芋者奮闘録 作:舞い降りるズゴック
「〜♪」
イヤホンから流れる曲に鼻歌を合わせながら新装備の組み上げを行う。芋者がISに落とし込まれてる以上、ガンダム系の作品はこの世界には軒並み存在しないのだが、なんと曲だけはしっかりあるのだ。
そんなわけで赤く光って三倍の速度で動けそうな作業bgmを聞いていると、この整備室に新たな客がやってきた。
「…………」
「おー、久しぶりー」
こちらを見て一瞬固まるも、ポーカーフェイスを崩さなかったのは一年四組の更織簪。最後に会ったのは夏休みの終わり際となるか。
「……なんでいるの」
「そりゃあ、機体の改造パーツ作ってるんだよ。普段使いには向いてないけどな」
俺の視線の先には、二基のブースターユニット。形状としてはガンダム00の映画に出てきたガンダムハルート、その脚部に装備された追加ブースターに近い。
脚を完全に覆う形で装着するため、ビーム重斬脚は当然使用不可。その代わりに圧倒的なスピードが芋者に与えられる。元になったガンダムハルートと同じく、MA形態での使用も可能だ。
まぁ、白兵戦となるとスピード過剰になりかねないし、手数も落ちるしで普通に運用するのは推奨できないだろう。これにセイバーシルエットなんて合わせたら、もはやビルダーズレベルの魔改造だ。
「あぁ、キャノンボールファスト用の」
この時期にスピードだけを追い求めたかのようなブースターを作る理由などそれしか考えられない。真相がどうあれ、簪の推測は間違ったものではない。
「いや、これは違うぞ。そもそも参加できないし」
「えっ?」
参加
「学園祭でトラブル起きたの、覚えてるか?」
「……生徒会の出し物が中断した時のこと」
「そう、そこで暴れたISの中に、俺の専用機と同じ開発元のが混ざってたんだよ」
学園祭での襲撃事件、そこで使用された三機のISはどれも強奪された機体。一つはアメリカの『アラクネ』一つはイギリスの『サイレント・ゼフィルス』、そして最後がコンパスの『ライジング・フリーダム』である。
「そういうわけだから、ちょっと世間の目も鑑みて表向きの活動は控えなきゃいけないんだよ。いやー、まいったね」
「そ、それって……」
飛鳥の発言は、かなりオブラートに包まれたものだ。家柄のこともあって、簪はその言葉の裏を読み取っていた。
進藤飛鳥は襲撃者に加担している
国家ではなく一企業からの強奪となれば、同じ所属の人間にも容疑はかかる。もちろん可能性の一つでしかないが、理由としては十分。
特に二人目の男性操縦者やその専用機、所属している企業を
「別に参加できないならできないでいいさ。ISのレースとか、観戦するだけでも楽しそうだしな!」
「……それで、大丈夫なの?」
参加できないことに憤りを感じていないか?という意味の大丈夫ではない。第三者の凶行によって謂れのない疑いをかけられる。これだけでも精神的な負荷は相当なものだろうに、目の前の彼はそんな素振りを見せず気丈に振る舞っている。
「綱渡りな立場なのは今更だしな。まぁ不満があるとすれば、また
ハッとなって口を手で塞ぐ。
「せ、生徒会長……シスコン……え?あ、えっと、それどういう……?」
あぁほら、思考回路バグっちゃったよこの子。まさかそこまで仲良くもない相手から姉の知らん一面知らされるなんて思わないよな。それも知らない方がいい類いの情報。
「あー、俺この後用事あるんだったー……お疲れ!」
急いで荷物をまとめて整備室を立ち去る。もうアフターケアとか知らん。いや、あの生徒会長にはこれぐらいが丁度良い。これも荒療治と思っ。
「あら、飛鳥くん。そんなに急いでどうしたのかしら?」
自分の行いを正当化してたら進行方向に
