――Side 緑谷出久
時間は体育祭当日。
場所は会場となるアリーナの入場口。
『人』を3度書いて飲む峰田君や、自分はイケると自己暗示かけてる上鳴君、テンションがおかしくなってる芦戸さん等割と混沌としていた。
「随分と落ち着いてるね★」
青山君の言葉に頷く。
「姫様を守りながら万の怪物の軍勢相手に撤退戦した時に比べたら全然慌てたりする状況じゃないからね」
「前世の話だったっけ? すごい経験してるね★」
「おかげで大抵のことは心穏やかにいられると思う」
姫様を守りながらお鍋の蓋でガーディアンのビーム弾いたり金色のライネルたちの連携攻撃を10連ジャスト回避でよけたりしたのは本当に極限状態だったと思う。
よく生きてられたな、当時の僕。
「――緑谷」
今度は轟さんが声をかけてきた。
「なにかな?」
「……三兄妹除けば今クラスで一番強いのは間違いなく貴方。競技で事故でも起きなきゃ体育祭優勝筆頭なのも貴方」
その言葉に他のみんながざわめく。
「……そうかもね」
いや……実際のところ、右腕の力を十二分に使えてないし、朧さんたちのやった一件のせいかOFAの力も時折出力が不安定になるし、黒い鞭のアレはオールマイトさえわかってない(何故か朧さんが複雑そうな顔をしてたから何か知ってるかもしれない。教えてくれそうにないけど)。
だから襲撃事件より弱体化してるまである。
だけど――前世で培われた経験と直感、そして限定的な加速状態がある。
組み合わせれば、ココにいる面々相手でも負ける気はしなかった。
「だからこそ――姉弟子としても、お前を叩きのめす」
その言葉に放たれた威圧じみた気配にみんながざわつく。
「……僕が天狗になってるとでも?」
「そう見える。前世とはいえ経験から裏打ちされた自信なのだろうけど、前世に引っ張られすぎてる。……だから、叩きのめして現実に引きずり戻す」
……そう見えるんだね。
仕方ないことだろう。
だけど、オールマイトの後継者として、朧さんたちに鍛えられた身として、英傑や勇者と呼ばれて厄災や世界の破滅を退けた身として――
「――僕は負けるつもりはないから」
僕の言葉に満足したのか威圧感が消えた。
「それでいい。少なくとも私やヤオモモは、手抜きされるほど弱くないつもり。そんな状態から勝ちを拾うのは、虚しいだけだから」
……轟さんなりの叱咤なのかな?
「巫山戯んな半分女。体育祭優勝するのはデクでもお前でもねぇ。オレだ!」
割り込んできたのはかっちゃん。
「……数キロ先の針穴に糸を通すくらい大変だけど、頑張って?」
「何他人ごとのような言い方してやがるてめぇも張っ倒して勝つに決まってんだろ!」
キレ散らかしてるかっちゃん。
「……簡単には負けるつもりない」
「上等だて『さて、生徒の入場だ!』「みんな2列に並ぶんだ!」」
かっちゃんの言葉はアナウンスと飯田君の言葉で遮られた。
『さぁ!生徒の入場だぁ! まずは今期最注目の――A組だろ!』
飯田君が先頭で2列になり進む僕たち。
会場は満員御礼といったところか。
『襲撃事件を乗り越えて一皮剥けたやつらに多くのヒーローが注目してるな!』
『贔屓が過ぎるぞマイク』
プレゼント・マイク先生の言葉に突っ込むのは相澤先生。
『留学生組にも注目したいところです。……彼女らの父親である風の剣聖もVIP席で見てますしね』
奏さんの声がしたので放送席を探すとそこに三兄妹と相澤先生、プレゼント・マイク先生が揃っていた。
『続いてヒーロー科B組!』
『入試情報見る限り、A組にも負けず劣らずの実力者たちが揃っている。相性や立ち回り次第で優勝を十二分に狙える位置にいる。まあ足を掬おうとしてる時、優勝狙う他クラスの生徒が足を掬うかもしれない。油断大敵、この一言に尽きるだろう』
朧さんの解説……慢心してないか釘刺ししてるね……。
『あと個人的にヨルちゃんが競技ぶっ壊さないか注目かな』
……綾さんの言葉が不穏すぎるのは気の所為だろうか。
『続いて普通科CDE組!』
『プレゼント・マイク先生、贔屓はだめだよ〜? っと、ヒーロー科の予備なんて呼ばれてるけど、ヒーロー科入試の実技と相性悪いだけで、対人戦だとプロでも完封できる子いるみたい。ここで活躍してプロに注目してもらえると良いね!』
綾さんが注意しつつとんでもないことを言ってる。
……たた、プロもライセンスあるってだけの人もいるし、どのあたりとは言ってないから警戒するしかないよね……。
『次はサポート科FGH組!』
『サポート科は事前に審査を通った自作のサポートアイテムの持ち込みができます。チェックには雄英高校サポート科の外部講師兼開発工房のアドバイザーに就任した篠ノ之束博士も立ち会っているので暴発とかはないと思われます……っと。追加情報ですが中には公表されてるサポートアイテムの上位互換を作った人がいるようです。……ついでに今朝ねじ込みのアイテム申請があったようです。――規定違反じゃないけどギリギリすぎる申請を半ギレしながらもちゃんと審査したパワーローダー先生と篠ノ之束博士は本当にお疲れ様です……!』
……とんでもない裏話に多くの観客から前半驚き、後半同情の声が上がった。
『最後は経営科IJK組!』
『ヒーロー科や普通科の面々を見てどうプロデュースするか考えてるな……。まあ、文治寄りのクラスだから妥当ではあるのだが参加する競技は全力で取り組んでほしいものだ』
『選手宣誓! 爆豪勝己!』
18禁ヒーロー ミッドナイトの言葉にかっちゃんが台に上がる。
嫌な予感しかしないのは気の所為か、幼馴染としてのカンか……。
「せんせー。オレが一番になって、実況でのんきにしてるアホ3人ぶっ潰す。ってことでせいぜいてめーらいい踏み台になれや」
(((((マジでやりやがった!!!!)))))
多少言い回しが違うけどA組のみんなの心が一つになった(気がした)瞬間だった。
会場に吹き荒れる大ブーイングの嵐。
コレも青春!と言ってるミッドナイト先生。
……あれ? 実況席に朧さんたちもプレゼント・マイク先生もいない。
相澤先生だけ残ってる……?
『オイオイなかなかファンキーな選手宣誓だな! ボルテージ上がってたから余計だったかぁ!?』
プレゼント・マイクの声とともに、会場にあるスポットライトがついてある場所を照らす。
そこにはギターボーカルにオールマイトとプレゼント・マイク先生、ベースに綾さん、ドラムに奏さん、シンセサイザーで朧さんが黒づくめにサングラスという格好で立っていた。
『他の学年の会場にも映ってる? ヨシ! ソレじゃあ夢見三兄妹の作詞作曲、ボーカルは私オールマイトとプレゼント・マイクで贈る夢見プロダクション新曲【HEATS】で君たちのボルテージ、もう一段上げさせてもらおうか!』
オールマイトの言葉とともに、忘れていた熱意を呼び覚ますような曲が流れ始めた……。