「たーくん、さーちゃんまだかなー」
「そうだなぁ、もうちょっとで帰ってくると思うよ。それまで兄ちゃんと遊んでような」
「…うん! 遊んであげる!」
姉の帰りを待つ、可愛い盛りの妹の面倒を見ながら、玄関に目をやる。
その姉はというと、ここ数週間ほど文化祭の準備で、時たま今日のように帰りが遅くなる日があった。律儀なもので、遅くなる時には必ずメールか電話で事前に連絡をくれるし、姉が担当している夕飯も、ここ数週間は作り置きが出来るものを多めに調理しており、急に帰りが遅くなっても、俺と妹が問題なく夕飯を食べられるようにしてくれていた。文化祭最終日の今日も、同じようにメールがあり、姉の代わりに妹を保育園まで迎えに行き、冷蔵庫に入っていた作り置きの夕飯を食べ、いつものように妹の面倒を見つつ姉の帰りを待っていたのだが…
「今日は一段と遅いな…」
いつもなら遅くとも一八時半には帰ってくる姉が、今日は一九時を回っても帰ってきていない。事前連絡を貰っているとはいえ、最近では滅多になくなったその帰りの遅さに、一抹の不安を覚える。以前、小町さんのお兄さんたち…奉仕部の方々に依頼した一件以来、姉は可能な限り早く帰宅するように心がけているようで、その甲斐もあり、姉の帰りの遅さから、寂しい顔を見せることが増えていた妹も、あの一件からすっかり明るさを取り戻した。以前なら気にならなかっただろう時間だが、現在では、何らかの問題があったのではと思う程度には、その認識は変化していた。
二〇時には両親も帰宅するはず。そろそろ一度、こちらから姉に連絡を入れようかと携帯を取り出した矢先、玄関の鍵を開ける音が聞こえた。
「ただいまー」
「さーちゃんだ! さーちゃーん!」
帰りを告げる姉の声に反応した妹が、とてとてと玄関に向かうのを歩いて追いかける。
「ただいまけーちゃん、慌てて走ったら危ないよ?」
「おかえり、姉ちゃん。今日は遅かったね?」
自身の胸に飛び込んできた妹を撫でていた姉に、帰りの遅さについて尋ねる。
「悪かったね、ちょっと話が長引いてさ」
「話って…誰かと打ち上げにでも行ってきたの?」
「へ!? あ、いやぁ、まぁ、そんな感じ、かな?」
「…?」
急に顔を赤くして動揺し始めた姉を訝し気に見つめていると、姉の胸に抱かれていた妹が口を開いた。
「さーちゃん、すっごくドキドキしてる! お顔真っ赤だよ? 大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ! け、けーちゃん? もう遅いし、一緒にお風呂入ろうか!」
「うん! さーちゃんとお風呂!」
そうして、荷物を片付けるのもそこそこに、姉は妹と脱衣所に消えていった。
「ふむ…」
先程の姉の様子に思いを馳せながら、腕を組んで考える。そして、一つの結論に辿り着く。
「ついに姉ちゃんにも春が来たか…」
「大志、あんた暫く掃除当番固定ね」
「げ! 姉ちゃん聞こえてたの!? 図星だからってそりゃないy、痛い!」
「うっさい! そんなこと考えてる暇あるなら、公式の一つでも覚えな!」
「うぅ…正論だけど理不尽だ…」
「さーちゃん! 早く入ろー!」
そうして、川崎家の穏やかな日常は過ぎていった。
* * *
休みも明け、文化祭後初の登校日。
本日は、午前中は残っている文化祭の後片付け、午後から通常授業の運びとなっている。
というわけで俺は、実行委員の一員として一人、記録雑務の報告書を職員室にて仕上げていた。
それというのも、文化祭最終日の俺の行いが、相模一派によってある程度広まりつつあったからである。文化祭後初の登校日、未だ生徒たちが打ち上げ気分に浸っていたり、後片付けに気を取られているのもあって、その話は実行委員会内部で噂される程度に留まっているが、委員会内部では既に、俺を避ける風潮が生まれていた。まぁ、避けるだけならば文化祭準備期間において、スローガン決め等で悪評が広まっていた時から特に変わりないのであるが、問題は、避けることによって仕事すら共有されなくなった点だ。準備期間中は、避けられてはいたが、仕事に関してはきっちり押し付けられ、あくまでも仕事仲間という枠組みには入っていたのだが、相模の一件でついにその枠組みからも外れてしまったらしい。
