――Side 雄英高校1年B組
「私のこと、忘れてしまったのですね……?」
時は根津校長による学年集会の直後!
場所は雄英高校1年B組!
ドラマのような発言を繰り出したのはヨル・マクレインという留学生!
発言を聞いて内心発狂してるのはB組の中心的人物物間寧人!
なお周りの目はもうひとりの留学生シズク・マクレインと担任のブラドキングを除けば過去最低温度である!
これぞ四面楚歌!
「…………ん? 待てよ」
焦りまくっていた物間は一周回って冷静になったのか、焦りの表情が消える。
それと同時に頭によぎるものがあったようで、何か引っかかるものを引きずり出すように眉間にシワを寄せた。
「……ドイツであったことがある?」
「唐突にア○ネーターが始まったなオイ。幾つ質問したら正解にたどり着くか賭けようぜ」
「やめてやれよ。アレガチで思い出そうとしてるっぽいし」
「【速報】物間まさかの海外旅行経験者だった」
ざわめく面々に対しヨルは頷く。
「10年以上前?」
頷く。
「その時日本語話せた?」
首を横に振る。
「……僕のことモノマって呼んでた?」
頷く。
「一緒にいたのは数時間?」
首傾げたあと頷く。
「……リエラ・フォージャー?」
「あっ、そういえば私今と名前違いましたね」
ポンコツ感ある顔で手をポンと叩きながら頷くヨル。
その瞬間に物間はギャグ漫画さながらの転倒をする。
「――十年前に1時間以下、しかも名前以外身振り手振りで会話した性別不明のちんちくりんと名前さえ変わってる今の君を結びつけるのは無理あるって!!! ……コレ僕が悪いのかな????」
白目剥いて叫びながら立ち上がり、イナバウアーする物間。
「うーん、色恋の予感がするからギルティ」
「ワイトもそう思います」
「ソレで学年集会の挨拶で『貴方が居るから留学選んだ』宣言した強心臓は物間のせいじゃないから無罪に一票」
「私はどちらでも良いです」
「興味ないね」
「幼い頃の思い出の相手との再会……先生、感動した!」
「そろそろ授業なんだけどなにこの状況」
しれっとやってきたプレゼントマイクの言葉でハッとしたB組及びブラドキング先生は慌てて授業の支度や職員室への撤退を開始した。
「お弁当美味しそう!」
「パンじゃなくてご飯とは……あら、舞茸と豚肉の炒め物があるノコね」
「父が日本かぶれでその余波といいますか……」
昼休みの教室も賑わっていた。
シズクは日本かぶれな父の影響か、主食がご飯のお弁当を持参していた。
一方――
「物間! お弁当作ってきました! 食べてください!」
ヨルが重箱二段のお弁当箱がはいってるらしいつつみを物間に差し出した。
「えっと……」
昼休みまでにヨルの手綱はシズクが握ってるという認識が浸透したせいか、物間がシズクを見る。
「一応私が毒見したので食べられるものだというのは保証しますよ。……味は……愛情たっぷり?」
「遠回しにマズい言うとりません?」
「……ノーコメントです」
誰かのツッコミに同意しながら物間が困惑してると、ヨルはプルプル震えだす。
「……だめ……でしょうか……?」
涙目のヨルの後ろでB組生徒たちが口パクでヤジリ始める。
「(ココは男を見せるんだ物間ぁ!)」
「(シズクさんが食べれる言ってたしイケるって!)」
「(だめなら介錯してやるから逝ってこい)」
コイツら、と物間はキレそうになるが、目の前の彼女を思い出して口を開く。
「不味かったらしっかり文句言うからな」
そして半分奪うようにつつみを取って自席にて弁当を開封する。
「……シンプルなサンドイッチだね。(挟んであるのが不格好だったり、一部炭化してたりしてるのは目をつぶろう……)」
二段に渡り様々なサンドイッチがギッシリ詰まっていた。
南無三!と物間は心で唱えながらまともそうなハムサンドに喰らいつく。
「…………ハムが甘い。……砂糖と塩を間違えてるっぽいなこれ」
「なっ!? 味見した時は問題なかったですよ!?」
物間の持っていたものをひったくり食べるヨル。
