だ。だからココにある道具は使っていい。担架は備品だから壊すなよ」
相澤先生が1人分の担架と数百メートルのロープ数本に添え木や応急手当キットを示した。
「あと救護対象は移動中にしれっと半殺しにされてココに投げ捨てられた朧。なんか暇してたからと救護役に名乗り出たアリオスさん。アリオスさんと何やら話してたエンデヴァーのサイドキックの1人、ブルーバーストの3人になる。いずれも控えめに言って救助経験あるプロばかりだ。救助時にそれぞれ講評してくれるはずだ」
「ツッコミどころ多いんですがツッコミ入れてもいいですか!」
相澤先生の説明を聞いた飯田君がそう言うが
「長くなるのでだめ」
と切り捨てられた。
「それじゃ、くじ引き……朧は怪我人役、綾と奏はオレたちと安全スタッフ役だから21人を4人グループ4つと5人グループ1つに分けるぞ」
Aチーム 麗日、緑谷、マイ、飯田
Bチーム 恋、常闇、芦戸、爆豪
Cチーム シロナ、耳郎、瀬呂、尾白
Dチーム 峰田、葉隠、八百万、轟
Eチーム 上鳴、切島、障子、蛙吹、青山
チーム分けの結果、上のようになった。
「そんじゃ、Aチームから早速「今すぐ助けるから!」底見えない裂け目に躊躇いなく飛び込みやがった……」
マイが飛び込んだことに相澤先生が困惑を見せる。
「ちょ、大丈夫なん!?」
「ミイラ取りがミイラになる予感がするんだが大丈夫か!?」
ためらいなさすぎてオロオロする飯田君。
「たぶんそこの2人が平然としてるから大丈夫だと思うけど、先に僕も向かう!『シド! 頼んだ!』」
僕は指輪の1つに声を掛けると、背の高い水の賢者にしてゾーラ族の王子『シド』の影が姿を現す。
そして水の障壁が僕を包むように展開されたので、そのまま飛び降りる。
「念の為っ!」
ある程度落下したタイミングでパラセールを開いて減速。
問題なさそうなのでそのままパラセールを閉じて再度落下。
「うおっ! あぶねっ!」
着地地点に赤毛混じりの白い髪の人が居て、その人が反射的に飛び退いた。
一応パラセール開いて減速したので負傷とかはない。
「急ぎすぎるあまり落下予測地点にいるであろう怪我人のことを考えてないのは減点だな」
何故か座禅組んでいたアリオスさんが片目を開いてこちらを見ながら冷静に評価を告げた。
「そ、そうでした。……それはそれとしてマイさんは何処に?」
「ココに居〜ぞ。個性発動が3秒遅ければミンチになってた阿呆が〜」
と何処か腑抜けた朧さんが答えた。
声の方向くと血まみれの朧さんがいて、その隣で怪我の具合を確認してるマイさんがいた。
「やっぱり朧の血は……舐めると力が増してく……後で2人に怒られるかな……」
血を舐めて恍惚とした表情してて色々危ないマイさんから目を逸らす。
「救助来ました!」
麗日さんが紐に繋がれた担架を持って降りてきた。
ということは上に飯田君がいるのかな?
