芋者奮闘録 作:舞い降りるズゴック
まぁ、今回の戦闘描写ちょっとギャグと勢いに走ったのですぐに出番終わりそうですが。
「む?失礼……私だ。……なんだと?わかった、すぐに向かう」
地下格納庫から始まったフェイス社の見学ツアーは、キィノ・レバードに届いた一つの報告によって切り上げられることとなった。
「申し訳ないが、これからすぐに観戦室へ向かうことにする。恥ずかしい話だが、たった今模擬戦が始まってしまったようでね」
「え、もうですか!?」
「予定ではもう少し後のはずだったのだが、手違いがあったようだ。……幸いこの倉庫からは遠くない。今から行っても問題はないだろう」
製品の開発、製造ときて保管用の倉庫まで来ている辺り時間通りの行動だったのだろうが、ここに来て小さなアクシデントが起こった。
とはいえ、観戦室へ向かうには5分も掛からず、模擬戦中とはいえ観戦室から声をかける余裕ぐらいはあるだろう。
その飛鳥がすでにボロボロの状態でなければの話だったが。
「バカ野郎、何をしている飛鳥!その程度ではないだろう!IS学園で何を学んだ!!」
「黙れ!!アンタ今日の趣旨理解してんのか!?イージスの試験運用だろ!」
「甘ったれるな!!使いこなせてないからと敵が情けをかけるか!!トゥ!ヘァー!」
「ギャアァァァァァァァァァ!?」
イージスシルエットの多彩な機能を活かす間もなく攻撃が飛んでくる。こちらも必死に抵抗するが、その度に殴り返される。ついでに口撃も飛んでくる。IS関係なしに人性能でやってくるもんだからたまったものじゃない。
そう、今まさに俺が相手している第二世代IS『ジャスティス』の操縦者こそ、IS学園入学前にIS経験ゼロの俺をこれ以上ないほどボコボコにし続け、スパルタを超えるスパルタで代表候補生と戦えるレベルまで鍛え上げる狂気の特訓を強行した女。
元・日本代表候補生にして現コンパス所属のIS操縦者、
専用機の『ジャスティス』は独自の改修が施されているのか、脚部にビームブレイド『グリフォン』が追加されており、背部に背負った追加装備も『ファトゥム-01』が採用されている。機体名こそジャスティスだが、その武装っぷりは隠者レベルだ。
「こっのぉ……!好き勝手しやがってぇ!!」
キレ散らかしながら俺はイージスシルエットの機能の一つである、クローアーム二つを芋者の両腕部へと接続した。
要領はいつか試したシュピーゲルブレードと同じだ。
クローアームはシールドブーメランと同じくイメージインターフェースにより自由に動かすことができるのだが、戦いながら四本同時に動かすのは流石に難易度が高い。
よって、内二本を腕と一体化することで思考する手間を簡略化。頭で動かすのが四本から二本に減るだけでも大分楽になった。ただ接続位置の問題でビームブーメランを投げる際にクロー部分が引っかかりそうなため、扱いには細心の注意が求められそうだ。
(それでも、後隙を返しの刃でカバーする戦法は使える!更に残りのクローアームとカルキトラで上下方向にも圧は掛けられる。これが俺の八刀流スタイルだ!)
