芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 ぶっころ発言は生存フラグで誕生日ソングが死亡フラグ、これもうわかんねぇな。

 


ハッピーバースデートゥ……

 サイレント・ゼフィルスがナイフを持ってこちらに襲いくる。刺突による点の攻撃であるため回避が無難だが、反応が遅れたのもあってシールドブーメランで防ぐ。

 

 

「私は貴様を認めん!ただISを動かしただけの凡夫が、私より上など!」

 

 

「おい待て!お前らの俺に対する評価バグってるだろ!?」

 

 

 亡国機業は思ったより愉快な職場なのだろうか。専用機持ち限定にした時の俺の模擬戦の勝率、五割以下だぞ?その半数が一夏相手なのに未だに勝ち越せてないし。

 テロリストなのに何かの情報操作にかかっているのではないかと心配になる。

 

 

「わかった上でいい、上でいいから、とりあえず今日は大人しく帰るかお縄につけ、な?」

 

 

「調子に乗るな貴様ァ!!」

 

 

 ナイフの横薙ぎでシールドを弾かれ、体制が崩れる。

 と、見せかけて、その勢いを利用して一回転、右足のカルキトラを叩き込む。芋者式スリッピングカウンターである。

 

 

「ぐぁっ……!」

 

 

 蹴り飛ばされるサイレント・ゼフィルス。間一髪で間に合ったシールドビットによって、シールドエネルギーを大幅に減らす『絶対防御』の発動には至らなかった。

 しかし、そのシールドビットを破壊するほどの威力を殺し切ることはできず、手痛いダメージを負ったのは確かだ。

 

 

「この私が、貴様如きに……!」

 

 

 これでもかと殺意を向けられているというのに、俺の思考はひどく冷静だった。フリーダムは徹底して俺を抑える動きだったのに、コイツは確実に仕留める気でいるという矛盾。訳の分からなさで一周回って戦闘に集中できてしまっている。

 

 

「くぅっ、弾幕が厚い……!」

 

 

「自分の身を守ることしかできんとは……!」

 

 

 サイレント・ゼフィルスとタイマンしてるこちらとは別に、専用機持ちvsフリーダムの戦いは熾烈なものだった。フリーダムのフルバーストによる大火力を前に一夏や箒などの前衛組は近づくことすら困難であり、最初にサイレント・ゼフィルスによってスラスターを破壊されたシャルロットやラウラは機動力を大幅に削がれており、その流れ弾に晒されていた。

 

 

(……いや違う!これが本来の狙いか!?)

 

 

 最初は前回の襲撃とほぼ同じ布陣、それが今では逆転している。つまりサイレント・ゼフィルスが俺に執着することで注意を向けさせ、その間にフリーダムは高火力制圧を行う。

 いくら対策のためにフリーダムのデータを共有したとはいえ、実際にやられて対応できるかはまた別の話。セイバーシルエットでの弾幕を経験した一夏ですらあのザマだ。

 

 

「余所見までするとは、どこまで私を愚弄すれば気が済むッ!!!」

 

 

「うるせぇ、迫真の演技しやがって!俺を軸に作戦立てるとかどんな博打だ!?」

 

 

 三度振るわれたナイフを今度はビームブーメランで合わせる。パワーだけならジャスティスが上だが、向こうは加速の勢いも乗せており、拮抗状態に持ち込まれる。

 言うまでもないが、サイレント・ゼフィルスの操縦者、織斑マドカの怒りは演技などではないし、進藤飛鳥が推理した亡国企業の作戦内容は全くの的外れである。

 亡国機業側のアドリブに次ぐアドリブ、それがこの惨状(喜劇)を作り出したのだ。

 

 ここからは先程までの優勢が嘘のような接戦だった。向こうはナイフ一つ、こちらはビームブーメランとカルキトラの四刀流スタイルだったが、カウンターを決めた時のような有効打は望めそうにもない。

 もちろんビットやシールドブーメランも互いの隙を狙って攻撃するが、悉く避けられる。

 一進一退の攻防だったが、事態が変わったのは第三者によるものだった。

 

 

「!セシリア、まさかやったのか……!?」

 

 

 フリーダムに四つのレーザーが突き刺さるのが見えた。一度通り抜けてから戻ってくるような軌道を描いたそれは、セシリアがフレキシブルをレーザー四つ分同時に行ったことを意味する。

 遠距離特化とはいえ、俺ですらまともな攻撃を加えられなかったフリーダムに一矢報いるとは。

 

 

「…………チッ、スコールか。わかった、帰投する」

 

 

「……俺を殺すんじゃなかったのか?」

 

 

 撤退命令が下ったのか、俺から距離を取るサイレント・ゼフィルス。最後の抵抗とばかりに挑発してみたが、帰ってきたのは無言の殺意だけだった。

 サイレント・ゼフィルスと同じくフリーダムもMA形態となって去っていく。今のイモータル・ジャスティスなら追えなくはないが、怪我人の救護を優先した。

 ……それに、目的が不明瞭であることから追跡は悪手だと感じた。サイレント・ゼフィルスが取った行動は俺の抹殺、対してライジング・フリーダムは俺の行動を封じることに専念していた。両者のスタンスの違いが今回の行動、特にフリーダムの動きに大きな謎を残した。

 

 

(俺を殺さなかった。でもそれは、俺を生かすつもり(・・・・・・・・)だったってことになるよな。……何のために?)

