芋者奮闘録 作:舞い降りるズゴック
私、更織簪は人付き合いが苦手だ。そう自覚はしていても、昔から優秀な姉と比較され続けられたらそういう性格にもなる。最近だと幼馴染とですらあまり話してない。
特に顔も合わせたくないような人だっている。姉さんはもちろんのこと、直接の面識もない織斑一夏も該当する。私から専用機を奪ったといっても過言ではないからだ。こうして自分で専用機を作っているのもそれが原因だ。一発殴っても許されるレベルだと思う。
そしてもう一人。
「やっべ削りすぎた……!これじゃ切る前に折れるだろ…………」
何故か私と同じ部屋で作業をしているこの男だ。
名前は知っている。私が専用機を自分で作り始めて間もない頃に、彼もこの整備室に通うようになっていた。
彼が特殊な立場なことは知っている。それで比較的人の少ないこの場所に来ているのかもしれない。もちろんいつもいるわけではないけど。
ただ、一人でいる時よりは作業効率が落ちているのは確かだ。作業音のみならまだ許容できるのに、なぜ私に話しかけてくるのか。挨拶すらまともに返したことないのに。
最近は何をしているのか整備室にいる事が多くなっているため、必然的に彼と会う機会も増えている。勘弁してほしい。
「えっと、接合箇所の強度がこれぐらいないとダメで、かといってこの大きさだと装甲に干渉するし、難しいな……」
……そういえば今日は独り言が多い割にこちらへの接触がない。挨拶すら普段より簡素なものだったし、一体何をしているのか。
「確かここら辺に……あ」
「あっ」
しまった目があった。なんて間の悪い。
「……何か用か?」
「…………別に」
「そ、そうか」
気まずさのあまり、さっさと自分の作業に戻ってしまった。ただ、見た限りでは新しい武装の製作に着手しているようだ。機体の装甲そのものに取り付けるタイプの武器だろうか。
…………織斑一夏ほどの話題性はないが、彼の活躍も耳には入ってくる。代表候補生への善戦に始まり、複数の訓練機が相手でも圧倒したとか、武器を奪われて丸腰になっても逆転したという噂もある。
今になっても専用機が出来てない私からすれば、追加の武装なんてものは先の先。そんな私と彼の差は今どれほどのものなのか、考えたくもない。
「にしても、武器一つでこんな大変なんだし、専用機作るなんて相当厳しいんじゃないか?」
「…………貴方には関係ない」
そんなことは言われなくてもわかってる。一人で作りあげるなんて無理だ、という言葉は何度投げかけられたことか。
でも、姉が専用機を一人で作り上げたという話がある以上、誰かに頼るなんてことできない。そのぐらい出来なければ姉さんには一生追いつけない。
「まぁ、俺なんてコンパスの人いないと整備すらまともにできないしな」
赤と藍色のボディには不釣り合いな鉄板を叩きながらそう返してきた。隠しきれずに鉄板の下から覗いている傷は痛々しさを感じる。
そんな傷をつけられるだけの強いIS操縦者がまだいるのか、はたまた彼が噂されてる程強くはないのか。
「でも目標が目標だからさ、一人で張り合ったところで追いつけそうにないんだ。だから色んな人に迷惑かけてる」
…………彼の言葉は私にも刺さる。私と姉、どちらが優秀かなんてわかりきってる。だから専用機を一人で作りあげる程度で止まってるわけにはいかない。
でも夏休みが終わろうとしていても、機体すらまともに動かせないのが現実だ。彼の目標とやらが何かは知らないし興味もないけど、きっと向こうの方が早く達成できるのだろう。
……こんな私より恵まれてるのだから。
「それでも、コイツが形になったら少しは達成できると思ってる。対零落白夜、
「……は?」
織斑?織斑一夏と言ったのかこの男は?私個人としては名前すら聞きたくない人物だけど、それは一旦置いておくとする。
男性操縦者が見つかったのはほぼ同時だし、ISを触り始めた時期もそこまで変わりはないはず。ただ織斑一夏のISが夏休み前にセカンドシフトしたのは耳にしていた。それだけを見れば、この男が織斑一夏ほど努力していないとも捉えられる。
けど、それはないと思う。でなければそう何度もここの整備室に来てはいない。
「あれ、意外だったか?」
「…………ライバル的な関係だと考えれば、自然」
「いやいや、そりゃライバル視はしてるけどさ。そこまで対等なレベルじゃないぞ?
顰めっ面のまま白式についての愚痴を始めた。曰くビーム兵器しかないので全て無効化されるとか、曰く不意を突いても次には反応して剣を割り込ませてくるとか。
…………相性の不利があっても、ほぼ同じ立場の相手にそこまで圧倒されてたからここまで頑張れているのか。
「そういうわけだから、今使ってるコイツでギャフンと言わせてやろうと思ってさ。そしたらしばらくは整備室にも来ないだろうし、そっちも作業に専念できると思う。今まで邪魔して悪かった!」
「えっ、いや…………確かに邪魔とは思ってたけど」
うぐっ、と声を出しながらバツの悪そうな顔をする。やはり邪魔になっているという自覚はあったのか。なら最初からほっといて欲しかった。
「でも、いい。もう慣れたし」
「あ、ありがとう……?」
…………いけない、また口下手が出た。私としては今までの邪魔は許すという意味だったけど、もしかすれば今後もこの整備室に来てもいいとも捉えられるのではないか。
いや、当分利用しないというには別の事情がありそうだし、そう受け取られていたとしても問題はないのかも?
「話は終わり。戻るから」
「あ、その前に一個だけいいか?」
作業を再開させようとしたら、引き止めてきた。これ以上なんの話があるというのか。
「ここら辺の部品の噛み合わせが中々上手くいかなくって。ほんのちょっとだけでいいから手伝ってくれない?」
作りかけの武器を差しながら意見を求めにきた。確かに武装を直接付けるのであれば、様々な要素を考慮して部品を開発しなければならない。ISで軽く飛んだだけで外れるケースもあるほどだ。
けど、彼が苦戦しているところは私なら簡単に解決できそうだ。そういうわけなので、今目の前で手を合わせて頭を下げている彼に返事を返す。
「やだ、時間のムダ」
項垂れる彼…………進藤飛鳥を他所にさっさとプログラムを弄り始めた。今日は過去最高に邪魔が入った日だったが、ほんの少しだけ心が軽くなった瞬間でもあった。
ヒロイン枠についてはタグでも言及してないけど、基本未定か無しの方向で進めることにしています。もしくっつくとしてもifルートかな……。
次回から夏休み明けるんでちょっと原作の話入ります。もちろん学園祭編。