転生と狐と魔法少女   作:隣乃芝生

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お待たせして申し訳ございません。忙殺されてました。

それではよろしければどうぞ。


パティシエと銀髪幼女

 香ばしい香りのタルト生地に翠屋自慢のカスタードクリームを絞り、美しくカッティングされた苺やベリーといった果物を載せていく。載せる苺もパティシェ自らが厳選し、良く熟れており、しっかりと磨かれている辺りにパティシェ――――高町桃子の基本を決して疎かにしない、プロの心意気が見て取れる。

 

「流石だな。いつ見ても美しい。」

「まぁ♪ありがとうあなた。」

 

 海鳴商店街一の喫茶『翠屋』。最近では県外からも足を運ぶ客も多くなり、一層忙しくなっている。

 そうした多忙な中でも、しっかりとしたスタッフの接客やサービス。店のクリンリネスの徹底。お客様に出す一級のスイーツや珈琲等の品質もさることながら、やはり経営する高町夫妻の人柄も人気店たる理由の一つであろう。

 本日の営業も終了し、手伝っていた恭也や美由紀、新人アルバイトも既に帰っており、閉店後の厨房でフルーツタルトを作っていた。

 

「特に最近は腕が上がったかな?」

「うふふ…恭也と忍ちゃんに貰ったナイフが凄く私にピッタリでね。思ったとおりに果物が切れるの。」

「フム…洋物の刃物には疎いが…良い出来のナイフだな。組織の断面が潰れていない。」

「凄いわよね。」

 

 勿論使い手である、桃子の技量に依るところも大きいのだが、それを乗せる事が出来る道具というのも貴重である。

 

「それにしても…忍ちゃん大変みたいね。」

「ああ、何でもすずかちゃんが熱を出して倒れた上に、家の事が忙しいらしいからな。」

「暫くは無理ね。ちゃんと休んでもらわないと…代わりにカレンちゃんが来てくれてよかったわ。」

「ああ、楽しんで仕事をしてくれているみたいだしな。」

 

 聖祥大附属高等学校の新人アルバイトだが、物覚えも良く、日々愉しんで仕事をしてくれている銀髪の少女への夫妻の評価は高い。

 因みに忍は、先日夜中に起きた海鳴市上空での謎の大轟音と未確認飛行物体の目撃情報の処理に追われていた。今や海鳴市は、ゴシップ誌の記者や研究者に溢れ、町はSFブームとなっている。

 

「商店街の会長さんからUFOスイーツを作ってくれないかって聞かれたよ。」

「う~ん考えておくわね。」

 

 苦笑しながら出来上がったタルトを箱に詰めて、片付けと帰り支度を始める。

 

「そのタルトはキャスターさんにかい?」

「ええ、普段こうして仕事に集中出来るのはキャスターちゃんが、家の事全部してくれてるからだしお礼にと思って。」

「そうだな。」

 

 今も家で家事全般をこなす狐耳の家政婦を思い浮かべる。毎日高町家の家事をそつなくこなし、商店街の店主達からも評判の家政婦(主に男衆)である。自分の主人であるなのはに対してだけは非常に残念ではあるが、彼女のお陰でかなり暮らしも楽になっている。

 

「・・・なぁ桃子…」

「どうしたの?あなた…」

 

 桃子を後ろからそっと抱き締め士郎が何か囁く。

 

「桃子…」

「士郎さん…」

 

 閉店後の店内で二人の男女の影が重なり――

 

 

 

 ――――こどもが欲しいの?――――

 

「「!?」」

 

 突如聞こえた子供の声に慌てて離れる。

 

「何だ?」

「何かしら?」

 

 周りを見回すが、誰の姿も見えない。

 

 ――――こどもが欲しい?――――

 

 再び聞こえたその声に驚くが、桃子はその声に何処か、悲しさを感じてしまった。

 

「あなたは誰?」

 

 ――――私たちは誰でもない――――

 

 ――――ただ、かえりたい。かえりたいの――

 

 ――――おかあさんにかえりたいの――――

 

 悲哀の籠った声に思わず手を差し出す。

 

「ええと、確かに子供が欲しいけど…」

「桃子!?」

 

――わかったよ。契約しようおかあさん(マスター)――

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっのはさま~♪」

「うにゃ~抱き締めないで欲しいの。尻尾のお手入れしてるんだから。」

「んふふ~良いじゃないですか♪」

 