最終日にあらかた後片付けは済んでおり、この午前中に行われる後片付けは、あくまでもその仕上げと、生徒たちが通常の日常へ戻るための心の準備をする時間という趣が強い。そのため、その作業には大して人手は必要ではなく、必要なのは、後片付け中に駄弁りながら、一緒に気持ちを整えられる友人というわけだ。それは実行委員会においても同様で、俺に押し付けられる仕事もなくなっていたのである。というわけで、窓際社員と化した俺は、雪ノ下に一言断りを入れてから、職員室へ昨日書き上げた報告書の提出に来たのである。雪ノ下はというと、最後の仕事とばかりに、相模の隣にてその辣腕(らつわん)を振るっていた。あの調子であれば、実行委員会の担当している区画の後片付けは、昼を待たずに終わるだろう。頼もしい限りである。
そうして、黒の革張りのソファーに腰掛けながらカタカタとキーボードを鳴らしていると、煙たさをもった甘い香りが仄かに鼻孔をくすぐった。
「不備の修正は完了したかね?」
「えぇまぁ、ご指摘を受けた箇所はあらかた」
「それはよろしい、見せてみたまえ」
そういって、パンツスーツに白衣を纏った美人教師、平塚静は俺の手元にあるノートパソコンの画面に顔を近づけた。
「ふむ…これならば問題ないだろう。そこのコピー機で印刷してきたまえ」
「了解っす。…すみませんね、お手数をおかけして」
「はは、君にしては殊勝な物言いだな。何、別に構わないよ。休みの間に直近でやらなければいけない仕事は片付いているからね、今日この時間に限って言えば暇だったくらいだ」
「はぁ、そうですか…」
プリンターへ印刷用のデータを送信しながら、平塚先生の話に耳を傾ける。休みの間に仕事を片付けているって何それ、お給金出てるの? 大丈夫? 休みも家でひとり仕事してるとかあまりにも可哀そうすぎるだろ…だれか貰ってやれよ…寂しさのあまりペットとか買いだしたらもう手の施しようがないぞ…
平塚先生の社畜精神と、その独身街道の末路に思いを馳せていると、顔面の横を一陣の風が通り抜けた。
「今、何か失礼なことを考えていなかったかね?」
「まさかそんなわけないじゃないですかいやだなぁ」
「歯を食いしばれェ!」
「カミカゼッ!」
顔の横を通り抜けた鉄拳と、平塚先生のニュータイプばりの直感に、思わずごまかしの言葉を口にすると、俺の鳩尾(みぞおち)に見事なアッパーパンチが入った。
「ほう、アカツキ電光戦記を知っているとは…相変わらず趣味が合うな君は!」
「実際にやったことはありませんけどね…というか好きな格ゲーの話題が通じたからって頬を染めんで下さいよ、チョロ過ぎて心配になります…」
「チョロッ…!? 失敬だな、君は! 流石の私もこのくらいで堕ちたりはしないぞ! …ちょっと良いな…って思うくらいで…」
「はぁ、そうですか…」
平塚先生のちょっと良いな…は、ナンパ男の先っちょだけだから! と同じくらいの信頼度しか感じられないんですがそれは…。そもそも、マイナー格ゲーでコミュニケーションを図ろうとしている時点で、女性としてかなり心配なのに…このままでは衝動的に俺が貰ってしまいそうになる、というか貰われてしまう、早く誰か貰ってやってくれ…。
そうして、平塚先生の今後のご多幸をお祈りしつつ、プリンターがうぃんうぃんと吐き出した報告書を手に取り、平塚先生に手渡す。
「平塚先生、仕上げのお手伝い、ありがとうございました。こちら、報告書です」
「う、うむ! …確かに」
先のやり取りの動揺を抑えつつ、手渡された書類に目を通し、平塚先生が言葉を返す。これにて、俺の文化祭実行委員としての仕事は完全に終了したわけだ。仕事から完全に開放された余韻に浸っていると、平塚先生から声を掛けられる。
「お疲れ様、比企谷。見事な仕事ぶりだった」
「…ありがとうございます。といっても、二度としたくはありませんけどね…」
「…要らぬ減らず口がくっついているとはいえ、先の発言といい、君が素直に感謝を口にするとは珍しい。君にも何か変化があった、ということかな?」
「……」
文化祭最終日の一件を思い出し、言葉に詰まる。川崎沙希。俺が歪ませ、目覚めさせてしまった恋する乙女。彼女の真摯な言葉に、俺も無意識のうちに感化されているのだろうか。歪み始めているのだろうか。そうだとしても、その歪みには、俺が過去に抱いた忌避感は感じられない。それはつまり…
そうして沈黙した俺を見て、平塚先生はフッと息を吐くと俺の肩に手を当てた。
