クリスマス。
それは日本では子供達が最も楽しみにしている日。
夜に眠って目が覚めたら、枕元にある不思議なプレゼントに歓喜するのはどの子供達でも同じである。
それは、不思議な超常存在二体と生活する高町家でも例外では無い。
「ふあ・・・」
昨夜は家族や友人達とクリスマスパーティーを行ったり、プレゼント交換をしたりと楽しい夜を過ごした少女、高町なのはもこの日は起きて目を擦りながら枕元を確認する。
「やった!サンタさんからのプレゼントなの♪」
枕元には、二つのラッピングされた箱。早速リボンを解いて中身を確認する。
「綺麗・・・」
一つ目の箱には、女の子らしいアクセサリーが入っており、早速合わせてみたりとなのははご機嫌である。
「もう一つは・・・・・・ん?」
もう一つの箱に入っていたのは見事な人形であった。細かい部分まで造り込まれており、表情もパーツにより付け替えることが出来る。また様々なポージングをとることが可能なアクションフィギュアと呼ばれる逸品である。
問題はこのアクションフィギュア。どっかで見たようなキツネ耳と尻尾に青い派手な着物姿であった。
「なんでキャスターさんのフィギュア!?」
早朝から突っ込みを入れる羽目になったなのはは、リビングに居るであろうキャスターを問い質すべく扉を開けた。・・・キチンと机の上に、自分が格好いいと思ったポーズで飾った辺り気に入ってはいるようだが。
「・・・よいしょ・・・よいしょ・・・あ、おねーちゃん。おはよー。」
「ジルちゃん。お早うなの。ジルちゃんはサンタさんに何を貰ったの?」
自室の外に偶然いたジルに挨拶した所で、妹分には何がプレゼントされたのか気になったなのはは聞いてみることにした。
「ふふん。私たちはぬいぐるみ貰ったの。」
「わー。大っきなミッ・・・むぐっ!?」
ジルが引き摺っていた袋から出したネズミのぬいぐるみを言葉にしようとした瞬間、ジルに口を閉じられた。
「むぐっむむむ!?」
「おねーちゃん。その名前は抑止力が動くから言っちゃあダメ。わかった?」
コクコクと首を縦に振って了解の意志を伝えると、ジルは口から手を離した。
“ハハッ”
『何!?今何か物凄い悪寒が!?』
・・・家の外から甲高い笑い声が聞こえた気がしたが、リビングからキャスターのやたら慌てたような声に掻き消された。
「プハっ・・・ところでジルちゃん。さっきから気になってたんだけど・・・その大っきな袋何?」
白く何やら大きな物が入った様な袋を、自室から引き摺っていたジルは頬を膨らませた。
「あのね。昨日サンタさん来るかなーって待ち構えてたの。」
「そうなんだ!私も途中まで起きてたけど寝ちゃったの。」
「うん。私たちも途中で寝ちゃったけど起きたらもう枕元にプレゼントがあったの・・・夜なら先手取れるから捕まえようと思ったのに・・・」
頬を膨らまして悔しがっている辺り、本気で捕まえる気だったらしい。
「あはは・・・でもジルちゃんもプレゼント貰えたからよか『――!?―――!?』・・・あれ?」
なのはの耳に、ジルが引き摺っていた袋から何やら音が聞こえた。後何かもぞもぞと動いている。
「あ、あのねジルちゃん?何コレ?」
「それでね?また寝ようとしたら私たちの部屋の扉が開いて不審者が入って来たの。『コレで最後・・・』とか言いながら袋から何か出そうとしたからつかまえて縛って袋に入れといたの。」
そう言いながらジルが開けた袋の中には
「ん―――!ん―――――!」
黒っぽいサンタ服を着た白い髪の小さな女の子が、両手両足を縛り上げられ、猿轡をされながら涙目で助けを求めていた。
「にやぁあああああああああああああああ!?」
早朝から街になのはの悲鳴が響き渡った。
騒ぎを聞きつけて現れた桃子に助けられた少女が懐き、毎年クリスマス頃になると高町家にケーキを食べに現れるようになり、とある事件に巻き込まれる事になるが・・・それはまた別なお話。