 一方、高町家では、狐耳の家政婦ことキャスターが膝になのはを乗せ、膝の上ではなのはが櫛を持ち、キャスターのモフモフとした尻尾を一生懸命鋤いていた。

 

「恭ちゃん。このブラックコーヒー物凄く甘い気がする。何も入れてないのに…」

「俺もだ・・・キャスター、何だか今日は随分積極的だな。」

「いや~何だか最近とことん出番が無かった気が致しまして…ナノハミン補給中です。」

「?」

「具体的には~豆腐メンタルで計画性のない作者のせいで?」

「何の話?」

「さて?ワタクシもそんな気がしただけで。という訳でムギュー」

「うにゃ~だからやめて~。」

 

 恭也はなのはに押し付けてられているキャスターの双丘から目を反らし部屋の時計を見る。

 

「二人とも遅いな…」

「何かあったのかな?」

 

 膝の上のなのはをハグしながらキャスターが口を開く。

 

「多分、近々なのは様にご兄弟が増えるのではと。」

「「ぶっ!?」」

「本当!?」

「ええ、だって恭也さん達が帰ってきてからこんなにも時間がたって…きっと閉店後の店内で二人でくんずほぐれつ・・・痛い!!恭也さん美由希さん何するんですか!?」

「小学校低学年に何て事吹き込んでんだ淫乱狐!?」

「変な想像しちゃったじゃない!?」

 

 いきなり竹刀での突っ込みに抗議するキャスターと顔を真っ赤にした恭也と美由希が喧嘩する中、一人自分の弟か妹を想像するなのは。

 

「私がお姉ちゃん…えへへ♪」

「いきなり竹刀とか!!うう・・・父上(ナギ)にも母上(ナミ)にもぶたれたことないのに!」

「あんたといいカレンといい・・・もう少し慎みとか持ってくれ!頼むから!」

「確かにあのバカップルに子供が増えないのが商店街七不思議になってるけど!!なってるけども!!」

 

 なのはを放ってギャンギャンと騒ぐ三人によりカオスになった所に

 

「・・・ただいま。」

「・・・ただいま。キャスターちゃん居るかしら?」

「おや、おかえりなさいませ♪お楽しみでした・・・か?」

 

 帰ってきた高町夫妻に全員が顔を向け、

 

「・・・おかあさん(マスター)、おとうさん。この人達だれ?」

 

 側に現れた少女―――乱雑に纏められた銀髪、右頬と左目の傷跡、アイスブルーの目の少女。しかし、その言葉と姿に全員が言葉を失った。

 

「おかあさん…って」

「父さんこの子は?」

「あ、ああ実は…」

「ね、ねぇスカートは?」

「?ひつよう?」

「必須なの!!」

 

 なのはが、指摘した通り上に黒い革製の服は着ているが、スカートが穿かれていない。代わりに複数の刃物の鞘を吊り下げている。

 

「・・・桃子さん。どういう事ですか?」

 

 驚ながら問うキャスターに実は…と困ったような笑みを浮かべて桃子は応える。

 

「アサシンのサーヴァントと契約しちゃったの。」

 

「「「「は?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で今日からキャスターちゃんと同じく我が家の一員となるアサシンちゃんよ。」

「・・・よろしく。」

「よろしくじゃねーですよ銀髪幼女。あーもーマスターのお母様が仕事から帰って来たと思ったら、サーヴァントと契約して帰ってきたんだが…と。何を言っているのか分からねーと思うが私も分からねー。」

「キャスターさん落ち着いて…」

 

 改めて全員が席について話し合う。

 

「しかし、何でまた母さんがサーヴァントを?」

「何でもアサシンちゃんが言うには、恭也が桃子にくれたナイフが聖遺物だったらしい。」

「嘘ぉ…」

「まさか…忍の奴知ってたのか?」

「忍さんェ…」

 

 まさかの二体目の召喚に頭を抱える士郎、恭也、美由希、キャスターを尻目に、

 

「アサシンちゃんタルト美味しい?」

「うん♪おかあさん(マスター)。とても美味しい。」

「むぅ…」

 

 ご機嫌斜めになったなのはと一緒にタルトをフォークでつつく銀髪のアサシンとそれを見守る桃子。大物である。

 