ただ口が滑って生徒会長がシスコンだって更織さんに認知されただけなのに。というか情報早すぎないか?盗聴機か地獄耳、あるいはその両方か。
「せ、生徒会長じゃないですかぁ〜。どうしたんです?仕事はもう終わったんですか?虚さんにあとで怒られません?」
「ウフフフッ、そんなのどうだっていいわ。今の私は阿修羅すら凌駕する存在よッ!」
あ、やべぇ、本性隠さなくなった。ガチギレ状態の生徒会長を前に脱兎の如く逃げ出した俺だったが、手段を選ばなくなった生徒会長にかなうはずもなく。
怒らせてはいけない人ランキングの三位が確定した。
『やぁ、先日は私の部下が世話になったね』
「えぇ、素晴らしい助っ人だったわよ。こちらに不利益はなく、過度な介入もなし。正に
通信デバイスを横目にワイングラスを揺らす金髪の淑女。高層タワーの上部に備えられたバーは正にセレブ御用達な雰囲気を醸し出していた。もっとも、そのバーにいるのは彼女とその関係者のみ。貸切というより、もはや私産といった扱いだろう。
『お褒めに預かり光栄だよ、ミス。その甲斐あって、進藤飛鳥には社会的圧力がかかった。次の作戦には期待してもいいかね?』
「周到ね、専用機持ち一人抑えるのに。そんなに彼が気に入ったの?」
『堅実、といってほしいものだね。後ろ盾が薄いならば、そこを突くまでだ』
「そういうことにしておきましょう」
同じ組織とはいえ、一枚岩ではない。こうした腹の探り合いなど日常茶飯事だ。
『とはいえ、不確定要素であるのは事実だろう。機体性能を抜きにしても、あの操縦技術と勘の良さは厄介だ。戦績を鑑みるに、
「その発言、Mの耳に入ったら風穴どころじゃすまないわよ?」
『躾がなっていないんじゃないか?』
「あら、私は止めるつもりなんて一切ないけど?」
『辛辣だな。では、しがない文官の戯言を間に受けないよう言っておいてくれ』
通信が切れる。金髪の淑女、スコール・ミューゼルはワインを片手に今にも人を殺しそうなオーラを発する少女、Mに話しかける。
「聞いたわね、M。牙を出さない獲物にムキになるほどお子様じゃないでしょう?」
「ハッ、ざまぁねぇな!あの進藤とかいうガキはテメェの手には負えねぇってよ!」
「…………貴様ほどではない。たった二機に翻弄された雑魚が」
「……んだと?」
「オータム、そこまでよ」
「スコール……!」
オータムと呼ばれた女性(一夏を襲ったアラクネの操縦者)がMと一触即発になったところをスコールが諌める。
「M、勝手な行動をしたらどうなるか。わかってるわね?」
「…………フン」
何も言わずにMはバーから退室した。体内に埋め込まれたナノマシンに命を握られている以上、Mにできるのは憎しみのまま拳を固く握ることだった。
因縁の相手である織斑一夏はいつでも殺せる。他の連中も大した脅威ではない。自分の能力の高さを理解しているからこその自信だ。だが、それを覆しかねない者がいる。
(進藤、飛鳥。ヤツらの評価などどうでもいいが、たった一度の接触で下に見られるほどではないはずだ…………!)
ISに乗って一年も経ってない素人。命のやり取りとも無縁な生活を送ってきた取るに足らない有象無象な人間。何故そんなヤツに己の存在意義を否定されなければならないのか。
「……私の実力を証明するための贄となってもらうぞ。進藤飛鳥ッ……!」
少女M、またの名を織斑マドカ。サイレント・ゼフィルスを操る彼女の憎悪の矛先に、新たな標的が加えられた。
シルエットに加えて追加武装なんて出したらもはやイモータルジャスティスガンダムではないのでは?
そういうことなので、シルエット+追加武装の組み合わせは極力控えます。シルエット側だけに作用するなら大目に見るかもしれない。