「大いに悩みたまえ。その時間は必ず、未来の君を、君たちを助けてくれるよ。…必要になったら、遠慮なく私を頼りなさい。いつでも力になろう。」
「…うす」
平塚先生の言葉に、言葉少なに感謝を伝えつつ職員室を後にする。
…やっぱイケメンすぎだな、あの人。
平塚先生が結婚できない理由を再確認し、昼休みを告げるチャイムの音を聞きながら、俺は教室へと足を向けた。
* * *
教室に入ると、そこはもういつもの様相を取り戻していた。文化祭時の余韻を感じさせるものは、生徒の纏う雰囲気とその会話のみである。教室後ろの窓際には、いつものように由比ヶ浜を含めた葉山グループが陣取り、昼食を取りつつ、会話に興じている。…川崎は教室前の窓際、自分の席に座り、携帯をいじっていた。相模一派は教室後ろの入口付近に座り、相模を中心に会話を展開していたが、教室に入ってきた俺を見ると露骨にそのトーンを落とす。なんともまぁ分かりやすくてありがたい限りだ。ラブリーマイエンジェル戸塚たんはといえば、早速テニス部の練習に精を出しているようで、その姿は見当たらなかった、いっぱいかなしい…。
そうして、教室をさっと見渡してから自分の席に着くと、ちらほらと視線を感じる。荷物を整頓するふりをしながら聞き耳を立てると「ねぇあいつでしょたしか…」「ほんとならマジで…」「そんでさーヒキタニくんがさー!」という囁き声が聞こえた。いや、最後のは囁き声じゃねぇな…鳴き声だな。というか、本人が同じ教室に居るのにそんな堂々と陰口を叩くんじゃねぇよ…。単に俺が教室に入ってきたことに気づいていないだけなのか、はたまた世間話として消化してくれているのか。…恐らくはその両方なのだろうなと、ケンケン鳴いている戸部の前に腰掛ける葉山を、それとなく見やって思う。
声の大きさから自然と耳に入る会話を聞く限り、戸部は特に何も考えてはいない。奴は単に俺が教室に入ったことに気づいていないだけだろう。ただ、葉山のほうは違う。俺がこの教室に入ったことに気付きつつ、会話でそれとなく戸部のトーンを大きく、それでいて、そこに悪意が籠らないように誘導している。見事としか言えない人心誘導だ。これが葉山のやり方、ということなのだろうと、屋上での葉山の言葉に思いを馳せる。
…まぁ、葉山がこのように行動してくれるのならば、こちらとしても都合がいい。いくら相模一派が熱心に俺の悪評を広げようと、カースト上位の葉山たちの発信力にはかなわない。このままいけば、俺の存在は忌避すべき邪悪ではなく、話のネタになる小悪党くらいの存在として認知され、そして、時間とともに忘れ去られていくだろう。想像していたよりもはるかに上等な結果だ。
そうして聞き耳を立てるのを止め、久々に保健室横の安息の地で昼食を楽しもうと、購買にパンを買いに行くため腰を上げようとしたその時、俺の顔に誰かの影がかかった。
「お疲れ、八幡。今から昼?」
「…おう、そのつもりだが」
そうして顔を上げて、声を掛けてきた闖入者(ちんにゅうしゃ)を見やる。川崎沙希。そこには、ここ数日、俺の心を乱してやまない友人がいた。
* * *
先ほどまで、俺への影口とともに緩やかに過ぎていた教室の時間が、一瞬別の色を見せたのが感じられた。川崎本人に自覚があるのかは分からないが、川崎は、かなり目立つ容姿をしている。性格の相性さえ合っていれば、恐らく三浦のグループに参加していてもおかしくなかったであろう。そんな人物が、誰とつるむでもなく、理由もなく一人でいれば、それなりに人の注意を惹く。今回の文化祭で衣装係としてクラス企画に参加したこともあって、川崎の人となりが決して悪くはないことは、クラスで周知の事実となっており、以前のような親しみにくさもかなり軽減されているはずだ。そんな人物が、今絶賛おもちゃ街道をまっしぐらしている俺のような人物へ親し気に声を掛けてしまえば、否応にも、クラス内に困惑の色が漏れ出ようというものである。文化祭後の休み期間中、幾度となく想像した通りの展開が訪れたことに、心の中で頭を抱えつつ、川崎に言葉を返す。
「川崎、おまえな…」
「……」
「…川崎?」
そうして川崎に声を掛けるが、返事がない。顔を見合わせているのに何も発言しなくなった川崎を、訝し気に見つめる。その顔は、恐ろしいほど自然で、美しい笑みを浮かべていた。