「さて、救助者を見つけた時の手順は?」
ブルーバースト……エンデヴァーの子供にして長男が問いかけてきた。
「安全確保、救助者の意識及びバイタルチェック。トリアージを行い、赤の人から優先して救助をします」
「正解だ。……黒は蘇生処置が必要、あるいは『蘇生不可能』で対応不可能なときにつけられる。さて、3人をしっかり確認して、優先順位を考えろ。――その判断をちんたらしてたら、助けられるものも助けられなくなるぞ」
僕と麗日さんで手分けしてチェックを始めた……。
――Side 夢見綾
あーちゃんは安全チェックのスタッフとして、救助チームの様子を観察していた。
「『リーバルの猛り』!」
無重力状態になった麗日ちゃんが、担架も無重力にして地面蹴り上げたあと、上昇気流を起こして谷の底から浮かび上がる。
飯田君の引き上げもあって思ったより早く救助完了しそうだ。
「うーん……クジとはいえ、若干メンバー偏ってるかなぁ……」
マイが燈矢をベクトル操作して連れていき、緑谷君が背負子でアリオスさんを背負って壁を登っている。
ほぼ全員崖を上り下りする能力があるチームなのでスムーズに終わるだろう。
「CチームとEチームはそれなりに時間かかるかなっと」
奏に合図を送りつつ、その様子を観察するのだった……。
――Side 夢見奏
「……まあ、概ね予定通りですかね」
腕時計を見ながら最後のチームが兄様たちを引き上げるのを確認しつつ、懐中時計で時間を確認する。
「……しかし……オールマイトに全盛期の力を取り戻させるためとはいえ、彼の仕事の大部分を私たちが代行するのは何か違うと思うのですが……」
ため息を吐いたあと、ちゃんと引き上げられたのを確認した私は綾に合図を出して撤収する。
その後、市街地エリアで2チームに分かれ交代で被災者と救助者として市街地エリアで互いを探し合う等の『人の探し方』等を実践するなどして、救助訓練のリトライは終わりました。
特に何か起こるでもなく、平和でしたが……。
『おいやめとけって』
更衣室で着替えてると、男子側の方から声が聞こえてきた。
耳郎さんがこっちを見てる。
『我慢できるわけねぇ! いざゆかん! 桃源郷!』
男子更衣室側にあった穴に耳郎さんが躊躇いなくイヤホンジャックを突き刺す。
悲鳴が聞こえましたが自業自得です。
『というか耳郎が先に折檻してくれてよかったな。朧が凄まじい顔してたぞ』
……あえて放置してたら峰田さん生首状態で本人の席に飾られてたかもしれません。
一瞬耳郎さんを見ると「朧に任せたほうがよかったかな」って顔をしてました。
束の間の日常
――Side 1年のA組
休み時間
「朧〜連れション行こ〜」
「「「「「「「!?」」」」」」」
マイの言葉に教室内にいた夢見三兄妹と発言者以外がマイを見た。
「……お前、幼稚園の時とは違うだろうが」
「マイは今は女の子でしょ。朧を犯罪者にしたいの?」
朧がマイにジト目を向け、綾が呆れ顔を見せる。
「……うん? なんかその言い方、マイは男だったみたいな言い方じゃね?」
上鳴が疑問を口にする。
「あー、うん。元々無個性の男の子だったけど、渡欧したときに拉致されてモルモットにされたんだよね。その時に個性を植え付ける実験と、強化人間っていう実験を同時並行で受けたのが私たち3人。……で、証人保護プログラムの適応で戸籍を用意してもらった時にいっそ性別まで変えれば安全性上がるんじゃないってことでもう一つの個性『肉体改造』で性別から骨格まで激痛に耐えて変化させて、今に至るんだよね」
しれっと放たれた言葉に言葉を失う面々。
「……そっちの二人も?」
峰田が恐る恐る問いかけると2人は首を横に振る。
「恋は……元々。ストリートチルドレンだった」
「右に同じく。私は……まあ、訳ありってことで1つ。ちなみに肉体改造の結果、同調率が上がって、嘗てより連携しやすくなったのでありがたくはあります」
はえーとなる面々。
「ちなみに朧が助けた直後に証人保護プログラム適応と肉体改造したから女の子になって半月も経ってないんだよね」
「ふぁっ!?」
「嘘だろあんな可愛くてあざといのに!?」
「せいへきが、こわれる!」
「元々そういう気があったとか……?」
阿鼻叫喚と化すA組教室。
「ちなみに、この姿朧が幼稚園の時見た目で一番いいと思ったのはって聞いた時に描いた姿を元にしてるから、朧の癖に刺さってるんだよね」
「いい趣味してるなオイ」
「中身が元男……男のしてほしいこととかわかる分色恋方面で強敵では?」
「というか朧君好みにするために自分を改造……愛が重いような……?」
エクトプラズム先生が来るまでマイへの質問が続けられ、エクトプラズム先生が何故か性癖談義を授業の半分ほどやるという珍事に発展するのだが、それは別の話。
夢見コソコソ小話
マイは朧の幼稚園時代の友人である神奈葉月が肉体改造と証人保護プログラムによって姿を変えた人物。
プロジェクトケルベロスの影響で雌堕ちしていたところに朧に救われ、そのまま転がり落ちた。
ケルベロスの中でも一番重い女(元男)だが、普段はそんなモノを見せない。
見せる時は朧と二人っきりの時だけらしい。
重いマイの姿を見た朧の胃は死んだ。