(・・・ワタクシのせいですねー。本来この世界に居ない筈のサーヴァントという存在を呼び出す仕組みを作られたが為に・・・ワタクシをなのは様が呼び出した時と同じく、聖遺物と魔力、そしてその英雄が応える願いがあれば、サーヴァントとして呼び出せる…ってことですか。しかし、よりにもよって桃子さんが…)

 

 と、目の前――桃子の横でフルーツタルトに美味しそうにかじりついている銀髪の幼女に目を向ける。

 

(『アサシン』ですか。)

 

 暗殺者のサーヴァント、アサシン。本来なら山の翁ハサンを指す言葉だが、卓越した殺しの技量や宝具の域まで達した武術を持つ英雄もこのクラスに該当する事がある。だが…この少女はそれとは違う――キャスターの目をもってすればこの少女がそんな者ではない事はよくわかった。

 

 

「そもそも、何で魔力が殆ど無い桃子さんと契約したんですかアサシン?」

「もぐもぐ・・・?・・・ねぇキャスター、そのタルト食べないの?」

「他人の話を聞きやがれってんですよ幼女!?」

「むっ。ちゃーんと聞いてるもん。だっておかあさん(マスター)がわたしたちの触媒持ってたし、やさしそうだったもん。それに魔力なんて食べればいいじゃない。」

「ちょっと、貴女まさか魂喰らいするつもりだったんですか?」

「うんっ。」

 

 こくんと可愛らしく頷くアサシンを見るキャスターの表情が強ばったのを見て、恭也が声をかける。

 

「キャスター、魂喰らいってなんだ?」

「私たちは霊体だから、基本的にマスターからの魔力補給で現界してます。他にも霊脈を使ったりすることで魔力補給が出来るんですが、一番手っ取り早く魔力を補給して、自身を強化する方法が魂喰らいなんです。」

「何だか嫌な予感がするんだけど。」

「早い話が他人を殺して、魂や心臓といった霊核を直接補食するんです。まぁ真っ当な英霊ならマスターからの命令が無ければやりませんよ。真っ当な英霊なら。」

 

 顔を青くする高町家の面々を見ながら、キャスターは自分を睨むアサシンに問い掛ける。

 

「貴女、正体は暗殺者ですらない殺人鬼。それも数万を越える子供の怨霊の集合体ですね?」

「うん。でもそれはあなたも同じでしょ?わたしたちと同じか、それ以上に穢れた反英雄のサーヴァント。」

 

 嗤いながらアサシンは応える。

 

「だから真名を教えてないんでしょ?さっきから皆にクラス名でしか呼ばれてないもん。ねぇ。嫌われたくないから隠してるんでしょ?」

 

 一気にリビングの空気が張り詰めた物に変わる。

 

「ちょ、二人とも!?」

「キ、キャスターさん?」

「なのは、下がりなさい・・・恭也!!」

「ああ。さぁ母さんも早く・・・母さん?」

 

 傍観していた高町家も避難を開始しようとする。

 

「・・・言ってくれるじゃないですか、纏めて消えたいですか?悪霊の塊風情が。」

「・・・そっちこそ、毛皮を剥いでおかあさん(マスター)のマフラーに仕立ててあげる。安物だけど。」

 

 互いに立ち上がり得物を構える。キャスターの周りには鏡が浮かび手には呪符。アサシンは自身の腰に巻いた六本の鞘からナイフを二本、両手に構える。あわや高町家のリビングで大惨事となりかけ…

 

 

 

 

 

 

「二人とも?」

 

 

 

 

 

 その声に二人とも・・・いや全員がビクリ、と身体を震わせる。ギギギ…と油が切れた機械のように首を向けると

 

 

「座りましょ?」

 

 

 にこやかに―――けれど凄まじいプレッシャーを纏いながら、高町桃子がそこにいた。

 

「お、おかあさん(マスター)?」

「桃子さん・・・で、ですが・・・」

 

 若干プレッシャーに身を震わせながら桃子に答えるサーヴァント二体。

 

「座りましょ?」

 

「はひ・・・」

「うう・・・」

 

 顔が青ざめたキャスターと涙目のアサシンが、自然と自分の前に並んで正座したのを見て桃子は頷くと、

 

「それじゃあ」

 

 にこやかに―――綺麗な微笑みを浮かべて

 

 

 

 

「私とお話ししましょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、その頃の月村邸

 

「つっかれたわ~」

「お疲れ様です忍。」

「あーありがとうリニス。」

 

