転生と狐と魔法少女   作:隣乃芝生

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お待たせしました。
早い物でもう一年経つのですね・・・
・・・未だにフェイトが出てないって・・・
未だ未だ未熟ですが、宜しくお願い致します。

それでは、どうぞ。


サッカーと嫉妬と痴話喧嘩

 ジュエルシードの探索が始まって数日経った休日、絶好のお出かけ日和な天気の中、高町士郎がオーナーを務めるサッカーチーム「翠屋JFC」の試合日である。

 それを応援しに来たアリサ、すずかであるが、

 

「・・・」

「あー、もう落ち込んでんじゃ無いわよなのは。」

「そうだよ元気出して。」

「キュー。」

 

 隣でどんよりと落ち込んでいるなのはを励ましていた。肩にはフェレットことユーノが乗り慰めている。

 

「だって・・・」

「もう済んだことなんだし、仕方ないでしょ?」

「でも・・・」

「うん。私達も気にしてないよ。」

「キューキュー」

 

 肩をポンポンと叩いて慰めるすずか。

 

「キャスターさんにお姫様だっこされて学校送迎されてたことなんて。」

「そうよ、今更気にしないわよ。」

「は、恥ずかしいんだよ!」

 

 神社での戦闘後、しっかりとぼろ負けしたなのはを待っていた罰ゲーム『お姫様だっこで学校送迎』という羞恥プレイもかくやな事を行われたなのはである。

 お迎えに至っては、喜色満面といった感じで迎えに来たキャスターの、

 

『お夕飯の材料をついうっかり買い忘れていました♪』

 

 という一言により、よりにもよって人が多い夕方の商店街をキャスターに抱き抱えられたまま回るという事まで行われた。

 この羞恥を拭うべくレイジングハートと訓練し、再度キャスターに模擬戦を行うも再び敗北。再度お姫様だっこを繰り返した結果・・・

 

「そりゃまぁ学校と商店街で噂にもなるわね。」

「でも今更じゃ無いのかなぁ?あ、でもほら雑誌の『街で見かけたベストカップル』のコーナーに写真付きで載ってたのはすごいよね!」

「うにゃああああああああああ!?」

「キュー(なのは・・・ご愁傷様・・・)」

 

 のんきに話し合う二人の横でごろごろと芝生の上で頭を抱えて転がるなのは。因みにジルも模擬戦に参加してなのはに勝利。求めたのは『私たちの格好をする。』であり、高町家にて桃子が『偶然偶々お店の子用にデザインしていた可愛い服』と共になのはとジルの撮影会が開かれたのは余談である。(因みに、家族会議によりスカートの着用が求められたが、『おねーちゃんの変身だって、あんまり変わらない』と拒否された。)

 因みに本日のジルは、

 

「偶にはお母さん(マスター)と一緒が良い。」

 

と、翠屋でキャスターと共にこの後の食事会のお手伝い(メイド服着用)をしている。

 

「でも、嫌じゃあ無いんでしょ?」

「嫌じゃ無くても、恥ずかしい物は恥ずかしいの!」

(複雑だなぁ・・・)

 

 顔が真っ赤になっているなのはの様子に嘆息するアリサとすずか。流石にこれ以上弄るのはと話を変えた。

 

「まぁ、今日は折角なんだし気晴らししましょうよ。」

「・・・うん。全部忘れるの・・・」

「(なのはちゃん苦労してるなぁ)えっと、相手のチームは・・・え?」

「うわ、何あれ?金ピカのユニフォームって何よ?」

 

 翠屋JFCの本日の対戦相手が、丁度到着したのをみれば、やたらと派手なバスから遠目にもキラキラした金色のユニフォームを着た小学生達が降りてきた。

 

「えっと強豪チームの『ゴールデンJFC』だって。」

「何その名前?あ、士郎さんと話してるのが監督かな?」

 

 アリサが見た先には、士郎と話をする派手な男がいた。顔は遠くてよく見えないが、金髪で派手な豹柄のスーツを着た如何にも夜の街に居そうな男が、何の冗談か休日の昼下がりのグラウンドで高笑いをしながら挨拶をしている。

 