笑顔とは、本来攻撃的なものであるという。俺の経験した限りで言えば、雪ノ下雪乃のそれは、凍てつく恐ろしさを。雪ノ下春乃のそれは、何も感じさせない不気味さを纏っていた。そして、川崎沙希のそれは、自然体ゆえの圧を放っていた。自然で、それでいて美しい。それゆえに、その笑顔が何を伝えているのか、言葉がなくとも理解することが出来てしまった。俺は一つため息をつくと、彼女に声を掛ける。
「沙希、おまえな…」
「何? 八幡」
そう言って、笑いかけてくる沙希に、俺は二度目の敗北を悟り、天井を仰いだ。負けた俺が悪いとはいえ、本当に沙希呼びは勘弁してもらえませんかね…心の中で呼ぶだけでも恥ずかしさで死にそうになるんですが…。
そうして、自身の敗北を帳消しにする方法について考えを巡らせていると、突然、机の上に藍白色の風呂敷に包まれた何かが置かれた。
「…沙希、これは?」
「お弁当。八幡の分も作ってきたからさ、ちょっと何処かへ食べに行こ。それ、持ってもらえる?」
「俺に拒否権はないのか…」
「何? ここで食べたいの? あたしはそれでもかまわないけど」
「喜んでお供させていただきます…」
そうして俺は、先導する沙希の後ろについて、教室中の視線を一身に受けながら教室を後にすることとなった。
* * *
川崎沙希と比企谷八幡が去った後の教室は、混乱の様相を呈していた。文化祭を経て、皆からの親近感と憧れをその身に集めつつあった川崎沙希。一方で、ほとんど人と関わりを持たず、そうかと思えば、雪ノ下雪乃を筆頭に意味不明の人間関係を構築しており、終いには文化祭での悪評が囁かれていた比企谷八幡。その場にいた者たちは口々に、二人の関係性について思い思いの考察を繰り広げていた。昼飯の話のタネとしては、小ネタになりそうな悪評などよりも、はるかに興味をそそられるものであったと言える。そんな中、教室の一角で、一際大きな混乱を見せている少女がいた。
「何アレ――――――!?」
* * *
「結衣、落ち着きなって」
「落ち着いてなんかいられないし! ヒッキーと沙希、いつの間にあんな仲良くなったの!?」
「そうだべ! そうだべ! ヒキタニくんと川崎さんが付き合いだすなんてこんな大ニュース、話さずにはいられないっしょ!」
「あれって、付き合ってるのか?」
「さぁ…」
動揺するあたしを、優美子がなだめてくれた。あたしに続いて話題を広げるとべっちに、大岡くんと大和くんは相槌を打つ。てか、付き合ってるとかいうなし! …ほんとにつ、付き合ってるのかなぁ…
「サキ×ハチ…強気攻めのサキサキとヘタレ受けのヒキタニ君…あぁ~サキサキが男の子だったら完璧だったのに!」
「海老名、擬態しな、擬態」
「しかし、そうか川崎さんが…」
「…? 隼人、どうしたの?」
暴走しかけた姫菜を抑えつつ、少し考え込んだ隼人君に優美子が声を掛けた。隼人君はすぐに表情を戻すと、微笑みながら口を開く。
「いや、何でもないよ。確かに意外だなと思っただけさ。…ただ、戸部の言うように、付き合ってまではいないんじゃないかな?」
「え! ホントに!?」
「多分ね。だから、結衣も安心していいよ」
「へ!? …べ、別にそんなんじゃないし!?」
隼人君の言葉に、思わず喜びの声が漏れてしまった…うぅ、恥ずかしい…危うく気づかれるところだったよ…
「でも隼人君、さっきの見る感じ、あの二人結構良さげな雰囲気じゃね? お似合いっつーかさー」
「戸部、お前マジか?」
「うん、こいつはマジもんだ」
「ちょ! 大岡も大和も棘あり過ぎじゃね!? 俺、何かまずいこと言った!?」
「とべっちはマジもん!? ブハァッ!」
「海老名、鼻血鼻血」
…お似合いかぁ。
何だかむずむずした感覚を抑えつつ、とべっち達のやりとりをぽけーっと見つめていると、姫菜にハンカチを渡した優美子があたしに顔を向けた。
「…結衣、あんたそんなうかうかしてると、ヒキオ、取られちゃうかもよ?」
「へ!? と、取られるって…べ、別にヒッキーはあたしのものじゃないし…」
「はぁ、あのね…好きなんでしょ? ヒキオのこと」
「ゆ、優美子!? 何言ってるの!?」
「結衣、安心して。ここにいる皆、もう大分前から気づいてるから。とべっち以外!」
姫菜の発言に思考が停止する。はえ? 皆気づいてた? だいぶ前から? へ? 嘘? マジ?
