芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 ※F91要素はほぼないです

 


候補その5:なんとぉー!

「どうした一夏、サークルロンド練習したんだろ?撃ち返すなり間合い詰めるなりできるだろ」

 

 

「いやいやいやいや!?遠距離攻撃増えてるのはシャレになってなあっぶねぇ!?」

 

 

 学園祭から数日後、事後処理などもあって時間が取れなかったがようやくセイバーシルエットの試運転ができるようになった。

 相手はもちろん一夏。追加武装とはいえほぼビーム射撃のみなので、ビーム無効のある白式は良いテストケースとなる。

 

 決して情報量が少ないうちに滅多打ちにしようとかそういう魂胆ではない。

 

 

「このままじゃシールドモード(雪羅)だけでエネルギー使い切っちまう……!ていうか、そんなに撃ちまくってガス欠しないのかよ!?」

 

 

「前ほど燃費悪くないからな!」

 

 

 元々あった高エネルギービームライフルに比べれば、アムフォルタスとスーパーフォルティスのエネルギー消費量は火力の割にかなり効率が良い。

 無論撃ちまくってたら1分も持たないので、基本はブーメランとスーパーフォルティスで削りながら動きを制限。隙を見てアムフォルタスを当てにいく戦法が定着している。

 

 

「……それなら一か八か!!」

 

 

 左腕の雪羅を前に突き出し、瞬時加速(イグニッション・ブースト)による高速移動を行った。シールドモードによって零落白夜をバリアに転用しているため、ビームを主体とした弾幕であればこれ以上の防御手段はない。

 よって、直線軌道の超加速であれど妨害することは難しく、一夏は間合いに潜り込むことができ、零落白夜を左の盾から右の剣へと切り替えた。

 

 

「まぁ、そうくるよな!」

 

 

「やっぱり読んでたか。でも、こっちの予想も当たったみたいだな」

 

 

 こちとら幾度となく零落白夜対策しているのだ。盾構えて弾幕突っ切られたぐらいで驚きはしない。現に一夏が接近する直前に俺も動きを見せていたからな。

 ただ動きを読んだにも関わらず、こちらはほんの少しだけ距離を広げ、盾を構えることしかできなかったが。

 

 一夏も薄々気づいていたようだが、セイバーシルエットは高火力・長射程と芋者に足りなかった要素を補完してくれていた。

 だが同様にデメリットも存在する。その一つが機動性の低下。前回の襲撃で簡単に振り切られたのもこれが原因だ。

 本来の芋者はMA形態があることから、全体として機動性を重視した構成となっていた。それがセイバーシルエットではスラスターの数が減り、総重量も増したことから小回りが利きづらく、速さの低下に繋がったのだ。

 

 

「せっかくの新武装なのに、こうなったら前とやってること変わらないな」

 

 

「いや前よりキツイぞ……!?なんなら足が控えてるせいで盾増えた方が厄介まである!」

 

 

 右手に空力防盾、左手にシールドブーメランを付け、両足のカルキトラを起動させ、対一夏では定番の接近戦が始まる。

 今までと違うのは右手にビームブーメランを握っていたのが盾に変わっていることだが、これによって雪片や雪羅による攻撃を安定して受けれるようになった。無論、隙を見せたらカルキトラをお見舞いしていくので、腕と脚で攻撃と防御に特化させるのはアリなのではないだろうか。

 

 攻めあぐねたのか角度の甘い攻撃が来たので、盾で思いきり弾いて体制を崩させる。

 

 

「しまっ……!?」

 

 

「これで、どうだッ!!」

 

 

 ほぼ至近距離でアムフォルタスのビームがクリーンヒット、間髪入れずに吹っ飛ばされた一夏に向かって急接近。カルキトラを上から被せるように蹴り放ち、ビーム刃を押し付けたまま地面に叩きつけた。

 暴れを防ぐためにブーストしながら一夏を下敷きに地面を削り進み、トドメとしてアムフォルタスを白式に押し付ける。一夏も剣をなんとか割り込ませてカルキトラの威力を抑えているとはいえ、先程の高火力武装の連撃も相まって、もはや零落白夜に回せるエネルギーも僅かほどだろう。

 アムフォルタスの砲身に光が収束していき、一夏へと放たれ……。

 

 

「なんとぉ!?」

 

 

 ……ることはなかった。エネルギーが四散するどころか、機体の装甲からも色が消え、赤と藍色が混ざったカラーリングから灰一色となってしまった。

 

 芋者に使われるヴァリアブルフェイズシフト(VPS)装甲は、流れる電流の量によってその強度を変化させる。それに連動して装甲のカラーリングが変化するため、電力の配分によっては自分の好みの色合いにすることも可能だ。

 では、その色が抜け落ちたなら?答えは単純、装甲に流すだけのエネルギーが尽きてしまったからだ。つまり、今の芋者のエネルギー残量は0に等しい。

 

 

「え?いや……俺の勝ちなのか?」

 

 

「ちょ、ちょっと待て!どこだ、どこで配分間違えた……!?」

 

 

