星鍛目録ー野槌と隕鉄ー   作:いぶりがっこ

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第五章「鈴鳴り礼妙剣」
37話「皇都」


皇記1081年――

第三城壁の向こうから日が昇り、初夏を迎えた皇都の一日が始まる。

 

千年都市ヴァルファリア。

偉大なる英雄王の決起より千年余り『皇都』は西方の中心地であり、即ち人類の都であった。

 

小国乱立する動乱の時代、異種族の大勢力との抗争、魔王の降臨――

 

幾度と無く訪れる未曽有の危機を乗り越えながら、皇都は復興と繁栄を続けてきた。

建国当初はちっぽけな集落に過ぎなかった都市は拡張を重ね、外壁の数は三層にまで達した。

 

その第三城壁の内側。

数多の平民たちが肩寄せ合って暮らすこの区画では、早くも往来に朝市が催され、

道行く人々で賑わいを見せていた。

 

 

 

活気あふれる大通りの声を耳にしながら、イズノハ・ノヅチは鉄片の山と対峙していた。

(むしろ)の上に盛った鉄片を手に取り、吟味し、梃子棒(てごぼう)の上に重ねていく。

 

鉄の正体は、先日、とある筋から貰い受けた南方鉄である。

良質な鉄の産地である南方諸島原産の鉄鉱石の総称だが、

当の島々が火山の噴火に伴う地殻変動で海底に没して以来、入手は困難となっていた。

 

ノヅチ自身、三年前に尖耳(エルフ)の蔵で目にして以来、密かに気になっていた鉄である。

単純な稀少性では同じ南方産の黒鋼(アダマンタイト)に及ばないが、

良くも悪くも癖の強い黒鋼に比べ、分かり易く扱い易い。

主役である星鉄に合わせる金属、と見るならば、此方に分があるようにすら感じられる。

 

しっとりと、手に吸い付くような鉄片の輝きを見つめ、一人頷く。

西方最大の物流拠点である皇都だからこそ入手出来た、上質の鉄である。

皇都に戻る決断をしていなければ、こうして手に取る事すら出来なかったであろう。

 

 

 

一年前、魔王の館を離れる際に、ヒウマンから聞かされた噂話は真実であった。

久方ぶりに訪れた皇都の酒場で、ノヅチは父の仇である、ルヴェン侯爵家の断絶を知った。

 

国家反逆罪。

 

皇都においてその罪状は極めて重く、

旧侯爵家にまつわる多くの人間が、既に断頭台の露に消えたと言う。

意を決し、七年ぶりに訪れた侯爵家の敷地は厳重に封鎖され、

鎖越しに見えた邸宅の跡は、かつての栄華が嘘のように閑散としていた。

 

皇国とルヴェン侯爵家の間に何があったのか?

一介の流浪人に過ぎぬノヅチには、全ての真実を知る事は叶わない。

一つだけ確かなのは、もうノヅチの身を脅かす敵は存在しないという事だ。

 

都に知己も縁故も残っていない無いノヅチであったが、幸いな事に金だけはあった。

亡父の名誉も回復した、とまで大袈裟な事は言えないが、

長く皇都に住まう職人たちの中には、不運な東島(アズマ)の刀工の事を憶えている者もおり、

鍛冶場の再開に向けて何かと骨を折ってくれた。

 

様々な幸運と出会いに恵まれて、ノヅチはかつて、父と暮らした工房を取り戻し、

七年ぶりに皇都での生活を再開する事が出来たのであった。

 

 

順風満帆、そう言い切っていいだろう。

 

長らく思い煩っていた、復讐と雪辱という悩みの種から解放された。

華の皇都に居を構え、職人としては一つの人生の節目を迎えている。

定住の地を得た事で、こうして鉄と向かい合い、己を磨く時間を持てているのだから。

 

今、ノヅチが挑んでいるのは、東島においては『(さい)』と呼ばれる工程である。

一度、小割りにした鉄を、火入れの前に梃子棒に並べ、重ねていく作業である。

 