 

 

 答えは見つからない。気になったのは、俺を抱えたフリーダムの腕がやけに強く、それでいて優しい力加減だったことぐらいだ。

 

 

 

 

 

『一夏、お誕生日おめでとう!』

 

 

 パァンッ、というクラッカー音と共にお祝いの言葉が紡がれる。キャノンボールファスト、亡国機業の襲撃と色々あったが、今日は一夏の誕生日でもあったのだ。

 せっかくIS学園の外に来ているので、会場は織斑宅となっている。一夏と千冬さんの二人で暮らすには少々広い気もするが、だからといってこれだけの人が集まると非常に狭く感じる。

 

 

「なんか、すごい人数になったな……」

 

 

「お前の人徳ってことにしとけ」

 

 

 まず専用機持ち達の箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ。中学時代の友人である五反田弾、御手洗数馬(みたらいかずま)、弾の妹の蘭ちゃん。生徒会の更織生徒会長、三年の布仏虚(のほとけうつほ)先輩、一年一組の布仏本音(のほとけほんね)(通称のほほんさん)。どっから嗅ぎつけたのか新聞部の黛薫子(まゆずみかおるこ)先輩までいる。

 千冬さんや山田先生は事後処理に奔走しているため残念ながら欠席。大人組は一人だけという結果となった。

 

 

「まさか私まで招待されるとは思わなかったな」

 

 

「戸高さんには中学時代お世話になりましたから。な、飛鳥!」

 

 

「いや俺に振られてもお世話なんて次元じゃないからコメントに困るんだが?」

 

 

 大人組で唯一来れたのは戸高さんだけである。一夏とは俺がまだヤンチャしてた頃に知り合ったらしく、それ以来お茶をする間柄になったとか。

 

 

「私としても感謝しているよ。君無くして今の飛鳥くんはなかっただろうからね」

 

 

「遠回しに人の傷抉るのやめません?」

 

 

「戸高さんですね!私、新聞部の黛薫子と申します!早速ですが、IS学園に来る前の飛鳥くんについて話を……」

 

 

「おいやめろアンタ!!人の黒歴史記事にしようとすんなぁ!!」

 

 

 一夏の誕生日会なのに、なんで俺の話で盛り上がってしまうのか。とりあえず一夏へのプレゼントは映画作品にした。タイトルは『殴り合い宇宙』、地球を出た不良と宇宙在住の不良が抗争を繰り広げるB級のSFヤンキー映画だ。……某作品のオマージュであることは言わぬが花だぞ。

 戸高さんもプレゼントとして茶器を贈呈していた。ただこの場にいた一部の人はその茶器を見るなり悲鳴を挙げていた辺り、余程高価なものだったのだろう。受けとる時の一夏は産まれたての子鹿レベルで震えてた。

 

 

「まったく、俺一人で良かったのに」

 

 

「うるせー、今日の主役を一人で働かせる誕生日会がどこにある」

 

 

 俺と一夏は外にジュースを買いに来ていた。最初は一夏がどうしてもと言って行こうとしたので、俺はコッソリ抜け出して合流した。

 最寄りの自販機から必要な分を買い終えて袋に詰める。いざ帰ろうとした時に、その人物は現れた。

 

 

「ち、千冬姉……?」

 

 

 顔つきは完全に織斑千冬そのもの(・・・・・・・・)。だが、容姿はあまりにも幼い。千冬さんはもうすでに成人しているのに比べ、目の前の少女はせいぜい15か16歳といったところだ。

 

 

「いや、私はお前だ。織斑一夏」

 

 

「な、なに……!?」

 

 

「今日は貴様らに世話になったな」

 

 

「……まさか、サイレント・ゼフィルスの!」

 

 

「そうだ、私の名前は」

 

 

「マジか、お前も織斑一夏っていうのか」

 

 

 一夏はずっこけた。このシリアスな場面でボケ発言かました飛鳥の顔は至って真面目なのがタチが悪い。

 

 

「そうはならないだろ……!」

 

 

「いやだって、アイツお前と同じだって」

 

 

「織斑マドカだッ!!!」

 

 

 織斑一夏……訂正、織斑マドカはキレた。

 

 

「何度コケにすれば気が済む!……殺してやる」

 

 

「くっ!まずいぞ飛鳥……!」

 

 

「大変だな一夏」

 

 

「なに他人事みたいに言ってんだ!?どう考えても怒らせたのお前じゃん!!?」

 

 

「殺してやるぞ進藤飛鳥ッ!!」

 

 

 某ところてんのようなとばっちり感のある中、マドカの手に握られた拳銃の引き金は引かれた。

 いやぁ、人気の少ないところとはいえこんなところでドンパッチするとは思わなかったよ。あ、そうそう、ISの展開速度ってそれこそ0.1秒とかそのレベルで装着することができて、もうちょっと頑張れば蒸着ッ!とか言えそうなぐらい早いのだ。だから銃口向けられた時点で念じれば普通に間に合うし、そんじょそこらの銃弾ならヨユーで受け切れるというわけだ!そんなわけでスローモーションになってるのを良いことに色々喋ってみたのだが、ここで衝撃のニュースをお届けしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺、今IS持ってない。




 なぜこの小説だとクールロリ体型の強キャラはネタ感強くなってしまうのだろうか。マドカさん当初の予定だともっとこう、威圧感ある敵キャラだったというか……。
 初見殺し引っかかっただけでナイフ一本で芋者と渡り合ってるので、強さ的には問題ないと思いたい。
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