転生と狐と魔法少女   作:隣乃芝生

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沢山読んでいただき、恐悦至極にございます。

では、どうぞ。


幕間・キャスターの日常

「じゃあ行ってきます。」

「後はお願いね。キャスターちゃん。」

「はい、お任せ下さい。行ってらっしゃいませ。」

 

 仕事場、喫茶「翠屋」へと向かう高町夫妻を笑顔で見送り見えなくなったところで表情を引き締める。

 

「さて、お掃除にお洗濯午後からはお買い物。今日も頑張りますか。」

 

 洗濯籠から衣類を洗濯機に入れ、洗濯しているあいだに部屋の高いところから叩きを使って掃除を始める。

 

「さて、なのは様が小学校に入学・・・話の流れ通りなら確か初めの事件は小学生半ば頃、でしたかね?内容までは詳しく覚えてませんけど。直ぐではないはずですね。」

 

 掃除をしながら「今後」について考える。

 

「ん~私が『サーヴァント』としてなのは様の側に居るのは、この世界において完全にイレギュラーですから、流れが多少変わると考えて・・・まぁいいか。私は、なのは様のサポートをすればいいですね。」

 

 まぁ、手を出した野郎や女は私が潰すとしてと物騒な事を考えつつ拭き掃除と乾拭きを終えて、洗濯に取り掛かる。 

 

「一応、良妻資金の溜まり方も順調ですし、万が一に備えた人形ももう少しで仕上がりますし。一応の準備は良し。」

 

 ご隠居さんマジ感謝です。と商店街の顔役の一人にして、株や先物取引について教えてくれた恩人を思い浮かべる。今頃は最近戻ってきた息子さんとやらをからかいながら義理だという孫娘達と店にいるのだろう。

 

「さてと、次はなのは様のお部屋でお掃除とか色々・・・おや?」

 

 机に確か今日の課題だと、なのはが言っていた筈の国語のプリントを見付ける。手に取って暫く眺めた後、時間割を見る。

 

「間に合いますね。ついでにお買い物も済ましちゃいましょうか。」

 

 普段着から、割烹着を外して畳むと財布とエコバッグを持ちなのはのもとに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 私立聖祥大付属小学校の教室で、高町なのはは沈んでいた。昨日頑張って仕上げた課題をまさか忘れていたとは・・・

 

「なのは、落ち込み過ぎよ。」

「そうだよ。なのはちゃん元気出して。」

「うん。先生の所に行って来るの。」

 

 と、立ち上がりかけた所で携帯電話にメールが届いた。取り敢えずメールを開くと、

 

『from:キャスターさん

 御主人様♪今、忘れ物のプリントを持って学校に向かってます。だから安心して下さいね♪』

 

 そのまま顔を机に突っ伏すなのは。

 

「ど、どうしたのよ?」

「え~と、キャスターさんが持って来るんだ。」

 

 なのはからメールを見せられて、取り敢えず課題は安心じゃないかと二人は思うが、なのはは今度は別な意味で頭を悩ませていた。

 

「うん。『キャスターさんが』持って来るの。」

「?なら良いじゃない。」

「・・・絶対何かされるの・・・」

「「ああ、成る程。」」

 

 知り合って間もないが、高町家の家政婦がどんな人物かは大体理解している二人である。

 

「まぁ、大変よね。」

「というか、なのはちゃん。嫌じゃあ無いの?」

「別に嫌じゃ無いの。ただ恥ずかしいよぅ…」

「あ、嫌じゃないんだ。」

「普段どんなことされてんのよ?」

 

 机から顔を上げて普段のセクハラもといスキンシップの事を二人に話す。

 

「え~と、抱っこされたり、おんぶされたり。」

「その位ならまぁ、良いんじゃないかな?」

「抱き締められたり、頬擦りされたりとか、」

「可愛がってる…って訳・・・よね?」

「ご飯の時にあーんってしてきたり。」

「少なくとも家政婦の仕事じゃ無いわね。なのはも断りなさいよ。甘やかされてるわよ。」

「え~と後、お風呂入ったりとか」

「え!?」「お風呂!?」

 

 いきなり出てきた内容に思わず聞き返すアリサとすずか。周りのクラスメイトも思わず振り返った。

 

「朝のランニングの後に入ったりするんだ。」

「あの人と入ってるの!?何やってんのよ!?」

「え?色々(髪で)遊ばれたりしてるよ?後、私もお返しに(尻尾を)モフモフしたり…」

「な、なのはちゃん大人だね…(モフモフって胸・・・だよね。あの人凄かったし・・・)」

「えっ?」

「もう、付き合ってるで良いじゃない・・・」

「えっ!?付き合っては無いの!!」

 

