転生と狐と魔法少女   作:隣乃芝生

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ま、まさかここまで皆様に見て頂けていたとは・・・
キャスターさんパネェ。

大変、お待たせ致しました。5話です。



良妻狐と説明会

Side なのは

 

「・・・ん」

 

・・・まぶしい。意識がハッキリしない頭でそんなことを考えたけど段々と意識が浮かび上がってきました。

 目蓋をこすって目を開けると見慣れたベッドと机。

 

「あれ?・・・私の部屋?」

 

 しばらく、部屋を眺めていると段々と昨日の出来事が思い出されてきました。

 

「そうだ、昨日帰って来た時にお母さんに抱き付いて、皆の前で沢山泣いてそのまま寝ちゃったんだ。」

 

 昨日は本当に大変でした。公園で誘拐されて、もうだめだと思ったらキャスターさんが助けてくれて・・・

 

「そうだ、キャスターさんはどうしたんだろう?」

 

 お礼もしなきゃだし、あの人(狐?)には聞かなきゃいけないことが沢山ある。サーヴァントとは何なのか、どうして私を助けに来てくれたのか、この左手の模様の事とか。

 

「たしか、昨日は家まで着いてきてくれて・・・」

「お早うございます。御主人様♪」

「にゃあ!?」

 

 突然、ベッドの横にキャスターさんが現れました。

 

「お・・・おはようございます・・・ビックリしたの。」

「申し訳ございません御主人様。驚かせるつもりはなかったのですが、寝起きの御主人様がカワイクてつい・・・」

「むぅ~」

 

 私の事を御主人様と呼ぶ狐耳の女の人――キャスターさん。あらためてその姿をみると本当に綺麗な人だなぁと思うの。だけどお兄ちゃんも敵わないくらい強くて、とても優しい人。でも、昨日と違う所が1つあった。

 

「キャスターさん。そのエプロンどうしたの?」

「これですか?桃子さんに頂きました。先程まで、桃子さんと朝ごはんを作っていましたので。」

「キャスターさん料理できるの!?」

「はい♪家事一通りは良妻としてのたしなみですから。」

 

そう言うと、その場でくるっと回り。

 

「似合いますか?御主人様?」

「うん。すごく可愛いの。」

「キャー☆ありがとうございます♪ささ、朝ごはんの前に着替えちゃいましょうか。お任せください御主人様。このワタクシが手取り足取りお手伝いを――」

「じ、自分で出来るから大丈夫なの!!」

 

 何だか身の危険を感じたので取り敢えず離れてもらう。

 

「くっ!では残念ですが、私は朝ごはんのお手伝いに戻りますね。」

「うん。すぐに行くの。」

「はい、お待ちしております。今日は桃子さんが、御主人様のお好きなものをご用意してましたよ。」

「・・・う~おなか空いてきたの。」

 

 そういえば昨日は、何も食べずに寝ちゃったからすごくペコペコなのです。

 

「昨晩は、色々ありましたから。御主人様、朝ごはんの後に色々と説明をいたしますからね。」

「うん。」

「それでは失礼しますね。」

 

 そう言うと、さっきと同じようにスッと姿が見えなくなりました。本当に何者なのか。でも、まずは

 

「いいにおい。朝ごはんは、何だろう?」

 

 ごはんを食べにいこう。

 

Side out

 

 賑やかな朝食を終え、まったりとしていた所で忍が現れ、昨夜の事件の事後に関する打ち合わせを終えた所で、キャスターに関する話になった。

 

「キャスターちゃん。改めて御礼を言わせて頂戴。なのはを助けてくれて本当にありがとう。」

「とんでもございません。サーヴァントたるもの、御主人様を守って事こそですから。」

「それでも、ありがとう。」

「ああ、感謝する。」

「ありがとう。キャスターちゃん。」

「ありがとうなの。」

 

 桃子を初めとし、皆に御礼を言わせて若干照れるキャスター。

 

「それじゃあ、貴女の事を教えてもらっていいかしら。」

「はい。ではまず、サーヴァントについて説明いたします。」

 

 全員が、キャスターの言葉に集中する。

 

「サーヴァントとは、本来とある魔術師の儀式で呼び出される過去の英霊です。」

「な!?」

 

 いきなりの言葉に全員が驚く。

 

「英霊っていうのは何かしら?」

「その偉大さで名を馳せた英雄は、後の世にまで信仰される、神仏的な存在――英霊ってのになるんです。」

 

 過去に名を馳せ語り継がれた英雄。自分もまたそんな存在だと目の前の女は語る。

 

「・・・・・・私はそんな立派な英雄じゃないですけど。そういった神話や物語上のシンボルを再現した姿がサーヴァントなんです。」

「・・・驚いた。只者ではないと思ってはいたけれど」

「俄には信じがたいが・・・」

「まぁ、私は御主人様の魔力を使って現界していますので例えばこのように。」

 

 というとスッと姿を消し、驚く全員の前でなのはの後ろに再び現れる。

 

「本体は霊体でして、普段はこうして御主人様の負担を軽くできます。」

「じ、じゃあキャスターちゃんは幽霊ってこと!?」

「にゃあ!?お化けだったの!?」

 

 騒ぐ美由希となのはの言葉に肩を落とし、

 