「変なの。」

「格好が何かホストみたいね。」

「えーっと、各地からスカウトされてきた精鋭を、一級の設備や備品が整えられた環境で、効果的かつ効率的に育成された強豪チーム。それをスカウトから育成、スポンサーまでやってるのがあの『ゴールデンP』って人らしいよ。」

「凄いね。」

「確かに凄いけど何その名前?バカなの?」

「さ、さぁ?」

 

 藁半紙に刷られた試合のお知らせに書かれたチーム紹介を読むすずか達は、思い思いの感想を口にした。

 

「対する翠屋JFCは、人体の動きとチームプレイを極限まで極めたチームで、ディフェンスに定評がある。菜の花会を新たにスポンサーに付け、資金力も充実している。最早現実離れした強さを持つクラブ同士の戦いはプロも注目している・・・だって。」

「人間よね?」

「に、人間だよ・・・小学生の子達は・・・多分。」

 

 日々の鍛練を絶やさず行い、最近に至ってはジルの『暗黒霧都』から生身で脱出出来るようになった父(キャスターとジルをして呆然とさせた)に心身共に鍛えられた小学生が、果たして普通の領域に収まるかは疑問で有るが。

 

「このスポンサーの菜の花会って、最近になって力を付けてきた会社だよね。」

「噂だと会社のトップは絶世の美女だとか言われてる所よね。何でそんな会社が士郎さんのチームのスポンサーやってるのかしら?」

(あれ?そう言えばキャスターさんが、家でよくやり取りしてる会社がそんな名前だったような?)

 

 父のチームに関わるスポンサー企業に、家の狐の影を感じて若干不安を覚えるなのはが、友達とそんな話をしていた時である。

 

「・・・あれ?」

「どうしたのよすずか?」

 

 目の良いすずかがふと、その男の隣に立つバインダーを持ったジャージ姿の小学生を見つけた。

 

「あそこに居るの、白野ちゃんじゃないかな?」

「え?本当?」

「何でこんな所に居るのよ?」

「分からないけど・・・もしかしてマネージャーをやってるとか?」

「白野が?よーし、確かめてみるわね。」

 

 アリサはこっちに呼ぶべく電話をするのだった。

 

 

 

 

「三人とも来てたんだ。・・・ああ、そうか対戦相手の監督は高町さんだったっけ。」

「お父さんなの。」

「で、あんたは何してんのよ?」

 

 電話の指示通りにトコトコ歩いてきた、栗色の髪をまとめた少女、岸波白野は首を傾げる。

 

「雑用係兼マネージャー?」

「何で疑問系?」

「いや、だって朝起きたら『行くぞ白野よ。』って強引に兄さんと一緒に連れて来られたんだよ。」

「あ、伯野君も来てるんだ。」

「そう。兄さんは桜と補給とかの手伝いしてる。・・・あ、家のA・・・Pからで『飴をやろう。』だって。」

「何で上から目線なのよ。ってかゴールデンPって何よ?」

「だってゴールデンだし。」

「あ、でも美味しい!」

 

 只の飴玉とは思えない程に芳醇な香り漂う造形も見事な飴玉は、上流家庭のアリサにすずか、一流のパティシエを母に持つなのは達の舌を唸らせるほどの味わいであった。

 四人が飴を堪能しているとゴールデンJFCの方から白衣を着た長い髪の少女が、駆けてきた。

 

「白野先輩、そろそろミーティングです。!先輩方おはようございます!」

「桜ちゃん!おはよう!」

「桜も大変ね。」

「いえ、私は好きでやっているので・・・」

 

 と、優しげに微笑むのは1年後輩にあたる保健委員、間桐桜である。先日高町家で騒ぎになった原因とも言える某ペットショップを実家に持つ姉妹の長女は、なのはに頭を下げる。

 

「高町先輩、先日は申し訳御座いませんでした。」

「ううん!キャスターさんが悪いから気にしないで!」

「はぁ、また何かしでかしたのあの人?」

「・・・本当に大変だねなのはちゃん・・・」

 

 互いに頭を下げ合うなのはと桜を見て呆れた表情のアリサと、何故か同情の眼差しを向けるすずか。

 

「桜、そろそろ戻ろうか?」

「あ、そうですね。伯野先輩にお任せしてますし、早く戻りましょう。」

「ふ~ん。大変そうね?な、何なら私が手伝いに行くわよ?」

(アリサちゃん・・・テンプレートなの。)

