Side キャスター
『では良き来世を』
その言葉を聞いた直後の特典のインストールが終わり、私は気付くと何も無い空間に佇んでいた。
「もしかすると、ここは仮の英雄の座なのでしょうか?」
と、すると転生もとい召喚まで今暫くの時間があるようです。
「なら、今の内に色々と確認しておきましょうか。」
まず、自分の姿を確認してみる。
「うわ、本当にキャスターそのままって感じですねぇ。」
露出が多いその礼装だが、余り違和感は感じなくなっていた。
「まぁ特典で『彼女』と融合したようなものですからねぇ。私は貴女、貴女は私ってやつですかね。」
さて他にも色々見ませんと。えーとステータスは・・・
クラス:キャスター
真名:※※※※
属性:中庸・悪
筋力:E
耐久:E
敏捷:B
魔力:A
幸運:D→A(特典により強化)
宝具:B
※なお、契約者や自身の鍛練によって変化があります。
クラス別能力
陣地作製:C
保有スキル
呪術:EX
変化:A
追加特典
黄金律:A
人形作製:A
・・・まぁわかってましたけどね。見事にピーキーですねぇ。スキルはとても強力なんですから、やはり支援に回るといたしましょう。まだ見ぬ御主人様・・・紙装甲ですみません・・・
宝具も効果は原作と違い、仲間にも影響を与えれるようですからこれでもう『つかえねぇ』呼ばわりも卒業です。
さて、あとは軽く技の練習でもしながら身体を動かしておきますか。
―――アレ?転生先ってどこなんでしょうか?
キャスターside out
高町家の父、高町士郎は凄腕の剣術を遣う一流のボディーガードの仕事をしていた。
その仕事の都合上、打ち倒してきた悪漢無頼の輩は数え切れない程である。
今回こそ、とある巨大な闇組織との戦いで深手をおい昏睡しているが、その卓越した手腕で時に依頼人を家族を狙う不届きな輩から守ってきたのである。
さて、そんな高町家であるが現在も高町士郎の意識は戻らず日々忙しい毎日を過ごしていた。先日の一件以来、お気に入りとなった髪飾りの鈴を鳴らしながら彼女―高町なのはも変わらず、公園や家で時間を過ごしていた。
そして、そんな状況を見逃さない者達がいた。高町家の剣士達により敗北し密かに復讐を誓っていた者達である。
はっきりと言ってしまえば、三下もいいところの小悪党である彼らであるが、高町家により受けた屈辱を晴らす機会を待ち望んでいた。
そんな中で高町士郎は病院で入院。高町恭也もその妹、高町美由希も健在では有るものの多忙により疲れがでているという絶好の機会を得た彼らだが、正面から挑めば半ば人外に片足を突っ込んだ高速の剣術により前回の二の舞になるのはわかりきっていた。
だから搦め手を使うことにしたことも――その対象が家族皆から愛されながらも一人、無防備に公園の遊具で遊んでいた末の妹が狙われたことも、或いは当然の流れであったのかもしれない。
Side なのは
どうしよう。
「高町士郎の末の娘は預かった。返して欲しければ――」
「―――――――!」
公園であそんでいたらしらないこわい人たちがきて、いきなりもちあげられたとおもったら、しらないくるまにのせられて・・・そのままわたしは古いけど大きな倉庫につれてこられました。
「おっと警察には連絡するなよ。大事な大事な妹を傷物にされたくなければな。」
「―――!―――――!」
しらないおじさんがでんわをしている。でんわの向こうから、よくきこえないけどおにいちゃんのおこった こえがここまできこえてきた。
「さて、お前達もうすぐ高町恭也達がここに来る。」
「いよいよッスね。」
どうしよう。おにいちゃんもおねえちゃんもきっとたすけにきてくれるの。だけどきっとケガしちゃう。
わたしのせいだ。わたしがちゃんといい子でいなかったから、はやくおうちにかえらなかったから――
「その前にこの娘には、残念な事になってもらう。」
!―――やだ――――!まわりのこわいおじさんたちが近づいてくる・・・いやだ!いやだ!やだ!やだ!
「ふん。精々我々の退屈しのぎになるがいい。」
―――――たすけて!
