芋者奮闘録 作:舞い降りるズゴック
キャノンボールファスト当日、開催地である市内のISアリーナには沢山の客が来訪していた。もちろん市内ということもあり学園祭ほどのセキュリティはなく、一夏や飛鳥の共通の友人である五反田弾も足を運んでいた。
「ほら、おにぃ!早くしてよ!」
訂正、半ば運ばされていた。弾を急かすのはその妹である
「それが飲み物買いに行かせた兄に対する態度か!?全く……」
「相変わらずだな、お前ら」
「え?あっ、飛鳥ぁ!?なんでここに?」
「今回は不参加だ。隣、失礼するよ」
今日の俺は私服にベレー帽とサングラスを付けて最低限の変装をしている。仮にも専用機持ちかつ男性操縦者がそこらにいたら大なり小なり騒ぎになるだろう。
それはそれとして、知り合いと一緒に見るのも悪くはないので空いてる席に座る。
「飛鳥さん、お久しぶりです!」
「元気そうでなにより、ゴールデンウィーク以来かな?」
一夏と違って、俺と蘭との関係は普通といったところだろう。兄の友達、一つ上の先輩。俺の不良時代を知らないこともあり、互いに軽口を言い合える程度の仲ではあると思う。
「はい、あれから勉強頑張ってるんですから!飛鳥さんもうかうかしてたら追い抜いちゃいますよ?」
「お?言ったなコイツめ。そういえば弾、お前学園祭で気になる子でも見つけたのか?」
「ブフォッ!?なっ、ななななんでわかったぁ!!?」
「さぁなぁ?ちなみに俺その人と知り合いだから、なにかあったら話ぐらいは聞くぜ」
「えぇ……IS学園の人ですよね?おにぃ、その人と釣り合うの?」
「よ、余計なお世話だ!!」
二人して弾を弄り倒している間に準備が整ったのか、キャノンボールファストが開催される。基本的に学年別と専用機の有無で分けられているため、一夏達のエントリーしている専用機部門までは一般生徒のレースが繰り広げられていた。
三年の部が終わると、いよいよ専用機持ち達がレース場に姿を見せる。
「あ、一夏さん!あれが噂の白式ですね!」
「へぇ、そこまで調べてるのか。アイツのISは元が高機動だからな。カタログスペック上"では"有利だろうよ」
「さっきまで似たようなISが走り回ってたから、すげぇ新鮮だな……って、あれ鈴か!?」
一夏だけでなく、鈴も弾や蘭とは交友があった。鈴のISは他と同じような間に合わせの装備ではなく、キャノンボールファスト用にパッケージを換装していた。本気で勝ちを取るつもりだ。
全員が所定の位置に着くとシグナルが点灯し、開始と同時に目で追えぬ速度でスタートを切る。まぁ、コースが決まっているのもあって俺は肉眼でも追えてしまったのだが。慣れって怖い。
さて、レースの内容だが、開幕はセシリアを抑えて鈴がトップ。しかしラウラが一枚上手だったようで、スリップストリームを利用して鈴を押しのけ、一気に差をつける。ここまでの妨害行為を全て交わしていたシャルロットも、ラウラに追従する形でトップ争いを始めていた。一夏と箒はもろに妨害を受けたセシリアと鈴を背に剣戟を繰り広げており、一周目であるにも関わらず白熱した展開。
これは二週目も目が離せない。その期待を裏切るように、空から光が堕ちた。
「…………え?」
「す、すげぇなあ!専用機持ちともなると、トラップまで凝ってるんだな!だよな飛鳥!……飛鳥?」
やられた。まさかこのタイミングで襲撃が来るとは。レース上にビームを打ち込んだのは今も上空に浮かぶサイレント・ゼフィルス。学園祭で白式を強奪しにきた勢力『
緊急時であるならば俺もISを使わざるを得ない。だが、それも難しい状況なようだ。
「……あー、悪いけど今
「はぁ!?お前っ、こんな時に何、を…………」
弾がパニックになっている間に席から立っていた俺は、余裕を繕って目線だけを弾に向けていた。
なぜこの状況で落ち着いていられるのか。飛鳥の態度に苛立ちすら覚えた弾だが、そこで違和感に気づく。
