釣り人転生 ~水族館作るのはいいけど、集める手段が魚釣りなのはさすがにまちがっているよね!?~ 作:うまかちゃん
プロローグ
プロローグ
透き通った空の中、釣り竿を持ったおれは海に浮かぶウキをじっと見つめながらつぶやく。
「どうしてこうなったんだろうなぁ…」
突然ではあるが、俺は転生した。
自分がどうして死んでしまったのかはわからない、また神様に会った記憶もないが、産まれた時から自分には自我があった。
なので産まれた直後はすぐに反応をすることができず、固まってしまったので母親と看護師がものすごく慌てていたことが始まりである。
そのあとはなんとか取り繕って赤ん坊を貫いたが、元が成人であったため、正直ものすごくきつかった。
その後も赤ん坊として生活をしていたのだが、唯一よかった点は父親がどうやら住んでいる島のオーナー(地主?)だったのでお金に困らず、かなり大切に両親に育てられたことだ。
前の世界では生活が苦しい家庭や児童虐待などの話を聞いたことがあったため、その点はすごくほっとした。
そして、そこで自分は気が付いた。
「俺、このまま楽に、好きなことをして過ごせるんじゃね?」
冷静に考えてみて島の所有者である父親はお金をたくさん蓄えている。
それに現段階で子どもは俺1人だけ…
この時点で自分は今後もお金に困ることはないだろうし、将来的に島を引き継ぐこともできるだろうと確信をした。
別に前世でも働くことが好きだったわけではないし、楽できるなら楽をして生きていきたい。
なのでできる限り両親のツテで楽な仕事をこなしつつ、その後島のオーナーになって好きなことをしようと思い、これからの生活にワクワクしながら子ども時代を過ごしていった。
「今日も相変わらずにぎわってるな〜」
この日、中学生になった俺はこの島にあるホテルのエントランスをみて呟いた。
ここは父親が経営している「ホテル・フィッシングリゾート」という場所で、自分たちの住んでいる場所でもある。
名前からわかるだろうが、主に世界中の釣り人が集まるホテルであり、一年を通して賑わっている場所だ。
そしてこのホテルでは実際に島で釣った魚をこの島だけで使えるポイントに変換することができ、島にいる人は必ず持っているIDカードにチャージされるのだ。
このポイントを使って買い物などをすることができるため、多くの人が釣り上げた魚をこのホテルに持っていくため、さまざまな魚を見ることができる。
「今日は釣果はカクレクマノミにチョウチョウウオ、ホシギス、フエヤッコダイ…ほんといろんな種類の魚がいるよな〜」
自分もまた今日釣り上げた魚をポイントに変えてもらうために、ここに訪れたのだ。
ちなみにまだ中学生とはいえ、前世で大学を出ていた自分にとって勉強はしなくてもクラスで一位を取れるため、俺は時間さえあれば釣りをしている。
「いらっしゃいませ、当ホテルにようこ…あ、海斗くん!お疲れ様!今日も魚釣りにいってきたんだね!」
「こんにちは!今日も釣ってきた魚のポイント変換お願いします」
「カクレクマノミにチョウチョウウオ…今日も大量に釣ってきたね♪」
この人はフィッシングセンターに務めている職員で、昔からポイントの変換を担当している、ひとりっ子の自分にとっておねえさんのような人だ。
「それにしても最近はなんか工事が始まったとかで、おねえさんも大変なんじゃないんですか?」
「う〜ん、私は別に担当じゃないからそこまでだけど、やっぱり海斗くんのお父さんが最近始めた『ホテル水族館プロジェクト』は島民や観光客みんなが楽しみにしているものだから、やっぱり職員のみんなも気合い入ってるよね〜」
「そうですよね、なにしろこの島に生息している全ての種類の魚を水族館に入れるとなると、その浴槽の準備や魚の準備で忙しいですよね」
「けど私、楽しみなんだ〜。あんなにおっきな水槽のなかで泳いでいる魚をみるのが!」
「俺も楽しみです」
『ホテル水族館プロジェクト』は父親が立ち上げたプロジェクトで、私たちの住んでいる【ペナンカバン島】という島に生息している魚を全て集めるといった大規模なものだ。
前世では海のない場所で育った影響もあり、釣りをしたことは一度もなかったが、水族館には月に一度は行くくらい好きだったため、自分も今回の計画がうまくいくことを願っていた。
そしてまた時が過ぎ、島の中に高校がないため1人引っ越して進学をするか、それとも島に残って家の手伝いをして暮らして行くか選択を迫られ、この島から出たくないという思いで家業の手伝いをして過ごしていたのだが。
「海斗、少し話がある」
「お父さん?」
朝ごはんを食べていると父親から声をかけられた。
ご飯を食べ終えてその後父親の書斎に足を運ぶと、父親から向かいの椅子に座ってほしいと言われた。
ホテル水族館プロジェクトの改装が終わり、ある程度ひと段落したばかりなのだが、父親はとても真剣な顔をして俺を見つめていたため、進路の話をするのだと思った。