不揃いな鉄の欠片を積み重ねる以上、絶対に密な山とはならない。

鉄片の間隙が大きくなれば、鍛錬の際に(きず)が生じ、

それがそのまま刀の仕上がりに直結する。

(ずく)の多い欠片が混じれば、それも刃の急所となる。

 

縄張りの達人が、大小の石から強固な石垣を組むような、熟練と経験を要する作業である。

刀工によっては、この段階で二日三日を費やす事も珍しくない。

何度も何度も、納得いくまで積んでは崩すを繰り返す。

傍目には不毛に見える行為を、弟子たちは東島の地獄になぞらえ、賽と呼ぶようになった。

 

その『賽』に今、ノヅチはどっぷりと嵌ってしまっていた。

 

賽の段階で躓くのは、ノヅチにしては珍しい事であった。

別段、稀少な素材に委縮している訳でも、初めての鉄に戸惑っている訳でもない。

事実、霊銀(ミスリル)だの魔蒼鉄(ブルーメタル)だのと言った伝説上の金属を扱った時も、

打ち損じれば自分の命もが危うい、という時ですら、ノヅチは一切迷わなかった。

 

どんな刀を打ちたいのか。

一度、こう、という理想形が固まりさえすれば、あとは指先が勝手に動いた。

今のノヅチの指先には、あの頃のような軽さが無い。

鉄片を置く度に違和感が広がり、積み重なる山に不安を覚える。

 

この所、順調に行き過ぎていたのかもしれない。

そうぼんやりと考えてしまい、慌てて頭を振る。

このような雑念に囚われている時点で、既に作刀に集中できていない。

目の前の鉄に全身全霊で向かい合えていないのだ。

だが、重い指先に反比例するかのように、とりとめのない雑念は広がっていく。

 

亡父から託された隕鉄で、一端の名物を作り上げ、然るべき人間に託す。

 

それは父と死に別れたあの日以来、七年に渡り少年を支え続けた夢であり、目標であった。

再び世に顕れた、出乃羽斎槌(イズノハサイヅチ)の遺産を前に、愕然とする悪漢どもを前に言ってやるのだ。

 

「ザマア見ろ」と。

 

少年の思い描く、ささやかな復讐劇は夢と消えた。

倒すべき敵は勝手に自滅し、世界を救う、という重すぎる義務だけが遺された。

ノヅチの指先の重たさは、残された荷の重さ、そのものかもしれない。

 

結局、それから半日粘ったが、納得の行く仕上がりにはならなかった。

「悪いな」と呟いて段を崩すと、傍らのタタラは、笑って首を振った。

 

 

肌脱ぎとなって狭い中庭に降り、井戸の水を頭から被る。

初夏に見合わぬ冷水に、ぶるりと体が震え、茹だった頭が急速に覚醒する。

 

初夏とは思えぬ眩い陽光が、じりじりと素肌を焼き、蝉の声が彼方より響く。

表通りから、皇都を駆ける少年たちの笑い声が聞こえてくる。

 

かつて天涯孤独となったノヅチが、この地を離れてから八年。

世界はいつまでも変わらぬ時間を刻み続けていた。

 

今となっては、あてどなく世界を彷徨い続けた、

あの七年の日々の方が夢幻だったのではないかとさえ、感じられる事がある。

ここ一年の皇都とでの生活は、それほどに平穏で、変わり映えのしない日々であった。

玄関を開ける親父殿の素っ頓狂な声と共に、少年の長い夢は醒めるのだ。

 

『――次の日蝕は三年後だ。

 貴様の悪足掻きに期待しておるぞ、余の最大の理解者よ』

 

親父殿の嬌声の代わりに、高慢ちきな女の声が耳の奥で鳴り響いた。

思わず口中で舌打ちが漏れる。

 

あまりにも現実味のない話だが、あの女の言葉は夢でも幻でもない。

時が満ち、日輪が欠けたその時、魔性の軍団は動き出し、世界は再び暗黒に包まれる。

その魔王が定めた三年の刻限より、既に一年が経過していた。

 

本来なら、今のノヅチに足踏みしている暇など無い。

世界を救う剣が打てないのならば、せめて人として出来る事をするべきであった。

日蝕の到来を予告し、忌まわしい魔王の計画の全てを人々に暴露する。

信じてもらえなくてもいい、嘲笑われても、馬鹿にされても構わない。

 

近い将来、確実に訪れるであろう悲劇的結末を回避するために全力を尽くす。

それこそがせめて人間らしい、まっとうな者の生き方ではないか?