(素直じゃないよね。)

 

 素直じゃない友人を微笑ましく見守っていた。

 

「は?何を言ってるんですか、先輩何て居ても役に立つわけ無いじゃ無いですか。」

 

 目の前の桜と全く同じ声がアリサの後から掛けられた。

 

「全く一々やることが姑息ですね、アリサ先輩?ちまちまとセンパイの好感度を手に入れよう何て、幾ら自分の家柄しか魅力がないとは言え、恥ずかしくないんですかぁ?ま、女としての魅力もスキルも私のが上ですから、最初から相手になんかしてませんけど、いい加減さっさとあきらめてもらえます?」

「な、なんですってぇ!!」

 

 顔を真っ赤にさせたアリサが振り向けば、桜と全く同じ顔と声の黒いコートを羽織った少女が、指揮棒の様な物を弄りながら立っていた。

 

「BB!アンタには本当一度先輩と後輩の上下関係ってのを判らせないといけないみたいねぇ!!」

 

 桜の双子の妹、BB。放送委員会と小学校の八割を手中に収めているとも言われる少女。因みに本名不詳である――は、アリサの言葉をサラッと聞き流した。

 

「あ、なのは先輩にすずか先輩もいらしたんですかぁ。」

「こ、こんのぉ~!」

「ア、アリサちゃん落ち着いて!?」

「び、BBちゃんも今日の試合見に来たの?」

 

 掴みかかろうとするアリサを羽交い締めにしたすずかを手伝いながら、なのはが話を変える。

 

「ええまぁ。と言っても私はサッカー何かには興味無いんです。私放送委員やってますから、次のBBちゃんねる(お昼放送)で裏方で必死な岸波センパイ達の姿でも流そうと思って・・・」

「ふ~ん。あそこで、アンタの妹分がカメラ壊してオロオロしてるみたいだけど?」

「・・・はい?」

 

 若干落ち着いたアリサの言葉に全員が視線を向けた先には、

 

「・・・どうするのよリップ。」

「だ、だってメルト、このおか・・・じゃないお姉様から借りたカメラ凄く柔らかくて・・・」

「そんな言い訳知らないわよ。学校の備品なんだし、貴女が一人で怒られなさいよ?全く、いい加減に自分の力加減を覚えなさい。」

「そんなぁ・・・」

 

 まるで粘土を潰したかのように壊れたビデオカメラを抱えて、ペタンと座り込んだ幼い顔立ちの少女と、高いヒールの靴を履いたツンとした冷たい表情の少女が居た。

 

「どうしよう・・・これじゃああの人の活躍を撮影できない・・・」

「伯野も白野も試合には出ないわよ?昨日聞いたじゃない。」

「・・・あの人が出ない・・・?・・・許せない、ユルセナイ!」

 

 手元のスクラップから手を離し、フラリと立ち上がった少女が、ゴールデンJFCに向けて手を向けようとし、

 

「な、に、をしてるんですか貴女達はー!?」

 

 駆け寄った桜とBBにより止められた。

 

「あれって桜ちゃんの下の妹さん達だよね?」

「うん。確か、空手部のリップちゃんとクラシックバレエ部のメルトちゃんだよ。」

「それにしても本当にそっくりな姉妹よね。」

「キュー・・・(女の子って怖い・・・)」

 

 四人で喧嘩する姉妹を見ながらそんな感想を言い合うなのは達。

 

「うーん。あの子達のそっくりさん・・・だよねぇ?それにしては・・・兄さんにも聞いてみようかな・・・」

 

 一人首を傾げた白野の呟きは、試合のアナウンスに掻き消された。

 

 

 

 

 

すずか視点

 

 その後、強豪チーム相手に接戦で勝利した翠屋JFCのメンバーは、翠屋にて食事会を開く事に。私達も一緒に着いていって昼食を取ることになりました。

 

「ふーん。ふおんなほほが・・・」

「こらジル!食べたまま話そうとしない!」

「ムグムグ。」

「キュー!」

「あ、こらユーノ!ジタバタしないの!」

「あはは、ユーノ君は元気だね。」

 

 翠屋でお手伝いをしていたジルちゃんは、桃子さんお手製のメイド服を着て食事をしながら私達の話を聞いています。・・・家のライダーも食事は摂るけどお酒の序でにって感じだし、ジルちゃん程では無いんだよね。多分食事で足りない魔力を補ってるんじゃないかってライダーは言ってたけど・・・食べ過ぎじゃ無いかなぁ?