しかし、父親は俺の予想を裏切り、突拍子のないことを言い始めた。
「お前に試練を与える」
「し、試練?何をいってるの?お父さん」
「海斗、お前は今この島で釣り人や観光客向けのガイドを手伝ってくれているだろう?」
「そうだけど」
「お前には将来、私の後を継いでこの島のオーナーになってほしいんだ」
「それについてはわかってるよ。自分もなんとなくそうなるんだろうなって考えてたし。けど、それが試練と何の関係がいるの?」
「このペナンカバン島は釣り人にってのユメの国とも呼ばれている場所である。それほど多くの種類の魚が生息をしているからだ」
「それもわかってるよ…」
全然話が見えてこなかった。
こんなことをいきなり言うような父親ではなかったため、ものすごく驚いている。
「そんなペナンカバン島のオーナーを務めるということは釣り人の頂点であるということと等しいのだ。」
「それは言い過ぎなんじゃ…」
「そこで将来島を引き継ぐ海斗に釣り人の頂点になってもらうべく試練を課すことにしたのだ」
話聞いてないし
「それでは試練の内容を伝えよう」
冷静に考えると俺が高校に進学という線がいつのまにか父親から消えているのだが、そこを突っ込んだらさらに面倒くさそうだったので、とりあえず試練の内容を聞くことにした。
「試練とは、ここペナンカバン島に生息している魚を1人で釣ってくることだ!」
「試練って、それだったら俺もいつもやっているよ。」
もちろんただ釣りをするのではない。海斗には私が指定する魚を全て釣ってきて欲しいのだ」
「全てって、全部で何種類くらい?」
「216種類だ」
なんとも中途半端な数だが、216種くらいならそれなりの時間、それこそ10年単位で釣りをすれば余裕で集められるだろう。
「ちなみにこれが釣ってきてもらう魚だ」
そう言って父親は分厚い辞書のようなものを手渡してきた。
「アリゲーターガー、クロダイ、ヨーロッパオオナマズ、ワカサギ…結構大きな魚も入ってるんだね」
しまいにはカジキなんかも入ってるが、とても子どもが釣るようなものではない。
が、それが成長して大人になれば話は別だ。
ヨーロッパオオナマズなどの大型の魚も頑張れば20代くらいでも釣ることができるだろう。
そう考えると自分でもできそうな気がしてきた。
「まぁこれくらいなら… 少なくても30歳になる前には全部釣りきれるか…」
しかし、その魚図鑑をよくみてみると
「あの、お父さん」
「なんだ」
「対象の中にリュウグウノツカイがいるんだけどこれって間違ってるよね?」
「・・・・・・」
「お父さん?」
「間違いではない」
「え!?」
いやいや、流石に深海に住む魚を釣るのは不可能だし、その中でもリュウグウノツカイなんかはたまに漂流してくる以外見たことがない。
そもそも全長が4〜6メートルもあるもある魚を1人で釣ること自体が不可能だ。
よくみるとリュウグウノツカイの他にもマカジキやホオジロザメ、さらには滅多に現れないというスタージオンなんかも書かれていた。
「これらは実際に私が1人で釣ったことのある魚だから、できないとは言わせないぞ」
悲報 父親が人外だった。
とても正気とは思えない回答を聞いてしばらくフリーズしていると、父親はさらに追撃を加えてきた。
「それと海斗、お前にはホテル水族館がオープンする前までに指定した魚を集め切ってもらう」
「はぁ!?」
水族館がオープンするのは来年の8月。子どもが夏休みに入り、釣り人だけではなく観光客も多く訪れるタイミングでオープンする予定になっている。
自分もこの試練を通じてもしかしたら自分のとった魚が展示されるかもとは思ってはいたが…
そもそも釣り上げることが困難な魚がいることに加え、期限まで1年と半分くらいしかないとなれば到底達成できないだろう。
「む、無理だよ!そんなことをやるなんて!」
「無理ではない。できないのであればこの島を継がせん」
「そんなぁ〜」
そんな無茶を言われるくらいなら、高校に進学していればよかったと本気で後悔をした。
楽な仕事をこなしつつ、暇な時間に釣りをして、将来的に島のオーナーになってウハウハな生活を送るつもりだったのに、まさかこんなことになるなんて…
俺はこれからこの困難な試練をたった1年半で達成しなければならなくなったのだ。
この釣り人たちのユメの島、魚のパラダイスと呼ばれる【ペナンカバン島】で
主人公 鮎川 海斗(あゆかわ かいと) 18歳
本作の主人公で、家の手伝いをしながらのんびり釣りを楽しんでいる。
前世では海なし県で育ったため釣りをしたことがなかったのだが、転生した先が島であり海が近いこともあり幼いころから釣りをしている。(いつか掘り下げるかもしれない)
将来は島のオーナーを引き継いでより贅沢な生活ができると思っていた。
初投稿&処女作です。
よろしくお願いします。