だけどまわりはこわい人に囲まれていて
きっとこの建物のまわりはだれもいなくて
でも逃げなくちゃ!じゃないときっとこわいめに合わされる!―――そんなのはいやだ!!
おとうさんにあいたい!おかあさんにあいたい!
おにいちゃんにあいたい!おねえちゃんにあいたい!
また、かぞくみんなでいっしょにいたい!
―――だから、だから―――
「――だれか―――たすけて!!」
――side キャスター
「―――!?―――聞こえた!!」
―――声が聞こえる
―――助けを求める声が
―――必死に「生きたい」と助けを求める呼び声が
この座についてどれ程時間が経ったのか。
そんな私に初めて届いた必死に助けを求める声。
まだ幼いながらにも必死に生きようとする声が。
どこの誰かは存じ上げませんが
「お待ちしておりました!御主人様!!」
・・・そのまえに、私の御主人様に手を出すような輩はコロコロしちゃいましょう♪
Side Out
「―――ッいたい!?」
わたしがたすけを求める声をあげたあと急に左の手の甲にいたみがはしりました。
「?」
左手にはさっきまでなかったはずのキレイなもようがうかんでいました。 そして――
『その魂、ちょお~~~~~っと待った!暫く、暫くぅ!』
「なんだ!だれだ!」
「どこに居やがる!」
そんな声がきこえてきたのです。
『何処の誰とかぜーんぜん存じませんが、その慟哭、その頑張り。他の神さまが聞き逃しても私の耳にピンときました!』
『宇迦之御霊神もご照覧あれ!この人を冥府に落とすのはまだ早すぎ。』
『だってこのイケメン魂、きっと素敵な人ですから!ちょっと私に下さいな♪』
とたんに目の前に教会のステンドグラスの様なものが浮かび上がりました。
「な!?何が起きてやがる!?」
すると突然ステンドグラスが砕け散ると同時に風が倉庫に吹き荒れたのです。
「にゃあああああ!」
思わず目を閉じると同時に倉庫のあちらこちらから悲鳴が聞こえました。
「うわあああああ!?」
「なんだてめえは・・・ぐあっ!」
「ヒイッ!?来るなぁ!」
風の音に紛れて何かがぶつかったり、倒れたり壊れたりする音が暫く続くとあのこわいおじさんたちの声が聞こえなくなりました。
やがて風が止んだのを感じて、目を開けて周りを見るとそこには、
めちゃくちゃになった倉庫
あちらこちらに倒れたこわいおじさんたち
そして――こちらに向かって佇む女の人。
きっとわたしは、この光景を生涯忘れないと思う。
倉庫の割れた窓から射し込む月明かりに照らされた、蒼い着物のような物を身に付けて、まるで狐のような金色の耳と尻尾を持つ不思議な女の人。
まるで絵本のお話みたいに現れてわたしを助けに来てくれたわたしのヒーロー。
ただ、佇んでいるだけなのにまだ子どものわたしでも目の前にいる女の人の中で圧倒的なまでの力が渦巻いているのを嫌でも感じ取れました。
そんな時間が止まってしまったかのような世界の中で
やがて、女の人は口を開き―――
「謂れはなくとも即参上、軒轅陵墓から、良妻狐のデリバリーにやってきました!!」
・・・・・・・・・・・・
「・・・アレ?もしかしてドン引きされてます?」
・・・・・・・・・・・・
「えーと、パスが繋がってますし、貴女が私の御主人様ですか?」
・・・・・・・・・・・・
「・・・だ・・・」
「だ?」
「台無しなの――――――!!!!」
と、思わず叫んだ私は悪くないと思うの。
うん。色々と思うところはあるのだけれど。
これがこれから先ずっと
私、高町なのはと一緒にいてくれた私の英雄。
キャスターとの出会いなのでした。
Side out なのは
Side キャスター
呼び出されたと同時にパスがつながった御主人様と思わしき少女に群がる輩を取り敢えず打ち倒し!
いざ御主人様にご挨拶をと思い改めてそのお顔を見て、この世界が何処なのかを知りました。
そのお顔と、そのお声・・・つまりこの世界は
『魔法少女リリカルなのは』ですね。わかります。
目の前で叫ぶ小さな御主人を見ながらこれからの展開に密かに頭を抱えるのであった。
Side out