 そんな私達のテーブルにも大量のパーティーサイズメニューが置かれていて・・・目の前のミートソーススパゲッティ(多分六束くらい)から自分の分(三束くらい?)を取り分けて食べながらジルちゃんは疑問に思ったことを口にしました。

 

「ング。でも、よく勝てたね。まぁどっちも反則な動きしてたみたいだけど。」

「うん・・・まぁ・・・」

「常識って何だったかしら?」

「キュー(アレ、魔法使って無いんですよね?)」

「キャプテン○とイ○ズマ○レブンをリアルにしたらそんな感じになると思うよ?」

「私は○IANTKIL○INGのが好きよ?エ○アの○士とかも良いわね。全部集めてるし。」

「今度貸してね?」

「伏せ字の意味あるのかなぁ?」

 

 普通サッカーで聞こえないようなボールの風切り音に有り得ない体勢からのシュート、目を疑うようなジャンプ力、そして裂けるゴールネット。サッカーって何だっけと考える観客も多かったと思います。

 

「・・・いちおー言っとくけど、すずかのドッジボールも大概だからね?」

「そうね。」

「え!?そんなこと無いよ。」

 

 確かにこの間、体育で行われたドッジボール大会で気が付いたら何故か、ドッジボール部の人達と戦ってたけど・・・

 

「えっと、『海鳴の山猫』『カチューシャ付きの獣』『人類種の天敵』だっけ?」

「後、『センターラインの乙女』とか『ドミナント』とか『最初の紫の鳥』とか言われてるわね。」

「いつの間に私にそんな異名が!?」

 

 うーん、最近はライダーやリニスと一緒にトレーニングもしてるけど、そこまで動いてたかなぁ・・・かなり自分に制限付けてたんだけどなぁ。

 

 さて、そんなにこやか(?)な談笑をする私達のテーブルで一人、会話にも参加せず、ストローを口に咥えて行儀悪くむくれている少女が1名。

 

「なのは行儀悪いわよ?」

「だって・・・」

 

 顔をしかめたなのはちゃんの視線の先には、

 

「お、お姉さん!僕シュート決めました!」

「あら!凄いじゃないですか!沢山食べていって下さいね?」

「は、はい!」

「お姉さんこっちにコーラ下さい!」

「ずりぃ!オレにも!」

「きれいな人だねー」

「いいなぁ、スタイル抜群だよ!」

 

 店を手伝うキャスターさんの姿が有った。何だか、選手の子達とマネージャーの子達の視線を独り占めしてます。流石は傾国の美女です。でも・・・

 

「・・・むー・・・」

 

 ああああああ、なのはちゃんの機嫌がどんどん下がってます。アリサちゃん私に「何とかして」みたいな目線送られても困るよ・・・。ジルちゃんは何か若干涙目でなのはちゃんに料理をよそってるし。

 

「お、おねーちゃん、これ美味しいよ?一緒にたべ・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 なのはちゃーん!眼が怖いよ!というか、普段人前でいちゃつかれるのはあれだけ恥ずかしがってたのに、こうなると嫉妬しちゃうんだ!?

 

「ぐすっ・・・そうだ、おねーちゃん私たちのハンバーグ半分こするから・・・」

「えっ!?・・・ありがとうジルちゃん。・・・ごめんね?」

「いいよ。キャスターが悪いもん。」

 

 ジルちゃんが大好物を半分こするという、ジルちゃんを知ってる人にとっては有り得ない事態に、流石のなのはちゃんも戻って来たみたいです。ジルちゃんナイス・・・

 

「おねーさん!結婚して下さい!」

 

“ガスッ!!”

 

 ハンバーグにフォークが!?其処の男の子何言ってるの!?

ああああああ!なのはちゃん落ち着いて!?アリサちゃんが怯えてるし、フェレット君ガタガタ震えてるし、ジルちゃん泣きそうだから!

 

「うふふふふありがとう御座います♪」

「~~~~~~~~~~っ!!」

 

“ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!”