 

 顔を真っ赤にした二人。周りのクラスメイト達も顔を赤くしたり、キャアキャアと黄色い声が上がったり、何かノートに書き記したりと大騒ぎである。どうにか、友人たちの誤解を解こうとなのはが、口を開きかけたそこに…

 

 

「お待たせしましたなのは様♪貴女の良妻がデリバリーにやってきました…って何ですかこの雰囲気?」

 

 

 かくしてなのはは項垂れ、教室は黄色い歓声に包まれるのであった。なおこの日以降、なのはは忘れ物をしないようになったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで何故か、なのは様から怒られてしまいました。解せぬ。あ、シュークリーム下さい。」

「うん。なのはが恥ずかしかったからだと思うけど流石にその発言は不味かったかしら?」

 

 商店街で買い物を済ませた後、翠屋に立ち寄りシュークリームを買う。どうやらシュークリームでなのはの機嫌をとるつもりのようだ。

 珍しく店に来たキャスターを見て、桃子が何があったのか聞くと娘の学校に忘れ物を届けに行き、案の定やらかしたというわけである。まあタイミングが悪かったというのもあるが。

 

「でも、流石にお嫁さん発言はまだ早いんじゃないかしら?」

「そうでしょうか?少なくとも数万人単位で求婚者がいそうですから。」

「あら、なのはそんなにモテているの?」

「ええモチロン。正妻は私ですが。」

 

 大きなお友達にという言葉は、出されたコーヒーと一緒に流し込み。可愛いですからねと付け加えておく。というかまだ早いでいいのかという疑問は二人の後ろで話を聞いている士郎しか浮かべていないようだ。

 

「取り敢えず、なのは様に機嫌を直していただく為に色々用意したんですよ。」

「シュークリームの他にプレゼント?」

 

 言いながらガサゴソ紙袋を漁るキャスター。

 

「ええ、商店街のレンタルビデオショップで借りてきたDVD 『ま○か☆マ○カ』と、この『是非乃枕』で御主人様と親睦を・・・」

「・・・キャスターちゃん?ちょっと教育的指導が必要かしら?」

「え、ちょっと桃子さん?目が怖いんですが?」

「なのはにこのDVDと枕は早すぎるわ。」

「魔力の多いマスターが、いつ白い獣や淫獣やステッキに、『僕と契約してよ。』的な詐欺に合うとも限らないじゃないですか!?だから、これで学んでいただきつつ、怖がった御主人様を慰めつつ、あわよくば既成事実をとかは一切思って無いわけでして・・・あ、耳は耳は引っ張らないで下さいませ!!」

「R-18はダメよ。取り敢えず、裏に行きましょうか。」

 

 この後、裏で桃子とお話をしたキャスターはふらつきながら高町家に戻るのであった。

 なお、高町夫妻に枕は接収された事を追記しておく。

 

 

 

 洗濯物にアイロンをかけて箪笥に仕舞い込み、夕飯の支度を済ませると耳をピンと立たせる。尻尾と耳を消し、そのままヤカンでお湯を沸かし、お茶の準備をする。どうやらカップの用意は三つのようだ。

 

「ただいまキャスターさん。」

「お帰りなさいませなのは様♪お待ちしておりました。今日は、申し訳ございませんでした。」

「私もご免なさい。折角持ってきてくれたのに。」

「おじゃまするわね。そして、なのは!あれだけ大騒ぎになったのにそれは甘いわよ!?」

「あはは、キャスターさん。おじゃまします。」

 

 リビングに入って来た、なのはとアリサとすずかを出迎えるキャスター。アリサの剣幕を流しつつ三人から荷物をささっと預かっていく。

 

「あら、アリサ様とすずか様もいらっしゃいませ。ささ、お茶の支度が出来ておりますのでまず手を洗いましょうか。」

「ちょっと、話聞きなさいよ!!あの後大変だったんだからね!!」

「うん。皆興味深々で聞いてきたし、噂を聞いてきた何か危ない雰囲気の先輩たちが、なのはちゃんを凄い目で見てたしね。」

「ああ、何処にでも聖母様に見られてるような人とか居ますからね。」

「妹にならないかって沢山聞かれたの。あ、でも白野ちゃんが頑張れってくれた飴は美味しかったな。」

「思いっきり同情されてんじゃないのよ。」

 

 キャスターは三つ分のティーカップに自分の分のカップを加える。どうやらお姫様達とのお茶会には自分も参加しなければならないようだ。主にその先輩方について詳しく。

 

 賑やかに洗面所から戻って来た三人娘とお茶をすべく、今日も彼女はキャスターとしての日常を楽しく過ごすのであった。

 

 


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