 

今のノヅチは中途半端だ。

人にも、鉄にもなり切れていない。

為さねばならぬ事を知りながら、ただ追憶と平穏な日々の中に埋没している。

そんな自分にどうしようもなく腹が立った。

 

「親方、お客さんだよ」

 

中庭に響いたタタラの声が、ノヅチを現実に引き戻す。

手渡されたタオルでわしわしと髪を拭いていると、傍らのタタラが意味深に笑った。

 

「カーウェイ通りの若旦那。

 ヘヘ、惚れられちゃったね、親方」

 

「よせやい」

 

タタラの言葉に短く応じると、ノヅチはタオルを投げ返し、そのまま室内に向かった。

 

 

アムルソン商会は、カーウェイ通りに居を構える、冒険者御用達の商店である。

先代は頑固一徹な武器職人で、皇都でも指折りと称えられた槌振りであったが、

その先代亡き後、残された息子たちが現在の商会の形を整えたのだと言う。

 

社交性に秀でた目利きの長男に、管理に優れ事務仕事が得意な次男。

兄弟はそれぞれに得意分野を分担し、今日では多くの徒弟を抱える、

皇都における武具流通の大店を形成していた。

 

タタラが『若旦那』と呼んだのは、アムルソン家の三男坊、ロッカ・アムルソンの事だ。

歳は十七と若く、タタラの世代に近いほどだが、それだけに血気にはやる所がある。

兄弟の中では最も先代の才覚を継いでいるとの評判で、職人気質なノヅチとは馬が合った。

ノヅチの作刀に惚れ込んだ彼が、この工房に押しかけてきて以来、

今では三日と開けずに顔を合わせる仲になっていた。

 

 

 

着替えを終えたノヅチが居間に入ると、ロッカはすぐに立ち上がり、やや大げさに一礼した。

短く刈った頭髪と、意志の強そうな太い眉に、若者の生真面目さが顕れている。

 

「悪いな、せっかく来てもらったってのに、こんな汗臭い格好でさ」

 

「気にしないでください、そんなの。

 突然押しかけて来たのは僕の方ですし。

 鍛冶屋の親方なんてのは、汚れているのが当たり前じゃないですか」

 

ロッカは爽やかにそう言うと、ちょっと口を尖らせて話を続けた。

 

「……ウチの兄たちが、あなたのように汗と炭に塗れている姿は見た事ありませんよ。

 商売人の暮らし向きが、すっかり板に付いているんだ」

 

(おっと)

 

思わずノヅチが内心で鼻白んだ。

いつもの事ではあるが、血気盛んな若者との会話は、二人の兄への愚痴から始まるらしい。

 

ノヅチの知るアムルソン家の先代は、八年前には体調を崩し、隠居同然の生活となっていた。

ロッカの年齢を考えれば、工房で指導を受ける機会は、ほとんど皆無であったに違いない。

尊敬する父親に直接教導を受けながら、職人とは違う生き方を選んだ兄たちに対し、

少なからぬ嫉妬と不満を抱えているのだ。

 

「そりゃあね、家長としては商売を維持するのも大変なんでしょうけど、

 アムルソンは鍛冶で興した家ですよ。

 当主が先代の高弟たちにまともな指示も出せないなんて、家名の名折れじゃないですか」

 

「その、商売上手のお兄さんたちのおかげでね……」

 

若者の気勢を逸らすように、ノヅチはタタラの用意してくれた珈琲を一口啜って応えた。

 