 その場で戦闘ログを見返す。零落白夜対策として白式の性能を知るのはもちろんだが、その第一前提として自分の機体性能は把握しておかねばならない。

 最初こそ微妙な反応……いや今も不満点がなくはないが、半年以上も連れ添った愛機なのだ。特にどの行動でどれだけエネルギーが減るかなんて一々見なくてもわかっているつもりだったので、この敗け方はかなりショックを受けた。

 ログを見返していくと、エネルギー消費が増えたのは模擬戦の後半、特に加速行動が多い場面(・・・・・・・・・・・)に目がいった。

 

 

「…………移動時の燃費悪くなってたのかよ」

 

 

 一夏にも気づかれた弱点として、機動力の低下があった。その原因としてスラスター総数の減少や総重量の増加が挙げられた。

 つまり、その重さをカバーするだけの出力を数の減ったスラスターで補わなければならないのだ。となると必然、スラスターの出力は普段より強くする必要があり、結果として加速時のエネルギー消費量は悪化してしまったのだ。

 

 

「ちょっと考えれば気づくことだったろ。射撃に夢中になりすぎた……」

 

 

「いや、そういう趣旨だったろこの模擬戦。あの、フリーダムだっけ?お前が戦ったの」

 

 

「……そうだな、機動力以外はほぼ変わりなかったと思う」

 

 

 今回セイバーシルエットを用いたのは試験運用もそうだが、強奪されて敵に回ったIS『ライジング・フリーダム』を想定したものでもあった。

 

 

「しっかりしなさいよね。そのフリーダムとかいうのとまともに相手したの、アンタしかいないんだから」

 

 

「お、鈴……だけじゃないな。いつの間に集まったんだ?」

 

 

「ちょうど模擬戦が始まったところからだよ。ジャスティスの新しいパッケージも興味あったし」

 

 

「……まぁ、パッケージではあるか」

 

 

 観客席からこちらへ移動したのか、いつもの専用機持ちが勢揃いだ。シャルロットはセイバーシルエットのことを追加パッケージといっていたが、ISとして見れば確かにパッケージレベルの性能変化なのでそれで通すとしよう。

 

 

「それにしても、まさかコンパスが第三世代ISを二機も製造していたなんて。国際的とはいえ一企業としては恐るべき開発スピードと資金力ですわね」

 

 

「……企業秘密になるからあまり話せないんだけど、他のISのデータを参考にしてるのが大きいかな。色んなとことWin-Winの関係みたいだし」

 

 

「機体や武装の名称に様々な国の言葉が使われているのはその名残か。ドイツとも提携していると聞いてはいたが……」

 

 

 コンパスは国際的なIS企業であることから、世界各国のIS技術の発展を目的に様々な形で技術を共有している。

 イモータル・ジャスティスを始め、コンパス製のISはそうした過程で開発されたものだ。一応俺の転生特典ではあるとはいえ何の前触れもなく出てきたわけではなく、違和感を無くすための辻褄合わせがこのような形で行われたのだろう。

 

 

「そうそう、システムは別物だけどビーム重斬脚とかはプラズマ手刀を参考にしてるみたいだし」

 

 

「へぇー、つまりその気になれば各国の技術の良いとこ集めた機体も作れるってことか?」

 

 

「問題点色々すっ飛ばしたな。それやったら紅椿よりひどいことになるぞ」

 

 

 そんなもん作ったら普通に争いの火種になる。性能だとかそれ以前に、そのIS一つ手に入れるだけで色んな国の開発データが手に入るのと同義なのだから。

 篠ノ之束直々に作られた箒の専用機『紅椿』はまだ未知の技術ということもあり各国で小競り合いするに留まっているものの、自国のデータ+他国のデータが入った機体となれば別ベクトルの争奪戦が始まる。

 

 そうはならないようにコンパスは他国から得たノウハウを自分達の技術に上手く溶け込ませることで、独自の権利を持てるよう製作しているらしい。VPS装甲とかMA形態への変形機構とか。

 

 

「しかし、展開装甲やパッケージもなしに飛行形態への変形ができる技術など聞いたことがないぞ」

 

 

「あぁ、それはコンパス側の特許だな。詳しいことは知らないんだけど、大本になったISのデータが機動力や飛行能力に秀でてたから、それを更に発展していった結果なんだと」

 

 

「そうなると、今度のキャノンボールファストは飛鳥が最大の壁になりそうね。ていうか、そのために生まれたような機能じゃない飛行形態なんて」

 

 

 鈴のいうキャノンボールファストとは、平たくいえばISを使ったレースである。IS学園で行われる行事の一つでもあり、ここに集まっている者は専用機部門での参加となる。

 

 

「そういえば紅椿と同じぐらいのスピード出てたよな……」

 

 

「あ、あの時とは状況が違うだろう!私一人であれば抜かれるようなことは」

 

 

「あー、その件なんだけどさ」

 

 

 遮ってしまったのは悪いが、この様子だとやっぱり誰も知らないようなのでこの機会に伝えておくとしよう。

 

 

「俺、キャノンボールファストには出れないぞ」




 キャノンボールファスト編書くとテンポが悪くなる。かといって襲撃イベントもあるから今後の展開考えると戦闘は挟みたい。
 その問題を一挙に解決する策が、参加させないことで描写を最低限にすることでした。

 実は深く言及してないだけで飛鳥くんは裏で面倒ごとに巻き込まれてるので、その一端を見せる時が来たようです。
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