「くらえ阿須澤ァッ!!!」
「舐めるな!!」
「はっ!?グェッ……!」
おいマジかコイツ。初段のビームブーメランによる突きはともかく、返しのクローから伸びたビームサーベル(イージスシルエット第二の機能)の斬撃まで避け切ったぞ。
もちろんその後にカルキトラとクローアームによる波状攻撃も考えていたのだが、ビームサーベルを避けた段階で阿須澤は脚部のグリフォンを振って俺を蹴り飛ばした。
なんで初見の技対応できるんですかねこの人。一夏とは別ベクトルで理不尽が過ぎる。
「立て飛鳥!そんなものか!今日一日で使いこなせというのに、情けないヤツ!!」
「だったら試す暇と手心ぐらいあってもいいだろ!なんなんだアンタはぁッ!?」
「お、おっす、ただいま……。って、な、なんだよお前ら……」
制限時間を迎え、地獄の性能テストから解放された俺は疲労困憊の状態で一夏達と合流した。ただ、何故か全員からものすごい憐れみの目を向けられているのだが……。
「お前、前からすごいヤツだとは思ってたけど……よく頑張ったな」
「まさか千冬さんの方がマシだと思える日が来るとは……」
「あの強さの裏には、このような背景がありましたのね……」
「その……今度どっか遊びにいく?たまには、気晴らしも悪くないと思うのよ!」
「そ、そうだね!気分転換は大事だよ!うん!」
「我が軍でも福利厚生はしっかりしているからな。休養は取るべきだ」
「え、なに、怖……」
妙に優しくしてくる専用機組に困惑していると、今度はレバード社長が近づいてきた。いやアンタもなんで可哀想なヤツ見る目してるんだよ。
「その、飛鳥くん。今回の模擬戦をセッティングしたのは私なのだが……私は人選を間違えたのだろうか?」
「……吉良さんから何か聞いてませんでした?」
「…………認めたくないものだな、若さ故の過ちというのは」
その人、俺の準備ができた瞬間に襲いかかってきましたからね。テストの開始時間まで全然余裕あったのに。おかげでイージスシルエットの練度めちゃくちゃ上がったよクソが。
あぁ、そうそう。今回の一件を通して、俺のIS使用の制限は若干緩和された。今度の専用機タッグマッチには参加できないが、軽い模擬戦までなら大丈夫らしい。やったぜ。
『レバード社長、これは一体どういうことかね?』
「先日送らせていただいた資料の通りですよ。進藤飛鳥に課せられた規約の緩和、それに見合った条件を我々は提示したと思われますが」
『フェイス』最上階に位置する社長室。その椅子に座るキィノ・レバードはデスク上のパソコンを使い、何者かと対話している。
『進藤飛鳥にはテロリストの疑いがかけられていることは知っているだろう?』
「えぇ、しかし束縛するより敢えて泳がせた方が有益と私は判断します。もし違った場合、戦力となる人材を腐らせるだけですから。……それに、ISを通じて彼の行動記録がわかるのであれば対した問題ではないのでは?」
『…………
「さて、私から言えるのは女性権利団体の皆様には少々寛容になってもらいたいとだけ。大事になって困るのはお互い同じだと考えますが?」
『……先日の資料に記載されていた
「現段階では、私の息のかかった者と貴方だけですよ。起動については、私の持つ装置一つで行えます」
『ほう……いいだろう。今回は目を瞑ってやる。精々上手くやることだ』
「えぇ、委員会の方々にもよろしくお願いしますよ」
通信が切れるのを確認し、キィノ・レバードは軽く鼻息を鳴らす。
「IS委員会は日和見、女性権利団体は抹殺を画策。全く愚かで無能な人材しかいない」
先程までの対応とは打って変わり、悪態をつくキィノ・レバード。これを聞いているのは、社長室に居合わせている一人の少女のみ。
「それで、例の機能っていうのは本当?」
「あぁ、確かにイージスシルエットに極秘裏に仕込ませてもらったよ。もちろんコンパスの上層部に伝えた上でね。進藤飛鳥が知るのも時間の問題だろう」
報告した内容とは違うことを口走るキィノ・レバード。その手には先程の通話で映像越しに見せていた何かのスイッチが握られていた。
「あとはこのボタン一つで、と言いたいところだが、これもフェイクだ。主導権を奪われては敵わないからね。……あとは君次第だよ。このカードをいつ、どう切るか楽しみにしておこう」
「……有効に使わせてもらう。それと、あの件も進んでるの?」
「無人機のデータが不足しているが、概ね順調だ。代替案はあるが、それさえあれば我々の作戦も大詰めに入るだろう」
進藤飛鳥を取り巻く悪意の渦。その先に待つものは果たして……。
「そう心配せずとも、亡国企業の『デュランダル』は
前回の後書きでデスティニー活躍フラグ立ったの笑ってしまった。
そういうわけなので、この作品における第一世代IS『デスティニー』の性能については次回で枠作って語ろうと思います。