「ウチは稀少な鉱石を色々と融通してもらえて、大いに助かってるよ」

 

「む……」

 

ノヅチの擁護に対し、ロッカは思わず閉口した。

事実、ノヅチが先ほど挑んだ南方鉄も、アムルソン商会が特別に仕入れてくれた品である。

ロッカとの関係が無ければ、新参の槌振りには手が届かない商品だったに違いない。

 

目の前の少年の憤りはよく分かる。

立場が逆なら、ノヅチだって周囲に当たり散らかしていた事だろう。

 

だが、一介の槌振りとカーウェイ通りの大店とでは、求められる才能が違う。

先代の遺した工房を維持し、職人たちの生活を守るのも大切な仕事だ。

お人好しの二人の兄から大いに世話になっているノヅチとしては、

簡単に末弟の味方ばかりもしていられない。

 

「けど、それにしたってですよ……」

 

ノヅチの意図を察しながら、尚も憤懣やる方ないロッカが、反撃の糸口を探す。

 

「秋口になれば、奉武祭(ほうぶさい)だって執り行われます。

 鍛冶で知られたアムルソンの家から奉じられるのが、弟子たちの作品ばかりだなんて、

 世間に対して、あまりにみっともない話じゃないですか?」

 

「……えっと、その、奉武祭、てのは?」

 

「あれ、ご存じありませんでしたか?

 三百年前の対魔王戦の英雄、豪傑ガイランドの命日に開かれる祭典ですよ。

 皇国を代表する武人を悼むお祭りですから、当日は大々的な馬上槍試合(トーナメント)が開かれる他、

 我々鍛冶師の鍛えた武具を奉る、品評会も行われる予定になってるんですよ」

 

「ああ、皇都の人たちがガイランドを大事にしてるのは知ってたが、

 俺が以前、ここで暮らしていた頃には、そんな祭りは無かったと思うんだけどな?」

 

言いながら、ノヅチがかつての皇都での記憶を手繰り寄せる。

豪傑ガイランドは、三百年前、魔王軍との決死の戦いに臨んだ勇者の仲間たちの一人、

後世の詩人たちの讃美歌の中で『豪放磊落なる雄々しき戦士』と謳われる人物である。

 

屈強な巨鬼(オーガー)を素手で殴り飛ばしただの、三日三晩飲まず食わずで伝説の剣を鍛えただの、

常軌を逸した規格外のエピソードで知られた、人類史上屈指の豪傑(タフガイ)である。

皇都の番兵上がりという出自もよく知られており、

地元では勇者に次いで民衆に慕われている人物でもあった。

 

もっとも、ノヅチの記憶する限りでは、豪傑の慰霊祭はあくまで民間レベルに留める事で、

死後、聖人として祀られた勇者と差別化が図られていた筈なのだが。

 

「奉武祭が現在の形式になったのは、今から五年前の話ですね。

 元々はルヴェン侯爵家……、当時の御用鍛冶を務めていた、旧侯爵家の提案によって、

 大々的な慰霊祭が開かれる運びになったと聞いています」

 

「ルヴェン侯爵家! 

 って、いうと、例の……、国家反逆罪のか……?」

 

「ええ、その侯爵家です。

 次の祭典では、没落した旧侯爵家に代わる御用鍛冶が選出されるんじゃないかって噂で、

 今や皇都中の槌振りたちが色めきだっている所なんですよ」

 

不意にロッカの口から漏れた仇敵の名に、思わずノヅチは絶句した。

国を挙げての奉武祭が開かれるようになったのが、今から五年前。

ならば、提案自体はもっと前、あるいは亡父の生前の頃から、計画は存在したのではないか。

 

だがそれが果たして、父の死や、侯爵家の滅亡に繋がる事件の一因なのだろうか?