 

 何を言ってるんですかキャスターさーん!?って怖い、恐い、コワイ、なのはちゃん、眼が怖いよ!?ハンバーグがミンチに戻ってるよ!?半分こしたジルちゃんが可哀想な・・・

 

「うわ~ん!おかーさん(マスター)!おねーちゃんが・・・おねーちゃんがぁ!」

 

 ジルちゃーん!?なのはちゃん、サーヴァントが泣いて逃げ出す様な事をしないで!?というか、それはサーヴァントとしてどうなのジルちゃん!?

 

「でも残念でした♪私には~既にお仕えしている方が居ます・・・の・・・で・・・」

 

 あっ!やっとこっちに気付いた!固まってないで貴女のマスター何とかして下さい!

 

「あ、あの~なのは様?一体どうされましたか?」

「・・・ふんだ。キャスターさんのバカ。」

「なのは様ぁー!?わ、わたくし何かしましたかぁ!?」

 

 慌ててこっちに来たキャスターさん。最早なのはちゃんのご機嫌取りに必死ですけど、頬を膨らませたなのはちゃんの機嫌を直すのは大変です。

 

「怖かった・・・なのはって嫉妬が激しいのね・・・」

「そうだね・・・」

「きゅー(女の子怖い・・・)」

 

 アリサちゃん頑張ったよ。ユーノ君まだ震えてるけど大丈夫かなぁ?ジルちゃんは、厨房の桃子さんの所に行ったまま帰って来ないし・・・なのはちゃん痴話喧嘩してる場合じゃ無いんじゃ無いかなぁ。

 

 手元の紅茶に口をつける。

 

「・・・お砂糖入れなきゃよかったな。」

 

 何故か、何時もより凄く甘ったるく感じる紅茶を飲みながら、私は目の前で喧嘩する二人を眺めるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そんなちょっとしたトラブルがあったものの食事会は和やかに進み、お開きとなった。

 

「二人は午後から用事が有るんだよね?」

「うん。私はお姉ちゃん達とお出掛け。」

「私はパパとお買い物よ♪」

 

 帰り支度をするアリサとすずかと談笑していたなのはであったが、ふと視界の端に居た翠屋JFCの男の子がポケットに何か青い物を仕舞うのを見た。

 

(もしかして・・・)

 

 チームメイト達と挨拶を交わし、マネージャーの女の子と帰ろうとする男の子が持っていたのは、ジュエルシードではないのだろうか?そう思ったが、

 

「?どうしたのよなのは?」

「・・・ううん。何でも無い、きっと気のせいなの。」

「そう?なら私達も行くわね。ジルと仲直りしなさいよなのは?」

「またね、なのはちゃん。ジルちゃんにも宜しくね。」

「うん。また学校でね!」

 

 手を振って親友を見送るなのは。そう、きっと疲れてて見間違ったのだろう。・・・と思った瞬間、

 

「あれ?なのは様宜しかったのですか?」

「にゃあ!?」

 

 いきなり後ろから現れたキャスターに、覆い被さるように抱き締められて思わず変な声を出してしまう。

 

「キャスターさん!?」

「まぁ先程なのは様を構えなかった分と思って、なのは様は胸の感触を味わっていて下さいまし。」

「うにゃあああああ・・・」

 

 背中辺りの柔らかい感触に顔を赤らめているなのはを見て、満足げな表情を浮かべるキャスターは、そのままなのはの耳に口を寄せる。

 

「で、なのは様宜しかったのですか?あのマセガキ、どうもポケットにジュエルシードを入れていたように見受けられましたが?」

「・・・やっぱり、気のせいじゃ無かったの。」

「・・・後悔は後先に立たず。年上の女房は質に入れても即ゲットと申します。・・・如何致します?あのマセガキに一撃喰らわせて気絶させてから奪っても良し、私が魅了して献上させてから気絶でもよし、取りあえず気絶させてから考えるでもよし、方法は選り取り見取りです。」

「強盗だよね!?後、そんなことわざ無いと思うの!?」

「うふふ・・・気のせいです。」

 

 取りあえず、なのはを抱き締めて誤魔化すキャスター。

 