慌ただしく出口に向かう者、パニックで動けなくなる者がいる。その中で飛鳥と同じように全く動じず、布に包んだ
「ヒッ!?」
「飛鳥、おまっ……」
「大丈夫だ、落ち着け。……弾、蘭ちゃん。お互い手をしっかり握るんだ。出口を抜けるまでずっとだ。いいか、
落ち着かせるために優しく声をかけたが、後半はかなり真剣な感じになってしまった。だが、弾は俺の言った通りに蘭ちゃんの手を握り、俺の後ろにいる不審人物から蘭ちゃんを庇うように去っていった。
「……挨拶にしてはだいぶ物騒だな。目的はなんだ?」
顔の向きを変えないまま後ろの人物と会話を試みる。布の何か、恐らく拳銃だろう。その銃口を向けられている以上、下手な行動はできない。
「…………」
「つれないな。そういえば前回喋ってないのお前だけだったな、フリーダムのパイロット」
押し付けられた銃の揺れから少しの動揺が伝わる。まず、こんな場所で単独で動くのであれば、それは自己防衛できるだけの戦力を持っていることは確か。専用機持ちである確率は高い。
そして、無口であるということ。アラクネの操縦者は荒々しい気性を持つと思われるので、ここまでのやり取りでなんのアクションも起こさないのは不自然。サイレント・ゼフィルスは今まさに一夏達を襲っているから論外。
消去法でライジング・フリーダムの操縦者だと推測したが、どうやら当たりのようだ。
「……前回に続いて今回も俺のストッパーか。すっかり警戒されてるな。俺の何がそんなに怖いんだ?」
お仲間のサイレント・ゼフィルスが専用機持ち6人と戦っているというのに、これ以上の動きがなければ要求もない。そして、この状態のままでは俺も迂闊に動けない。
ここまで俺を警戒する理由は不明だが、逆にフリーダムがこの場で暴れることはないというのは不幸中の幸い。ここは大人しく機を伺うのが無難……と思っていたが。
「飛鳥?なんでそこに…………ッ!飛鳥から離れろぉ!!」
一夏がこちらに気づいた。サイレント・ゼフィルス相手に手一杯ではなかったのか。いや、もしかすると俺が参戦しないことを疑問に思ったのか。
俺の背後にいる存在を認識すると、一夏は猛スピードでこちらに接近する。しかし、それよりも速くこちらに向かうものがあった。
「ぐあっ!?」
一夏の背にレーザーが直撃した。サイレント・ゼフィルスによる攻撃だ。追撃と言わんばかりに二基のビットからレーザーが放たれる。これ以上の被弾を避けるため、一夏は雪羅をシールドモードで起動させ、レーザーを消滅させる。
ただし
「うおぉぉぉっ!?」
なんとか避けた。いや、避けさせられた。先程まで銃を突きつけていたのはやはりフリーダムの操縦者であったようで、即座にISを展開、俺を抱えて空中へ飛び上がることで回避した。
「この……ッ!!」
「……!」
もちろん捕まった状態でじっとしているわけにもいかない。ジャスティスの腕部を部分展開し、ビームブーメランを逆手持ちにして後ろのフリーダムに突き刺す。その衝撃でフリーダムは俺から手を離したため、そのまま自由落下しながらイモータル・ジャスティスを身に纏う。
そのままフリーダムに向けて臨戦体制を取るが、フリーダムを他所に近づいてきたのはサイレント・ゼフィルスだった。
「なっ!?」
フリーダムの行動から、
「このっ、テロリストにモテたって嬉しくもなんとも」
「進藤飛鳥、
……あれ、しっかり俺の命狙われてる?
予想外の台詞に思考を掻き乱されたまま、イモータル・ジャスティスとサイレント・ゼフィルスの一騎討ちが幕を上げた。
織斑絶対○すマンだったはずなのに飛鳥絶対○すマンにジョブチェンジしちゃったマドカさん。一夏は圧倒したけど、飛鳥とは一度妨害されただけでまともに戦ってないためこのような形になりました。拗らせヤンデレシスコンのスタンスは変わってないので安心してください。