「え? 結衣、ヒキタニ君狙いだったの? マジで?」
「ほら、見ろよ。マジもんだっただろ?」
「あぁ、こいつはマジもんだ」
「あははは…まぁ、そこが戸部の良さでもあるからな。そんな戸部も、俺はいいと思うよ」
「隼人君…! やっぱ隼人君神だわー、一生ついていくわー」
「ハヤ×トベきちゃあああああ!」
「海老名、擬態擬態!!!!」
あまりの衝撃にフリーズしていると、興奮しきった姫菜を何とか抑えつつ、優美子がわたしに話しかけた。
「で、どうなの? 好きなの?」
「へ!? ……す、すすすすす好きです…」
「素直でよろしい」
そういうと優美子は軽く微笑んで、言葉を続けた。
「ま、とにかく。あーしらは結衣の味方だから。結衣がヒキオと付き合いたいってんなら協力するし」
「そうだべ! そうだべ! 水臭いこと言わずにドンドン頼ってちょ!」
「ほんと調子いいなこいつ」
「それな、まぁ言ってることには完全同意だけど」
「私はサキサキのことも好きだけどー、でも結衣のことはもっと好きだから! もーまんたい!」
「俺も、出来る限りの範囲で力になるよ、結衣」
「皆…!」
その優しい言葉に、思わず胸が熱くなる。だけど…
「…ありがとう。気持ちだけ、受け取っておくね」
「結衣、あんた…」
「……」
あたしの言葉を聞いた優美子と隼人君が、心配そうにあたしを見つめる。でも、こればっかりは仕方がない。
「だって、沙希は一人であそこまでヒッキーと仲良くなったんだもん。あたしが、他の人の力を借りるのは…よくわかんないけど、それは違う気がする。だから…あたしは、あたしなりに頑張ってみるよ!」
「…そっか」
そういうと優美子はフッと微笑んだ。こういうところが優美子の本質なのだと、あたしは思う。
「まぁ良いんじゃない? これぞ結衣ってかんじで。戸部も見習ったら? ねぇ隼人?」
「ははは、確かに。戸部なら、なりふり構わず俺に力を借りに来そうだ。」
「それな」「間違いない」
「ちょ、隼人君! そりゃないべー! 俺だってやるときはやる男っしょ!?」
「戸部君総受け…うん、これもまたアリだね!」
「海老名、擬態」
そうして、あたしたちの昼休みは穏やかに過ぎて行く。あたしの中で響く、胸の高鳴りと共に。
* * *
第三話読了、有難うございました!
というわけで、以下あとがきという名の戯言をば。
今話読了された方はお気づきになられたかもしれませんが、筆者は俺ガイルキャラクターの中で、サキサキの次に、三浦さんが好きだったりします。何と言いますか、完全な善人ではなく、その上で、根っこにはちゃんとした善性があり、そうした一面を飲み込みつつ、自身の目指す方向へ向かおうとしている姿が、凄く人間味を感じて好きなんですよね。そういったわけで、三浦さんを含めた葉山グループの面々もかなり好きなので、今回のような描写を書かせていただきました。
サキサキルートを書き終えたら、三浦さん関連の話も書いてみたいですね。といっても三浦さんルートは、ゲーム俺ガイル続の三浦さんルートがめっちゃよくて満足してしまったので、書くなら別の方向性になるかと思います。ゲーム俺ガイル続は、各ルートのクオリティが凄く高いので、俺ガイル好きなら是非ともプレイして欲しい名作です。是非是非。
三浦さんのお話については、個人的には、三浦さんは葉山とくっついて欲しい…というか、葉山を呪縛から解放するのは三浦さん含めた、葉山グループの面々であってほしい、という思いがあるんですよね。そんなわけで、書くとしたら、原作完結後の三年生に入って、三浦さんを中心とした葉山グループの面々と奉仕部が協力して、葉山を呪縛から解き放ち、どのように関係を終わらせていくのか、といったことを書ければなぁと考えております。
まぁこの辺りも、まずはサキサキルートを完結させてから、というお話ではありますので、完結目指して頑張って書き進めたいと思います、はい。予定は未定ですが!!!!
というわけで、以上あとがきという名の戯言でした。
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!よろしければ感想・評価をしていただけますと、執筆の励みになります!これからもよろしくお願いします!