 月村邸忍の自室にて月村忍は、ようやっと仕事を終わらせる事が出来た。

 

「すみません。私が初めから結界を張っていたらここまでの騒ぎには…」

「あー大丈夫、大丈夫。すずかを守ってくれた結果でしょ?それに途中からでも張ってくれたから助かったわ。」

 

 机の上の新聞や雑誌の一面には、『真夜中の怪音!?海鳴市に現れた謎の飛行物体!!』や『○ー特派員は見た!謎の幽霊船団海鳴に現れる!!』『海鳴市にUFOの秘密基地か?』といったような普段なら胡散臭いで済まされるような記事で飾られていた。

 

「とにかく、コネを使い回って何とかこの騒ぎも近日中には収まると思うわ。」

「御苦労様でした。」

「それよりすずかは大丈夫なのかしら?」

 

 寒さと急激な魔力消費で倒れて熱を出したすずかは、暫く寝込んでいた。今はメイドのノエルとファリンが様子を見てくれていた。

 

「ええ、特に身体に異常は見られませんでした。」

「よかったわ…それにしても魔法かぁ…」

「私もサーヴァントという存在に驚きました。」

 

 そんな談笑をしていると。

 

「う~ん。やっぱり暫くは現界が限度だね。戦闘は難しいねこりゃ。」

「あれだけ騒ぎを起こしたんだから暫くは大人しくしてなさいよ!」

 

 本人曰く魔力の回復と言うことで、酒を飲み続けていたライダーが顔を出した。

 

「湿気た花火なんざ誰も喜ばないだろ?アタシは宵越しの弾は持たない主義なんだからさ。」

「だからってすずかの魔力を遣いすぎでは?」

「アレは相手がかなりの手練れだったからさ。もしかしたら生き延びてるかもねぇ?」

「あの砲撃の雨からですか?」

 

 改めて自分達が、相手にした二人組に警戒心を募らせるリニスと忍。そんな二人の肩を抱いてライダーは続ける。

 

「ま、生きてたとしても使い物になるかどうかは別だけどさ。それよりスズカは当分は体力作りと魔力量のアップをしなきゃだね。このままじゃきつくてね。魔力補給がしたくなるよ。」

「魔力補給?それはどのように?」

 

 何だか嫌な予感がしてリニスはライダーに尋ねた。

 

「例えば、アタシら霊体だから魂を補食したり…」

「「大却下です!!」」

「後は体液に含まれる魔力の摂取かねぇ…」

「・・・体液?」

 

 ちろりと紅い唇を舌で舐めて、二人を見るライダーの目は既に捕食者の目をしていた。嫌な予感がますます強くなった二人は逃げようとするが肩を抱いた手が離れない。

 

「何だいつれないねぇ…夜は始まったばかりじゃないか?いいじゃないか、食い物も男も女も殺し合いも真っ向勝負が一番気持ちいいんだからさ!」

「ちょ、ちょっと待ちなさい!?私には恭也が・・・!?」

「大丈夫。アタシにも嫁がいるから。(史実です。)」

「嫁!?え…もしかして男も女もってそういう…え!?」

 

 混乱してきた二人を抱き締めたまま、忍のベッドに座らせながらライダーは二人の耳元に囁いた。

 

「アタシの名前を覚えていきな。寄港地総ての女を落とした女ってな…」

「そんな二つ名知りたくないですよ!?プレシア!アルフ!フェイト!助けて下さい――――!!」

「イャ―――!!恭也―――!!」

「お?良いねぇ…纏めて派手にやろうじゃないか!」

「「やっぱり来ちゃダメ―――!!」」

 

 万事休すかと二人で抱き合い、ベッドの上で目の前の悪魔を見て震える二人に

 

「お姉ちゃん達騒がしいよ?何して・・・」

 

 果たして救いの手は、パジャマ姿で目を擦りながら現れ、たっぷり十秒ほど固まり…

 

「・・・ごゆるりと・・・」

 

 顔を真っ赤にして扉を閉めた。

 

「違うの!!誤解よすずか―――!!」

「待って下さいすずか―――!!」

「あっはっは♪初だねぇ三人とも。」

 

 すずかを追いかける二人を肴に、ベッドに腰掛けたライダーはワインの瓶を煽るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「?誰かに呼ばれたような?」

「母さんも?」

「あら?フェイトも?」

「二人もかい?アタシもだよ。」

「「「???」」」

 

 

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