「まぁ後を付けるにしても、こういうのに向いたアサシンはまだへそを曲げてますし、ユーノは彼女に連れて行かれたので私達だけで尾行致しましょう。」

「うう・・・ジルちゃんには後でちゃんと謝る・・・」

「それが宜しいかと。・・・なのは様、今回は嫌な予感が致しますのでご警戒を。」

「嫌な予感?・・・どんな?」

「え?えーと、・・・乙女の第七勘?」

〈乙女(笑)〉

 

 なのはからの質問に一瞬眼を泳がせたキャスターの台詞に、なのはの胸元から笑い声が上がる。なのはと目を鋭くしたキャスターの視線の先で、赤い首飾りの待機状態となっているレイジングハートが明滅していた。

 

「・・・なのは様。このビー玉をジュエルシードと交換して貰うってのは如何ですかね?恋愛成就とかの安っぽい金属タグ付けて。」

〈貴女の尻尾とでも交換すれば宜しいのでは?地方の土産屋のキーホルダー位の価値は有るでしょうし。〉

「あ″?」

〈あ″?〉

「にゃああああ!?二人とも喧嘩しないで!?」

「はい!なのは様♪」

〈イエス、マスター。〉

 

 従者と愛機に頭痛を覚えながらもなのはは、暫く経ってから少年とマネージャーの少女の後を付け始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――同時刻、街には休日という事も有り多くの人が出歩いていた。そんな中、一組の男女が歩いていた。

 

 一人は肩くらいに切り揃えられた髪の少女。足が不自由なのか車椅子に座り、膝に置いた買い物袋を落ちないように抱えている。

 もう一人は、ラフなポロシャツに上着を羽織った背の高く、ガッシリとした体格の外国人であり、少女の車椅子を慣れた手つきで押しながら、肩に大量の食料が入ったエコバッグを掛けながらも平然と歩いている。

 車椅子ということもあるが、可愛らしい少女と偉丈夫ながらも優しい顔をした長髪長身の美男という組み合わせは非常に周りの目を集めていた。

 

「うーん。やっぱり先生と買い物行くと、楽なんやけど・・・目立つなぁ。」

「そうですね。やはり、日本で外国人というのは、少々目立つようです。」

 

 先生と呼ばれた男の言葉に、少女は呆れたように溜め息をついた。

 

「・・・コレや。先生はもう少し、自分の容姿をやな。」

「と、言われても私はそれ程大した容姿では無いのですよ。事実、私のかつての生徒たちの方が若いですし容姿も端麗でしたよ。色恋沙汰も山ほど有りましたしね。」

「先生?謙遜も過ぎたら憎たらしなるで?先生の周りが規格外なだけで、先生も十分イケメンの分類やで。」

 

 事実、少女が軽く周りを見渡しただけでも何人もの女性が男を見て顔を赤らめていたし、自分に対する嫉妬混じりの目線も幾つか刺さっていた。

 

「しかし、今日は沢山安く買えましたね。焼き立てのパンにチーズ。トマトにナスに牛肉・・・忘れてはならないオリーブオイルに赤ワイン。」

「お米もな~。先生のギリシャ料理は美味しいしなぁ。せやけど先生?ワインを水で割るのは正直どうなん?」

「ですから、古代ギリシアではワインを水で割るのは普通だと言ってるじゃないですか。まぁ、現代のワインは割らなくても美味しいのですがね。」

「納得いかんわー。」

 

 文化の違いにぶーたれる少女の様子に苦笑する男であったが、ふと足を止めた。

 

「ん?どないしたん?」

「いえ、向こうの方にキャスターとそのマスターを見かけたので。」

「え!?」

「何でしょうか?前に居る二人組の子供達の後を付けているようですね。」

「どこどこ・・・って遠いなぁ!?よう見つけたな先生。」

「まぁ・・・眼は良いですからね。」

「あ~伊達に『弓兵』を名乗っとらんからなぁ。」

 

 キャスターとそのマスターと思しき二人は、大分距離を取って、信号待ちをしているジャージを着た男女の後を付けているようだ。

 

 一体何故、と思っていた男は、そのジャージを着た男の子がポケットから青い石――凄まじい魔力が内包された――を取り出し、隣の女の子に渡そうとしたのを見て顔を強張らせる。

 

 同じくそれを見たキャスターと少女が、互いに顔を頷かせて近付き、声を掛けようとし――

 

 

 

 

 ――その瞬間、青い石が凄まじい光を放った。

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