一介の槌振りに過ぎぬノヅチには、当然推し図る術もない。

 

「ノヅチさんは、奉武祭に参加するつもりはないんですか?」

 

「奉武祭に、俺の倭刀をかい?」

 

侯爵家との確執を知らないロッカは、目の前のノヅチの変化に気付かなかった。

自らの提案がよいアイディアだと思ったのか、身を乗り出してさらに語気を強める。

 

「そうですよ、是非、参加してみるべきだと思います。

 奉武祭は身分の上下も忖度も無い、純粋な技術と修練の祭典ですから。

 僕の立場から言うのもおかしな話ですが、そういう舞台で人々の称賛を受けるのは、

 兄たちのような商家ではなく、あなたのような純粋な職人であるべきだと思います」

 

「そうか……、いや、だけどなあ……」

 

内心の動揺を悟られぬよう、ノヅチが曖昧に語尾を濁す。

ロッカの提案自体は確かに魅力的に感じられる。

 

忌まわしい仇敵が計画した祭典に、父の業を受け継いだ最高の倭刀を奉じる。

そこで人々の称賛を得られたなら、真の意味で亡父の名誉を回復できるのではあるまいか?

少年時代に拗らせてしまった、幼きノヅチの魂の慰めにもなろう。

 

――だが、

 

 

『親友を失った戦士はその後、諸陣営の思惑に揉まれた挙句、下らぬ戦争で命を落とした』

 

 

かつて、魔王の隠れ家で聞かされた話が、呪詛のように脳裏を走った。

 

豪放磊落で知られた英雄ガイラントだが、

主君であり、最大の友であった勇者を失ってからの後半生は、精彩を欠いたと言われている。

 

生来陽気で破天荒な武人であった若者にとって、宮中での政治闘争は監獄でしか無かった。

豪傑は政治の場よりも戦場を望み、司令官としての立場も顧みず、常に最前線で戦い続け、

やがて、辺境の部族たちとの会戦の最中に命を落とした。

 

人類最強の豪傑の最期より三百年。

未だにその死は時の政治家たちに利用され、居場所を失った筈の故郷に魂を縛られている。

そう思うと、彼の慰霊祭を利用して名を上げようという、己の魂胆まで浅ましく感じられた。

 

 

――ちりん

 

 

どこからか、不意に鈴の音が耳元に届いた。

反射的に顔を上げると、目の前のロッカは呆然とした横顔を家の外に向けていた。

つられ、ノヅチが窓の外へと視線を移す。

窓の外では、一人の男が大通りより、こちらに向かって来ている所であった。

 

黒い男であった。

上等そうな黒のスーツの上から羽織った、丈の長い黒の外套(マント)

黒髪を覆うように目深に被った、黒色の山高帽が男の視線を遮る。

 

初夏の陽気にまったく似合わぬ格好だが、男は汗一つ掻いていない。

黒づくめの衣装からのぞいた肌は雪のように白く、幽鬼のような違和感を見る者にもたらす。

ちらり、と外套の隙間から見えた、倭刀の鞘までも黒い。

そんな中、刀の柄頭に括られた鈴だけは白銀で、陽光を反射して揚湯と煌めいていた。

 

「鈴鳴り役人だ……」

 

視線を窓の外に向けたまま、ロッカがポツリとそう呟いた。

快活な若者にしては珍しい、消え入りそうな声色であった。

 

「何だい、鈴鳴り役人ってのは?」

 

「刀剣の柄に括られた銀色の鈴は、刑罰の公正さの証……。

 彼らマウンライルド家の人間は、役目柄、常に銀鈴の帯同を義務付けられています」

 

ロッカはそこで言葉を切ると、ごくり、と一つ息を呑んだ。

 

「マニング・マウンライルド……。

 皇都ヴァルファリアを執り仕切る、死刑執行人の一族ですよ」

 

ロッカの言葉に感応したかのように、漆黒の青年が家の前で足を止めた。

窓越しに自分を見ている二人の存在に気付いたのであろう。

青年は帽子を脱ぐと、室内に向けてぺこりと浅く一礼した。

 

青年の動きに合わせ、腰元の鈴が、再びちりん、と鳴った。

 

 

 

 

 

 

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