「流石に、お化けとかと同じにされるのは傷付くんですが・・・」

「まて、魔力と言ったがなのはにそんな力があるのか?」

「はい。それもかなり強力な魔力をお持ちです。」

 

 キャスターの言葉に驚く一同。

 

「じゃあ私も魔法が使えるの?」

「学べば恐らくは。ただ私は余りおすすめ致しませんが。」

「どうして?」

「危険を伴うからですマスター。特に私の使うものは。」

 そうして、「続けますね。」と話を反らす。

 

「それで、呼び出されたサーヴァントは7つのクラスに分けられるんです。」

「クラス?」

「生前の逸話や経験によって、複数該当するサーヴァントもいますが、どれかになります。セイバー。ランサー。アーチャー。ライダー。キャスター。アサシン。バーサーカー。」

 

 話を聞いてどこかウズウズしている恭也。あわよくば過去の剣士との手合わせができるやもと考えているようだ。

 

「私のクラスはキャスターです。遠隔が得意な呪術系ですね。」

「あ、じゃあやっぱりキャスターっていうのは偽名で本当の名前は別にあるのね。」

「じゃあ、キャスターさんの名前教えて欲しいの。」

 

 目を輝かせたなのはの言葉に全員がキャスターを見る。この目の前の女性は一体何処の英雄なのか?そんな期待のこもった眼差しを受けたキャスターだが、

 

「えっ?私の真名ですか?そんな、御主人様に真名で呼んでいただくなんて、恐れ多いです!」

「そんなことないの。」

「私の事はただ、キャスターとでもお呼びください。」

「むぅ~教えて欲しいの」

「ダメです♪きっと御主人様でも引かれると思いますし、いつかお話することもありますから。」

 

 むくれるなのはを宥めるキャスター。そこに桃子が疑問を投げる。

 

「それにしても、どうして数ある英雄達からキャスターさんが、なのはを助けに来てくれたのかしら?」

「そうだよね。佐々木小次郎とか、アーサー王とか」

「そうよね。クーフーリンとか、ディルムッドとか」

「そうだな。宮本武蔵とか、塚原ト朴とか」

「泣きますよ?」

 

 有名な英雄と自分達の要望が交ざった言葉を聞いて泣き真似をするキャスターと慰めるなのは。

 

「召喚自体は儀式にそったものじゃない偶然かと思いますが(まぁ細かい所は置いときましょう)、私を呼んだのは恐らく御主人様のソレかと。」

 

と、なのはの髪飾りに付いた鈴を指す。

 

「この鈴?・・・これは昔のお姫さまが着けてたってお兄ちゃんが言ってたの。」

「そうでしたか。実はソレが私の聖遺物なんです。」

「聖遺物?」

「本来は、マスターと相性が良いサーヴァントが選ばれるのですが、このように英雄と所縁があった触媒があれば、高確率でその英雄を呼び出せるんです。」

「じゃあ、キャスターさんは貴族のお姫さまなの!?」

 

 驚くなのは。まさか話に聞いていたお姫さまを呼び出してしまったとは。

 

「まぁ、そんな大した事ではありません。ただの貢ぎ物ですし。」

「貢ぎ物をもらっている時点で大した事なんだが。」

「キャスターちゃんすごいのねぇ。」

「本当に何者なのよ。」

 

 こんな時々残念になるスイーツ英雄の一端を垣間見て更にその正体が気になる一同。

 

「因みにマスターの証が、御主人様の左手の模様。令呪です。」

「これ?」

 

 なのはが左手をかざすと、小さな手の甲に三画の模様が記されていた。

 

「後で他人には見えないように処置いたします。ソレがサーヴァントのマスターである証にして三度の絶対命令権である令呪です。」

「命令権とはなんだ?」

 

 恭也がキャスターに尋ねる。

 

「言葉どおり、サーヴァントに対し三度まで強制的な命令をすることができます。例えば、離れた場所にいるサーヴァントを瞬時に自分の場所に呼んだり、サーヴァントの限界を越えさせたり・・・場合によっては私を自殺させることも出来ます。」

「そんなことさせないの!!」

 

 キャスターの言葉に憤るなのはと周りの人々。

 

「キャスターちゃん?例え話にしてもそれは怒るわよ?」

「申し訳ございません皆様。ただ緊急時等にも使えますし、サーヴァントは絶対に令呪を使った命令には逆らえません。それと曖昧な命令には効果が下がりますのでご注意を。」

 

 それと、と言葉を続ける。

 

「令呪はそのまま、マスターであることを示し、令呪を失うとサーヴァントとの契約がとぎれますのでお気をつけ下さい。」

「じゃあ、使わなければずっと一緒に居れるの?」

 

 不安そうななのはの頭を撫でて、

 

「はい、ずっとお側に控えさせて頂きます。でもでも~♪ワタクシ的には御主人様には良妻としてお側にいたいなーと♪」

「にゃあ!?」

 

 ガバッとなのはを抱き上げ顔を胸に押し付けさせる。

 

「あらあら、なのはは幸せね♪こんな可愛いお嫁さんを貰えるなんて♪」

「まだ早い!嫁には行かさないぞなのは!!」

「お、落ち着いて恭ちゃん!?」

「わ、私は女の子なの!!」

 

 

 そんな、一気に修羅場と化したリビングを前に

「サーヴァント・・・もしかしたら私達にも・・・」

忍はサーヴァントについて1人考えに耽るのであった。


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