一部生徒が何かに気がついたが、あえてスルーした。
「……デザート寄りのフルーツ系のサンドイッチと主食系のサンドイッチが混在してるからじゃない?」
「たくさん食べてほしいって感じで作ったのかもだけど、詰め込み過ぎかな……」
「味見だけして詰めるところ見てませんでした……不覚」
柳レイ子や拳藤一佳が弁当を見て分析を告げ、シズクは片膝を付いてくよよよと嘆く。
「なるほど……勉強になります」
メモ帳に意見を書いていくヨル。
「次はちゃんとした美味しいものを用意します!」
「とりあえず食べ物無駄にしないためにも食べるとしようか……」
そういってヨルと共にサンドイッチ軍団を食べ始める物間。
そんな彼は嘗て彼女と出会ったときのことを思い出していた。
知らないうちに両親とはぐれてしまい、探してる間に人の少ない裏通りのようなところに入り込んだこと。
そこでいじめられてた子供を助けたこと。
身振り手振りで人を探してることを伝えたら二人であちこち回ったこと。
こんなふうにサンドイッチを食べたこと。
どうにかこうにか両親と合流できて別れたこと。
1時間も満たない短い記憶。
(しかしまあ……女の子だったとは、まったく気が付かなかった)
5歳くらいだったから性別的特徴が出てないのもあってずっと男だと思っていた物間はそう思いながら奇妙な味のサンドイッチを食べていった。
なお6時限目に腹痛でトイレに幽閉されたりしたがまた別の話。
「体育祭……今年はどうなるんだろうね」
放課後に誰かがふとそう零した。
「襲撃事件を加味すると台風の目になるのはA組として……競技内容が予想つかんよね」
「……物間、黙り込んでどうしたんです?」
ヨルの言葉に全員が物間へ目線を向けた。
「A組ばかり注目されてるところに思うところがある。A組に一泡吹かせられないかなって」
その言葉にヨルが困った顔を見せた。
「物間……気持ちはわかりますが、ケルベロスを単独撃破したり、アリオスが格上と認めてる朧がいるのでソレを実現するのは難しいかと……」
「ケルベロス……?」
首を傾げる物間。
「ケルベロスというのは――み゛っ゛!」
一瞬でヨルの背後を取りヨルを絞め落とすシズク。
「「「「!?」」」」
「ヨルさん疲れてるようなので寝かせました。 っと、ヨルがぼやいていたことですが、朧さんというか……夢見三兄妹は体育祭解説役になってるので、クラス対抗ならそこまで不利ではないかと」
「ほんとかなぁ?(ゴ○リボイス)」
「数的ならあっちが21、こっちが23だしな」
「ただ金曜日に見かけた赤と白の髪のコとか、入試で見かけたもじゃもじゃ髪のヤツが厄介そうだ。化け物じみた速さの白いコートの剣士相手に喰らいつけてるし」
「白いコートの方はおそらく夢見朧さんですね。 八葉一刀流の9代目剣仙……父以上の実力者で、留学中の剣術の師範です」
「ドイツNo.1より強い……???」
困惑する面々に対し、シズクは目を細めた。
「皆さん、朧さんたちのことを今のうちに知っておきましょうか」
彼女の目は、推しを布教するという狂信者の焔と自国の人間を知らなすぎるという怒りの焔を宿していたが、それを認識できたものは居ない……。
夢見コソコソ小話
ヨルについて
朧がドイツにいったときに欧州でケルベロスと共に保護した強化人間。
強化人間になったため、そこらのヒーローより身体能力は高い。
おまけに個性で『ノイズ無視』という雑音を無視する個性が狂化されて瞬間的に空気抵抗や重力などの本人がノイズと認識したものを無視できるようになっている。
廃人になってないのはこの個性と本人の資質と狂気的な物間への想いがあったからとか……。
シズクについて
両親と同じく無個性の少女。
しかしフィジカルギフテッドであり、模倣が得意なため八葉一刀流を形だけは幼い頃に習得済み。
朧に弟子入りしてるが、帰国直前に初伝をようやく与えられた(周りが異常なだけで十分すごい)。
朧の見立てでは父と同じ弐の型を極めるだろうとされている。